どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ

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NARUTO 第二十二話

 木ノ葉の里は創立以来最大の危機に陥っていた。

 暁が攻めて来てまだ五分と経っていない。だが既に里のあちこちからは火が上がり、悲鳴が響き、そして多くの忍が犠牲となっていた。

 

「芸術は爆発だ! 喝!」

 

 デイダラが起爆粘土を大量に作り出し、それを木ノ葉の忍に取り付けて一斉爆破する。

 

『――?!』

 

 起爆粘土を見慣れていない木ノ葉の中忍は小さく、そして動きの素早いC1と呼ばれている起爆粘土に対応する事が出来ずにその多くが死へと(いざな)われた。

 デイダラの能力。それは岩隠れの里で禁術とされていた起爆粘土を作り出す術だ。掌に作り出した口から粘土を取り込み、その粘土にチャクラを籠める事で起爆粘土へと変化させる。

 籠めたチャクラの量と粘土の量で起爆粘土のレベルが変わり、C1と呼ばれる小さく最弱の威力からC2、C3とレベルが上がるごとにその威力も向上していく。

 更に遠隔操作をする事も出来る。蜘蛛の造型で作り出されたC1は威力が低いが、それを数十も操作して木ノ葉の忍の顔や首と言った急所に貼り付けたのだ。いくら威力が低かろうとそれ程の至近距離で急所を爆破すれば確実な致命傷となるだろう。

 かつてのデイダラはここまで多くの起爆粘土を一度に操作する事は難しかったが、それもこの三年間の修行でそれらを可能としていた。しかも速度・威力共に向上している。

 

「おのれ暁!」

 

――火遁・豪火球の術!――

 

 この場にあって唯一生き延びていた忍が豪火球の術にてデイダラを攻撃する。男はうちはの家紋を背負っており、ここ等一帯に逃げ遅れた一般人がいないか確認に来た警務部隊の一員だった。

 デイダラの起爆粘土に唯一対応出来た通りその実力は上忍クラスに至っている。豪火球もかなりの規模となってデイダラへと襲いかかっていた。だが――

 

「遅いな」

 

 その豪火球をデイダラは空を飛ぶ事で回避した。デイダラが作り出した起爆粘土はその造型による為か、その上に乗り空を飛ぶ事も可能なのだ。

 そう、デイダラは鳥を模した起爆粘土――C2――の上に乗り自由に空を飛んでいるのだ。一直線に放出される上に単発の豪火球ではまともに狙いをつけるのも難しいだろう。

 

「うちはの家紋か。だが、血統に恵まれようと弱い奴は弱い。恨むなら、才能のない自分を恨むんだな」

 

 デイダラはC2の口から大量の起爆粘土を吐き出させ、それを上空からうちはの忍に向かって大量に投下する。

 

「う、おおお!?」

 

 小さいとはいえ大量の起爆粘土の一斉起爆は大爆発を巻き起こし、敢え無くうちはの忍は命を落とす事となる。

 

「こんなもんだ、うん。木ノ葉と言っても弱い奴は弱いって事だ、うん」

 

 そう言いつつも木ノ葉を警戒しているデイダラはC2に乗って空を飛びその場から離れる。

 ヒット&アウェイ。空という絶対的な地の利を持つデイダラは地に残って長く戦わずに空から爆弾を投下し続ける。それだけで木ノ葉の忍では対処が難しく一方的に攻撃出来るのだ。

 攻撃が集中しないので一定以上の強者には通用しない戦術だが、多くの忍を巻き込み木ノ葉全体に被害を与えるこの戦術は木ノ葉の里からしたら最悪の戦術であった。

 

「さぁて、次はC3の爆発を見せてやる! ……と言いたいとこだが……うん」 

 

 そう呟き、デイダラは空を見上げる。既に一片の雲もなくなった空には完成体須佐能乎の衝撃波が飛び交っていた。直撃はおろか、掠りでもしたら命を失いかねない威力の衝撃波が上空を不規則に飛び交っているのだ。C3という強大な起爆粘土の爆発に巻き込まれない程の上空へ行けば逆にこの衝撃波に巻き込まれる恐れがあるだろう。

 

「ちっ! これじゃあ高く飛べばオイラまで巻き込まれるな、うん。仕方ない、地道に木ノ葉の里に芸術の素晴らしさを見せつけてやるか。芸術は、爆発だ!」

 

 形ある物はただの造形物に過ぎず、作り出した芸術を爆発させる事でその一瞬にアートを感じる。

 芸術は爆発だ。それを言葉通りの意味で実行する最悪の芸術家デイダラはそのアートを木ノ葉の忍にも見せつける為に地獄を生み出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うう……」

 

 木ノ葉の暗部の一つ“根”。その根の忍が苦痛に顔を歪めていた。

 

「なるほど。木ノ葉の暗部は中々の粒揃いだな。このオレを相手にここまで持つとは、な」

 

