「あぁ、まずは確認だがお前の正体は、所謂転生者って奴なのか?」
「……転生、と言えるのかは分からない、な。俺自身、気が付いたら『榊遊牙』の姿になっていた……としか言えない。というのも…………」
俺は質問に対して肩を竦めて返し、経緯を説明した。
「なるほどね……何となくそうだとは思ってたけど、まさかマンホールとはな」
「トラック事故とかで死ぬのが確定した状況じゃないだけマシだよ」
俺は苦笑いをしながらそう返した。そうなったら、多分今以上に遊矢にべったりだったかもな……
「まぁ確かにな、なら転生前の知識で悪いが、少し確かめさせもらうが、次の言葉に聞き覚えはあるか?ネクサス、マジック、ブレイブ、そしてスピリット」
「……別のカードゲームだって事は知ってるし、あっちにいた時の友人がやってたのを見たことはある。だが、簡単な単語でしか俺は知らない。強いて挙げるとすれば……『バトルスピリッツ』『ライフで受ける』『ネクサス、マジック、ブレイブ、スピリットというカード種類を示す単語』……ってだけだな。俺はそれをプレイしたことはないのでな。カード名なんて気にしたこともねぇからな、聞かれても知らねぇぞ?」
「それだけ分かれば上等、でだが……お前が生前までで見たことのないカードが、俺らとの戦いであったろ?」
「あぁ、あったな…………って、まさか……」
「そ、俺らの世界じゃ、そのバトスピのスピリットが遊戯王のカードになってるわけだ。んでだが、お前が使ったあの鳥達はお前が言ってたみたいにいつの間にか……だったんだよな?」
確か、俺のデッキは40枚だったはず。だけど、確認をしたとき……
「……あぁ、俺が【今日、デッキの確認をするために中を見た時には無かった】な。えっと……」
俺はそこまで言うと、先程まで使用していたデッキを確認する。すると……
「……やっぱり、50枚になってるな。確か……違うカードは……うん、この10枚だ」
入っていたカード
ナイトイーグル
己の跳獣王 ライオ・ビット
翼の覇獣スパ・ルーダ
アルティメット・ショカツリョー
アルティメット・セッコーキジ
乙の跳獣女王アルレ・クイーン
風楯の守護者トビマル
黄金の大翼ライチョークス
アルティメット・ハシビロウ
千刀鳥カクレイン
「わぁお、どれもこれもバトスピ関連のカードばかりだな、おい」
俺はその言葉を聞いて、やっぱりこのカードはこいつに渡すべき、そう確信した。だから……
「そうか……ほら」
俺はこのカードたちを蓮に渡した。
「……良いのか? 不自然にとはいえ、自分のデッキに入ってたカードを渡しちまっても?」
おいおい、そんな単純な事を聞いてくるのかよ……分かりきっているくせに
「そりゃあ効果も強力さ。俺のデッキにも合うし……でもな、仮にこれを公式試合で使ったらどうなる?」
「そりゃ……あぁ、なるほどな」
そう、俺が嫌なのは……これが出回る事。それだけで十分バランスが崩壊する。デッキに合っていると言っても、いずれは居なくなってもらわなくては困る。
「少なくとも、今はまだこの世界にあるのはこのカードだけだが……いずれ増えてしまうだろ? そうなったらいずれ本当の遊戯王カードの価値はグンと下がってしまうだろうな。バトルスピリッツのカードは結構強いし、それは認めるが……まだまともに出ていない今のうちに処理してしまう方が一番いいんだよ。それに、元々が遊戯王じゃないカードを持っていることで【そのカードを持っているから強い】なんて、言われたくないからな」
「そっか……そういうことなら、ありがたく回収させて貰うな」
俺は受け取ったカードを別のカードケースにしまう。
「……私からも一つ忠告しておく」
「忠告? 何だ……?」
その言葉に俺は少し顔を強張らせた。
「この先、一筋縄じゃいかない事が続くかもしれない、けど、そのために力に呑まれないことね。でないと、逆になにも守れなくなるわよ」
「……あぁ。俺は少なくとも、遊矢が暴れた時には……周りへの被害は…………それと、遊矢自身への被害も……すべてを最低限に抑える。その為にも……俺は力には呑まれないようにするさ」
「……ちょっとまちなさい、その言い方、全てを知ってる訳じゃないのね?」
「遊牙君、君はいったい、
俺の言葉に祐司、椿姫が口を挟んだ……って、確か……
「……そう、だな。舞網チャンピオンシップス終了後、と言えばいいかな。シンクロ次元へ旅立つ所までは見た。その後にカードを買いに行って、それ以降は話した通り、だな」
「……そうか、てことは『LL』を使うのは不味かったな……」
「……蓮、自分でそういうのはダメだって言ってたくせに……」
ん……【LL】は誰か使うのか……?
