やぁ、みんな。榊遊牙だ! 今、俺は新規入塾希望者の面接(?)をしている。
……え、塾長や遊輔さんはどこ行ったかって? あの2人は新規の塾講師の面接中だよ。2人ともあっちに行っちゃったから俺が1人で面接やる破目になっちゃうんだよ……まぁ、そこまで人数が多いわけでもないんだけどさぁ……とりあえず、一言言おう。
「……えーと、LDSからこの塾に転塾したい理由は?」
いま面接している5人中5人がLDSからの転塾希望者なんだよ!! しかもこの後まだ1名残ってんだよ!? すっげぇ辛い!! しかも大半の理由が
「LDSで伸び悩んでて……もしかしたら、ここなら上位には入れるんじゃないかと思って」
今のところ全員の理由これだよ!? ホントなんなの!? 正直な事いわせりゃこう言うやつら取る気ねぇよ!!
「そうですか、分かりました。合否については追々ご連絡させていただきます」
因みに転塾には本当に資料や必要な書類多いから担当である俺の手間を考えると全員断る方が良いんだよなぁ。楽だし。
「……はい、次の方」
最後に入ってきたのはライトグリーンの髪にエメラルドグリーンの瞳の少年。資料を見ると遊矢の1コ上の様子。因みに彼もLDSからの転塾希望者だ。
「……えっと、宝良 光一(たから こういち)さん……ですね」
「はい」
光一、ね。んー、なんかのんびりとした感じに見受けられるんだよな。まぁ、こういった様子の奴は少し前にいたけど理由が、ねぇ……
「……えーと、LDSからこの塾に転塾したい理由は?」
これで伸び悩み関連だったら不合格にするが「実は……」……ん?
「どうしても、超えたい奴がいて……でも、LDSにいたままじゃあ、同じ知識しか身につかないし……アイツは俺と同じ総合コースの主席な上に上の人のお気に入りなんです……だから……」
理由が今までと違うな……よし、とろう。
「オーケー。それじゃあ今から言う書類を早めにLDSから取り寄せてくれ」
「え?」
「合格。塾長からは俺の一任で入塾生を決めていいって言われてるからな……」
「あ……ありがとうございます!!」
お辞儀をした光一は俺から転塾に必要な書類や資料を伝えられると部屋を出て行った。さて、と……こっちは終了したけど、あっちはまだ終わってねぇのか……? 俺は臨時の応接室になっている視聴覚室を出て応接室を覗いてみようと向かう途中、塾生たちがデュエルを見ている様子だったのに気づいたのでそちらへと行ってみる。
「誰かデュエルしてるのか?」
「あ、師匠! なんか、塾長が新しい先生になる候補の人を見付けたから最終チェックでデュエルをするんだってさ! 遊輔先生も塾長の近くで見てるよ今は塾長のターン!」
雄飛の説明を聞いて改めて観てみる。フィールドは【スポーティー・ドームス】……杏子から聞いたが、塾長がプロ時代に最も得意としていたフィールドらしい……そして、塾長のフィールドには……“ガッツマスター・ファイヤー”、“ガッツマスター・ヒート”がいて……訂正、“ガッツマスター・レッド”も出てきた。相手の方……(表示名)TETTAさんは……赤茶色の髪を上に伸ばしていて、レンズの下に黒縁のある眼鏡を掛けていて黄色の瞳を持つ男性。体格はかなりがっしりとしているけど……正直に言えばややデブだ。そしてアクションマジックを取ろうとする動きは見えない……と。そしてカードが1枚伏せられて塾長のターンは終了した。
『いざ参らん。私のターン、ドロー!』
今度は哲太(仮)さんのターンとなる。果たしてどのようなデュエルをするのか……『私はフィールド魔法“転回操車”を発動!』……え?
「「「「「…………え??」」」」」
哲太(仮)さんの行動に当然のように俺も含めた塾生全員に衝撃が走った。なぜか……それはもちろん
TETTA LP4000→3000
LPを失う行動だからだ。当然、俺たちはそんなことはしない。(※詳しくは番外編α-2参照)それに少し驚いた表情が垣間見えた。あるとするなら……俺と同類、か…………
『……いや、失敬。故郷ではアクションデュエルよりスタンディングが主流だったもので……』
哲太(仮)さんは塾長からの指摘に苦笑いをしている……まぁ、十中八九嘘だろうな。だが、あの発動されたフィールド魔法……『転回操車』……あれから察するに……【列車】使いか。
『では、改めて……私は“深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト”を攻撃力0として妥協召喚!』
深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイトATK3000→0
「い、いきなりレベル10の大型モンスター!?」
「いきなり大型出てくるなんて、痺れるぅ!!」
「で、でも……攻撃力が0になってるし、流石に攻撃できないよね?」
ジュニア組と雄飛はこんな感じで大騒ぎ。遊矢や暁、杏子辺りも驚いている様子……だけど、素良とユギトは何やら訝しげに哲太(仮)さんの方を見ていた。ちなみに柚子とアユちゃんはアイスを買いに出かけているよ…………何かイベントがあった気がするのは気のせいかな?