 周囲に多くの屍を生み出し、その中心に不敵に立つ男。腰辺りから蛇腹状の鋭い刃を持つ尾を振り払い血を吹き飛ばしてその男は、サソリは根の忍を褒め称える。

 サソリと根の小隊が戦い始めて三分程度しか経過していない。だが、既に小隊は壊滅状態。そして小隊の隊長は今や虫の息であった。

 それでもサソリは根を褒め称えた。そこに嘘はない。自分を相手にして三分も持った事を心底褒めているのだ。そう、それだけサソリは自らの実力に自信があるという事だ。

 

「苦しいか? その毒はオレの特別製。解毒は不可能だ。お前は確実に死ぬ」

 

 サソリの刃の尾には毒が仕込まれている。例えかすり傷でも対象を死に至らしめる強力な毒だ。

 成分を解析すれば解毒薬を作る事も出来るだろうが、それも非常に優秀な知識と腕、そして時間を必要とするだろう。今この場でそれが出来る者はおらず、隊長の死はもはや確定と言えた。

 

「まあ、お前も平時ならばオレのコレクションの末端に加えても良いくらいの実力だったぞ。こんな風に、な!」

 

 そう叫んでサソリは己のコレクションを披露し、そして背後に潜んでいた残りの暗部に襲い掛かる。

 コレクション。サソリがそう呼ぶそれは傀儡人形の事だ。だが、ただの傀儡ではない。サソリの作り出すそれは生身の人間を基に作り出された人傀儡なのだ。

 サソリは殺した忍の中で強く気に入った忍を選び、防腐処理を施してから仕込みを埋め込んで人傀儡へと作り変えているのだ。まさに凶人の発想であり、そして恐るべき術でもある。

 この人傀儡は通常の傀儡人形と大きく違う点がある。人傀儡は生前の忍のチャクラを宿したまま傀儡となっており、その為生前の術をそのままに扱う事が出来るのだ。

 

――風遁・風切りの術――

――火遁・龍火の術――

 

 二体の人傀儡が生前のその者が得意としていただろう術を放つ。

 二つの術は一つとなり、豪火となって隠れ潜んでいた暗部へと襲いかかる。

 

『ぐわぁあぁ!』

「ふん、オレの情報を得る為に部隊を分けていたか。用意周到な事だ。だが、無意味だったな」

 

 サソリは己のコレクションを元に戻し、死に掛けの暗部隊長を一瞥してその場から離れていく。

 

「……」

 

 隊長は毒が回り死に瀕しているその状況で、どうにか暗号を残して僅かでも仲間に情報を伝えようとする。

 僅かしか得られていない情報だが、それでもあるとないとでは大違いだ。敵が傀儡師であるという情報も、操る傀儡人形が忍術を放つという情報も、どちらも非常に重要な情報である。

 

「っ!?」

 

 だが、隊長の体から僅かな暗号を書き残す力すら消え去る事となる。

 サソリが放った尾がその体を貫いていたからだ。

 

「毒で苦しんで死ぬ事もないだろう。慈悲をくれてやる」

 

 それが本当に慈悲であるなど誰も思いはしないだろう。最後の務めすら奪われた隊長は、無念の内にその命を散らした。

 

「定命の者は苦労するな。この程度で死ぬなんてな」

 

 生身の身体という、サソリからすれば不便極まる肉体しか持たない者を哀れに思い、そして蔑みながらサソリは新たな犠牲者を生み出す為に動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだこいつら!?」

「信じられん……化け物か!?」

 

 今、木ノ葉の忍はある暁のコンビと戦い、そしてその実力に……いやその恐ろしい能力に驚愕していた。

 

「あー痛てて。多勢に無勢でやってくれるじゃねーかよ。痛かったぞこらぁ!!」

 

 飛段。それが木ノ葉の忍が恐れ慄いている男の名だ。歴戦の忍である上忍達がそれ程恐れる理由。それは飛段の身体を一瞥するだけで理解出来るだろう。

 心臓に刃が突き刺さり、左腕が千切れ、胴体に幾つもの苦無が刺さっている。どう見ても致命傷ではなく即死している傷だ。

 だと言うのに飛段は痛みに苦しむ素振りを見せながらも、だからどうしたと言わんばかりに平気で動いているのだ。

 

「遊びすぎだ。わざわざ敵の攻撃を受ける必要はない」

 

 相方である角都も飛段の姿を見て何も動揺している様子はない。つまりこれは二人に取って特別大した事ではないという意味を表している。

 それもそのはず。飛段は真実不死身であるという、常識外れの暁にあって更に常識から外れた存在だからだ。

 飛段はジャシン教という邪教の信者であり、その邪教が行っていた儀式――人体実験とも言う――の被験者であった。その実験により飛段は不死身の肉体を手に入れたのだ。

 首を刎ねられようが、心臓を貫かれようが死ぬ事はない。そんな不死身の化け物が飛段である。

 

