どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ

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BLEACH 第十六話

 晴れて――と言っていいのだろうか――十刃(エスパーダ)達から破面の王として認められたクアルソは、十刃(エスパーダ)達が傅く事で残る破面の殆どからも王として認められた。

 もちろん中には藍染を慕う者やどうしてもクアルソを王と認められない者もいたが、クアルソが藍染を超える絶対強者である事は既に周知の事実となっており、クアルソに逆らおうという者はいなかった。

 特に、クアルソとハリベルの決闘を見た者はそれが顕著だった。

 

 

 

「それじゃあ以前約束した通り、ハリベルさんと決闘しようと思う」

「ああ」

 

 クアルソとハリベルは虚夜宮(ラス・ノーチェス)の外、虚圏(ウェコムンド)の砂漠にいた。虚夜宮(ラス・ノーチェス)からあまり離れておらず、虚夜宮(ラス・ノーチェス)から二人の勝負を見学する者も多くいた。新しく破面の王となったクアルソの力を見極めようとしているのだろう。

 ハリベルがクアルソと決闘しようとした理由は、クアルソの実力を計る為だった。その意味は既に失われているが、それでも強者との決闘は戦士であるハリベルには望ましいものだ。故に、約束通りにクアルソと決闘を行う事にしたのだ。

 

「ハリベル様ー! 頑張ってください!!」

「クアルソなんかぶっ飛ばしちゃってください!!」

「二人とも失礼ですよ。クアルソ様でしょうクアルソ様。一応は王らしいのですから。それはともかくとしてハリベル様。頑張ってくださいませ」

 

 ハリベルの従属官(フラシオン)であるエミルー・アパッチ、フランチェスカ・ミラ・ローズ、シィアン・スンスンの三人が各々ハリベルへの応援を口走る。破面の王である筈のクアルソに対する崇敬は欠片も見られなかった。

 それも仕方ない事だ。彼女達は自分の主であるハリベルに何度もアタックし、何度もにべもなく袖にされているクアルソを見てきたのだ。あの下衆で情けないクアルソが知らぬ間に破面の王になったとしても、崇敬など出来る筈もなかった。とどのつまり、クアルソがハリベルの上の立場になるのが納得出来ないでいたのだ。

 

「心が痛い。スンスンさんの丁寧な言い方の方がより辛辣で心が痛い……」

「部下がすまない。だが、クアルソ様が力とまともな態度を示せば彼女達も理解するだろう。クアルソ様が王に相応しいということを。まともな態度を示せば」

「心が痛い!」

 

 辛辣なのは部下だけでなくその上司もだったようだ。だが仕方ない。全部自業自得の結果なのだ。

 なお、クアルソの懇願によりハリベル達十刃(エスパーダ)の態度は多少は砕けたものになっている。一応対外的なものもあるので対等の立場ではないが、多少は気さくに会話できる程度には収まっていた。

 

「ふぅ。まあそれはいいや。とりあえず決闘を始めようか。ルールとかはどうする?」

「互いに殺すのは無し。後は全力で()り合う。それでいいだろう」

 

 殺しは流石に無しにしたが、それ以外はルール無用の全力勝負だとハリベルは言う。全力で戦っても勝ち目がない事はハリベルも理解している。だが、少しでもクアルソという高みに触れてみたかったのだ。それ故の提案だ。

 

「なるほど……。じゃあこちらからも一つ提案が。勝負は二回行うとしよう」

「二回……? 別に構わないが……」

 

 決闘だと言うのに何故勝負を二回行おうというのか。それがハリベルには理解出来なかった。これは試し合いの意味が多分に含まれているが、決闘とは本来一回勝負だ。生死を分ける戦いに二度目など本来あり得ないからだ。

 可笑しな事を提案するクアルソに首を傾げるハリベルだったが、その提案自体は了承した。ようは二度もクアルソと闘えるという事だ。その機会を逃す必要はないだろう。一度目でクアルソの力を少しでも感じ取り、二度目でそれを生かすようにすればいい。そうすればより多くの経験と力を得る事が出来るだろう。

 そう判断したハリベルは、しかし油断する事なくクアルソを見据え、初手から全力を出そうと集中する。

 

「それじゃあ準備はいいか?」

「ああ……いや、少し待て」

 

 そう言って、ハリベルは僅かに逡巡した後、クアルソの提案の真意を理解して笑みを浮かべる。

 そして己の斬魄刀を抜き放ち、刀剣解放を行った。

 

「討て――皇鮫后(ティブロン)

 

 皇鮫后(ティブロン)。それがハリベルの帰刃(レスレクシオン)名だ。ハリベルは戦闘開始してからではなく、戦闘の準備時間に刀剣解放を行ったのである。

 その判断を見て、クアルソは感嘆の声を上げると同時に、先の提案を覆した。

 

「おお……。すまないが、やっぱり勝負は一回だ。その方が真剣みが増す」

「解った」

 

