どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ

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NARUTO 第三十話

 イタチを殺した暁への復讐。それを無理矢理にでも抑えナルトに全てを託す。

 その判断が正しかったのか、今のサスケには分からない。例え死してでも憎き仇に立ち向かうのが正しかったのではないか。だが、それは自分を守ってくれた兄の想いを無にする行為ではないか。

 理性と感情。理想と現実の狭間にサスケは揺れ動く。これで良かったのか。それを物言わぬ兄に問うた時、サスケに声を掛ける者が現れた。

 

「良く耐えましたね、サスケ」

「お前は……アカネ……そうか、影分身か……」

 

 突如として現れ声を掛けてきたアカネを一目見て、それが影分身であるとサスケは見抜いた。

 サスケの写輪眼の瞳力は影分身を見抜く程に高まっているのだ。洞察眼に優れた白眼の使い手でも影分身を見抜ける者は殆どいない。それだけサスケの力量が上がっているという事だろう。

 

「復讐を押し止め、イタチの想いを汲んだあなたをもっと褒めたい所ですが、一刻を争うのでそれは後にします」

 

 話しながらもアカネは素早く行動する。イタチの元に駆け寄り白眼にてその全身を確認する。

 心肺停止状態。全身に無数の擦過傷に裂傷、更には軽度の火傷もあり。骨は無数に折れているがそれよりも問題なのは折れた肋骨が幾つかの内臓を傷つけている事。心肺停止から約二分。

 瞬時にイタチの容態を把握したアカネは即座に治療に移る。これならまだ間に合うと判断したのだ。

 

「……まさか、助かるのか? 兄さんは、助かるのか……!?」

 

 施術を開始したアカネに向かってサスケは叫ぶ。そこにあるのは希望と絶望。助かる可能性を見たのだ。助かるかも知れないと感じ取ったのだ。

 今のアカネの行動から、もしかしたら兄は蘇生するのではないかと希望を抱いたのだ。これでもし無理だと言われたら、きっとサスケは立ち直れないだろう。

 だが、アカネの口から出た言葉は、サスケを安心させるものだった。

 

「これくらいならば問題ありません! ですが、手元が狂う可能性もあるので今は集中させてください」

「あ、ああ! ああ!」

 

 アカネの言葉を聞いたサスケは涙声で返事を返す。そしてその後は何も言わずアカネを見守っていた。

 アカネはまず臓器に刺さっていた骨を全て取り除き、そして骨を元の位置に戻す。その後イタチの止まっていた心臓に衝撃を与えて再び動かした。

 心臓が動いた瞬間にイタチの体は一瞬痙攣し、その口から僅かに血が溢れ出す。だがそれを気にせずにアカネは再生忍術をイタチの体に施していく。

 強力なアカネの再生忍術によりイタチの肉体は瞬く間に癒えていく。アカネがイタチの蘇生を行って僅か数十秒。それだけの時間でイタチは傷一つない元の体へと戻っていた。

 

「ふぅ、これで良し。さて、サスケの傷も治しておきましょうか」

 

 そう事も無げに言うアカネにサスケは目を丸くしていた。

 

「……え? 兄さんは?」

「え? もう終わりましたけど? 蘇生は終わって傷は全て再生しました。今はまだ気絶しているだけです」

 

 アカネの言葉を聞き終わる前にサスケはイタチに近付いていく。そして恐る恐るその体に触れた。

 暖かい。それを感じた瞬間に次にサスケはイタチの口元に手を当て、呼吸がある事を確認する。最後に胸元に耳を当てて心臓の音を確認する。

 

「……生きてる。兄さん……兄さん……!」

 

 泣きながらイタチに抱きつくサスケを見ながらアカネは微笑む。

 普段は生意気な態度が多く大人ぶった印象が強く、そして並みいる大人よりも強くなっているサスケもやはりまだ子どもなのだと、こうしているサスケを見るとそう感じたのだ。

 だが次の瞬間にアカネはサスケの前に立って叫んだ。

 

「サスケ! イタチを抱えて衝撃に備えろ!」

「なに!?」

 

 アカネの言葉の意味をサスケが理解する前に、凄まじい衝撃がこの場を襲った。

 

「はぁっ!」

「こ、これは!?」

 

 アカネはサスケとイタチを囲むように中心部分に空間を作り出した巨大な廻天を作り出す。

 それによりこの強大な衝撃波を防ぎきったようだ。そして衝撃が止み、アカネが廻天を解除する。

 そしてアカネとサスケは見た。衝撃波がやって来た方角、衝撃波が発生しただろう中心地である木ノ葉の里を。

 木ノ葉の中心から外周部近くまでが大きく円状に削り取られていた。まさに壊滅状態と言えよう。

 

「嘘だろ……」

「ペイン……!」

 

 この惨状にはサスケも開いた口が塞がらず、アカネも怒りを顕わにしていた。

 だがこの惨状に比べて人の被害は殆ど出ていないようだ。それを感知したアカネはその原因も突き止める。

 

