東方追憶譚 ~the First Memory~ 作:ほーりーさん
家の前でケータイを確認する。今の時間は6時50分。
うん、よくある時間だね。
そんなことを思いながら私は家のドアを開けた。
「ただいま」
「おう、おかえり」
出迎えてくれたのは珍しく、お父さんだった。ということは多分お母さんは夜勤なのだろう。
「ご飯はもう出来てるの?」
「ああ、今さっき出来たところだ。お前の好きなハンバーグだぞ」
この人の名前は宮野恭平。職業は科学者で、私の義理の父親だ。
私の本当のお父さんとは親友だったらしい。
普段は研究所で日夜研究をしているそうだが、今はどんなことをしているかわからない。
そして、科学者というところからは似合わないほど、料理が上手だ。
正直なことをいうとお母さんの作る料理よりも美味しい。
私は部屋に荷物を置いてきてさっそく夕食のハンバーグを食べ始めた。
うん、相変わらず美味しい。
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部屋に戻ったら、今日借りてきた本を取り出してみた。
どのページを見てもやはり見覚えのあるような気がする。
そこで、大学で見たときよりさらにじっくり読んでみた。すると、さらに見覚えのある写真があった。
緑色の髪の少女。この娘、あの娘に似ている。
あの夏の日に、私の腕を引いて知らない場所まで連れて行ってくれた、あの娘の髪に。
私がさらにぺージを捲ると、この幻想郷と呼ばれる世界の地図が載っていた。ここまで読んで、私は幾つか「解った」ことがある。
まず、一つは、この本が割と最近に書かれたものだということ。
そして二つ目は、この世界は実際に存在するということ。
さらに三つ目に、その世界がここ日本の真ん中のあたりの位置の、長野県にあるということだ。
なぜだか私は、写真に写る影の角度や太陽の位置、その土地の地形などだけでその写真がどのあたりで撮られたのか、さらには書いてある文字のインクの染み具合などだけで書かれてからの時間がわかったりする。
自分でもなぜここまでのことが出来るのかがわからない。
でも、もしかしたらここに行けば何か解るのかもしれない。
そんな気がしていた。
そういえば、お父さんの行く研究所の中には確か長野県にあるところもあった気がする。今度久しぶりに連れて行ってもらおうかな?その時にでも調べてみよう。
と、そんなことを考えていると、後ろからガサガサと音が聞こえた。
私が振り返ると、そこに置いてある少し大きめのケージの中で真っ白な赤目のウサギが眠そうな顔をしてこちらを見上げていた。
「あ、今日はまだ出してあげてなかったね。卯月」
私はそう言いながらケージに入ってるウサギを出してあげた。
この子は私が飼っているウサギの卯月。
この子は昔友達と山で遊んでた時に見つけた子で、当時は足を怪我していた。私が見つけて怪我を治療してあげて、治ってから山に帰そうかと思ったら私に懐いてしまって。なぜか私についてきてしまったので家で飼うことにした。
そういえばこの子を見つけたのも長野の山だったっけ?
せっかくだからこの子も今度連れて行こうかな?
この子、意外と抱っこされながら散歩されるの好きみたいだし。
と、ついでだからネットでもう少し細かい位置も調べておこう。
さっき調べた時点で、なんとなく座標はわかっていた。ネットで調べるのも、そこまで苦ではない。
しかし、大雑把な場所はわかったが、本に載ってる写真はネットをいくら探しても見つからなかった。
しかし、その場所もお父さんの研究所からそう遠くはなかった。
研究所から徒歩ならば、だいたい1時間くらいの距離だ。
そこまで分かれば、あとは実際に行ってみるだけだ。
お父さんに研究所に連れて行ってもらえるか話してこよう。
と思ったところで、お父さんに頼まれていた本のことを思い出した。
私は、頼まれた本を持ってお父さんに渡しにいった。渡しに行くのとついでに研究所に行きたいと言ってみた。お父さんはいいよと言ってくれたが、長野の研究所に行きたいと言ったら少し驚いた顔をしていた。
お父さんは許可を出してくれたが、話が終わるとぶつぶつ独り言をしながら部屋に戻って行った。
少し気になったが、考えても仕方がないので私も部屋に戻った。
二階に上がったところで、部屋のドアが開きっぱなしなのに気がついた。どうやらドアを開けたままで部屋を出たみたいだが、卯月は出てないだろうか?