 そして角都もまた飛段に劣らず化け物であった。

 飛段はダメージを受けているが、角都は全くの無傷である。だがそれは攻撃を受けなかったという訳ではない。

 角都も木ノ葉の上忍の攻撃に当然の如く晒されていた。だが、その全てを無傷で切り抜けていたのだ。

 それだけ聞くと全ての攻撃を避けたかの様に思えるだろう。しかしそうではなかった。上忍達の苛烈な攻撃は確実に角都へと届いていたのだ。

 だがそれは角都の土遁の術によって防がれていた。それが全身を鋼の様に硬化する土遁・土矛(どむ)である。起爆札という高威力の爆発する札すら防ぎ切る防御力を得る術だ。

 

 それだけが角都の能力ではない。彼も飛段と同じく不死と呼べるある能力を有しているのだ。

 ダメージを受けず、例え受けたとしても問題なく行動する事が出来る不死コンビ。それを見て驚愕しない者が果たしてどれだけいるだろうか。

 

「分かってるって。でもよ、手っ取り早かっただろ?」

 

 角都の言葉を聞き飽きた様に返す飛段だが、飛段が一切の攻撃を避けなかったのには一応の理由があった。

 必殺のタイミングで攻撃をした木ノ葉の上忍は心臓を刃で突き刺した時点で飛段を倒したと思った。だが、不死身の飛段はその程度では死にはしない。

 飛段は心臓を刺した男がそれで油断をし離れた瞬間にその手に持つ大鎌を振るってその首を跳ね飛ばしたのだ。不死身である事を利用した自爆戦法である。

 

「オレも儀式をしなけりゃならないのを我慢してるんだぜ? さっさと殺して殺して殺して、面倒事を終わらせて儀式をしなきゃいけないんだよオレはよぉ」

「ふん、したければすればいい。だが、敵陣ど真ん中でそれをする暇があればだがな」

「分かってんよ! だから我慢してるって言ってんじゃねーか! これだから無神論者は……」

 

 飛段は人を殺した後に三十分以上の時間を掛けてジャシンに捧げる儀式を行っている。それがジャシン教の戒律なのだろう。

 だが流石の飛段も木ノ葉の里の中、敵に囲まれている状況でそれをするつもりはなかったようだ。そんな事をすればどうなるか。まあ馬鹿でも理解出来るだろう。

 だからこそさっさと終わらせて、その上で儀式を行うつもりだった。木ノ葉崩しが終わればそれはそれは大量の人間が死ぬだろう。そうなればどれだけの供物がジャシンへと捧げられるか。

 それを思うと今から笑みが浮かぶ飛段であった。

 

「ゲハハハハ! さぁ! 神に捧げられる贄となれ! ……って、わりぃ角都ぅ、手、繋げてくれねぇかな?」

「締まらない奴だ……」

 

 大仰な言葉を吐いた飛段だが、千切れた左腕を見て角都へと治療を頼み込む。不死身ではあるが再生能力が有るわけではないようだ。

 角都は飛段の言動に溜め息を吐きつつも、その身体から黒い触手を生やして飛段の左腕を縫いつける。

 

「サンキュー! これで思いっ切り暴れられるぜ!」

 

 縫い付けてすぐに神経まで繋がったのか、飛段はその左腕を回して手を動かし具合を確認していた。

 それを見た木ノ葉の忍はもう何に驚いていいのか理解が追いつかなくなっていた。心臓を刺しても平気な顔をし、五体が千切れてもその程度の治療で元に戻るなどどう考えても納得がいく話ではないだろう。

 

「さて、こいつらはビンゴブックにも載っていない雑魚どもだ……さっさと次に行くぞ」

「そんなに金が大事かねぇ。まあ、次に行くのはオレも賛成だ。こいつら皆殺しにしてなぁ!!」

 

 暁の不死コンビが木ノ葉の里にその猛威と恐怖と、そして死を振り撒いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人の男が異様な大刀を振るっていた。いや、それは刀と言っていいのだろうか。

 鋭いギザギザとした刃が無数に連なって形作られているそれを一目みて刀だと判断出来る者はまずいないだろう。

 それは霧隠れの里で有名な七本の忍刀の一つ、“鮫肌”である。読んで字の如く鮫の肌のような刀であった。

 その異様な大刀を振るう男の名は干柿鬼鮫。暁の一員にして霧隠れ出身の忍であり、霧隠れでは“尾を持たない尾獣”と恐れられている強者である。

 

 既に周囲には大量の死体が転がっている。その全ては見るも無残な遺体となっている。鮫肌によってそうなったのだ。

 その理由は鮫肌の形状にあった。見た目通りまともな形状をしてない鮫肌は対象を綺麗に斬る事は出来ず、むしろ肉や骨を削るという荒々しい刀だ。

 そんな鮫肌で攻撃され続ければ肉体は削り取られ獣が喰らった後のような無残な遺体が残るのである。

 そして今もまた新たな犠牲者が生まれようとしていた。

 