「綱か! だが、これでは綱も……!」

 

 綱手が里の者ほぼ全てにカツユを付けた事を察知したアカネは、綱手がその力で里の忍を回復させる事でどうにか被害を抑えたのだと知る。

 だが、それだけの人数にチャクラを注ぐとなると綱手の負担は計り知れないだろう。下手すれば気を失い、しばらく起き上がる事も出来ない程に綱手は弱っていると予測された。

 

「……サスケ、早くあなたの傷を治しますよ」

「……いいのか?」

 

 サスケの言葉の意味は早く木ノ葉に向かわなくてもいいのか、という意味だとアカネは理解した。

 そしてそれに対してアカネは首肯して答えを返す。

 

「里の皆にも他の私達が向かっています。それに、あのペインは――」

「――ナルトが倒す。だろう?」

 

 アカネの言葉を遮ったサスケの答えにアカネは微笑んで返す。

 

「仙人の力とやらを手に入れたんだ。それに……オレのライバルならそれくらいしてもらわなくてはな」

 

 そう言いながらもどこか照れた様にそっぽを向くサスケを見て、アカネは楽しそうに笑う。

 

「ふふ、そうですね。あなたも万華鏡の力を手に入れたみたいですし、これでナルトとの勝負も分かりませんね」

「ふっ、オレも仙人の力を手に入れるつもりだ。そうなれば万華鏡がある分オレが有利だ」

「あはは。そうですね。じゃあ、この騒動が終われば仙術の修行と万華鏡の修行ですね」

「当然だ。オレは……もっと強くなる!」

 

 サスケは暁との戦いを通じて自分の弱さに嫌気がさしていた。まだ足りない。強くなったつもりだったが、本当につもりでしかなかったのだと実感したのだ。

 強くなりたい。誰かを倒す為ではない。誰かに守られなくてもいいくらいに強くなりたい。自分の為に誰かが犠牲になるなんてサスケには真っ平御免だった。

 今は眠る兄を見つめ、サスケは更に強くなる決意をここで新たに誓った。

 

 

 

 

 

 

 天高く昇っていくペイン。地上ではオビトとカカシがリンの死を嘆いている。

 そしてペインがその力を発動する少し前にこの地にアカネの影分身の一体が辿り着いた。

 

「お待たせしました皆さん!」

『アカネ(ちゃん)!?』

 

 突如として現れたアカネに一同は驚愕するが、アカネはそれを無視して叫ぶ。

 

「ここから離れますよ! ペインが何をするかは分かりませんが、経験上どでかい一発が来ます!」

 

 そう言ってアカネは遺体であるダンゾウとリンを抱えてその場から駆け出した。

 

「くっ! 行くぞオビト!」

「すまない……!」

 

 足が傷つき素早い動きが出来ないオビトをカカシが抱えて走り、ヒルゼンもまた全力でその場を離れる。

 そして、天から神の裁きが落ちた。

 

――神羅天征――

 

 全力で放たれる斥力の力が全てを薙ぎ払っていく。その範囲は木ノ葉の里のほぼ全域に広がり、里の約八割の大地が削り吹き飛ばされていった。

 斥力の力はその範囲で収まったが、余波が衝撃波となって里の外にまで広がっていく。そしてその力で広大な木ノ葉の里はほぼ壊滅状態に陥った。

 個人の力でこれだけの広範囲を壊滅させる。まさに神の所業と恐れられてもなんら可笑しくはないだろう。

 

『うおおおっ!?』

 

 効果範囲から完全に抜け出す事が出来なかったアカネ達は斥力によって吹き飛ばされていく。

 アカネのみはリンとダンゾウごと自身の周囲に廻天を発動させる事でダメージを防いでいた。僅かでもダメージを受けると消滅してしまう影分身なので、こうして僅かなダメージを受ける事すら防いだのだ。

 

「全員……無事か?」

「ええ何とか。綱手様の力で回復してくれたおかげもあってか、殆ど怪我はありません」

「これは、あの斥力の力なのか? 信じられねぇ……」

 

 里が無くなった。その結果を見て果たしてどれだけの忍が戦意を保てるだろうか。

 木ノ葉の忍はその多くが綱手のおかげで生き延びている。だが誰もが大小あれど傷を負っており、そしてこの破壊の爪跡を見て戦意を失っていく。

 もちろん戦う気概のある者はまだ多くいるが、それでも勝てないかもしれないという思いは誰もがどこかに持っていた。

 

 オビトとカカシですら僅かにそういう思いがあった。敵は愛する女性を殺した憎い仇だが、傷つき疲弊しきった自分たちでは手も足も出ないと感じていたのだ。

 

「大丈夫です」

 

 だが、そんな二人を安心させるかのようにアカネは呟いた。

 

「ナルトが来ました。ナルトなら、きっとペインを止められます」

「ナルトが……! ならばナルトは仙人に至ったのか!?」

 

 ヒルゼンの言葉にアカネは首を縦に振る。

 

