「……」
あのあと、どうにか火は消し止められたものの、それと同時に上着は燃え付き、現在上半身半裸に亮のコートを羽織ってアクションフィールドの隅で体育座りで蓮は落ち込んでいた。
「あー……その、なんだ……服、すまん」
「……うん、大丈夫大丈夫、どうせ機械がぶっ壊れてエクゾディアの炎だけが実体化したんだろ……」
「いやぁ、俺も炎だけ実体化するとは思わねぇ「何してるんですかぁ!!」っでぇ?!」
遊牙が蓮の呟きに苦笑いのまま返すと、柚子のハリセンが頭にクリーンヒットする。
「いっつつ……あ、そういや、みんなって俺のあの試合観てないんだっけ? 今から行くか?」
遊牙の言葉に蓮は首をかしげる。それもその筈、今まで殆ど会話をしてこなかったこともあって余計に分からないはずだ。
「ん? あの試合って「当然、見させてもらう」おい蘭、台詞奪うな」
しかし、そんな蓮の言葉を蘭が遮る。もはやコントとも言える絶妙なタイミングである。再び落ち込みかけそうな蓮に亮が慰めを入れる。
「まぁまぁ兄貴も悄気ないでくださいっす。ところで、どんな試合なんすか?」
「あぁ、俺が日本リーグのデュエルチャンピオンと決闘したやつだよ。ま、俺の方はスタンディングデュエルの方だけどな」
亮の問い掛けに遊牙が笑って返した。遊牙が他にも個人的に色々話をしたいから視聴覚室には自分たち以外は入れないでくれ、と遊輔に伝えると、彼らを視聴覚室に呼び込んだ。
「今から見せるのは……音声ナシの動画。もちろん、音声アリもあるにはあるけど、もろもろの事情で表立って公開しているのはこっちだ。色んな意味で驚くなよ? この世界の住人じゃないんだろうから、色々と突っ込みたいとは思うだろうが」
視聴覚室の鍵をかけた遊牙はやや真剣な表情で淡々と説明をしていたかと思えばシレッと唐突な言葉を投げかけた。
「あー、やっぱり気付いてたか……何時からだ?」
「遊輔さんが言っていた○○という遊輔さんが知らないカードショップの話題、かな? 遊輔さんが知らないって話を聞いて、最初はよっぽどコアな店かと思ったけど、遊輔さんはそういうのでも探したりしてたし……それで知らないってのは流石におかしいと思った。確信に変わったのは初戦……アクションデュエルでの暗黒界の門発動だな、あれで確信に変わったな」
「うげ、まさかそんなところでバレるなんて……」
「ふむ、しかし遊輔さんはそんな事してるのか……いったい何者なんだ、彼は?」
「……まぁ、俺もあの人は何者なのかわかんねーからな。デュエルの腕は本物らしいから臨時講師してもらってるみたいだけど……少なくとも、俺はあの人の事はまだ信用はしていない。生徒である身だから色々手伝ってもらったりはしたが」
劔菜の問い掛けに苦笑いをしながら録画されている試合のテープを再生するために色々操作をすれば無事に再生できる状態になり軽く頷いた。
「……これで、良し。多分、突っ込みたくなるだろうが……まぁ、見てくれ。観客席の位置の関係で手前が俺、奥がこの世界でのスタンディングチャンピオン……だ」
遊牙が操作し、再生ボタンを押すと、映像が流れ始める。ちょうど、デュエルが始まったばかりの映像。そしてズームされ、デュエルフィールドの奥に映っていたのは……特徴的な黄色のフレームの眼鏡をかけたやや小柄な蒼色の髪。緑色の詰襟風の服で前面にカブトムシのような黒色模様が描かれている……いかにも小物感漂うその風貌。そして、一度撮影者が電光掲示板に移す対象を変えたようで、電光掲示板が見え、デュエル相手の名前が映し出された。それはメンバー全員がまさか、と疑っていた名前……【インセクター羽蛾】であった
「アイエエエ!! HAGA!? HAGAナンデェ!? まさか自力で脱出を!?」
「俺だって対戦相手を知らされた時は驚いたんだし、無理もないさ……」
「ふーん、……そういえば昆虫のタイトルホルダーも『インセクト女王』使ってたわね……瞬殺できるけど」
そんなこんなで試合が進み、防戦一方だった遊牙がここでペンデュラム召喚を行った。
「……ここ。ここから、俺のプレイングに関する記憶はデュエル終了まで途切れていたんだよ」
ペンデュラム召喚をしたタイミングで一度止めた遊牙はポツリとそう告げた
「ふーん……意識がなくなる……ねぇ?」
「けど今回は何もなかったみたいだし、意識が飛ぶことは蓮とのデュエルから見ても大丈夫だったみたいだね?」
「そう、俺も今回のデュエルで意識を失うことはなかった事には驚いているんだ……何が条件でこうなっているのか……皆目見当もついてない」