「こ、これは……!?」

「気付きましたか。そう、私の鮫肌は斬るのではなく削る! それも肉体だけでなく……チャクラもね!」

 

 根の忍が鬼鮫にその肉体を削られながらも鮫肌の特性を見抜いた。

 鮫肌はただ肉体を削るだけの刀ではなかった。その真の恐ろしさはチャクラを削り喰らうという忍にとって最悪の能力を有している事であった。

 練り上げたチャクラも鮫肌を一振りすれば削り取られてしまい無意味となり、術を発動する事も敵わない。忍術を得意とする忍には天敵と言ってもいいだろう。

 

「あなたのチャクラはそれなりに美味しいようですよ。その証拠にほら、鮫肌も喜んでいますよ」

「ギギギ!!」

『!?』

 

 刀が鳴き叫ぶという怪異を見た根の忍は驚愕する。それを見て鬼鮫は笑みを深くし、そしてその隙を突いて印を組んだ。

 

「あなた達にも鮫肌を味わわせてあげたいのですが、鮫肌にも十分なチャクラが集まったのでここらで食事も終わりにしましょう!」

 

 食事。そう、鬼鮫が鮫肌で根の忍を削り殺したのはただ嗜虐趣味があったからという訳ではない。

 鮫肌はチャクラを削り喰らい、そしてそれを溜め込んで使い手である鬼鮫に還元するという能力を持っている。

 つまり削り殺された忍達は鬼鮫にとって今後の戦闘に備えて鮫肌にチャクラをプールさせる為の食事に過ぎなかったのだ。

 持ち前のチャクラと鮫肌によるチャクラの増加。そしてもう一つ……この三つこそが鬼鮫が“尾を持たない尾獣”と恐れられている理由だった。

 

――水遁・爆水衝波!――

 

 印を組み上げた鬼鮫はその口から大量の水を吐き出す。口の中のチャクラを水へと変化させて津波の如く吐き出す術である。

 

『うわぁああぁあ!?』

 

 押し寄せる濁流に根の忍は飲み込まれていくが、これは攻撃の為の水遁ではない。

 大量の水を作り出すことで攻撃用の水遁を使いやすくする為の補助忍術だ。だが、その補助忍術も桁が違えば十分な威力となる。

 大量の水に飲み込まれた根の忍たちは水圧と水量に押し潰されて流されていく。そしてそんな彼等に鬼鮫は無情にも追撃を放った。

 

――水遁・五食鮫!――

 

 自らが作り出した水の上に立つ鬼鮫が水中に手を入れて術を発動する。そこから五匹の鮫のような形の水遁が出現し、そして水の中をもがく忍を襲い……跡形もなく喰らい尽くした。

 

「くくく、さて次の獲物のチャクラは美味しいでしょうかねぇ、鮫肌?」

「ギギギ!!」

 

 木ノ葉を水浸しにして自らに有利な戦場を作り上げながら、鬼鮫は新たな獲物を待ち構えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 痛み。それこそが平和へと繋がる唯一絶対の手段。そう信じてペインは破壊と共に痛みを木ノ葉の里に振り撒いていく。

 

「うわああぁあ!?」

 

 修羅道がその体から数多の兵器を放ちその火力で周囲に膨大な被害を与えていく。ペインを食い止めようとした忍はその破壊に巻き込まれてしまう。

 

「う、あ……」

 

 人間道がある忍の頭にその手を当て、そしてその記憶を覗き込む。そして目的の情報を持っていない事が分かれば用済みと言わんばかりに手を離す。

 だが、その手には忍の肉体ではなく魂が掴まれたままだった。人間道は対象の記憶を読み取る際にその魂を抜き取るのだ。そして魂を抜かれた者の末路は……死だ。

 

「うずまきナルトはどこだ?」

「知らん! 知っていたとしても仲間を売ったりなんぞするか!」

 

 地獄道が掴み上げた忍に質問をする。その質問に対して嘘を吐いた者は魂を吸い取られてしまう。それが地獄道のもう一つの能力だ。

 だがこの忍は本当にナルトの居場所を知っていないようだ。だが、それが幸いとなる事はなかった。魂を抜き取られる事はなかったが待っている運命には何ら変わりはないのだから。

 

「ぎゃああ!!」

 

 哀れ、地獄道の手から逃れられた忍は畜生道が口寄せした巨大な獣によって死を迎える事となった。

 

「くそ!」

 

 多くの忍がペインの犠牲となっている間にも、更に多くの忍がペインを攻め立てていた。だがその攻撃の全ては天道と餓鬼道によって防がれていた。

 餓鬼道が忍術を吸収し、天道が物理攻撃や餓鬼道が吸収している隙を狙って放たれた忍術を弾き掻き消す。

 忍術も体術も無意味。かといって幻術も実力差が有り過ぎて効果を及ぼさない。まさに手詰まりだ。

 せめて新たに得た情報――人間道と地獄道の能力――を持ち帰ろうとするが、それすらもペインは許してはくれなかった。

 