「そうか。あのナルトが仙人に……。完全にオレは超えられたな」

「そうだな……だけど、悔しいな。オレがリンの仇を取りたかった……う、うう。リン、リン……!」

 

 リンの死を改めて受け止めたオビトは嘆くしか出来なかった。

 この世の全てがどうでもいいという衝動すら起こる程オビトはリンを愛していた。だが、本当にこの世の全てを捨てる程にオビトは子どもではなかった。

 人生を長く歩むという事は肉体だけでなく精神すら成長させるという事だ。成長した精神がオビトにその衝動を抑えさせる。だから、嘆く事しか出来ないでいた。

 そんなオビトに対してカカシも何も言えず項垂れるしか出来ない。カカシもまた同じ思いだからだ。

 

「オビト、カカシ。悔しければ次はリンを必ず守りなさい」

「……次?」

 

 その言葉の意味が理解出来ない二人はアカネに向かって振り向き、そしてアカネが抱えていたリンを見た。

 

「う……」

 

 リンの口から僅かな呻き声が聞こえた。胸も呼吸に沿って動いているのを見る。

 

「ま、まさか……!」

「リン! リン!」

 

 オビトもカカシもすぐにリンに駆け寄った。そしてリンが確実に生きている事を確認する。

 

「生きてる……!」

「ああ、生きてるよ! リンは生きてる!」

「どうにか間に合ったようです……」

 

 喜ぶ二人を見るアカネだが、その言葉はどこか悲しそうであった。そしてその答えはヒルゼンによって明かされた。

 

「アカネよ……ダンゾウは、無理なのじゃな?」 

「……はい。私の力が及びませんでした」

 

 そう、リンは確かに助けられた。蘇生してからの再生が間に合ったのだ。

 だが、ダンゾウは助けられなかった。ダンゾウが死んでからの時間がアカネの蘇生術が効果を及ぼす時間を超えていたのだ。つまり、ダンゾウは蘇生不可能なほどに……死んでいたのだ。

 いくらアカネでも完全に死んだ人間を蘇らす事は出来ない。イタチやリンを助けられたのは、彼らが蘇生出来る可能性があったからに過ぎない。

 

『……』

 

 リンの蘇生を喜んでいたオビトとカカシもアカネ達の会話を耳にしてその喜びを胸の内に収めた。

 助かる命もあれば助からない命もある。そして助からなかった命の前で喜びを顕わにする程、二人は不謹慎にはなれなかった。

 

「……ナルトか」

 

 ヒルゼンの言葉に全員が里の中心に目を向ける。そこにはペインと対峙するナルトの姿があった。

 

「見てるかミナト、クシナ。お前達の子が……里に疎まれた子が……今、里を救おうとしておるぞ」

 

 遠目からナルトの背を見てヒルゼンはそう呟く。生まれてすぐに親を亡くし、複雑な事情があるナルトを預かったのはヒルゼンとその妻ビワコだ。

 火影としての仕事の多さ故にあまり構ってはやれなかったが、それでもナルトに掛ける愛情の深さは人一倍だろう。

 小さな頃から自分を見てほしい為か悪戯が絶えず、多くの者から蔑まれていたあのナルトが。落ちこぼれと言われ馬鹿にされ続けたあのナルトが。誰よりも大きな背を見せてあのペイン相手に立ち向かっているのだ。

 

「……歳ですかねヒルゼン。涙ぐんでますよ?」

「そうじゃな。もう歳じゃよ。ダンゾウも逝った……ナルトはこの戦いで勝利すれば木ノ葉を救った救世主として称えられるじゃろう。それを見届けた後にワシは引退しよう……」

 

 ヒルゼンは忍として一線に立つ事が出来る年齢をとうに超えている。ヒルゼンと同じ年代の忍など三代目土影を含め数える程だろう。他はとうに引退して一線を退いている。

 今まで老体に鞭を打って働いていたのは偏に木ノ葉の為にだ。だがこうして木ノ葉の若葉は立派に育っている。もう自分が出来る事はなく、綱手の相談役としての立場に落ち着こうと考えていた。

 

「気が早いですよヒルゼン。今はナルトの戦いを見守りましょう」

「そうじゃな……。ナルトよ、お前が未来を切り開くのをワシはここで信じて待っておるぞ」

 

 それからはこの場の誰もが固唾を飲んで静かにナルトとペインの死闘を見守った。

 その死闘はペイン天道が最大の力で神羅天征を放った事が要因となり戦況はナルトに傾いていく。

 神羅天征はその力の強弱によりインターバルの時間も延びる。あれだけの神羅天征を放った天道はその力を再び使用する為に長い時間を必要とし、その間に天道以外の全てのペインがナルトによって破壊される事となった。

 

 ようやく力を取り戻した天道。だがナルトは強かった。サスケという目標に向けてひたすら修行し、共に競い合い力を高め合い、そして今仙人の力を得た。

 既にその力は自来也すら超えていた。仙人としての適正も自来也以上だったのだ。影分身を利用して巧みに仙人モードを維持し、ナルトはペインを追い詰める。

 そして、ペインとの幾多の問答と死闘を超え、ナルトはペインに打ち勝った。

 

