衝撃波と銃撃が当たった時、少しよろけそうになったけど……それでも、アクションデュエルの時ほどじゃなかったから結構耐えれた。やっぱ手札からの防御手段も入れておくべきなのかね……居れるとしたらかかしとかか?いや、アドバンスの素材にもできるフェーダーとかか?
「っあー、クッソ悔しい……デッキの回り悪すぎんだろ……っ畜生……」
さっきの小町とのデュエルで初手でぶん回せたからいけると思ったけど……全然だめだったな……
「失礼、少しお聞きしたいことが」
「ん? 何すか? ……あぁ、どっちが俺の素かっつう話だったらこっちが素っすよ?」
つい気を緩めて素がでちまったけど……まぁ、今更だしもうこっちで行くか。
「素、ですか。幻想郷では猫を被る人間は珍しい。外の世界ではありふれているということです。外の世界で忘れ去られてしまったモノを引き寄せるこの世界ならでは」
幻想郷……? 元の世界で聞いたことあるような……何かダチが言ってた気がするけど……そこまで詳しくねぇからなぁ……
「失礼しました。貴方とは関係のない話を。ところで帰り道はわかりますか?」
分かってたら迷わないと思うんだが……ってそうだ。あの二人も探さないと……
「いやぁ、分からねぇな。それに、知り合いが2人逸れてしまってなぁ。2人と会わねぇといけないんだよな」
でも、どこにいるんだろうな……全く見当つかねぇや
「条件が増えるとなると困りましたね。三人の迷子を一カ所に集めるには……」
迷子ってお前……仮にもまだ俺高校生なのにそういう言い方ねーんじゃねぇのかよ……
「小町、この人を人里まで案内してあげなさい」
ん、人里? なるほど、人に聞けばある程度分かるかもしれないよな……
「えー。あたいがですかい?」
「嫌そうな顔が露骨すぎます。私はこれからここで待ち合わせがあるのですから、仕方ないでしょう」
なんっか、ここまで露骨だと逆に清々しいなぁ……まぁ、道を案内してくれるのは正直助かる。
「まぁ、俺は人里っての場所への道分かんねぇしなぁ……」
俺がそう言いながら後ろを振り返ろうとしたとき、突然どこかから空気を切る音が聞こえてきたかと思うと何かが道の傍にある岩……2mの高さはあろうかという大きい岩に当たったような音が聞こえた。
「……何だ? 今の音……」
異世界にまた転移するわ、変な音が聞こえるわ……あんまりいい気がしないな……本当に…………
「カード?」
は? カード……? 小町ってやつの声に俺は視線を当たったような音が聞こえた岩の方に向けると、確かにそこにはなんて事のない普通のカードが岩に突き刺さっていた……うん、俺は驚かねーぞ。紙のカードが岩に突き刺さってるなんて現象に突っ込まねーぞ。
小町ってのが指で挟んで引っ張っているけども、抜ける様子は一切ない。
「小町、なにを遊んでいるのですか」
「いや、遊んでないんですよ。ちょっと四季様これ」
その声に首を傾げながらも四季と呼ばれたやつが指で挟んで引っ張ってみているがやっぱり抜ける様子はない。
「ちょっと四季様なにを遊んでいるんですか」
「遊んでいるのは貴方よ」
小町ってやつの方を四季が見ると小町は表情を崩し大袈裟に身を竦めて半歩引ている。やっぱ上司と部下の関係なのかね?
とりあえず、俺も岩に突き刺さっているカードの方へ歩み寄り指で挟んでみる。触った感じは普通のカードなんだけどな……
「……あれ?」
軽く引っ張ってみたがやけにあっさり抜けた。別に力を込めたわけじゃないし、服に付いた糸くずを取るぐらいには軽くだった。正直、大げさな表現じゃなくて本当にそれほどカードを抜くのが簡単だった。
「……二人で遊んでたのかよ?」
若干のジト目を二人に向けてみるも改めて手元に視線を戻して引き抜いたカードを見てみる。けど、絵柄は何も書いてないし、枠が黒いからエクシーズモンスターであるのはわかる。ただ、名前の欄にNo.という文字が見えるだけで他は一切不明だ。No.って言っても色々あるからな……何なんだか……
「良いお土産を貰ったみたいだね。さあ行こう。とっとと行こう」
カードを見ていると小町に急かされるがままその場を後にすることに……いや、そんな四季ってのから逃げたかったのかよ……
side勝太
何処となく江戸のような、そんな趣のある町並みで色々な町人たちとデュエルをしながら情報を集めていたが、どうにも全て空回りだ。仕方ないので話を聞いた人たちには二人と思われる人を見つけたら自分が行く方向に案内してもらうように頼んでおいた。町人たちのデュエルの腕前は……正直まちまちだった。特定のカードの面白い使い方をする人もいたが、こういうのも失礼な話だが初心者クラスの人も多々見受けられた。そして最後の人にもしあれならと勧められた場所が……
「ここ、だよな」
白塗りの壁に青っぽい瓦屋根の、開かれている木製の中々立派な門。門の上に掲げられた看板には寺子屋と書かれてある。少し敷地の中に入らせてもらい、中を窺ってみると大きめの建物、それが幾つか集まっているそれこそ寺子屋というよりも学校と言うべき程の立派さである。
「何というか……懐かしいな。高校卒業以来だから……もう4,5年以上は前の話か……」
……うん、考えるだけですごく悲しくなってきたな。考えるのは止めよう。一応ここなら敷地も広いから許可を取って一室か何処かお借りして待たせてもらえるかな……?