 クアルソの反応と言葉を聞いて、ハリベルは己の予想が当たっていたと理解して嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「なんだなんだ? ハリベル様が本気を出したのが怖くなったのかクアルソ?」

「なっさけねーなーおい! 二回勝負を持ち出したのはテメーだろうが!!」

 

 クアルソの前言撤回にミラ・ローズとアパッチが罵り上げる。それを聞いて、クアルソでもハリベルでもなく、スンスンが溜め息を吐いて二人を諌めた。

 

「あなた達……もう少し頭に知恵が回り切らないものなの?」

「ああ!?」

「どういう意味だよスンスン!?」

 

 どういう意味も何も、そのままの意味だという意味を籠めてこれ見よがしな溜め息を吐くスンスン。その態度に更に立腹する二人を、今度はハリベルが諌めた。

 

「止めろミラ・ローズ、アパッチ。クアルソ様は私を試していただけだ」

「試していた?」

「いったい何を試したって言うんですか!?」

「私が戦闘前に帰刃(レスレクシオン)するかどうかだ。そうだなクアルソ様」

「そういうこと。戦闘開始してから帰刃(レスレクシオン)してたら、その隙に攻撃してたかな」

 

 そう、それがクアルソが勝負は二回と言った理由だ。帰刃(レスレクシオン)状態となった破面は確かに強くなる。だが、刀剣解放には斬魄刀を持ち、帰刃(レスレクシオン)名を口にするという一定の行動が必要となる。それは刹那の時間を奪い合う戦いの場において、非常に大きな隙を生み出す行為だ。

 圧倒的格上を前にしてそれはあまりにも大きすぎる隙である。それを理解させる為に、敢えて最初の勝負は帰刃(レスレクシオン)しようとした瞬間を狙うつもりのクアルソだったが、ハリベルがクアルソの提案からその意図を理解した為に、勝負は一回のみと訂正したのだ。

 

帰刃(レスレクシオン)しようとした瞬間を狙うなんざ――」

「戦いに卑怯も何もない。あるのは勝利か敗北か、生か死かだ。自分が卑怯な手を使うのを厭うのはいいが、相手が使うのを非難するのは負け犬の遠吠えに等しい」

「う……」

 

 アパッチがクアルソに卑怯と罵ろうとするが、それを口にする前にクアルソが厳しい言葉を叩きつける。

 それを聞いて、アパッチはそれ以上何も言う事が出来なかった。その言葉が正しいとアパッチも理解したからだ。いや、した、ではない。理解していた。アパッチも闘争が支配する虚の世界を生き延びてきた猛者だ。この世界で正々堂々等望むべくもない行為だ。自分がするならともかく、相手にそれを望むなどあり得ないだろう。

 そして何より、普段のクアルソとは比べるまでもない程の真面目な態度に気圧されていた。今のクアルソは武人モードではないが、それでも決闘中や修行中に下衆ルソになる事はない。あくまであれは普段の行動であり、決闘や修行の最中は相応の態度で臨むものなのだ。

 

「クアルソ様の言う通りだ。相手がどんな手を使おうとも対応する。それが出来なかったから卑怯というのは敗者の理だ」

「……はい」

 

 敬愛するハリベルにもそう言われ、アパッチは落ち込んだ。同じようにクアルソをこき下ろそうとしていたミラ・ローズもだ。スンスンのみが二人を見て少し良い気になっていたが。

 

「それじゃあ準備は終わりでいいか?」

「いや、もう少し付き合ってもらおう。三人とも、下がっていろ」

『はい!』

 

 元々従属官(フラシオン)の三人は決闘が開始する前に、巻き込まれないよう後方に下がる予定だった。だが、準備段階で巻き込まれる可能性が出た為に、ハリベルは早めに三人を後方へと下がらせた。

 

断瀑(カスケーダ)

 

 三人が下がったところで、ハリベルが右手に持った鮫を模した大剣を振るい、その力の一端を発揮する。

 水を生み出し自在に操るのがハリベルの能力だ。そして断瀑(カスケーダ)とは刀身から高水圧の激流を放ち、敵を押し潰す技である。その技を、ハリベルは周辺の大地に向けて乱発する。そうして僅かな時間で砂漠が水浸しとなった。

 

「さあ、これで準備は終わりだ。後は全力で戦うのみだ」

 

 水を生み出し操る能力を持つが、水があればある程、生み出す必要がなく操る武器が増える。水辺こそがハリベルの最大の力を発揮出来る戦場なのだ。それを準備段階で用意しておくことで、最初から全力の闘いが出来るようにしたのだ。

 実際の戦闘ならばこれも不可能だが、準備時間ありの決闘なら問題ない行為だ。やはり決闘というよりも試し合いの意味が強いと言えた。

 

「ああ。それじゃあこの枝を投げるから、これが地面……ほぼ水だけど。水面に落ちた時が勝負の合図ということで」

「解った」

 

 クアルソがそこら辺に生えている石英の枝を千切り、合図として使用する。そして、石英の枝を上空高く放り投げた。

 枝が落ちてくる速度が非常にゆっくり感じられる。それ程にハリベルは集中していた。そして枝が水面に落ちた瞬間――

 