「な、うおおお?!」

 

 この場から離れようとした忍達は突如として天道に向かって引き寄せられてしまう。

 これが天道のもう一つの能力。斥力を操る“神羅天征”と対を成す、引力を操る“万象天引”である。

 

「が、あ……」

 

 離れようとした瞬間に引き寄せられるという現象は忍達に大きな隙を作り、敢え無く天道が作り出した黒い棒によって串刺しにされてしまった。

 攻撃を仕掛けてきた全ての忍を返り討ちにしたペインは更に歩を進める。

 この程度ではまだ足りない。痛みを知るにはもっと、もっともっと大きな犠牲が必要だ。

 

 痛み。それこそが平和へと繋がる唯一絶対の手段。そう信じてペインは更なる破壊を木ノ葉の里に振り撒いていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、木ノ葉の里に攻め入った暁の最後の一人。

 元木ノ葉の忍にして元二代目三忍。ある目的の為に狂ってしまった最悪の忍、大蛇丸。

 その大蛇丸が、目標であったうちはサスケと対峙していた。

 

「探したわぁサスケ君」

「……お前が大蛇丸とやらか」

 

 他の暁達が木ノ葉を攻め入っている中、大蛇丸だけは木ノ葉ではなくサスケを目標としていた。

 いや、大蛇丸も木ノ葉を攻めるつもりはあるが、今この時を除いてサスケの肉体を奪う機会はそう訪れないと理解しているのだ。

 暁により木ノ葉の里が混乱しているこの時こそ、この若く美しく、そして強い肉体を手に入れる最高の好機なのである。

 大蛇丸は最終的にはアカネの肉体を奪いその転生術の秘密を手に入れる事を目標としていたが、その為にはまだ実力が足りないと判断していた。

 だからこそサスケの体を奪う事でより強くなり、その上で機会を見てアカネの体を奪うつもりであった。

 時間は掛かるが何ら問題はない。何故なら大蛇丸は不老の術を手に入れているのだから。

 

「ええそうよ。綱手か自来也から聞いているようね。なら、私の目的も分かっているんでしょう? ……ちょうだい、若くて美しくて強い、その身体をォォォ!」

 

 大蛇丸がその欲望をプレッシャーと共にサスケに叩きつける。並の忍ならばそれだけで戦意を喪失する程のプレッシャーを、だ。

 だが……この三年で、サスケは並などとはけして言えない実力を既に有していた。

 

「オレの身体はオレの物だ。浅ましく他人の力を欲している盗人風情が……返り討ちにしてやる!」

 

 大蛇丸のプレッシャーを跳ね除けてサスケは吠える。それを見て大蛇丸は笑みを深くした。ここまで成長しているのか、と。それが自分の物になるのか、と。

 かつての木ノ葉の天才と、現木ノ葉の天才。二人の天才が、死闘を繰り広げ始めた。

 

 

 

 

 

 

 先手はサスケだった。今木ノ葉の里は非常事態に陥っている。そんな状況で無駄な時間を掛けるつもりはサスケにはなかった。

 大蛇丸を倒し、そして残りの暁を倒す。どうせならナルトが帰ってくる前に全てを終わらせてやるという思いでサスケは大蛇丸に攻撃を仕掛ける。

 手首に仕込んである口寄せ術式に触れて術式を発動。契約をしていた苦無が口寄せられてサスケの手に収まる。

 あらかじめ剣やクナイなどの忍具を巻物や衣服に封じ、 必要に応じて召喚する忍具口寄せの一種・雷光剣化である。

 忍具を取り出す手間に、構えから投擲までの行程を限りなく少なくする事で攻撃速度を上げる事が出来る便利な術式だ。

 

 サスケは次々と口寄せされる苦無を電光石火の速度で投げ放つ。

 無数の苦無に晒された大蛇丸は口寄せ・羅生門によって全ての苦無を防ぎ切った。

 羅生門は強固な防御力を誇る巨大な門であり、その防御を突破するには苦無では威力が足りな過ぎた。

 だがサスケはそれでも構わずに苦無を投擲し続ける。その苦無は真っ直ぐに羅生門へと向かわず、羅生門を逸れて投擲されていた。

 完全に当たるコースではない。だがサスケは苦無と苦無を空中で衝突させる事でその軌道を変化させ、羅生門の後ろに隠れている大蛇丸へと苦無を届かせた。

 

「やるじゃない!」

 

 反射を利用して左右上下から迫る苦無を、大蛇丸は見事な体捌きにて避け切った。だが、大蛇丸は全ての苦無を避け切ったというのに咄嗟にその場から離れていく。

 次の瞬間には大蛇丸が先程まで立っていた地点にて大きな爆発が起こる。サスケが幾つかの苦無に起爆札を付けていたのである。

 