「おーい。お前誰だ」
声が聞こえ、そちらへ振り向くと玄関から出てきたフードを被った男が声をかけながら走ってくるのが見えた。
「すまない、ここに来る途中で知り合いと逸れてしまってな。色々話を聞いてたらここで待った方が良いんじゃないかと町の人に言われてな」
正直、確かに大きい建物があったりと分かりやすかったけど、どうなんだろうな、寺子屋(現代風でいう学校)を待ち合わせ場所に提案するっての……
「あーここには変なのがいるからな。俺は黒霧闇人。変なのじゃないぜ」
ふむ、黒霧か……自分で変なのじゃないって言うのはどうかと思うが……まぁ、名乗ってもらえたのだし、こちらも名乗らなければな。
「俺は小浪勝太。知り合いからは愛称って意味合いでコナミって呼ばれてる。早速で申し訳ないんだが……知り合いが来るまでここにいても構わないだろうか?」
まぁ、ダメでもこの周囲に居させてもらうしかないんだが……
「あー。いいんじゃないか? まあこの辺は危ない奴もいないからさ」
この辺以外には危ない奴いるのか? ……あの二人大丈夫だろうか?
「良かったら見ていかないか? 今授業やってるんだよ」
「それは良いな、ぜひ見学させてくれ」
ここがどういう世界か知るにはちょうど良いかもしれないな……そう思った俺は相手の提案に乗って授業見学をさせてもらうことにした。
「そっか。こっちだ」
黒霧の案内の元、見学のために校舎内に入る事が出来た。靴を空いている靴箱に入れ、来客用のものと思われるスリッパに履き替え、そのまま教室へ向かうであろう相手の後をついていくように廊下を歩く。シンプルながら温かみのある木造建築は別にここを出ていなくとも、どことなく懐かしさを感じた。廊下の板は所々擦り切れていて、それ年季を感じさせているのもまた理由の一つだろう。
「お前、デッキは?」
廊下を歩く最中、不意にデッキの有無を聞かれた。恐らくデュエリストかどうかを聞いているのか?そんな風な感覚を覚え頷き返す。
「持っているさ。一応デュエリストなんでね」
仕事用のカバンにデッキを仕込んで会社帰りによくカードショップに向かって子どもたちとデュエルを良くしたりしたしな。基本は常に持ち歩いている。この世界でここに来るまでに何度ものデュエルをこなしたしな。
「そうだよな。デッキを持っているとそれだけで楽しいもんな」
どことなく、黒霧の言葉がそう思いながらもそう思いきれない、そんな風に聞こえた。
「なあ、デッキって、カードってなにかな」
……あぁ、そういうことか。多分、心の中で遊戯王の存在意義が揺らいでいるのだろう。
「俺にとっては、生まれて初めて信用できる人から貰ったもので、色んな奴と絆を交わした、これまで生きてきた証みたいなものなんだ」
今まで生きてきた証みたいなもの、か。そういう答えもありなのだろう。
「多分、その質問に答えに正解はない。その人が思うその答えがその人の正解、俺はそう思うな。ありきたりな言葉だが、感じ方は人それぞれ。それに答えなんていらないしな。だから、黒霧のその想いも……間違いなく正解だ」
俺はそう言いながら自然と笑顔になっているのに自分で気づいた。俺自身がそう思っているというのもあるんだが、遊戯王の事を考えるだけで楽しいし、何より黒霧の事を安心させたいというものがあるんだろうな。
「俺はそうだな、色々あるが……やっぱり触れているだけで楽しい気分になれるものかな。デュエルはやっぱり楽しいものだからな!」
純粋にデュエルは楽しい。だからこそ、勝てれば当然楽しいが、負けたとしても悔しさと楽しさが入り混じった高揚感が感じれる。デュエルの伝道師とまではいかないが、周りに勧めた結果、会社の同僚や後輩にも遊戯王をやっている奴は多いし、先輩でも時々仕事のないときに良く誘われる程にはなったからなぁ……
「ありがとうな。そして良い答えだと思う。この平和な世界のデュエルは楽しいよ、確かに」