「くぅっ!!」

 

 ――クアルソが響転(ソニード)で接近し、ハリベルの喉元に指を衝き立てようとした。だが、帰刃(レスレクシオン)して神経を研ぎ澄ませていたハリベルはその攻撃をギリギリで回避し、そして大量の水を操ってクアルソの視界を一瞬だが塞ぐ。

 

大海皇后(オセアノ・エンペラトリース)!」

 

 その瞬間を利用し、ハリベルが己の最大の奥義を発動させた。

 

「これは……」

 

 周囲の水が大きくうねりを上げていく。その上、水の量が一気に増大していった。

 クアルソは増大する海に飲み込まれないよう空中の霊子を足場にして逃れる。そして周囲一面を見渡して感嘆する。もはや水面ではなく海が出来たのではないかと錯覚する程に、水が辺り一面に広がっていた。

 大海皇后(オセアノ・エンペラトリース)。戦場に一定以上の水気がないと使用する事が出来ない、大量の水を作り出しその水全てを支配するという、単純故に強い天候支配の力だ。

 

大瀑布(オーラス・グランデス)!!」

 

 ハリベルが間髪入れずに更なる技を放つ。大海皇后(オセアノ・エンペラトリース)で大海を生み出していないと使えない大技だ。

 生み出された大量の水が大津波となってクアルソに押し寄せる。その質量、その水圧はあらゆる物を飲みこみ、打ち砕く勢いであった。

 

虚閃(セロ)

 

 その圧倒的高水圧の津波を、クアルソは虚閃(セロ)の一つで突き破った。津波を突き破った虚閃(セロ)はそのままハリベルに向かって突き進んでいく。

 

虚閃(セロ)!」

 

 その虚閃(セロ)に対し、ハリベルもまた虚閃(セロ)で対抗する。大剣から放たれた虚閃(セロ)がクアルソの虚閃(セロ)とぶつかり合う。だが――

 

「くっ!」

 

 津波を突き破り、多少は威力が減衰した筈の虚閃(セロ)が、ハリベルの虚閃(セロ)をも吹き飛ばしてハリベルに命中する。

 相殺する事は叶わなかったが、それでも威力の減衰は更に出来たようで、ハリベルは多少のダメージを負うだけで済んだ。

 

 ――ここまでの威力差があるのか……――

 

 この結果にハリベルはクアルソとの実力差をより実感する。虚閃(セロ)一つ取ってもその差は歴然だった。勝ち目はまずないだろう。だが、勝ち目がないから戦いを諦めるハリベルではない。

 

波蒼槍(オーラ・ランサ)!」

 

 ハリベルが更なる技を繰り出す。クアルソの真下の水から大量の水の槍が作り出され、それがクアルソ目掛けて飛来する。

 それだけではない。真下に注目させるのがハリベルの攻撃の目的だ。本命は自身の一撃だ。

 

王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)!!」

 

 真下からの大量の水槍と同時に、ハリベルが傷付いた肉体から流れる血を利用して、王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)を放つ。

 水槍と王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)。二つの同時攻撃だ。これにどう対応するかハリベルが見極めようとして――

 

「ごはっ!?」

 

 ――腹部に生じた衝撃に嗚咽を上げた。

 

「はっ!」

「ぐぅっ!」

 

 響転(ソニード)で全ての攻撃を躱したクアルソは、その速度でそのままハリベルに接近し、ハリベルの腹部に掌底を叩き付けたのだ。そして続けざまにハリベルの顎を打ち上げる。

 例え女性が相手であろうとも、それが戦いであるならば手加減はしても容赦はしない。それがクアルソの武人としてのスタンスだ。多分戦いが終われば滅茶苦茶落ち込む事だろう。

 クアルソの攻撃で上空に吹き飛ばされるハリベル。だが、クアルソの攻撃はまだ終わってはいなかった。これが本当にただの試合や修行の一環ならばハリベルがどこまで出来るか見守るのだが、一応は決闘という形なのでそれも無しにした。

 

「終わりだ」

 

 そう呟き、クアルソは吹き飛ぶハリベル目掛けて虚弾(バラ)を連発した。顎を打たれ意識が朦朧としているハリベルにそれを回避する事は叶わず、十数発もの虚弾(バラ)が全て命中した。

 

「……」

 

 大きな衝撃を受けてハリベルは気を失い、帰刃(レスレクシオン)形態が解けてそのまま水中へと落ちて行った。それを見て勝負有りと判断したクアルソは、ハリベルの従属官(フラシオン)に向けて声を掛けた。

 

「勝負は終わりだ! ハリベルさんを助けてやってくれ!」

『ハリベル様!』

 

 クアルソの言葉を聞き終わる前に、三人は水中目掛けて飛び込んだ。クアルソが行かなかったのは、戦士が敗れた相手に助けられるのを恥と思うだろうと考えたからだ。その気遣いを普段も見せる事が出来れば……まあ全ては無意味な仮定でしかなかった。だってそれが出来ないのだから。

