リアルでの多忙などもあり、どうしても少しずつしか書けていませんでした。
因みに、リアルではマスターズルール4が色々騒がれておりますが……自分は恐らく、というよりもほぼ間違いなくマスターズルール4では書きません。
まぁ、書くとしても……いや、これ以上は言わないでおきますか。まだ推測でしかないので。
さてさて、前の話から時間が経ってしまったので前回のおさらいをば。
前回のおさらい
エクゾディア勝利で遊牙が優勝。
赤羽零王よりとあるデッキを受け取る。
何か赤羽零王から勧誘されていたが断ったった。by遊牙
さて、これよりいよいよ原作介入編……第1章 『強襲! vsLDS!!』開始です!
因みに、この章では禁止制限は変化し
リミットレギュレーション/2016年4月1日
を適応していきます。
それでは、お楽しみください!
※この話ではデュエルはございません。ご了承くださいませ
第1話-1
遊牙がとあるデッキを入手してから5年の月日が経過したある日の遊勝塾……の応接室。そこにいたのは…………
「お、俺が……ストロング石島とファン感謝デーのデュエルを!?」
「はい、その了承を得る為に私、ニコがお邪魔させていただいた次第です。あの三年前、果たされなかった榊 遊勝とストロング石島のカードを榊遊矢君に再現していただきたいのです!」
アクションデュエル現役チャンピオンであるストロング石島のマネージャー兼プロモーター、ニコ・スマイリーの提案に驚きと戸惑いを隠せない榊 遊矢(さかき ゆうや)。
「そんなもの、お断りだ! 遊矢をダシにしようとしてるんだろう!! 遊矢を見世物になんぞ出来ん!」
「塾長……落ち着いて下さいよ…………でも、俺もあまり賛成ではないのは確かです。俺が相手……ではダメなのですか?」
ニコの提案を断固拒否する遊勝塾塾長の柊 修造(ひいらぎ しゅうぞう)、そして件の渦中にある遊矢の兄、榊 遊牙(さかき ゆうが)……この4名である。
何故、このメンバーが応接室に居るのか……と言うと…………
「え、ソリッドヴィジョンシステムが正常に作動しない?」
この数十分前、遊勝塾に来ていた遊矢と遊牙は幼馴染みであり、塾長の修造の娘の柊 柚子(ひいらぎ ゆず)からの突然の報告を聞いて戸惑いを隠せずにいた。
「そうなのよ……昨日確認したときは何とも無かったんだけど……」
「アタシも、突然のことに戸惑ってるわよ……柚子と久しぶりにデュエルをしてたんだけど……管制室にいた父さんが変に騒ぐから中断になっちゃって…………」
遊牙が柚子の言葉を復唱すると柚子も頷き昨日の時点では異常が無かったのだ、と言えば管制室から出てきた毛先が外に跳ねている茶毛の髪にやや幼顔で、柚子よりも背の低い女の子……もとい、柚子の姉の柊 杏子(ひいらぎ きょうこ)が肩を竦めて返す。
「(それにしても、柚子ったら……今日も背が伸びてるんじゃないかな…………)」
そんな杏子は妹である筈の柚子を見上げ、眉を潜める。最も、身長が伸び悩んでいるのは基本的に誰も指摘しないので特に気にしていない様子ではあるが…………
「塾長は……「こんなのじゃあ、俺の熱血指導が出来ないじゃあないかああああああああああああっ!!」……何となく分かった。まぁ、あれって遊勝塾が出来た時からずっとあるものだし……仕方ないっちゃあ仕方ない、んじゃないか?」
「まぁ、それはそうなんだけどね……でも、これじゃあアクションデュエルどころかソリッドヴィジョンを使ったデュエルも出来ないわよ?」