「……なるほどね。私が羅生門を口寄せして、視界が通っていない内に起爆札を……」

 

 雷光剣化による苦無の高速投擲が羅生門によって防がれたならば、それを利用して新たな手を二重三重に仕込んで打ってくる。

 この歳でこの力量。将来は確実に自分の手に余る存在へと至るだろう。やはりこの時以外にはなかったと大蛇丸は確信した。

 

「ちっ……」

 

 無駄にチャクラを使わずに終わらそうと思っていたサスケだったが、この段階で手傷も負わせられなかった事に舌打ちをする。

 元とは言え二代目三忍の名前は伊達ではないようだ。そう認識したサスケは消耗なくして倒せない敵だと意識を改めた。

 

 意識を改めたサスケは大蛇丸を確実に殺す為に全力を尽くす。

 高速で印を組み、得意の千鳥にて一気に勝負を決めようとするサスケ。だが、大蛇丸も黙ってそれを見ているわけがない。大蛇丸も印を組み、術を発動させようとする。

 そしてサスケは大蛇丸の印を写輪眼で見切り、その構成が風遁系の術だと看破した。

 

 サスケは修行の過程で多くの術の印を教え込まれていた。それはそれらの術を会得する為ではなく、術の印の構成を見切る事でその術が完成する前に何の術が発動するかを理解出来るようにする為だ。

 普通の忍には無茶な修行だが、写輪眼という動体視力と観察眼に優れた眼を持っているサスケならば無茶ではない。後は印の知識を詰め込めば良いだけである。

 

 大蛇丸が放とうとしている術が風遁系だと理解したサスケの行動は早かった。

 雷遁は風遁に弱い。そして千鳥は雷遁の一種である。術の相性的に雷遁で風遁に勝つ事は難しいと言える。雷遁チャクラを纏ってもその防御を超えてダメージを与えてくる可能性も高い。

 ならばどうするか。答えは簡単だ。風遁に強い火遁を放てばいいのである。

 サスケは直ぐに雷遁から火遁の術へと印を組み直した。それを見た大蛇丸は怪訝に思ったが、既に組みあがった術の発動を止める事は出来なかった。

 

――風遁・真空大玉!――

――火遁・豪火球の術!――

 

 大蛇丸が口から巨大な真空の玉が放たれる。当たった物を貫く貫通力を持つ真空玉という術の強化版だ。

 だがそれは後から放たれた豪火球の術に飲み込まれてしまう事となる。これは真空大玉が豪火球に劣る術という訳でも、術において大蛇丸がサスケに劣るという訳でもない。

 これが性質変化の相性なのだ。風遁は火遁の炎をより強大にする。二人の忍が協力すればより強大な火遁の術へと転じさせて敵を攻撃出来るのだが、敵対する者同士ならばどうなるか。それは大蛇丸が身を持って教えてくれた。

 

「ぐああああぁあぁ!?」

 

 真空大玉を飲み込んで更に巨大な炎の塊となった豪火球は、大蛇丸の全身を容易く飲み込みその身を焼き焦がしていく。

 大蛇丸の全身が黒焦げとなるのに大した時間は掛からなかった。サスケは身じろぎ一つしなくなったその死体を一瞥し、その場から離れていく。

 そしてすぐに体を捻って後ろから迫っていた草薙の剣を紙一重で躱した。

 

「やはり生きていたか!」

「ふふふふふ、良く見抜いたわね! 流石は写輪眼と言ったところかしら!」

 

 黒焦げの死体となったはずの大蛇丸が、その口から草薙の剣を吐き出して刀身を伸ばしサスケを攻撃していたのだ。

 更に大蛇丸はその口から大蛇丸自身を吐き出し、まるで脱皮したかのごとく黒焦げの表皮を脱ぎ捨てて無傷のままに復活を遂げた。

 この恐るべき再生能力も数多の人体実験で得た成果だ。あの程度の外傷では大蛇丸を倒すには至らない。角都か飛段のどちらかがいなければ大蛇丸が不死コンビの片割れになっていたかもしれない。

 

 戦闘開始と同じく再び相対する二人。だがそんな二人の表情は対照的だった。

 片や面倒な敵だと大蛇丸を睨みつけるサスケ。片やサスケを見ながらその表情を歓喜に歪ませる大蛇丸。

 そして大蛇丸はサスケに対してその実力を褒め称え始めた。

 

「素晴らしい……素晴らしいわサスケ君。良くぞここまで強くなったものね」

 

 印の速度。相手の印を見抜く洞察眼。そしてその術の詳細を理解する知識。即座に印を組み直し、相手の術に相性が良く後手に回った故に手早く印が組み終わる術を選択する判断力。全てが上忍ですら成し得ない熟練の業だ。これが十五、六の少年だと言うのだから称賛せずにはいられないだろう。

 そして大蛇丸はその称賛の後に爆弾発言を落とした。

 

「流石は三忍の弟子と言ったところかしら?」

「……なに?」

 

