東方追憶譚 ~the First Memory~ 作:ほーりーさん
プロローグ 〜分かってしまう少女〜
私は、答えのあるものが嫌いだ。
なぜ嫌いかって?理由は明白だ。
私は答えが分かってしまうからだ。
小学生になりたてだった私は事故に遭ったらしく、その時に記憶を失ってしまったようだ。家族は、事故で身寄りをなくしてしまった私を引き取ってくれたお義父さんとお義母さんだけだ。
その事故からしか記憶はないが、その頃からすでに答えが分かってしまっていた。特別な勉強をせずとも小学校のときからテストは満点、中学や高校のテストももちろん全て満点で、常に学年首席となっていた。この頃から、私は分かる事が嫌になってきた。
だから私は、勧められていた理系学科の大学に行かずに文系の学科の大学に入った。その入試ですら答えが分かってしまっていたのだが。
それでも、お義父さんは私のやりたいようにしろって言ってくれた。お義父さんも科学者の端くれだが、私をそっちの世界に引っ張らずにいてくれた。時々手伝ってくれと言われる時もあるけど。
大学に行けば、きっと私にもわからないことがあるだろう。そう思ってここに来たのに、やっぱり答えが分かってしまう。
私は分かりたくなかったから、答えの無いものを見たいが為に図書館へ行っていた。
いろいろな世界の本や冒険譚はとても楽しい。理解しきれない事がたくさんある。
本を読み始めたのは、高校時代に唯一仲が良かった友達が、勧めてくれたからだ。
彼女は幻想的な物語や世界の本が好きで、私にいろいろな本を勧めてくれた。分かってしまうことも結構あったが、それでも彼女は私にいろいろな本を勧めてくれた。
そういえば彼女に連れられて、山の中にある神社まで行ったこともあったな。あのときの気持ちは、理解しようとしてできるようなものではない、そんな不思議な感じだった。神社のご利益だったのかな?
それから間もなくして、彼女は突然失踪した。先生の話だと引っ越したと言っていたが、彼女が一言も告げずにいなくなるはずがないと思った。
でも私は全て分かってしまう。そんな自分を過信して彼女を探そうとしたが、彼女は見つからなかった。
あのときの私は、どうしてと言ってずっと泣いていた。そして、彼女が言っていた言葉を思い出した。
「こんな不思議な世界に行ってみたいですよね」
そのとき、私はなぜか悟った。彼女はきっと別の世界に行ってしまったのだろう。
どのようにして行ったのかはわからないが、私はそう確信した。そして、そこで彼女が幸せならばそれでいいと思っていた。
彼女がどんな世界にいるのかわからないが、彼女が見てきた景色を私も見て見たい。
そんな風に思いながら、私は今日も本を読んでいた。
そして書庫の奥に置いてあったとある本を読んでいると、一枚の写真が目に入った。
その写真を見たとき、物語が動き出した。
これは全てが分かってしまう少女と、全てが幻想で包まれ分かることができない世界の物語。