 

「ハリベル様! 大丈夫ですか!」

『ハリベル様!』

 

 ミラ・ローズに抱きかかえられ、ハリベルが水中から姿を現した。気絶はしているが命に別状はなく、すぐに目も覚ましたようだ。

 

「私は……そうか、負けたか」

「ハリベル様……」

「気にするな。三人とも、ありがとう」

 

 気絶から覚めるや否や、自分が負けた事を自覚するハリベル。そのハリベルに対し、慰めの言葉を掛ける事は従属官(フラシオン)には出来なかった。負けた事は事実であり、その事実をどう言い繕おうと、戦士であるハリベルの慰めにはならないと誰もが理解しているのだ。

 それが彼女たちのハリベルに対する最大の気遣いであるとハリベルも理解している。だからそんな彼女達に礼を言い、ハリベルは彼女達から離れてクアルソに向かい合った。

 

「私の負けだ。帰刃(レスレクシオン)はおろか、本気を出させる事さえ出来ないとはな……」

「本気だったさ。ただ全力ではなかっただけだ」

 

 そう、クアルソは本気ではあった。本気で攻撃し、本気で戦った。威力を落とし、致命傷となるような技は使わなかったが、攻撃自体は本気だったのだ。全力で攻撃してしまうと普通の一撃でも致命傷になってしまう為に、そうするしかないのだ。

 

「そうか……今後とも、よろしくお願いしますクアルソ様」

「あー、はい。うん……よろしくハリベルさん……」

「ハリベルと、どうか呼び捨てにしてください」

「いや、その……はい。よろしくハリベル……」

「はっ!」

 

 なんと ハリベルが おきあがり ちゅうじつなぶかに なりたそうに こちらをみている!

 ぶかに してあげますか?

 はいを選ぶしかクアルソには出来なかった。多少は気さくな会話が可能になっていたというのに、完全に上司と部下の関係に収まってしまったようだ。実直なハリベルの想いを覆す事はクアルソには難しかった。

 実のところ、ハリベルのクアルソへの好感度は爆上がりしていた。上司と部下という立場故にこうして畏まっているが、それがなければ以前とは比べ物にならない程、打ち解けていただろう。それにクアルソが気付くのはいつになることか。それは誰にも解らない事である。

 

「お前たちもクアルソ様に改めて挨拶をしろ」

『……よろしくお願いしますクアルソ様』

「よろしくお願いしますわクアルソ様」

 

 ハリベルに命じられた事でミラ・ローズとアパッチは不満そうに、スンスンは特に何も思ってなさそうにクアルソに対して礼儀を正して挨拶をする。それを悲しそうにクアルソは受け取った。

 

「はい、よろしく……」

 

 ――ああ、どうしてこうなった?――

 

 大体藍染のせいだとクアルソは憤慨する。次に会った時は一発、いや、今まで犠牲になった人や利用された人達の怒りも籠めて十発は殴ってやるとクアルソは心に誓った。

 

 

 

 

 

 

「くたばれっ!!」

「お前が死ねっ!!」

 

 今、虚夜宮(ラス・ノーチェス)の中でグリムジョーとルピが戦っていた。互いに刀剣解放しての、全力の戦いだ。

 グリムジョーはルピを非常に憎んでいた。殺したいと思っている程にだ。だが、クアルソが破面(アランカル)同士による死闘を禁じた為、殺す事は叶わない。その為、グリムジョーの鬱憤は溜まりに溜まっていた。

 それを解消すると同時にもう一つの問題を解決すべく、クアルソはルピとグリムジョーを止めは刺さないという条件の下に戦わせる事にした。その問題とは、十刃(エスパーダ)に与えられている数字にあった。

 

 第1十刃(プリメーラ・エスパーダ)コヨーテ・スターク。

 第3十刃(トレス・エスパーダ)ティア・ハリベル。

 第6十刃(セスタ・エスパーダ)グリムジョー・ジャガージャック。

 第6十刃(セスタ・エスパーダ)ルピ・アンテノール

 第10十刃(ディエス・エスパーダ)ヤミー・リヤルゴ。

 

 以上の五名が現在虚夜宮(ラス・ノーチェス)に存命している十刃(エスパーダ)だ。実はもう一人十刃(エスパーダ)と言える者がいるのだが、その存在はクアルソも、そして他の十刃(エスパーダ)も知らない事である。

 それはともかくとして、見事に階級が穴だらけだ。しかも第6十刃(セスタ・エスパーダ)が二人いるという始末。これは何とかしなくてはならないだろう。そのまま数字を詰めれば済む話かもしれないが、それでルピとグリムジョーが納得するはずもない。基本的に数字が小さい程、十刃(エスパーダ)として強いと見られているのだ。互いに自分が上だと信じている二人が相手より階級が下になる事を納得出来る筈がなかった。

 