 大蛇丸の言葉はサスケには理解出来ないモノだった。サスケにとって三忍とは自来也と綱手、そして目の前にいる大蛇丸を指す言葉だ。

 だがサスケはその三人の誰の弟子でもない。サスケを鍛え上げたのは兄のイタチと父のフガク、そして主に日向アカネだったからだ。

 大蛇丸が勘違いでもしているのか? そんな風に考えるサスケの反応を見て大蛇丸はサスケの疑問を理解した。

 

「ああ……そう言う事。どうやら教えてもらっていないようねぇ。日向アカネも人が悪い……いえ、秘密にする必要がある事だから仕方ないと言えば仕方ないわね」

「……アカネが何だって言うんだ!?」

 

 大蛇丸の思わせぶりな言い方にサスケは苛立ちを見せる。自分も気になっていた秘密を敵である大蛇丸が知っているというのが余計にサスケを苛立たせているようだ。

 そんなサスケを見て、大蛇丸は強くなっても精神はまだ成熟していないようだと笑みを深める。それを見たサスケが更に苛立ちを顕わにするが、大蛇丸は無駄に話を引っ張らずに気になっているだろう答えを教えてあげた。

 

「くくく、いいわ教えてあげる。日向アカネの強さにあなたも疑問に思った事くらいあるでしょう? あの歳で誰よりも……そう、火影よりも強いだなんて普通はありえないわ」

 

 そう、それは常日頃からサスケが、いやアカネが修行を付けていてアカネの正体を知らない者ならば誰もが疑問に思っていた事だ。

 だが事情を知っているだろう上忍や火影に聞いても誰も教えてはくれない。それどころか詮索無用の命令まで受ける始末だ。

 そう言われれば守るのが忍だが、そう言われれば余計に気になるのが人間だ。誰もが詮索を避けつつも内心で気にしていたアカネの秘密。

 それが、大蛇丸の口からサスケへと放たれた。

 

「日向アカネが誰よりも強い秘密……それはね、日向アカネがあの初代三忍である日向ヒヨリの生まれ変わりだからよ!」

「……」

 

 大蛇丸が語った衝撃の真実を聞いたサスケは一瞬呆けて、そしてこう返した。

 

「……馬鹿にしてんのか?」

 

 サスケの反応は間違いなく正しい反応だろう。生まれ変わり等と普通に考えてあり得る訳がない。

 しかも敵である大蛇丸の言葉だ。騙そうとしているか馬鹿にしているかのどちらかと考えても何らおかしな事ではない。

 

「いいえ真実よ。信じられないのも分かるわぁ。私もまさかあの日向ヒヨリが復活するとは思ってもいなかったからねぇ。いえ、誰であろうと想像した事はないでしょうよ。しかも、記憶も術もチャクラも受け継いだ上に完全に新たな肉体となって生まれ変わるなんてね……教えて欲しいものねぇ、その転生の秘術を……!」

 

 大蛇丸の心の底からの叫びに、サスケはその言葉に信憑性を感じてしまう。

 アカネの圧倒的な底知れぬ強さ、特定の忍との関係、そしてその存在の秘匿性。それらの理由が日向ヒヨリの転生体である事ならば……。

 

「まさか……」

「そのまさかなのよ。穢土転生しかり、私の不屍転生しかり。死者を蘇らす術や他者の肉体を乗っ取り転生する術は数少なかれどこの世には存在する。ならば輪廻転生する術があっても不思議ではないと思わない?」

 

 そう言われてサスケは納得する。この世界には想像を超えた術が人知れずあるのだ。目の前の男も他人の体を乗っ取り長く生き続け、これからも不死であろうとしている。ならば輪廻転生の一つや二つくらいあって不思議ではないだろう、と。

 

「なるほどな……道理で……」

 

 道理で強いわけだ。あの化け物染みた強さの秘密が理解出来てサスケはどことなくすっきりとした。

 確かに信じがたい事実だが、むしろ同年代でなかった事に逆にホッとしたくらいだ。ここまでの力の差があって同年代という思いに結構打ちひしがれていた事は多かったのだ。

 負けて悔しいという思いはなくならないが、相手が自分よりも圧倒的に長い時を修行に費やしていると分かって幾分かは溜飲が下がった思いである。

 

「納得したかしら?」

「ああ……二代目三忍とやらが名前負けしてるって事が良く理解出来たよ」

「……なんですって?」

 

 事実を知ったサスケの反応の変化を見て悦に浸っていた大蛇丸は、その言葉に大きくプライドを揺すられた。

 そんな大蛇丸を無視してサスケは挑発を止めずに言葉を続ける。

 

「初代があれで、二代目がこれだろ? 影分身のアカネにすら勝てないオレを相手に手こずっている二代目……。三忍の名が泣いてるぜ。いや、元だから仕方ないか。自来也や五代目をお前なんぞと一緒にしてはあの二人に悪かったな」