お、笑顔になった。良かった、相手の気分が安心している様子は見ていてうれしいからな。結構相手の感情……特に身近な人の感情ってのは移りやすいからな。怒っていれば自分もイライラするし、泣いていれば自分も悲しくなる。でも、楽しそうであれば自分も楽しくなる。俺はデュエル中の様子が心理カウンセラーとか言われることあるけど、そんな大層な事はしていない。ただ素直な笑顔を見せる。それだけでも相手が笑顔を見せてくれるからな。
「それを見込んで頼みがある。デュエルして欲しい奴がいるんだ」
教室の前に着いた時、振り返った黒霧に何かを見込まれたようだったが……デュエルしてほしい、か。
「俺でよければ、勿論デュエルするよ」
もちろん答えはYES。この世界に来てこれまでデュエルは何度もしているが、疲れなんてものはない。何度やっても楽しいと思えるからな。
「ありがとう」
黒霧のお礼の言葉がより嬉しい。そして教室に向き直ったかと思うとその教室の扉を開く。どうやらまだ授業中だったようで一斉に視線が自分や目の前の黒霧へとむけられた。
「なんだ黒霧。まだ授業中だが」
腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪の女性の言葉に黒霧は笑顔で雑に謝りながら窓際の隅っこの席にいた黒髪の少年に手招きをする。どうやら、彼が自分のデュエルの相手なのだろう。
「初めまして、俺の名前は小浪勝太。気軽にコナミって呼んでくれ。知り合いからもそう呼ばれているからな」
立ち上がってこちらに近づいてきた子に笑って自己紹介をする。懐かしいな、雄牙と会った時もこのくらいだったかな、確か。その時は俺もまだ若かったけど。
「僕は雪影剣。よろしくコナミ」
雪影剣……剣君でいいか。
「剣君ね。授業中に悪いんだけど……俺と一緒にデュエルをしてみないかい?」
ま、本当に常識的にはありえないんだけどねぇ……けど、彼のデュエルがすごく気になる。それもあってか、心なしか自分の闘争心が久しぶりに燃え上がっている気がする。楽しいデュエルはいつでも燃えるからな……
「本当! やろうやろう」
嬉し気に踵を鳴らすその様子はデュエルが大好きと言わずともわかる様子だった。しかし、女性が俺と剣の間に割って入る。
「待て、授業中だぞ」
いや、まぁ確かに授業中なのは間違いないし、申し訳ないと思っていたところで黒霧がそれを制した。
「まあまあ。こいつはどっちみちイレギュラーな短期編入だし、寺子屋の生徒よりずっと年上だ。慧音、頼む。剣は今、人生の岐路にいるんだよ」
人生の岐路、か。それに俺が関わるとは……少しばかり責任重大だな。慧音と呼ばれた女性は複雑そうな表情を浮かべいたが、教壇に戻っていく。どうやら、許された、のかな?
「わかった。ただし例の話も忘れないように」
「ああ、ありがとう」
まぁ、完全には許されてないんだろうが、笑う黒霧を見て区切りがついたのだろう。
「外でやろう。校庭、結構広いんだよ」
こうやって見ると素直にデュエルが大好きな少年、とでも言うべき様子だったんだろうが……それだけなら、俺に頼む、ということは無いハズ。もしかしたら彼に何かあるんだろう……
「あぁ、分かったよ」
まぁ、俺は俺なりのデュエルを貫くだけだな。雄牙にも教えた、笑顔のデュエルを。
さぁ、いよいよ最終戦です。主人公を相手にするのはわれらが(うちの小説での)コナミ!
因みに某お方の某コナミ'sとは一切無関係ですのでお気を付けください。(コナミvsコナミも面白いんでしょうけどね、でもあちら様はとても有名ですし、片やこちらはひっそり投稿ですから……)
遊牙(雄牙)のデュエルの師匠、異世界(の異世界)でついに初デュエル!こうご期待!!
次回、「デュエルで、笑顔を……!」お楽しみに!!
(※タイトルは変わらずナンバリングが変わるだけです)
え?本編でのコナミのデュエル描写がいつか?
……舞網チャンピオンシップでデュエルするのでお楽しみに!!(意訳:それまでにデュエルがある保証はないです)