 そこでクアルソはルピとグリムジョーに戦わせ、勝った方が高い階級を得られるものとした。そうすればグリムジョーの鬱憤を晴らす機会を与えると同時に、強い者が低い数字を与えられる十刃(エスパーダ)の理に則っている為、結果に文句を言う者はいないだろう。

 

 そうして戦い始めた二人だったが、止めは無しと言われているというのに互いに殺意てんこ盛りだ。よほど互いに相手に負けたくないと思っているようだ。もしかしたらどさくさに紛れて殺すつもりすらあるかもしれない。

 

「おおッ!!」

 

 グリムジョーが解放状態の最強の技、豹王の爪(デスガロン)を放つ。両手の爪全てから巨大な霊圧の刃を生み出し、敵を斬り裂く大技だ。それを、ルピに向かって全力で振り下ろした。

 

「そんな見え見えの大技ぁぁ!」

 

 それに対し、ルピは正面からぶつからずに響転(ソニード)で距離を取り、間合いをずらして回避する。そして豹王の爪(デスガロン)の合間を縫うように、触手を巧みに操作してグリムジョーに反撃を加える。

 

「ぐっ! こんなチマチマした攻撃が効くかよッ!! 虚閃(セロ)!!」

 

 そう叫びながら、グリムジョーはルピに対して虚閃(セロ)を放つ。だが、それもルピに回避されてしまった。そして虚弾(バラ)による反撃を受ける事となる。

 

「ちっ!!」

 

 威力は大した事ないが、顔面に数発の虚弾(バラ)を受けた事でグリムジョーが僅かに怯む。そこを狙ってルピが更に攻撃を仕掛ける。

 

「そぉら!」

「!?」

 

 ルピの八本の触手がグリムジョーを追撃する。それらの追撃を躱すグリムジョーだったが、触手の先端から突如として無数の棘が伸びた為に、完全に回避し切る事が出来なかった。

 

「このっ!」

 

 致命傷にならない嫌がらせのような攻撃にグリムジョーが更に苛立つ。どうせならこれくらいの大技を使って見せろと言わんばかりに、グリムジョーは先程の攻撃で出来た傷から流れる血を利用し、王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)を放とうとして――

 

「なっ!?」

 

 触手から放たれた虚閃(セロ)によって、王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)の発動を阻害された。

 両者の戦いを見学していたスタークが、ルピに対して感心の声を上げる。

 

「へぇ。ルピもやるもんだ。解放状態の力が以前よりも随分上がっているんじゃないか?」

「そりゃな。オレと修行している時は基本的に解放状態の力をより引き出せるように修行をつけていたからな」

 

 スタークの言葉にクアルソがそう返す。ルピと修行した期間はたったの十日間程度だが、それでも十分な成果は得られているようだ。

 

「しかし、グリムジョーはちょっと興奮し過ぎだな。ルピに良いようにあしらわれてるじゃねーか」

「ああ、ルピに対する恨みを晴らそうとして力が入りすぎだ。空回っている状態だな」

 

 そう、グリムジョーは本来の実力を引き出せていない状況だ。基礎的なスペックはグリムジョーの方がルピよりも上だ。だが、ルピの度重なる嫌みったらしい口調にグリムジョーのフラストレーションは溜まりに溜まっていた。その上、少し前に弱っていた時に殺されかけもしたのだ。それらの恨みを晴らそうと、グリムジョーは必要以上に力を入れていた。

 

 それが隙を作ることとなり、予想外のルピの実力に翻弄されていた。攻撃の威力も速度もグリムジョーの方が上だが、ルピが巧みに間合いをずらしたり、攻撃の隙間を縫って小技でダメージを与えたりして、グリムジョーの体力と冷静さを奪っているのだ。

 そして大技を放とうとしたところで虚閃(セロ)の直撃を受けてしまった。無音発動故に威力は低いが、それでも積み重なっていくダメージは馬鹿にならない。

 

「くそっ……!」

 

 虚閃(セロ)の直撃を受けたグリムジョーが悪態を吐く。そして虚閃(セロ)の爆風が消え去った後、グリムジョーが見たものは……ルピが作り出した触手の檻だった。

 触檻(ハウラ・テンタクーロ)。八本の触手で檻を作り相手を囲うルピの技だ。そしてその触手……自らの棘で傷を付け血を流す一本の触手から――

 

王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)!!」

 

 ――王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)が放たれた。

 

「がっ……」

 

 逃げ場のない、ほぼ零距離からの王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)の直撃。それはグリムジョーの戦闘力を奪うには十分過ぎる一撃だった。

 

「はっ、はっ……! まだだ……! グラン――」

 

 ルピは油断しない。これでグリムジョーを倒したとは思わない。勝ったと思った時、油断した瞬間、それが最も危険な時であるとクアルソに教え込まれていたのだ。その教えを守り、ルピはグリムジョーに更なる一撃を放とうとして――

 

「そこまで」

「あ……」

 

 クアルソによって追撃を止められた。

 

「終わりだルピ。それ以上は止めになる」

「え? じゃあ――」

 

