遊戯王ARC-V 風纏いの振り子   作:瑞田高光

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第3話-1

「なんだ、ただの夢か……」

 

 ……いや、どんだけ夢を見るんだよ……でも、遊矢がプロになって大会で俺を倒して優勝する夢、か。アリなんだけど……ちょっと悲しい部分はあるかな…………成長した、と捉えればそれでいいんだけど……

 

「……うん、気にしたら負けだな」

 

 俺はとりあえず着替えを済ませていつものようにペンダントを首にかけて朝食をとる為に着替えて1回に降りる。そしてふと食卓へと視線を移すと……

 

「あ、師匠!」

「あ、シショーのお兄さん!」

 

 ……うん、やっぱりいやがった。素良と青紫の髪の少年……確か、名前は夕凪ユギト、だっけ? 素良と一緒に自己紹介をしていたけど……さて、コイツの話はこのくらいにして……

 

「言っておくが、ユギト。お前を弟子にした記憶はこれっぽっちもないぞ……ってか、母さん。なんでこの二人がここにいるんだよ」

 

「家の前でうろうろしていたからつい、ね?」

 

「いや、人間を拾わないでしょ、普通……」

 

「そんなつれないこと言わないでよ、師匠~!「母さん、朝食マダ?」無視!? ねえ、なんで無視するの!?」

 

 聞こえない、聞こえない。遊矢が上でアンとコールを愛でている声しか聞こえない。

 

「はいはい、ほら。ホットケーキだよ。君たちもいっぱい食べていいからね?」

 

 ……うん、やっぱりホットケーキ旨い。母さんの料理は本当に美味しいなぁ。

 

「母さん。また動物拾ってきt「あ、シショー!」」

 

 そういや、遊矢も付きまとわれてるんだっけ…………すっかり忘れてた。

 

 

 

 

 

 

「…………流石に学校までは来なかった、うん」

 

「何が来なかったの?」

 

 俺は今、学校の授業を終えて遊勝塾へと向かう道中を歩いている。隣には同級の杏子が一緒だ。

 

「いや、昨日……色々あってな」

 

「あぁ……柚子から聞いたわよ。また弟子を取ったんだって?」

 

 やっぱりというべきか、弟子は取るつもりはないんだけどな……一度たりとも。

 

「だから……俺は弟子は雄飛しか取ってねぇ! それに、雄飛だって本当に弟子として取ったつもりはない」

 

「……え? どういうこと?」

 

「俺はあくまでも遊勝塾で共に習うという意味での弟子として雄飛を取ったんだ。それに俺は師匠という柄じゃない!」

 

「はいはい……その愚痴は何回も聞いた。だったら、デュエルで確かめればいいじゃない。師匠としてプレイングを鍛えてあげれる子かどうか」

 

 その結論にはとっくに至ったさ……至ったけどな?

 

「……10戦10勝全ノーダメージ」

 

「…………え?」

 

 アイツの兄のデュエルはテレビで見ていたこともあるから分かったけど……

 

「もうアイツとのデュエルはやってさっき言った結果だ。正直に言わせてもらえばアイツのデュエルは兄の模倣に過ぎない上に劣化版だ。しかも効果をあまり覚えれていないと来た。だから俺は本人にも直接伝えた。『そんなんじゃあお前を弟子として認めない』ってな」

 

「いや、さすがにそれは言い過ぎじゃあ……」

 

「それでへこたれるなら、その程度のデュエリスト……って訳だ。もし、へこたれずにまた挑んでくるようなら……そして、俺のライフに傷を付けることができるなら。その時は認めようと思う」

 

 まぁ、雄飛なら弟子にしてもいい、と一瞬でも思ったからなぁ。ユギトは取る気更々ないけどな。素良と一緒だった、ってのが理由だけど……なんか、嫌な予感すんだよなぁ……

 

「……なぁんだ、まったく取る気がないわけじゃないのね?」

 

「……あぁ」

 

 結局、その後は他愛もない話をしながら遊勝塾にたどり着く。そして入ってみると……既に誰かがデュエルをしていた。

 