「勝った……! ナルトが勝ったぞカカシ!」

「ああ! 本当に、強くなったなナルト……!」

 

 ナルトの勝利を見届けたオビトとカカシは素直に喜ぶ。特にカカシは担当上忍としてナルトの成長を感慨深く見ていた。

 落ちこぼれでサスケに無謀なライバル心を見せるだけだったあの頃とは大違いなその姿に感動すらしていた。

 

「……いえ、どうやらまだ終わってはいないようです」

「本物はいない……つまりはそういう事か」

 

 自来也から得た情報で、敵が何らかの方法でペイン六道を操っているのではないかという憶測は立てられていた。

 だが完全に確証もなく、その上どこで操っているのか探るのも時間が掛かりペイン六道とまともに相対するしかなかったのだが。

 

 ナルトは自身の体にペインの黒い棒を刺した事でペインの本体のチャクラを逆に感じ取り、その潜伏場所へと向かう。

 それを見てやはりどこかでペイン六道を操っている本体がいたのかとヒルゼンも確信に至ったようだ。

 

「復讐の相手を前にナルトがどういう答えを出すのか……未来はそこに掛かっておる。ワシはそんな気がするよ」

「そうかもしれませんね……」

 

 実際は自来也は死んでいないのだが、現状それを知っているのはアカネと綱手と両蝦蟇仙人に、あとはマダラとイズナくらいだ。

 味方すら騙している事にアカネは若干心を痛め、謝罪の言葉を今から考えていた。

 

 

 

 

 

 

 ナルトとペインの本体である長門。共に同じ師を持ち、だが異なる道を進んだ二人の弟子が互いの意思と答え(・・)をぶつけ合う。

 長門の答え。それが平和に必要なのが痛みというものだ。かつて長門が受けた二つの痛み。両親の死と、新たな家族である弥彦の死。

 その二つの痛みはかつての自身が出した答えが意味のない物だと長門に気付かせた。

 

 その後も長門は多くの仲間の死を味わった。それら全ては木ノ葉を筆頭とする大国の平和を維持する影で行われる戦いの犠牲であった。

 大国の平和は小国の犠牲の上に危うく成り立っているだけであり、彼らの平和が弱者への暴力なのだと長門は語る。

 人は生きているだけで気付かぬ内に他人を傷つけている。人が存在する限り同時に憎しみも存在する。この呪われた世界に本当の平和など存在せず、自来也が語った人々が理解し合える時代など来はしない。

 

 そんな長門の意思と答えに対し、ナルトも己の意思と答えを示した。

 長門達の過去は理解したし、その怒りもまた理解出来る。だが、それでも長門達を許せず憎しみは未だ残っている。

 だが、自来也は自分を信じて託してくれた。ならば自来也が信じた事を信じる。それがナルトの答えだった。

 

 だが長門にとってそんな言葉は戯言にしか聞こえなかった。今更自来也の言葉など信じる事は出来ないと。本当の平和など呪われた世界に生きている限りありはしないのだと長門は叫ぶ。

 そんな長門に対し、ナルトはある言葉を送った。

 

「なら……オレがその呪いを解いてやる。平和ってのがあるならオレがそれを掴み取ってやる。オレは諦めねェ!」

 

 まるで理想だけを語ったかのような綺麗事だ。諦めないだけで平和が掴めるのなら苦労はないだろう。

 だが、そんな綺麗事に長門は反応した。それは長門と最も長く居た小南も動揺する程にだ。

 

「お前……それは……」

「長門……どうしたの?」

「そのセリフは……」

 

 長門はナルトのセリフに覚えがあった。聞き覚えではない。言い覚えと、そして見覚えがあったのだ。

 

「そうだってばよ……今のは全部この本の中のセリフだ。エロ仙人が書いた最初の本だ。エロ仙人はこの本で本気で世界を変えようとしていた」

 

 それは自来也が書き記した書物。あまりに売れなかった為に本の方向性を変えたのだが、これが自来也の最初の本であり、一番の力作でもあった。

 

「……」

 

 言葉を出す事が出来ない長門に向けて更にナルトは続けて話す。

 

「本の最後にこの本を書くヒントをくれた弟子の事が書いてあった。アンタの名前だ……長門」

「! そんな……これは偶然か……?」

「そしてこの本の主人公の名前……それが――」

 

 ナルトの言葉を聞きながら長門はある過去を思い起こす。それは自来也の元で修行していた一時期、長門が最も幸せだと感じていた時期の話だ。

 そこで長門はラーメンで腹ごしらえをしている最中の自来也と話す。自来也がかつて長門に話した世界の憎しみについて、長門なりに考えそして答えを出した事を自来也に伝えに来たのだ。

 平和に辿り着く方法、それは長門にも分からない。だが、いつか自分がこの呪いを解いてみせる。平和があるなら自分が掴み取って見せる。

 方法よりも大切な事。それは信じる力だと、長門は自来也に告げた。

 

