遊戯王ARC-V 風纏いの振り子   作:瑞田高光

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第3話-3

「う、うーん……僕のターン……ドロー!」

 

手札1→2

 

「……! “二重召喚”発動! これで2回通常召喚できる! そして……僕は“幻獣機ハリアード”を召喚!」

 

 雄飛が新たに召喚したのはイギリスの垂直離着陸戦闘攻撃機がモデルと言われている幻獣機ハリアード。地面に出現したと思うと、雄飛を載せてその場でホバリングを開始し、宙へと舞う。

 

幻獣機ハリアードATK1800

 

「へぇ、でも、手札を使い切ってまで二重召喚を使う意味って……! そっか、メガラプター……!」

 

「そう! メガラプターの効果! 幻獣機トークンを1機分リリースして効果発動!! デッキから手札に加えるのは……」

 

 ここで雄飛は一度言葉を止めた。そして軽く思考をしてサーチするカードを選択した。

 

「(兄さんなら、ここでテザーウルフかチューナーモンスターをサーチする……けど、本当にそれでいいのかな? 遊牙さんも言ってた。自分のデュエルをって…………それなら、僕が選ぶのは……!)僕がデッキから手札に加えるのは2機目の幻獣機メガラプター!!」

 

「なっ……テザーウルフじゃない!? しかも同名サーチ可!?」

 

 

 

 

「なるほど、面白いな」

 

 他のメンバーの殆どがユギトと同じことで驚いている中で遊牙は小さくそう漏らすと少し口角を上げた。

 

「……ちゃんと、自分で考えれるんじゃないか」

 

 そして、驚く遊勝塾メンバーや素良の喧騒に紛れ、遊輔が小さく言葉を漏らしたのだが、それは喧騒によって消え去っていた……

 

「さぁ、俺が渡したカード……アレの使い道はもうすぐだぞ、東海雄飛」

 

 

 

 

「……面白い、面白いよ、このデュエル! 一辺倒にサーチするだけじゃなくて、別の行動をして楽しませる! ほんっとーに楽しいよ!」

 

 ユギトはニッコリと笑うと両手を広げてそう雄飛を褒める。雄飛は少し嬉しそうに微笑むと再び行動を宣言した。

 

「ありがとう。でも、これだけじゃないよ! ハリアードの効果! このカード以外のカードの効果を発動するために、自分フィールド上のモンスターがリリースされた時に幻獣機トークンを生成する。そして、メガラプターが呼応!!」

 

 ハリアードが射影したホログラムに呼応するようにメガラプターからもホログラムが出現し、再びフィールドを埋めた。しかし、これで終わるはずがないのが元トーナメントチャンプのデッキである。

 

「僕はハリアードの効果を発動! 幻獣機トークンを1機分使用して、手札の幻獣機を特殊召喚する! 来て、2機目のメガラプター!!」

 

幻獣機メガラプターATK1900

 

「2体目……ってまさか…………また効果を使えるのかよ」

 

「それでも良いんだけど……今は幻獣機トークンがあまりないからね…………その代わり、遊牙さんに言われた僕なりのデュエルを考えたその結果を見せないと! 幻獣機モンスター達には共通効果があるよ! 1つはトークンがフィールドに存在するときには幻獣機達は戦闘や効果では破壊されない。そして、自分フィールド上にいる幻獣機トークンのレベルの合計だけ、レベルをあげる!」

 

幻獣機メガラプターA☆4→7

幻獣機メガラプターB☆4→7

幻獣機テザーウルフ☆4→7

幻獣機ハリアード☆4→7

 

「レベル変動効果……? それが一体どういう…………って、レベル7が4体……って、ま、まさか……!!」

 

「これが、僕なりのデュエル! 僕は【レベル7となった最初に出ていたメガラプターとハリアードでオーバーレイ】!!

 

2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!

 

集いし戦闘機達を戦場に輸送せよ! ランク7! “幻獣機ドラゴサック”!!」

 

幻獣機ドラゴサックATK2600 ORU2

 

 

 

「なっ……!?」

 

 唐突なエクシーズ召喚にさすがの遊牙も戸惑いを隠せない。それもその筈。このデッキではもともと【シンクロ召喚しか使われていなかったから】であり、元々の使い手もシンクロコースの人間だからである。遊牙はハッとして遊輔を見る。

 

「……何か?」

 

「……あのドラゴサックって……まさか?」

 

「さぁ、何の事かな? 【アレは彼の持つデッキの中に入っていたカード】だ。中々使わなかったから使い方を教えてあげただけだ。あのデッキに合いそうなカードは少し渡したが……殆どあのデッキは彼の持っていた状態のままだ」

 

 

~嘘だ~

 

 

 雄飛の話を思い返すと、デッキが渡されたのはまだ【エクシーズ召喚はない時】である。それに、雄飛とデュエルをしたときにも見させてもらったが……【アレはその時に間違いなく入っていなかった】。なぜそんな嘘を吐くのか、遊牙は分からなかったが……なぜか咎める事が出来なかった。咎める事が許されない……そんな雰囲気を遊輔は醸し出していた。

 

「……そう、ですか…………」

 

 

 

 

「エクシーズ召喚……!」

 

「ここで僕はフィールドに残っているメガラプターの効果発動! 幻獣機トークンを1機使用し、デッキから“幻獣機ブラックファルコン”を手札に加え、召喚!」

 

幻獣機ブラックファルコンATK1200☆4→7

 