『い、いきなりレベル10モンスターの召喚とは驚いた……しかし、レベルがいくら高くとも、その攻撃力は0……流石にそれでは俺のモンスター達は倒せまい!』
『まだまだ、ですよ! お楽しみは、これからです!!』
「「っ……?!」」
哲太(仮)さんの言葉に俺と遊矢は驚いた。何故なら、その言葉は父の遊勝がデュエルをする時によく言っていた言葉で……俺たち位しかこの世界で言うやつはいない。
「まさか、本当に父さんを……」
どうやら遊矢は哲太(仮)さんのやってきた経緯知っている様子……だったけど、今はデュエルに集中しよう。
『私の場に機械族・地属性モンスターが召喚・特殊召喚された場合にこのモンスターは手札から特殊召喚できる。来なさい、“重機貨列車デリックレーン”! この効果で特殊召喚された時、攻守力は半分になりますがね……』
重機貨列車デリックレーンATK2800→1400
『更に、デリックレーン特殊召喚成功時、速攻魔法“地獄の暴走召喚”を発動! このカードは攻撃力1500以下のモンスターの特殊召喚成功時に発動できるカード。特殊召喚したモンスターの同名モンスターをデッキ、手札、墓地より任意の数だけ攻撃表示で特殊召喚できる……が、相手も自身のモンスターを選択し、任意の数を任意の表示形式で特殊召喚できる。さぁ、お選びください』
『ならば、俺はファイヤーを選ばせてもらう! 守備表示だ!』
ガッツマスター・ファイヤーDEF1700×2
『では、私は当然重機貨列車デリックレーンを2体デッキより特殊召喚!』
重機貨列車デリックレーンATK2800
重機貨列車デリックレーンATK2800
「なるほど、自身の効果で特殊召喚したデリックレーンは半減するけど、他の効果で特殊召喚したモンスターは効果によるデメリットを受けない、と……」
「で、でも兄さん! 塾長のガッツモンスター達に勝てるのは今出したデリックレーンだけだろ? それに攻撃力だって……」
……遊矢、塾長の負けフラグを建築するのはやめて差し上げろ。
『私は……レベル10の攻撃力の半分となった重機貨列車デリックレーンと深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト2体でオーバーレイ! エクシーズ召喚!』
「「「「「え、エクシーズ召喚!?」」」」」
哲太(仮)さんの取った行動に遊矢たちと……先程は訝しげにしていた素良とユギト2名も驚きの表情を見せる。この世界ではまだ殆ど出回ってない筈のエクシーズ召喚……彼は一体…………
遊勝塾にてデュエルが行われているのと、ほぼ同時刻……夕焼け色に染まっている空と海……そして海岸にある誰も使われていない倉庫が立ち並ぶ埠頭……その倉庫の1つ…………52番倉庫でも何やらデュエルが始まった模様……
「「「デュエル!!」」」
SAWATARI LP4000
vs
UNKNOWN LP4000
vs
ION LP4000
それはどうやらバトルロイヤル……1人は依然榊兄弟に大逆転負けを喫した沢渡シンゴ。1人は紫と黒の髪で目元は黒のゴーグルのようなもので覆われ、口元にも黒いマスクをしている少年で表記は『UNKNOWN』。さらにもう1人……染めた明るい茶髪を短く刈り上げ、切れ目に空色の瞳、黒の制服を着崩していてピアスを両耳に着けている青年で表記名は『ION』。どうやら、この青年→謎の少年→沢渡順でデュエルは行われる模様だった。そして、その周囲には沢渡の背後に取り巻き3人、UNKNOWNと表記された少年の背後にはなぜか柚子が。そしてIONと表記されている青年の背後にもう1人、刈り上げている黒髪に黒瞳……シャツとジーンズというラフな格好をしていて、頭にはDAという黒文字のロゴ入りの赤い帽子を目深に被った180cmとみられる高身長の青年がこのデュエルの行く末を見守っていた……