 長門のその言葉を聞いた自来也は本のアイディアが浮かんだ。同時にその本の主人公の名もその場にあった食べ掛けのラーメンから安直にひねり出す。

 後に自来也と別れた長門は自来也が残した一冊の本を読んだ。そこに書かれていたのはまさに長門を主人公とした小説だった。

 例えどんな苦境にあっても諦めず、平和を掴む為に足掻き続ける。その主人公の名は――

 

「ナルトだ!!」

「ッ!」

 

 ナルトの言葉に長門は更に動揺する。長門には過去の自分と今のナルトが重なって見えていた。

 

「だからオレの名前はエロ仙人からもらった大切な形見だ! オレが諦めて師匠の形見に傷をつける訳にはいかねェ! オレは火影になる! そんでもって雨隠れも平和にしてみせる! オレを信じてくれ!」

 

 長門には理解出来なかった。どうしてナルトはこうも自分が変わらないと言い切れるのか。

 これからどれ程の痛みが自身を襲っても変わらないと。憎しみに捉われず自分を信じたままで居られるのか。そう言い切れるのか。自分を信じられるのか。

 そんな長門の問いに対して、ナルトは答える。

 

 主人公が変わればその物語は別の物になってしまう。自来也の残したものとは別の本になってしまう。それはナルトではないと。

 

「オレは師匠みてーに本は書けねーから……だから、続編はオレ自身の歩く生き様だ……。どんなに痛てー事があっても歩いていく――それがナルトだ」

 

 自分を、そして自分に全てを託してくれた自来也を信じて放たれたその言葉は欠片の嘘がない物だと長門に理解させる力を持っていた。

 長門の脳裏に次々と過去の記憶が巡る。ペインとなった自分と相対した時の自来也の言葉が、弟子であった自分を信じる自来也の言葉が、弥彦が最期に自分に託した言葉が、自分自身が語った言葉が、そしてナルトの今の言葉が。

 

「オレは兄弟子……同じ師を仰いだ者同士理解し合えるハズだと前に言ったな」

 

 それは長門がナルトと戦った時に冗談として発した言葉だ。だが、それが本当に真実に、しかも逆の意味で理解し合うとは長門は思ってもいなかった。

 ナルトを見ていると長門は昔の自身を思い出す。他の誰にもない、信じさせる不思議な力をナルトは持っている様だと長門は思う。

 長門は自来也を信じる事が出来ず、自分自身さえも信じられなかった。だが、ナルトは自分とは違った道を歩く未来を予感させてくれた。

 

「お前を……信じてみよう……うずまきナルト……」

 

 この時、交わる事がないと思われていた二人の道が交わった。隠れて見守りつつそれを知った自来也は涙を堪えてゆっくりと姿を現す。

 

「ようやく、元のお前に戻ったのぅ長門」

『じ、自来也先生!?』

「エロ仙人!?」

 

 突如として現れた自来也に誰もが驚きの声を上げる。当然だ、死んだと思っていたはずの、しかもこの場の誰にとっても特別な存在がいきなり現れたのだ。これに驚愕するなと言う方が無理だろう。

 

「馬鹿な……これは幻術なのか? 自来也先生は確かにオレが……」

「かっはっはっ! あ、痩せても枯れても二代目三忍自来也様が! おぬしの様なひよっこに殺されるはずなかろうがのゥ!!」

 

――本物だな――

――本物ね――

――本物だってばよ――

 

 そう言って見栄切りする自来也を見た三人の思いが一致した。これは間違い無く本物の自来也だと。この状況でこんな馬鹿げた見栄切りが出来る者をナルト達は他に知らなかった。

 

「エロ仙人……生きてたのかよ! 良かった……! ……あ! だったら何で今まで姿を見せなかったんだよ! エロ仙人が死んでオレがどんな気持ちだったか……!」

 

 自来也の生存を喜ぶナルトだが、次に生きていたのに姿を隠していた事に怒りを見せる。

 ナルトは本当に自来也を慕っておりその死を嘆いていた。生きていたのなら早く無事な姿を見せてくれれば良かったとナルトは自来也に詰め寄る。

 

「すまんの。今後の事を踏まえて死んだ様に見せかけた方が良かったと判断してな。いずれお前にも教えるつもりだったが、ここまで遅くなって本当にすまなかった」

 

 自来也は自身の死でナルトがどれだけの衝撃を受けたのかを知り、それを嬉しく思いつつもナルトに謝罪する。

 自来也の偽装死によってイズナが操るマダラに大きな隙を作る事が出来、そのおかげでアカネは木ノ葉に援軍を送る事が出来た。この偽装死は一応の成果を見せている。

 だからと言って味方を騙した事に変わり無く、親しい者に悲しい思いをさせた事は事実だ。それはやはり謝罪すべき事なのだろう。

 

「……いいってばよ。エロ仙人が生きててくれて……本当に良かった……」

 