 自分の勝利なのか。そう思い喜びの声を上げようとしたルピだったが、グリムジョーの叫びによってその声が遮られた。

 

「ふざけるな! まだだ……! まだ俺は終わっちゃいねぇ! 戦わせろ!!」

 

 全身から血を流し、それでも気概は十二分にあるグリムジョーがそう叫ぶ。確かにまだ戦えるだろう。今のグリムジョーは手負いだが、手負いの獣ほど怖いものもない。確かに、今戦ってもルピに勝てる可能性はあるだろう。

 それでも、クアルソはこの戦いが決着した事を残酷に告げた。

 

「いいや終わりだ。お前がまだ無事なのはルピの最後の攻撃を受けていないからだ。オレが止めなきゃ、二発目の王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)を食らっていたところだぞ」

「……!」

 

 そう、グリムジョーがまだ戦える手負いの獣で済んでいるのは、ルピの追撃をクアルソが止めたからだ。あの一撃は放たれていれば確実に命中していたとクアルソは判断していた。今のグリムジョーが二発目の王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)をまともに受ければ、流石に致命傷になるところだ。

 

 そもそも、今のルピはかなり消耗していた。グリムジョーの攻撃力はルピに致命傷を与えるには十分過ぎるほどだ。その攻撃を掻い潜っていたのだから、相当神経を削る作業だったのだ。

 それに、王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)の二連発もかなりの消耗を強いていた。クアルソがそれを止めたが、発動しようとしていた事に変わりはなく、相応の霊力を消耗していた。その消耗があるというのに、このまま戦闘を続行してはルピに不利すぎるというものだ。

 

「お前の負けだグリムジョー。気負い過ぎたな。もう少し冷静に戦えるようにしろ。お前の課題だな」

「……うおおおおおおおおお!!!」

 

 クアルソの言葉に、グリムジョーはその怒りを大地に叩きつけることしか出来なかった。

 こうして、ルピ達の階級を決める戦いは終わりを告げた。グリムジョーはルピの下だと決まってしまったのだ。

 もっと上手く戦っていれば勝てていたかもしれない。自分の実力を発揮出来ずに勝負に負ける。それは非常に悔しいことだ。今のグリムジョーの無念や如何ほどか。

 

「ルピ、良くやったな。今回はお前の戦術の勝利だ」

「は、はい! ありがとうござ――……今回は?」

 

 クアルソからの称賛の言葉に喜びを顕わにするルピだったが、とある単語が気になり、その疑問をそのまま口にした。

 

「ああ、今回はだ。次も頑張れよルピ。グリムジョーはもっと冷静に戦えるようにな」

『……え?』

 

 クアルソの突然の発言に悔しがるグリムジョーも、そのグリムジョーを見て悦に浸っていたルピも、呆けたような声を上げた。

 

「ちょ、待ってくださいよクアルソ様! 次もって、折角勝ったのにまたやらなきゃならないの!?」

 

 ルピがクアルソの発言に異議を申し立てる。ルピ自身、グリムジョーが自分よりも強い事を理解していた。勝てたのはグリムジョーが興奮し過ぎていたのと、ルピがグリムジョーの実力を発揮出来ないような戦いを心掛けていたからだ。

 もう一度戦えば恐らくグリムジョーが勝つだろう。非常に悔しい事だが、それはルピ自身が一番理解していた。こうして勝てたのだから自分がグリムジョーよりも上の階級になれると思っていたのに、それが覆るかもしれないのだから、クアルソの発言は寝耳に水だった。

 

「そりゃそうだよ。お前らも今のままの強さで終わるつもりはないだろ? 誰もが成長するんだ。その成長した強さを試す機会は必要だろ?」

 

 そう、修行をすれば誰しも実力が上がるだろう。必ず。否が応にも。何があってもクアルソが強くしている。絶対にだ。そして強くなったと実感出来る一番の方法が、十刃(エスパーダ)の序列変更だ。

 

「今後、十刃(エスパーダ)は自分より下の階級の者から勝負を挑まれた場合、特別な事情がない限りその勝負を受けなければならないものとする」

 

 その勝負で下位の十刃(エスパーダ)が上位の十刃(エスパーダ)に勝てば、数字が変化するものとする。例えば第3が第1に勝てば、第3が第1となり、元第1が第2となり、元第2が第3へと変更されるのだ。

 階級が上の者は下の者に抜かれないよう努力し、下の者は上の者を抜く為に努力する。これぞ修行の無限螺旋だ。非常に素晴らしい案だとクアルソは思う。

 

 ただし命の奪い合いをなしにしているため、何度でも勝負を挑めてしまうのが問題だ。勝つまで挑む気概は大事だが、かといって一戦一戦の重要性を薄めるのも如何なものかとクアルソは危惧する。故に、一度勝負を挑んだ者がその戦いで敗北した場合、一年間は勝負を挑めないものと規定した。そして、勝っても負けても勝負を行った者に対して、他の者が勝負を挑むには三日間の期間を空ける事もだ。疲弊した状況を狙い打ちする姑息なやり方を防ぐ為だ。