祐司の問い掛けに肩を竦めた遊牙は再び動画を再生する。そして大砲にジョクトが入り、グレート・モスが体勢を崩した時にファントム・ドラゴンの攻撃、そしてペンデュラムゾーンにいる竜達の攻撃でインセクター羽蛾が吹き飛ばされライフが0になったところで映像の中の遊牙が辺りを見渡すところで映像は終わっていた。しかし、終始その映像に遊牙の言う通り音声どころか周りの観客の声すらも入っていなかった
「さっき辺りを見渡していた時に俺の意識は回復した……って感じだな。何か聞きたいことはあるか?」
「……言いたいことはとりあえず山ほどあるけど、とりあえず蓮を元に戻さないとダメね」
「は? どういうことだ?」
遊輔さんの相手であった人物……蘭、だったか? そいつの言葉に俺と戦っていた相手……蓮の方を見てみると……
「俺が羽蛾と同レベル……俺が羽蛾と同レベル……俺が羽蛾と同レベル…………」
再びネガティブモード(的な感じ?)で部屋の隅で項垂れていた……なんっつーか、ホント……
「……アホらしい」
本当にその言葉が似合っていた。俺は、こんなメンタル弱者に負けかけたのかと思うと、情けない。
「あ?」
「なんすかアホらしいって!! どういう意味っすか!!」
案の定、蓮を兄貴と呼称する奴……亮、だったな。彼が突っかかってくる。まぁ、当然だが……こんな状況でも、キツく言わねぇと気がすまねぇ。
「あぁ、アホらしい。そう言ったさ……あんなマグレのエクゾディア揃いの勝利と俺が意識を失ってたとは言え……ライフキルで倒しての勝利。それが同じだなんて言おうとしているのがアホらしいと……そう言ってるんだよ。少なくとも、同じ相手とデュエルをした場合を考えてもインセクター羽蛾には何度でも勝てると言い切ってやる。だが、お前とデュエルをした場合は……何度も勝てる見込みなんて、まずねぇよ」
「……そりゃ、俺だってあんな害虫野郎に負けるつもりは無いけどよ……それでも、結局のところ俺はエースモンスターでダメージを与えられてないうえに、自分からエグゾを組み立てさせちまったからな……それに……」
「……それに?」
「今回の負けで蘭との賭けが成立しちまったから……そっちも含めてショックが……な?」
「……あぁ、あのタイトルの話か。そもそもな話……俺が知る範囲で蓮が賭けに乗ってる様子はなかったが?」
「俺はな、けど蘭の奴が妙に乗り気でな、まぁ蘭の師匠で俺らの世界のタイトルチャンプを、チャンピオンの手抜きとはいえ、テレビの生放送で倒しちまったせいで、色々とスポンサーになりたいと五月蝿いんだよ。仲でも鳥獣のタイトルホルダーが俺と世代交代したいと、これまた乗り気で……」
「あー、そういう事か……なるほどな、それは確かにな」
「……それに、蓮は私達の世界でデッキ破壊をメインにしたデッキで世界ベスト4になってるから、ブランド力は強い。……まぁ、今回はさすがにライフキルじゃないから、別に賭けはノーカンにしてあげるけど」
「……そうして貰えると助かる」
「……まぁ、その件は一応落着したようだし……改めて、何か聞きたいこと、あるんだろ?」
蓮「えーと、コラボの最後は作者がいるんじゃないのか?」
なんか、次のと合わせて前後半にするらしいんだけど……前半はお前に任せる! って言ってどっか行っちまった
蓮「そんなので大丈夫なのか?」
まぁ、今回のコラボの後書き、今まで俺が仕切ってたから……ってことで俺たちのデッキだな。俺は【マジェスペクター】だ。試験的にエクゾディアを入れていた。
蓮「俺は【鳥獣ビート】だ。最後のロロ以外は全部鳥獣で固めているぞ」
ってか、アイツの処理方法わっかんねぇんだが……対象に取れないわ、戦闘で破壊されないわ、相手の効果を受けないわ……
蓮「まぁ、俺たちのカード、結構インチキクラス多いからな……」
そういや、知ってるか? 今回のコラボ、互いにガバガバだったらしいぞ
蓮「……みてーだな。うちの作者はカードの名前ミスと最後のロロが生き残ると思っていたらしいな」
うちなんて幻のグリフォンがデメリット効果モンスターだと思っていたからな?ミスターボルケーノもってる奴の発言とは思えねー……
蓮「……お互い苦労してんな」
ホント。んじゃ、そろそろ締めに行くか。あまりいっぱい語っても次の後語りで話すことなくなるし。
蓮「まぁ色々あったけどよ、結構楽しめたぜ!! 次は結局ほとんど削れなかったお前のライフを削りきってやるから覚悟しておけよ!!」
俺はエクゾディアは外そうと思うかなぁ、次からは色々と調整をしていく予定だ。それじゃあ、この次の話の後語りでまた会おうな
蓮「誰に言ってるんだ?」
ん? 読者に向けて、だな