「言ってくれるわねひよっ子風情が……!」

「そのひよっ子に返り討ちにされるのさあんたは!」

 

 サスケの挑発に激昂した大蛇丸は怒りを隠す事もなくサスケを攻める。草薙の剣を振るい、生意気な口を聞く小僧に痛い目を見せてやろうと苛烈な攻撃を仕掛け出したのだ。

 

「力の差を教えてあげるわ!」

「やってみろ!」

 

 無数の蛇を口寄せし、その蛇にてサスケを拘束しようとするが、サスケも黙ってそれを受け入れるわけもなく身を翻して躱し術にて応戦する。

 剣での接近戦を仕掛けようとする大蛇丸と距離を取ろうとしているのだろう。サスケはその場から離れつつ火遁・鳳仙火の術を放つ。

 サスケの口から放たれた複数の火の玉はその中に手裏剣を隠して大蛇丸へと放たれた。火遁の威力と殺傷力を持つ合わせ技だ。

 

 だがその合わせ技を大蛇丸は容易く草薙の剣で弾き飛ばした。その上で離れようとしているサスケに向けて草薙の剣の切っ先を向けて、その刀身を伸ばし攻撃をする。

 

「なに!?」

 

 まさかの攻撃方法にサスケは咄嗟に苦無にてその切っ先を防ぐ。だがそれは悪手であった。

 草薙の剣は苦無とは比べ物にならない切れ味を誇っている。金属と金属がぶつかり合ったとは思えない程に、あっさりとサスケの苦無は草薙の剣によって真っ二つに切り裂かれた。

 

「なっ!?」

「もらったわ!」

 

 防いだと思っていた草薙の剣が苦無を切り裂いた事でサスケに動揺が生まれ、その隙を突いて大蛇丸はそのままサスケの胴体を貫く。

 致命傷ではないが、戦闘続行は難しい重傷だ。死にさえしなければその体を乗っ取る事が出来る大蛇丸だ。傷も乗っ取りさえすればすぐに癒す事が出来るのでなんの問題もなかった。

 

「が、ぁあ……!」

「ふふふふふ……残念だったわねぇ。所詮はまだひよ――」

 

 勝ち誇る大蛇丸。だがすぐにその嘲笑は収まる事となった。

 

「こ、これは!?」

 

 貫き重傷を負ったはずのサスケが大蛇丸自身に変化していく。

 そして周囲から無数の刃が自分を貫くイメージが大蛇丸の脳内を巡った。

 

――幻術!?――

 

 その事実に気付いた時には既に遅かった。一瞬の幻術だったがそれでサスケには十分だ。幻術に嵌った隙を突き、千鳥を発動させてその形状を刀へと変化させ、サスケは大蛇丸の胴を薙ぎ払った。

 千鳥の攻撃力は雷遁忍術でもトップクラス。そして形状を刀へと変化させた時の切れ味もまた同じくだ。

 大蛇丸の胴体は綺麗に上下に分かれ、無残にも大地に転がり落ちていった。

 

「い、いつの間に……」

 

 いつの間に幻術を仕掛けたのか。その答えは幻術を仕掛けたサスケ自身が教えてくれた。

 

「鳳仙火を放った後にだ」

「……なるほど、全てがあなたの……」

 

 そう、サスケが大蛇丸を挑発してからの攻防は全てがサスケの計算通りに動いていた。

 わざと大蛇丸を激昂させてその思考や動きを読みやすくし、鳳仙火という弱い術を放つ事でチャクラ温存を計りつつ後方へ下がる為の時間稼ぎをしているように見せかけ、その上で後方へ下がって草薙の剣による追撃を誘う。

 草薙の剣についての情報も自来也や綱手から聞いていたので、サスケはそれを利用して戦術を組み立てていたわけだ。そして大蛇丸に自身が草薙の剣で貫かれるという幻術を見せる。後はその隙を突けばいいだけの話だ。

 チャクラの消費を抑え、ローコストで決着を着ける為のサスケの戦術であった。

 

 自分にも気付かせない程の幻術の冴え。眼と眼を合わせれば相手を幻術に落としいれる事が出来る写輪眼の力、それを十全に使いこなした結果に大蛇丸はますますサスケへの評価を高めていく。

 

「……つくづく化け物だな」

 

 胴体を真っ二つにしたはずの大蛇丸に向かってサスケはそんな言葉を吐き捨てる。

 それもそのはず。二つに分かれた胴体から無数の蛇が生え、そして互いにくっ付き合って元に戻ったのだ。

 

「お前……本当に不死か?」

「そうよ。私は不死! 私は不滅! あなたは私の予想を遥かに超えて強いわ、でも……不死の私を殺す事が出来るかしら!?」

「……いいだろう。だったらお前が蘇らなくなるまで殺し続けるまでだ!」

 

 サスケと大蛇丸の激戦は更に加速し、周囲にその影響を広げていく。

 

 


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