 ……いや、分かってんだけどね? 大方、遊矢と素良だろうな……

 

「あ、師匠! 師匠も後でボクとデュエルしようよー!」

 

 ユギトが俺に近寄ってくる……が、俺はユギトの頭をがっしりと掴んでその流れでアイアンクローをキメる。

 

「痛い痛い痛い痛い!!」

 

「あ、師匠!」

 

「遊牙、何をじゃれているんだ?」

 

 ……ひっじょーにとんでもないタイミングの悪さで雄飛と遊輔さんがやって来た。しかも雄飛が俺の事を師匠と呼んで俺の腰に飛びつく……お前らはどうしてこうも飛びこもうとするんだ。そして目の前のユギトの目が明らかにムスッとした様子だった。

 

「……は? 何言ってんの? ボクの師匠だけど?」

 

 ユギトの言葉に雄飛もムスッとしている。あぁ、嫌な予感がする……

 

「……僕の方が先に師匠に師事を仰いだんだから」

 

「は? 師匠はボク以外のだれも弟子を取ってないって言ってるけど?」

 

「お前の耳はどうなってんだ? ユギトも雄飛もどっちも弟子にした記憶はないぞ?」

 

「ひどい! 僕のこと手取り足取り教えてくれたじゃないですか!」

 

「ボッコボコに負けてよくそんな言葉言えるな?」

 

「はぁ? こっちなんて一から教えてもらったんだけど?」

 

「お前と会ったのはこれが2度目だし、ほとんど会話もしてねぇだろ」

 

 …………こら、そこの杏子たち。こっち見てホンワカしてないで助けろください

 

 

 

 

 

 

 遊矢vs素良のデュエルの結果としては最終的に遊矢の勝利で幕引きとなった。そして互いに話し合った結果、『師弟』ではなく『友人』になると言うことで決着が着いた。しかし、フィールドから二人が出ればそれよりも酷い一種の修羅場のような状態であった。互いに睨み合う雄飛とユギト……そして、二人の間に立ち困った表情の遊牙……そう、遊矢の方はまだ円満に終わったが…………此方は激化しかけていた。

 

「……じゃあ、デュエルでより良いデュエルをした方が俺の弟子になる……で良いか?」

 

「あぁ!」

 

「うん!」

 

 遊牙が溜め息交じりに問いかけると雄飛とユギトは頷く。二人の顔はどちらも真剣そのものだ。肝心な遊牙の表情はもはや諦めている様子であったが……そして睨み合ったまま二人はデュエルフィールドへと入る。それを見届けた遊牙は管制室にまだ残っていた塾長へと声をかける。

 

「……では、塾長。宜しくお願いします」

 

『おぉう! アクションフィールド、オン!『サーカス・テント』!!』

 

 塾長が操作すると、デュエルフィールドが変化していくと…………周囲に観客席、そして両サイドに金属パイプで組み立てられたのぼり台が2本。それとそれらを繋ぐ綱渡り用のロープや空中ブランコext...様々なサーカスにありそうなものがあり、上空はテントのようになっていた。

 

 

 

 

「良かったのかしら? あんな約束しちゃって……」

 

 観客席でフィールドを仁王立ちの状態で見詰める遊牙に杏子はそう問い掛ける。そんな問いかけに遊牙は答えなかった……が、その近くに歩み寄る別の人物がいた。

 

「確か、雄飛って色々不安なんじゃないのか?」

 

 天然のウェーブパーマの黒髪を肩にかかるまで伸ばした白の制服を着用した少年……彼の名は『権現坂 暁』……そう、権現坂道場の跡取り息子『権現坂 昇』の実弟である。しかし、彼は【権現坂道場生ではなく遊勝塾の塾生】である。その為もあってか、彼のデッキは不動のデュエルとはまた別物になってきている。ではなぜ、暁は遊勝塾にいるのか……それが明かされるのはまた今度となるであろう。

 

「不安なのは不安……でも、アイツがまた俺に挑んできた。それが何よりも嬉しい……かな」

 