 そう言って涙を見せる愛弟子を自来也は強くなってもまだまだ子どもかと暖かく見守る。

 そしてもう一人の弟子である長門に眼を向けた。

 

「……長門よ。良くぞかつての自分を見つけた」

「自来也先生……オレは……」

 

 ナルトと向き合う事でかつての自分を思い出した長門の心は自来也に顔向け出来ない思いで一杯だった。

 今更どの面下げて自来也を見ればいいのか。思い悩む長門に向かって自来也は言葉を掛ける。

 

「誰にでも間違う事はある。長門に小南、お前達にはそれを正してくれる者が傍にいなかった。それだけだ。元に戻ろうという意思がある限り、必ず間違った道から戻って来る事は出来る」

「自来也先生……」

 

 赦すと、言っているのだ。自来也は長門達の過ちを赦すと、まだ遅くはないと言っているのだ。それが長門にも小南にも理解出来た。

 

「本当ならワシが気付かせたかったのだがのゥ……ワシにはそんな力はなかった。ナルトよ……お前のおかげだ。良くやってくれた……!」

「エロ仙人……」

 

 自来也はそう言ってナルトに頭を下げる。ナルトがいたからこそ、ナルトが自分を信じてくれたからこそ、長門もまたかつての自分に戻る事が出来たのだ。

 

「長門よ。今のお前ならば……諦めない気持ちを思い出したお前ならばもう大丈夫だろう。これからは共にナルトに協力し、皆が分かり合える平和な世界を目指してはくれんか?」

 

 師を、自身すらも裏切った長門に向かって自来也は手を伸ばす。こんな自分でもまだ信じてくれるのかと長門は目を細めて自来也を見る。

 ナルトもまた長門を信じる様にまっすぐに長門を見つめていた。だが、そんな二人の思いを長門は受け取る事が出来なかった。

 

「ありがとう自来也先生。そしてナルト。だが、オレのこの手は血に染まり過ぎた……。――外道・輪廻天生の術」

 

 そう言って長門はある印を組み始める。それはナルトはともかく、自来也すら知らない印だった。

 だが長門と共に在り続けた小南だけはその術を知っており、そして驚愕の声を出す。

 

「長門! アナタまさか!!」

「小南……もういい。オレに新たな選択肢が出来た……諦めていた選択肢が……」

 

 小南の反応から長門が使用しようとしている術がとてつもない何かだとナルトと自来也も朧気に理解する。

 

「何だ!? 何の術だってばよ!?」

 

 ナルトの疑問には小南が答えた。

 輪廻眼を持つ者はペイン六人全ての術を扱え、生と死の存在する世界の外に居ると言われている。長門の瞳力は生死を司る術。七人目のペイン。外道だと。

 その説明だけではナルトにはピンと来なかった様だが、自来也はその術の内容を小南の説明と術の名で予測してしまった。

 

「……まさか。止めよ長門!!」

「さよならだ自来也先生」

 

 自来也の制止の声もむなしく、ここに外道・輪廻天生の術は発動した。

 

 

 

 

 

 

 木ノ葉隠れの里の中央。神羅天征にて出来たクレーターの中心に突如として巨大な閻魔像が出現する。

 その口からは死者の魂が次々と開放されていき、その魂が死者の中へと入っていく。そして不思議な現象が木ノ葉の各地で起こった。

 

 暁との戦いで死んだはずの死者が次々と蘇っているのだ。しかも死の原因であった傷すら完全に癒えて。

 

「これは……!?」

「まさか……いえ、生き返っている! 死んだはずの者達が皆生き返っている!」

「なっ!?」

「そんな! どういうことなんだ一体!?」

 

 アカネはその感知力で次々と蘇る忍を察知したのだ。

 そしてヒルゼン達に付いているカツユがナルトに付いているカツユを通じて得た情報を教えてくれた。

 

「これはどうやらペインの能力の様です。ナルト君がペインを説得した為に、ペインはこの術で犠牲となった皆さんを生き返らせてくれたのでしょう」

「そんな術が……」

「これも輪廻眼の力って奴なのか」

 

 カツユの説明に驚愕するオビトとカカシ。そして同時にあのペインすら説得したというナルトの器の大きさに感動する。

 特にナルトと同じ様に火影を目指すオビトはより顕著だ。そしてナルトに負けない様にもっと人として大きくならなければと心に誓った。

 

「……これは」

「だ、ダンゾウ!!」

 

 そしてここにも輪廻天生にて蘇った者がいた。そう、志村ダンゾウである。

 アカネでさえ蘇生不可能だったダンゾウもこうして完全に蘇っている。改めて輪廻眼の力の凄さをアカネは理解するが、ダンゾウと、そしてダンゾウの復活を喜ぶヒルゼンを見て、今は輪廻眼に関しては置いておこうとアカネは思う。

 

「ダンゾウ! この馬鹿が! ワシなんぞを庇って犠牲になるとは……! お前がいなくなればワシは誰と喧嘩すればいいのだ……!」

「……まさか死に損なうとはな。生き恥を晒したわ……って、ええい暑苦しいから離れろヒルゼン!」

 