 雄飛がサーチして新たに召喚したのはマッハ3という超高速で飛行するというアメリカ空軍の戦略偵察機がモデルとされているモンスター、幻獣機ブラックファルコン。そのステータスこそレベル4にしては低いが、その能力はあまり侮れないものである。

 

「バトルだ! ブラックファルコンでエルシャドール・ウェンディゴを攻撃! ブラックファルコンの効果! こいつが攻撃宣言した時、幻獣機トークンを1機生成!」

 

 ホログラムが現れブラックファルコンの攻撃がウェンディゴに届こうか、といったその時、突然ブラックファルコンが動きを止めた…………否、幻獣機トークンを除いたすべてのモンスターカードがクルリと反転し、セット状態となった。

 

「残念だけど、その攻撃は通さない。リバースカード“皆既日食の書”により、フィールドのトークン以外はすべて裏側守備表示にさせてもらった」

 

「う……で、でも攻撃を止められただけ! メイン2に幻獣機テザーウルフを反転召喚してターンエンド!」

 

「エンドフェイズ移行前、アクションマジック“ドロー・ロック”発動。1枚アクションマジックを捨てないとドロー出来ない」

 

「えっ……な、何でいま…………」

 

「何もないなら、エンドフェイズ……皆既日食の書の更なる効果。この効果が適応されたエンドフェイズに相手フィールド上のモンスターは表側守備表示になりその数だけ相手はドロー出来る。でも、ドロー・ロックの効果でドローは出来ない」

 

「あっ……」

 

 

雄飛LP1400

手札0

幻獣機ドラゴサックDEF2200(ATK2600) ORU2

幻獣機メガラプターDEF1000(ATK1900)

幻獣機テザーウルフATK1700☆7

幻獣機ブラックファルコンDEF1700(ATK1200)

幻獣機トークンDEF0

伏せカード

 

 

「そしてボクのターン、ドロー。そしてメインフェイズ、ヴォルカニック・バレットの効果でライフを支払ってデッキから同名モンスターをサーチ」

 

ユギトLP1500→1000

 

「……悪いけど、これがラストターン! 魔法カード影依融合発動! 素材は手札のビーストとヴォルカニック・バレット!

 

焔の弾丸よ、闇に堕ちた獣よ。神の力により焔を纏いて闇を燃やし尽くせ! 融合召喚!

 

全てを焼き尽くせし焔の岩石……“エルシャドール・エグリスタ”!!」

 

エルシャドール・エグリスタATK2450

 

「攻撃力2450……攻撃力合わせたら……(で、でも伏せカードは温存しておいたミラーフォース……攻撃した瞬間に返り討ちだよ!)」

 

「……ボクはリバースカード、オープン! “火霊術-「紅」”! エグリスタをリリースして、元々の攻撃力分、2450ダメージを与える! 言っておくけど、ボクはさっき手に入れた“ノーアクション”が手札にある。アクションマジックを探そうと無駄だよ?」

 

「えっ……」

 

 ユギトの言葉にアクションマジックを探していた雄飛の足が止まる。ユギトの言葉は「何をしても無駄だ」と宣告されたようなものだった。そして……立ち止まったままの雄飛に、炎を纏ったエグリスタが襲い掛かった。

 

LP1400→0

 

 

 

 

winユギト

 

 

 

 

 

「ふっふーん、ボクの勝ちだね!」

 

「うぅ……」

 

 嬉しそうに倒れこんだ雄飛を見るユギトと、雄飛は悔しそうにユギトを見上げる。そして、そんな2人に歩み寄る遊牙。

 

「お疲れさん。二人とも」

 

「ねーねー、デュエルに勝てたしボクが弟子で良いんだよね?」

 

 声をかけた遊牙にユギトは嬉しそうに問いかける。しかし、それに対する返答はユギトに向けられず雄飛へと視線を落として返された。

 

「……俺の弟子はお前だ、雄飛」

 

「「……え?」」

 

 それはユギトだけでなく本人である雄飛すらも驚く言葉だった。そしてすかさずユギトが反論を返す。

 

「何で!? 勝ったら弟子にしてくれるんでしょ?! ボクが勝ったからさ! ボクが弟子じゃないの!?」

 

「誰も勝ったら、なんて言ってないぞ。【より良いデュエルをしたら】としか言っていない」

 

「だーかーら! 良いデュエルってのは勝ち負けじゃないの!?」

 

 食い下がるユギトに遊牙はキツく言い放つ。

 

「勝ち負けで決めると言ってないから、その言い訳は通らないな。雄飛は俺からの課題をこなしていた。お前には課題は提示してないが……お前のデュエルでの最後の「無駄」という発言には完全に俺がお前への興味を失わせるのに十分だ。認めるわけにはいかない」

 

「っ……そ、そんなぁ……」

 

 遊牙の決定的な発言にしょげるユギトを尻目に遊牙は雄飛へと手を差し伸べる。

 

「俺は正直弟子は取らないつもりだったが……お前らしいデュエルを見させてもらった。師匠として教えることはあまりできないかもしれないが、宜しくな」

 

「はいっ! 師匠、宜しくお願いしますねっ!!」

 

 雄飛はポカンとしていたが、認められたと知ればその表情はパアッと明るくなり、嬉しそうに頷いた。

 

 

 

 

 

 因みにこの後、結局ユギトは諦めきれずに遊勝塾メンバーに加入。同じ塾生として認めてほしいとすがり、遊牙も結局根負けをして同じ塾の仲間として認めたのは別のお話……


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