「そうだよな。かと言ってテーブルデュエルをするのにも……それ用のテーブルを引っ張り出してこねぇと…………」
「それは厳しいわよ。アレの重さもだけど……結局戻さないと…………いけないから重労働になっちゃうし……」
「何やらお困りのご様子ですね?」
遊牙と杏子が話し合いをしていると、塾入口から声が聞こえそちらへと視線を向けると、そこにいたのは黄色と黒の警戒色のスーツに身を包んだ、胡散臭さを体現したかのような風貌の男性であった。
「……失礼ですが、貴方は?」
杏子が一番早く対応すると、その男は「これは失礼」と軽く会釈をして自己紹介をした。
「私は現在のアクションデュエルのデュエルチャンピオン、ストロング石島のマネージャー兼プロモーターを務めております。ニコ・スマイリーと申します。以後お見知りおきを」
「す、ストロング石島の!?」
「……柚子、杏子。塾長を呼んでくれ。多分、塾長も居た方がいいかも知れん」
男性……ニコの自己紹介にいち早く反応を示した遊矢、そして少し顔をしかめつつも柚子と杏子に頼み事をする遊牙……そして彼ら2人に待っていたものは各々にとってとても驚愕の内容であった。
話は今に戻り……遊牙の「俺が代理ではダメか」という提案にニコは首を横に振った。
「いえ、残念ながら……貴方には別の試合があるのです」
「……はあ? ……どういうこと、ですか?」
ニコの言葉に思わず問い返す遊牙。ニコの返答は予想外の物だった。
「貴方には、スタンディングデュエルのデュエルチャンピオン、インセクター羽蛾プロとのデュエルがございます」
「…………は、ハァ!!??」
え、どういうことだ? 俺にも試合が? いや、その前に……スタンディングデュエルのチャンピオンがあのHA☆GAだと?
スタンディングデュエル……今でこそ、アクションデュエルがプロのデュエルでの主流ではあるけども、それまでに行われていたスタンディングデュエルも、アクションデュエルとは違った賑わいを見せる。単純にデュエルをするだけだが、その分アクションデュエルよりもプレイングは高度なものを要求されるデュエルスタイル……
そして、俺は今までアクションデュエルのプロ戦ばっか確認してたから知らなかったんだが……どうやらスタンディングデュエルでの現在のチャンピオンがインセクター羽蛾らしい。んで、偶然にも同じ日がファン感謝デーらしく……それも同じ時間帯にあり、LDS所属らしいのでニコさんが纏めてオファーしてきた……と言うわけだ。まぁ、俺の方は父親のしがらみはないが……石島の方に遊矢、か。俺としては自分が石島の方に回りたいんだよな……というのも
「…………」
俺が隣をチラリと見れば遊矢は少しうつ向いている。やっぱり、父さんが「臆病者」と呼ばれている事……そして俺や遊矢自身が「臆病者の息子」と罵られていた事を思い出した、のかな? アニメ時代よりはマシだけど……主にピエロ装束を用意したり、カバーカーニバルでダンシングしたり、変顔したりはしなくなった程度には。
けど、一時期はやっぱり塞ぎこんでいた。何せ、遊矢のデュエルスタイルは父親譲りの『観客を楽しませるデュエル』だ。何とか塾に顔を出してくれるまで説得をずっとしていた時期もあったなぁ、と昔のことを思い出してしまう。 一方で俺はというと、あまり気にしては無かった…………と言うよりも『気にしててもキリがない』って思うようになったから、かな?