 生き返ったばかりで激昂するダンゾウに、そんなダンゾウを見てより喜びを顕著にするヒルゼン。

 そんな二人を見てアカネ達も喜び、そして木ノ葉の里にも同じ様な光景が広がっていた。

 

「あ――」

 

 この時、何かに気付いた様にアカネが呟く。そしてアカネは――

 

 

 

 

 

 

「何だってばよ!? 何が起こったんだってばよ!?」

 

 小南の悲痛な表情に自来也の制止の声。二人がそこまで焦る程の何かが起こっているのだが、ナルトにはまだ理解出来ない。

 そんなナルトに現状を説明してくれる者がいた。それはナルトの服の中に隠れていたカツユだ。カツユはペインとの戦闘中にナルトに様々な助言を与えていたのだ。

 

「里の人達がどんどん生き返っています」

「!? それって……!」

「やはり……か」

 

 カツユの言葉はナルトに驚愕を与え、そして自来也に確信を与えた。

 更に自来也は術の効果と小南の反応、そして赤い髪が白く染まる程の長門の消耗を見て輪廻天生の術のデメリットも予想する。強力で便利な術には、代償があるものなのだ。

 

「木ノ葉に来てオレ達が殺めた者達ならばまだ間に合う。これがせめてもの償いだ」

「それは……!」

 

 かつて戦争孤児だった自分たちを拾って強く育ててくれた自来也と同じ言葉を長門は紡ぐ。

 その言葉を聞いてそれがかつて自分が長門達を拾う時に綱手達に説明したのと同じ言葉だと自来也も気付いた。

 

「ハァ、ハァ……。安心しろ……暁の連中は……生き返らせてはいない……」

「……お前」

 

 長門の消耗具合を見てナルトも気付いた。輪廻天生の術とは死者を生き返らす事が出来るだけの便利な術ではないのだと。

 術の代償として術者は生命力を大きく削る事となる。しかも蘇生する対象の人数が多ければ多い程、もしくは死亡した時間の経過が長ければ長い程その負担も大きくなる。

 長門は多くの木ノ葉の忍を蘇生させた。その負担は生命力に溢れるうずまき一族の末裔である長門ですら耐えられない程だろう。

 

「戦いとは双方に死と……傷と痛みを伴わせるものだ……。大切な人の死ほど受け入れられず……死ぬはずがないと都合よく……思い込む……」

 

 長門は最後の力を振り絞ってナルトに語り掛ける。戦いの先にある痛みを、憎しみを、死を、それらが戦争であり、ナルトがこの先立ち向かう事になるものだと。

 ナルトはその言葉を聞き心に刻みこむ。一言一句頭で覚えるのは無理かもしれないが、それでもその言葉と長門が託そうとしているモノの意味は、きっとナルトは心で覚え続けるだろう。

 

「オレの役目はここまでのようだ……。自来也先生……ナルトを見守ってやってください……。ナルト……お前だったら……本当に――」

 

 そうしてナルトに全てを託し、長門は散っていった。

 

 

 

 

 

 

 長門が外道・輪廻天生にて木ノ葉の里の忍を蘇生させた時、それにアカネとマダラ、そしてイズナも同時に気付いた。

 

「む、これは!?」

「……まさか、輪廻天生か!? 長門め、どういう心境の変化だ?」

 

 自らもイズナに操られていたとはいえ輪廻天生の術を使用した事のあるマダラはすぐに術の効果に気付き、そして疑問に思う。

 長門は戦争を憎み、それでも平和の為に戦争を利用するという矛盾を抱えながらも意思を貫き続けていた男だ。

 それがどうして自らの命を代償とする輪廻天生を使用して木ノ葉を救うというのか。それがマダラには理解出来なかった。

 

「きっとナルトだろう。ナルトには人を変える不思議な力があるんだよ。あの子ならきっと私達の理想に近付けると思わせてくれる程にな」

「そうか……お前がそこまで言うのなら、きっとそうなのだろうな」

 

 いつしかマダラはその動きを止めていた。マダラを操っているイズナがこれ以上の戦闘行為に意味がないと悟ったのだ。

 そしてマダラの肉体を操る力をマダラの意思を操る事に向け、そして口を開いた。

 

「日向ヒヨリよ……今回は貴様達の勝利だ」

「……イズナか」

 

 その変化にアカネはすぐに気付いた。イズナという存在が裏にいると知っていれば、最も親しい友とその弟の差くらい見抜けないアカネではなかった。

 

「だが所詮はただの余興だ。オレにとってはな。ここでお前達が死ねば良し。そうでなくとも何の問題もないのだ」

「余興だと?」

 

 木ノ葉の多くの人間を巻き込み傷つけたこの戦争を、イズナは余興だと言う。それはアカネの怒りを買うのに十分過ぎる言葉だった。

 アカネは空間すら歪みそうな程の怒気と殺気をマダラ越しにイズナに叩き込む。だがイズナは涼風でも当たったかの様に平然とアカネに言葉を返す。

 