 

 これらの説明を聞いて、グリムジョーは獣のような笑みを浮かべる。

 

「そうか……良かったなルピ。この一年、俺よりも上の階級になれた事を噛み締めていろ……。その一年で終わりだからなぁ!!」

「ッ!! 言ってろ! 次もボクが勝つに決まっているからな! クアルソ様! 修行付けてくれますよね!?」

「もちろんだ!」

 

 ルピの言葉から自分の案が上手く行っている事をクアルソは実感し、非常に良い笑顔で返事をした。

 

 

 

 

 

 

 クアルソとハリベルの一戦から、クアルソは名実共に破面の王として認められた。あれだけの力を見せ付けられては、クアルソに不信感を抱いていた者も認めざるを得なかったようだ。

 右に行ってもクアルソ様。左に行ってもクアルソ様。我々を導いてくださいクアルソ様。その力の一端を授けてくださいクアルソ様。様様様の嵐である。クアルソの長い人生の中で敬われた事は幾度もあったが、ようやく男として転生――と言っていいのだろうか――出来たのだから、色々とフレンドリーに生きたかったのが素直な気持ちだ。なお、最後の力の一端を云々と言った破面(アランカル)には確りと修行をつけてあげている。虚夜宮(ラス・ノーチェス)には彼の喜びの悲鳴が響いた事だ。

 

「はあ。疲れるよほんと」

「そう言って破面の王様が部下の所で寛ぐのはどうかと思うよ?」

 

 クアルソはスタークの元でゴロゴロとしていた。日頃のストレスをスターク相手に晴らしているようだ。

 

「そう言うなよスターク。今やオレの味方はお前とリリネットだけだ……」

「難儀だねぇ。支配者になったんだから好き勝手にしても怒られないだろうに」

 

 スタークとリリネットだけはクアルソを前にしても今までと同じ態度で接していた。流石に他の破面(アランカル)がいる場ではある程度の配慮はしているが、そうでなければクアルソが望む通りの態度で過ごしていたのだ。なお、リリネットは特に何も考えていない。今まで通りにしているだけである。

 

「大体クアルソが破面の王だなんてちゃんちゃら可笑しいよな。まあどうでもいいけど。そんな事よりクアルソお茶ー」

「はいはい。今日のお茶は中国茶だ。中国茶は種類も豊富で奥が深いんだぞ。これは浦原さんから仕入れた中々の白茶だ。オレも楽しみだよ」

 

 リリネットの何時も通りの態度にクアルソの心が癒されていく。リリネットもクアルソとの一時を楽しんでいた。着実に非攻略対象への好感度を互いに上げているようだ。

 

「それで、残りの十刃(エスパーダ)はもう決まったのか?」

 

 白茶を淹れるクアルソに向けてスタークが質問する。それに対し、クアルソは渋面を作って答えた。

 

「難しいな。十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)も中々だが、正直今の十刃(エスパーダ)を見れば力不足だ」

 

 現在、十刃(エスパーダ)の数はその名前に反して五人しか残っていない。故に残りの五人を補充すべきではないかという意見が他の十刃(エスパーダ)から出たのだが、正直な話、クアルソはどの破面(アランカル)十刃(エスパーダ)の実力を満たしているとは思えなかった。

 人数が足りないからとりあえず補充する。そんな適当なやり方をしていいものだろうか。否、断じて否だ。十刃(エスパーダ)という何とも厨二心をくすぐるワードだ。中身も相応に整える必要があるとクアルソは思っていた。

 少なくとも、通常状態のヤミーを相手に勝てるくらいでなければ十刃(エスパーダ)として相応しくないとクアルソは判断した。そしてそれに該当する実力を持つ者は一人もいなかったという事だ。いっそのこと五刃(エスパーダ)にしてやろうかと思った程だ。

 

 だが、十刃(エスパーダ)という立場になりたい者、そして戻りたいと思っている十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)は非常に多い。そのモチベーションを維持する為には、十人という数は必要だろう。

 取りあえず、今は暫定十刃(エスパーダ)というその場凌ぎは作らず、十刃(エスパーダ)に相応しい実力者になれれば十刃(エスパーダ)として認めるという方向で行こうとクアルソは考えていた。その為の基準となるのが通常状態のヤミーだ。

 

 現在の十刃(エスパーダ)の階級はこうなっている。

 第1十刃(プリメーラ・エスパーダ)コヨーテ・スターク。

 第2十刃(セグンダ・エスパーダ)ティア・ハリベル。

 第3十刃(トレス・エスパーダ)ルピ・アンテノール。

 第4十刃(クアトロ・エスパーダ)グリムジョー・ジャガージャック。

 そして第10十刃(ディエス・エスパーダ)にして第0十刃(セロ・エスパーダ)でもあるヤミー・リヤルゴだ。

 