……とにかく、今はまだ矢面に立たせたくない。せめて、石島とのデュエルだけでも回避させないと…………
「あの、ニコさ「俺、やります」っ……遊、矢…………?」
俺がニコさんに提案をしようとしたその矢先に放たれた遊矢の言葉に俺は思わず耳を疑ってしまった。案の定、塾長も驚きを隠せていなかった。
「俺、もう逃げない……臆病者の息子と言われても……それでも、俺はストロング石島とデュエルがしたいんだ……! 父さんが果たせなかったエンタメを……俺がやりたいんだ!」
俺は、遊矢の決意を聞いて、ある思いが浮かんだ。
ーあぁ、成長していたのは遊矢だけだったのかもしれないー
ー俺は、遊矢までもが批難の嵐の矢面に立つのを恐れていたけど……遊矢はそんなのを気にしてなかったんだー
「(なら、それは応援してやらないと)……遊矢がそういうなら、俺はインセクター羽蛾プロとのデュエルをお引き受けします」
俺の意思表示に塾長はお前まで何を言っていると言わんばかりの表情をしていた……
「ありがとうございます! それでは、お引き受けしていただいた御礼と言ってはなんですが……我がレオ・コーポレーションが所有する最新のリアルソリッドビジョンシステム一式をご提供致しますので!」
と俺たちの意思表示を聞いたニコは明らかに嬉しそうな声色で言えば丁寧にお辞儀をして帰って行った……もう、後戻りは出来ない、な。
「遊矢ぁ! 遊牙ぁ! お前たち、本当に良いのかぁ!?」
「……塾長。今さらですよ?」
「大丈夫、俺は……俺たちは、もう平気だから」
「だから……俺たちを信じてください。塾長!」
俺と遊矢の言葉に塾長は溜め息を吐いていた…………
そして、当日……俺と遊矢はファン感謝デーのデュエルが行われる会場……にある控え室にて椅子に座って出番を待っていた。
「遊矢、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。兄さん」
「……お前が勝てるって、信じてる」
「……ありがと。兄さんなら絶対勝てるって……俺も、信じてるから」
「サンキュ……」
俺たちはあまり会話こそしなかったけど……お互いに、お互いの勝利を信じあっていた。それだけでも、俺にはやる気になれた。そして、2名のスタッフが出番であることを告げてくれた。ここからは別々のデュエル会場にいかないといけない。
「頑張れよ」
「兄さんこそね」
俺たちは軽く拳を突き合わせてお互いにスタッフの案内の元、デュエルの待つフィールドへと歩いていった。
『さぁ、皆様お待たせいたしました。これより、インセクター羽蛾プロのファン感謝デーデュエルを開催いたします! まずはこのデュエルの主役の一人に登場していただきましょう! プロデュエリスト! インセクター……羽蛾ぁ!!』
観客席からは見えない位置にいるけど……そこそこ歓声が聴こえるから意外に人気なのかな、この世界でのHA☆GAって……「羽蛾さ~ん! 俺たちを罵ってくれぇ~!」……なんだ、ただの変態達の集まりか。これはストロング石島の方に遊矢を送って正解だったな。此方だと別の意味で精神を病みそうだ。そしてここで俺の目の前のドアが開かれる……重厚なドアが開くと、屋外デュエル場なのか開くと同時に光がさしこんで来て、俺は思わず目を細めた。
『そして相対するは……エンタメデュエル、そしてアクションデュエルの始祖である榊遊勝の息子! 榊ぃ、遊牙ぁ!!』
正直、プロとのデュエルは初めてだし……かなり緊張している。自分でも分かるほど顔がひきつってるし…………でも、自然と緊張は解けていった。と言うのも羽蛾の姿はアニメ等でみたままのあの姿。そして何よりも……
「ヒョッヒョッヒョッ……君があの榊遊勝の息子君かぃ?」
「……宜しくお願いします」
観客は多いとはいえ、観客席がまばらに空いている、んだよな……
「ヒョッヒョッ……緊張するこたぁなにも無いさ。どんとかかって来たまえ」
いや、もう別の意味でだけど……アンタのお陰で緊張は解けたよ。まぁ、合わせてあげるか。
「……はい、わかりました」
さて、と今回持ってきたのはあのデッキ……俺が前の世界から使っている……そして、5年前に入手したあのデッキ。多分、俺の情報はアッチに渡ってる筈だけど……気にしててもダメだ。
仮にも、相手はプロデュエリストなんだから……そう、仮にも羽蛾はプロデュエリスト。気を引き締めないと……
『さぁ、それでは参りましょう!』
さぁ、始めよう……!
「「デュエル!!」」
俺の……新しい俺流エンタメデュエルを!!