「そう、余興さ。全てはオレの手に集まっている。お前達はオレの手の平の上で踊っているに過ぎん。最早月の眼計画は成就しているも同然なんだよ」

「どういう事だ!」

「ははははは! それを説明してやる必要もあるまい! だが、そうだな。やはり労力や犠牲は少ないに越した事はない。八尾と九尾を寄越せ。殺しても飽きたらない所だが、そうすれば貴様も安寧の世界に導いてやる」

「ふざけるなよ。私がそんな条件を飲むと思っているのか?」

 

 八尾と九尾、つまりは雷影の弟であるキラービーとナルトを生贄にすれば永遠の幻術の世界に連れて行ってやる。そうイズナは言っているのだ。

 当然イズナはアカネがそんな条件を飲む訳がないと理解している。ただアカネの反応を見て愉しんでいるだけなのだ。

 

「そうだろうな! ならばせいぜい守るんだな! 八尾と九尾を守る為に戦力を集めるといいさ! だが、月の眼計画に賛同していれば良かったと後悔しても遅いぞ? その二人を守る為にどれだけの人間が無駄死にするかな? はははははは!」

 

 イズナは本体と操作するマダラの両方で高笑いしながらマダラをその場から本体の元に呼び戻し、消えた。

 

「イズナ……お前は必ず止める。…………すまない、マダラ」

 

 イズナを止める決意。それはイズナを――

 アカネはその決意を固めた事をマダラに静かに謝った。

 

 

 

 

 

 

 暁と木ノ葉の死闘はこれにて幕を閉じた。唯一生き残った小南は長門と天道の肉体であった弥彦の亡骸を持って木ノ葉を去った。

 自来也が共にいる事を提案したが、それを小南は拒否した。小南は長門が信じたナルトを信じ、雨隠れにてナルトと共に二人の夢を追い掛けると告げて雨隠れへと戻って行った。

 

 ナルトは小南と別れた後に木ノ葉に戻ろうとする。だがやはり激戦に次ぐ激戦を乗り越えた為かその疲労は大きく、道中で倒れそうになる。

 だがそれを自来也が支えた。そして改めてナルトに向かって言葉を放つ。

 

「よく、頑張ったな。お前は……お前はワシの自慢の弟子だ」

「へへ……」

 

 自来也の言葉にナルトは疲労も忘れて笑顔を浮かべ、そして自来也の背に顔を埋める。

 そのまま自来也がナルトを背負い木ノ葉に帰還する。するとそこには多くの忍や木ノ葉の民が待ち構えていた。

 そして誰もが一斉にナルトに向けて声を掛ける。

 

「よく帰って来た!」

「信じてたぞ!」

「お前は英雄だナルト!」

「ありがとう!」

「おかえり!!」

「自来也様も帰っているぞ!?」

「自来也様も生き返ったのか!?」

「とにかくよかった!」

「おかえりー!」

「ナルトーー!」

 

 カツユが事の顛末を里の皆に話した事で誰もがナルトの帰りを待ち構えていたのだ。木ノ葉を救ってくれた英雄の帰りを。

 かつては多くの者から蔑まれていたナルトが、今は多くの者から慕われる様になった。

 全てはナルトの諦めない根性と忍道が招いた結果だ。他人の助けはもちろんあったが、それでもナルトが諦めなかったからこそこの未来を掴み取れたのだ。

 

「敵はどんなだった!?」

「怪我してない?」

「イテ! 押すなってばよ!」

 

 今までこんな風に羨望や憧れの目を向けられた事がないナルトは群がってくる無数の子ども達に戸惑っている様だ。

 そこにアカネに背を押されたヒナタがナルトに向かって近付いていく。

 

「ん? ヒナタ?」

「ナルト君……良かった。無事で良かった……」

 

 ナルトが生きて帰ってきてくれた事を誰よりも安堵し、ヒナタはナルトに抱きついた。

 それを暖かい目でアカネは見守る。サスケやサクラ、そしてナルトとヒナタの同期生も二人の進展を見守っている様だ。

 こうして木ノ葉隠れに新たな英雄が生まれた。

 だが、戦乱の芽はまだ潰えていない。それを知る者はこの場には僅かしかいなかった。

 

 




 ナルトとペインの戦闘描写はカットしました。原作と同じ展開も多く冗長になりそうでしたので。原作よりもナルトが強いので天道に黒い棒で捕らえられる前に勝負を付けています。なのでヒナタは傷ついていませんし、ナルトは九尾の力を暴走させていません。それをしちゃうとヒナタが傷つく前にアカネが出張っちゃうので……。ナルトとミナトの対面は別の機会に作る予定です。
 外道・輪廻天生が無数の死者を生き返らせた時に特定の死者のみを対象外にする事が出来るかは分かりませんが、この作品では出来るとしました。そうじゃなきゃ暁が復活してしまいますから……。

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