 通常状態では十刃(エスパーダ)最弱のヤミーだが、解放状態になると圧巻の攻撃力とタフネスで敵を蹂躙する。しかし、確かに帰刃(レスレクシオン)すれば強くなるのだが、逆に言えば帰刃(レスレクシオン)しなければ十刃(エスパーダ)として最低限の強さしかないという事だ。帰刃(レスレクシオン)する前に倒されてしまえばお終いだろう。

 だが、最弱の十刃(エスパーダ)が解放状態になると最強の十刃(エスパーダ)となる。それは非常に浪漫であるとクアルソは思った。それに、ヤミーの数字は帰刃(レスレクシオン)によって10の数字から1が削れ0となり、第0十刃(セロ・エスパーダ)になるという素晴らしい細工もあった。それを失くすのは非常に惜しいとして、ヤミーは元のままの第10十刃(エスパーダ)となった。

 だからといって通常状態のヤミーを弱いままにはしておけない。いや、十刃(エスパーダ)の中では弱いだけで、破面(アランカル)全体で見たら上位なのだが。

 ともかく、十刃(エスパーダ)以外の破面(アランカル)十刃(エスパーダ)になりたい場合、通常状態のヤミーを同じく通常状態で倒した場合のみ、十刃(エスパーダ)で使われていない数字で一番低いものが与えられる事となった。

 これにより通常状態では十刃(エスパーダ)の中で一番弱いヤミーも、多くの戦闘経験を得る事でより強くなるというものだ。

 なお、この勝負も十刃(エスパーダ)の階級争奪戦と同じルールが適用される事となった。

 

「まあ、要期待だな。修行してればそのうち強くなるだろ」

「そりゃあんな修行させられりゃなぁ……」

 

 スタークはクアルソの修行光景を思い出して身を震わせた。ヤミー、グリムジョー、ルピと、十刃(エスパーダ)の中でも強さに拘る向上精神の高い者は多い。そんな彼らにクアルソが修行をつけてあげたのだが……。

 それは地獄だったとスタークは思った。何故か途中で見学から参加に変わっていたスタークは、普段の怠惰な己の性格を呪った。こんな苦しい思いをするならば、努力家な性格に生まれた方が良かった、と……。

 

「ヤミーが、破面の王になるなら藍染みたいに力をくれとかほざいたからな。誰かに与えられた力で強くなろうなんて甘えた事をほざいたんだ。そりゃ修行に力も入るってもんだ」

 

 クアルソが少々怒りが籠もった声でそう言う。クアルソからすれば、修行せずに力が欲しいなどと寝言以下の言葉だ。そんな事を臆面もなく告げられては、絶対修行主義者のクアルソが怒るのも当然であった。

 そうしてヤミーと、巻き込まれた三人はクアルソの修行を徹底的に受けたのだ。その結果、ヤミーとグリムジョーはクアルソに対して強い言葉を出来るだけ使わなくなった。彼らの反逆精神は瀕死状態に追い詰められていた。もちろん、いつかは下克上してやると思ってはいるが……。少なくとも今は絶対に逆らわないと決めていた。

 

「と、もういいか。ほら、白牡丹っていう白茶だ」

「おおー、なんだこれ? お茶の中に茶葉が入ったままだぞクアルソ?」

「茶葉が開くのを見るのも楽しみ方の一つ……まあいいか」

 

 グラスに入ったお茶に浮いている茶葉を見てリリネットが文句を言うが、これはそういう淹れ方であり楽しみ方なのだ。だが、見た目の華やかさよりも味を重視しているリリネットは茶葉があると飲み難いと思って文句を言っていた。

 クアルソはリリネットにそういう楽しみ方を言っても仕方ないかと納得し、茶葉を取り除いた白牡丹をリリネットに手渡した。そうしてリリネットがお茶を口に含み、飲み込んだ瞬間に満面の笑顔になった。

 

「これ美味いな! お茶なのに甘いけど、爽やかな感じだからくどくないな!」

「お前って意外と舌の感覚いいよな」

 

 リリネットの敏感な舌にクアルソは感心しつつ、リリネットに取られる前にスタークにも白牡丹を手渡した。それと同時に用意していた点心を取り出し、三人でゆっくりとした時間を楽しんだ。死神の大敵、破面(アランカル)が住まう伏魔殿こと虚夜宮(ラス・ノーチェス)は平和であった。少なくともこの三人は。

 

 




 大海皇后(オセアノ・エンペラトリース)は勝手に作ったオリジナル技。原作でハリベルが戦域に水気が満ちるのを待っていたという日番谷の言葉から、何かしらの必殺技を残しているのだと予想。水が戦場に大量に溢れている時のみ発動出来る大技として作りました。水気のない場所では使えない水遁です。
 他の技もオリジナル技です。

 破面がヤミーに挑む→ヤミーの戦闘経験が増える→ヤミー強くなる→十刃のボーダーラインが上がる→クアルソの修行をヤミーが受ける→ヤミー強くなる→十刃のボーダーラインが上がる→破面がヤミーに挑む→ヤミーの戦闘経験が増える→ヤミー強くなる→以下エンドレス。

 次回は尸魂界(ソウル・ソサエティ)側の話になります。

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