 暁の問い掛けに遊牙が小さくそう返せばその隣に遊輔が歩みより……一言告げた。

 

「俺がしっかりと鍛えた。今なら遊牙ともいい勝負が出来る筈さ」

 

「…………そう、ですね。では、貴方の鍛え方……見させてもらいます」

 

 未だ遊輔に疑心を抱いている遊牙であったが、そう返すとデュエルへと視線を移した。デュエルは既に始まっており、先攻ターンのユギトのターン行動が終わったところであった。

 

「……にしても、あのユギトという少年は一体……?」

 

「……一応LDSで学ぼうとしていたらしいですし、かなりの実力者であることには変わらないと思いますよ。何せ、彼はついさっき、2回も【融合召喚を決めて】いますからね」

 

 

 

 

 

 

 

「ボクはこれでターンエンド。さぁ、君のターンだよ」

 

 

ユギトLP4000

手札0

エルシャドール・シェキナーガDEF3000

マスマティシャンDEF500

エルシャドール・アノマリリスATK2700

 

 

「僕のターン!!」

 

 雄飛は勢いよくカードを引き、引いたカードを見てそれを即座に発動させた。

 

「僕は“幻獣機メガラプター”を召喚! 更に魔法カード“愚かな埋葬”を発動“幻獣機オライオン”を墓地に送る。そしてオライオンの効果発動! 墓地に送られたから僕のフィールドに幻獣機トークンを1体生成! 更に、それに呼応しメガラプターのモンスター効果! フィールドにトークンが出てきたとき、同じく幻獣機トークンを1体生成する!」

 

幻獣機メガラプターATK1900

幻獣機トークンDEF0

幻獣機トークンDEF0

 

 雄飛の場に現れたのは世界最強と言われた戦闘機のF-22ラプターがモデルとされる戦闘機型のモンスター、メガラプターである。そして息つく間もなく墓地から光が出てきてホログラムの戦闘機1機が現れると、それに呼応するようにメガラプターからも光が出てきては同じようにホログラムの戦闘機がまた1機生成された。

 

『おぉ、カッケー!』

『戦闘機型モンスターなんて、痺れるぅ!!』

 

 その光景に当然と言わんばかりに男子(特に暁とフトシ)は食い付いた。

 

「まだまだ! 僕はここでメガラプターの更なるモンスター効果を発動! 幻獣機トークンを1機分消費してデッキから幻獣機モンスターを手札に……“幻獣機テザーウルフ”を手札に。墓地のオライオンの更なる効果! 自身を墓地から除外する事で手札の幻獣機を召喚出来る! 発進せよ、幻獣機テザーウルフ! そしてテザーウルフは召喚時にトークンを生成! それに呼応してメガラプターからもまた生成!」

 

 次いで現れたのはヘリのような見た目だが前面部に光線銃を装備されている戦闘機。そしてその上部から再びホログラムが生成されると、それに呼応し再びメガラプターからホログラムが生成される。

 

幻獣機テザーウルフATK1700

幻獣機トークンDEF0

幻獣機トークンDEF0

 

 たった2枚。たったの2枚での手札消費であっという間にモンスターゾーンがモンスター2体とトークン3体で埋まってしまった。その光景にユギトは小さく舌打ちをした……が、幸いにも雄飛には聞こえなかったようであった。雄飛は相手の融合モンスター2体を見ても全く物怖じしている様子はなく……むしろ、その存在に笑みを浮かべていた。まるで、楽しんでいる、とでもいう様子であった。そして雄飛はそこまで展開すると走り始めた。




因みに初手のユギトの行動は……




マスマティシャン召喚→リザード墓地→リザード効果ヘッジホッグ墓地→ヘッジホッグ効果ビーストサーチ→融合(ビースト&ペロペロケルペロス)でシェキナーガ融合召喚→ビースト1ドロー→影依融合(ハウンド&キラー・スネーク)でアノマリリス融合召喚→ハウンドでマスマティシャン変更→ターンエンド


と言った感じですね

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