そう思いながら部屋に戻ったが、普通に私の椅子の上にちょこんと座っていた。
「よかった、出てなかったんだね」
私は卯月にそう言いながら近づくと、一つだけ違和感を感じた。
さっきまで使っていたパソコンのウィンドウが、全て閉じられていたのだ。
たしかさっきまで地図を開いていたはずだったんだけどな。
もしかしたら、部屋を出る時に無意識に消したのだろうと思いながら、またインターネットを立ち上げた。
履歴からさっきのページを開こうとした時に、またおかしなことが起きた。
履歴の一番上に来るのは一番最後に開いたぺージのはずなのに、なぜか動画サイトが一番上の項目に表示されている。
たしかに私もこの動画サイトを使っているが、さっきまでは使っていなかった。
まあさっきの地図に関しては、だいたい覚えてたからもう開かなくていいかなと思い、私はそのまま動画サイトを開いて卯月を膝に乗せて一緒によく見ているゲームの動画を見始めた。
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一方、そのころ
とある場所では、二人の女性が話していた。
「あなた、なぜあの子にこの世界のことを教えたの?」
「いえいえ、私はただあの子に本を勧めただけですよ」
「だからって、なぜ「あの本」を外の世界に持って行ったの?それにあなたにはあの子の監視をしているよう言ったはずよ?」
「そりゃあ、ただ見ているだけではつまらないもの。それに、「あの本」は私の「私物」ですし」
「はあ、もうあなたには何を言っても通じないみたいね…」
「私がこういう性格だっていうのは、あなたが一番わかっているでしょ?」
女性はため息をついた。
「はあ、全く。あなた、私の式だというのを忘れないでよね?」
「分かっているますよ、『
そう一言言うと、女性は忽然と姿を消した。
一人残った女性はため息をつきながらこう言った。
「はあ、本当に大丈夫かしら?」
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再び、宮野宅では
「あれ?このゲームまた勝手にレベルが上がってる…」
私は時々、オンラインゲームをやっているのだが、最近ちょくちょくとレベルが勝手に上がっている気がする。
誰かに勝手にプレイされてるのかと思ったが、幸い武器を勝手に売られたりしているわけではないみたいなので、そこまで気にはしていなかった。
それに、フレンド欄を見てみると、知らない人がいたりする。
「このカーミラってプレイヤー誰なんだろう?一緒にプレイしたことあったかな?」
少し一緒にプレイした人から申請が来るのは、私も解るが、時々見たことのない人からきてるみたいだ。
まあ、申請を断る理由もないから承認するが。実際フレンドになった人とまた一緒に遊ぶことは、実はそんな多くない。
一応高校生の時からプレイしていたから昔から仲が良かった人たちとは時々一緒にプレイしていたりする。
彼女を除いては…
「やっぱりやっていないか…」
彼女がログインしてないことがわかったら、私はゲームを消してパソコンの電源も落とした。
私は卯月をケージに戻して、そのまま寝ることにした。
運良く、今週末にはお父さんが長野に行くみたいなので、それに同行することになった。
少しどきどきしていてあまり寝れそうにない。まるで遠足に行く前日の小学生みたいな気分だ。行くのは明後日だというのに。
私は、いつもの音楽をスピーカーで再生しながらいつものように寝ることにした。
この曲は、私の好きな作曲家であるヴァイオリニストのレイラという人のものだ。最近知った話だと、このレイラさんは私より年下だったとか。
ここ最近デビューしたらしいが、この人の曲がとても素晴らしい。
今ネットでもとても話題になっている。
しかし、この子の情報などは全然ネットなどに公開されてないため、年下だと知ったのもここ数日前だ。
そんな彼女の曲を聴きながら目を閉じると、私は自然と眠れる気がする。
赤ちゃんが子守唄を聴いて眠るような、そんな感覚だ。
そんなことを考えているうちに、私は深い眠りについた。
続く
みなさん、お久しぶりです。
大変お待たせいたしました、東方追憶譚でしたがどうでしたでしょうか?
次の回も、できれば早めに投稿したいと思います。
夏ぐらいには投稿できたらいいな〜