「そうだったな。俺はてっきり、蘭たちと一緒で全部を知ってるのかと思ったからよ。あ、言っとくがその事は一切口にする気はねぇぞ?」
いや、俺は聞く気はないんだが……
「……一応聞くが、何故?」
「言ったら悪いが、遊輔さんみたいに、本来なら居るはずのない人間まで居るんだ、てことは未来が同じと決まってないし、何より未来ってのは自分で見つけるから良いもんだろ?」
蓮はニヤリと笑って俺に手を差し出す。
「今日は負けたが、次は勝つ。アクションデュエルで負けて、得意のスタンディングでまで負けるわけにいかねぇからな、覚悟して腕を磨いておけよ」
「そん時があれば……その時は次も勝たせてもらうさ」
俺は笑って蓮の手をがっしりと掴み、握手を交わす。
「……さて、本日は有意義な時間、感謝させて貰う」
あのあと、決闘部の面々とデッキについて話したりと、時間があっという間に流れ、気付けば夕方近くになっていた。
「こちらこそ、とても塾生にとってもそして自分にとっても有意義な時間だった。とても感謝している」
遊輔さんは笑って返す。そして塾のドアを開けた時……一閃の光が突然ドアの向こうより光り、俺達はあっという間に意識を失った。意識を失う寸前、俺のデッキから龍の声が聞こえた気がしたが……意識はあっという間にブラックアウトした……
「ん……? …………見慣れた天井だ……じゃなくて!?」
俺が目を覚ましたら、視界にあったのは【この世界での俺の部屋の天井】だった。俺が思わず飛び起きて見回すと……やっぱり俺の部屋だった。(遊矢とは別々の部屋だからな)
「……夢、なのか?」
夢にしては、色々リアルだったような気もする……けど、とりあえず俺は朝食を食べて、遊矢と共に遊勝塾へと向かう事にした。ちなみに、遊矢に聞いたら……
「なんかさー、変な夢見たんだ……誰かがデュエルしてる夢だったんだけど、誰がデュエルしているのか全然見えなくって……」
……とのこと。ペンデュラム召喚の事もあの時に実は話していたので聞いてみたら「分からない」という予想通りの回答だった。
因みに、他のあの時デュエルをしていたメンバーは全員デュエルをした夢を見たが、誰が相手かは思い出せない、とのこと……でも、俺は…………俺だけは覚えている。
蓮、蘭、亮、祐司、椿姫、剱菜……また会える時があれば…………また、デュエルをしよう。
どうも、作者です。
遊牙「遅い」
え、いや……こっちも色々リアルが忙しかったんだよ!?大学卒業かかってる年だったし!
遊牙「だったら書きはじめを遅くしてればよかっただろ?」
いや、それはそれで元々書くスピードが遅い俺は先にやらねぇとダメだし……っととまずはコラボ終了に伴いまして、感謝の言葉です。
ドロイデンさん、こんな執筆の遅い俺にイライラせず(してたかもだけど…?)待っていてくれてありがとうございました。とても内容を考えているのが楽しかったコラボとなりました。
また、5試合分という長丁場にも拘らず色々なネタの提供、本当にありがとうございました。
そして読者の方々。こんなめっちゃ長い番外編を飽きずに見ていただき、本当にありがとうございます!
それと、活動報告でも書きましたが、これよりこの遊戯王ARC-V 風纏いの振り子のコラボを本格的に募集しております。詳しい内容は活動報告を読んでいただき、活動報告かメッセージのどちらかで参加表明して頂けるととても嬉しいです。
作者・遊牙「それじゃあ、また!」