八咫烏は勘違う (新装版)   作:マスクドライダー

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第64話 墓前にて

「黒乃、入るぞ。」

(あ、ちー姉。もしかして、もう出かける時間かな?)

「…………。」

(……ちー姉?)

「良く似合っているじゃないか。きっと父さんと母さんも喜ぶぞ。」

 

 今朝の織斑家は、少しばかり慌ただしい雰囲気に包まれていた。わざわざ千冬が帰宅しているという時点で、何やら重大な事柄である事を匂わせる。そんな中、千冬は黒乃を訪ねて部屋へと足を踏み入れた。そうして、黒乃の姿を前に少しばかり言葉を失う。

 

 今日の黒乃は、以前一夏に購入してもらった白いワンピースに身を着けている。千冬は初見である為に、見惚れてしまったのだろう。そうして、目を細めながら称賛の言葉を送った。それに気をよくしたのか、黒乃はその場でターンして見せる。フワフワなスカートがぶわりと膨れ上がった。

 

「……黒乃、少しこちらへ来い。」

(ほぇ?そっちはちー姉の部屋じゃ……。)

「本当はそろそろ出ようかと思ったんだがな、気が変わった。ほら、そこへ座れ。」

(化粧台の前……。って事はもしかして、メイク?)

「今日は飛び切りめかし込んだ黒乃を見てもらえ。それこそ、父さんと母さんが喜ぶだろうからな……。」

 

 千冬が何かを思い出したように自室へと黒乃を連れ込む。普段は乱雑に下着等が広がっている千冬の部屋だが、頼れる弟と妹のおかげで綺麗そのもの。そんな綺麗な状態の千冬の部屋に入るなり、黒乃は化粧台の前へと座らされた。曰く、最上級まで綺麗さを引き立てろとの事。

 

 先ほどから父さんと母さんという言葉が出ている。これだけでも理解が及ぶかも知れないが、今日は黒乃の両親の墓参りへ行く予定なのだ。恐らく織斑家内で最も重要となるこの行事だからこそ、千冬もこうして帰って来ているのだろう。そんな千冬の提案に黒乃は、快く首を縦に振った。

 

(うん……思えば、こんなに女の子してる姿を見せた事すらないからね。)

「そうか……。では、私がやろう。何、心配するな。これでも私とて女という事を思い知らせてやろう。」

(いや、別に侮った事はないけどさ……。まぁとにかく、よろしくお願いします。)

 

 いくら千冬がズボラな性格だろうと、そういった心得は習得している。それを自分で冗談めかして言う千冬の姿に、黒乃はなんだか希少価値を感じた。とにかく、千冬による黒乃の化粧が始まる。本人の談通りに案外手際は良く、比較的……というよりは、黒乃が想像しているよりもずっと早く千冬の手は止まった。

 

「良し……こんなところだろ。素材が上質なせいか、私もそれなりに楽しませてもらったぞ。」

(うぉぅ……。女は化けるっていうけど、これは……。まるで俺じゃないみたいだ。)

 

 千冬はメイクアップアーティストの気持ちが痛いほどに理解できた。綺麗な素材を、自分の手で更に綺麗にするのはこの上なく楽しい。珍しくも手放しにそう言うという事は、よほど楽しかったのだろう。一方の黒乃は、鏡に映る自分の姿に少し困惑していた。

 

 それこそ黒乃の美貌を生かすためにメイクはナチュラルだが、それでも余りある変貌を遂げているのをヒシヒシと実感しているらしい。それでいて、いかに自分が普段そういった事柄に無頓着なのかを思い知らされる。もう少し気を遣おう。黒乃はそう心に誓った。

 

「それでは行くか。一夏もだいぶ待たせている。」

(わっ、ホントだ!?お、怒ってたりしないと良いけど……。)

(まぁいくら待たせようと、今の黒乃を見せれば問題ないだろうがな。)

 

 千冬の自室内に置いてある置時計に目をやると、男性的には嫌がる時間が経過している事に気が付いた。黒乃は慌てた様子で唾広帽子を回収して、ドタドタと階段を降りていく。そんな黒乃の姿を尻目に、千冬は内心でニヤニヤしながら一夏をからかう為にその背をゆっくりと追いかけた。

 

「黒乃に千冬姉?なんか随分時間がかかったけど、何か問題でも―――」

(いやゴメンねイッチー!俺も千冬姉も悪気は……って、どうしたん?凄い顔してるけど……。)

 

 黒乃の姿を視界に入れた瞬間、一夏の脳みそはフリーズした。いや、ショートと言った方が良いのかも知れない。以前の買い物の際に、一夏は黒乃のワンピース姿を綺麗だと評した。しかし、その綺麗な姿を更に綺麗にさせるメイクが施されているのだから言葉を失ってもおかしくない。

 

 一夏は黒乃を褒めたいという気はあるが、自身のボキャブラリーでそれを表現し切れる自信がなかったのだ。一夏の目には、天女だか女神だか……そんな尊い存在としてしか映っていない。しかし……天女のようだ!女神のようだ!……なんて褒めるものそれはそれで。

 

「……馬鹿が、気の利いた事の1つも言えんのか。」

「え、あの、いや、だってほら……その……。」

「御手洗ならばサラッと―――」

「ああ、もう!綺麗だぞ、黒乃。とびっきり、もうこれ以上ないくらい!」

(え、えっと……。……うん、ありがとうイッチー。)

 

 固まる一夏に苛立ちを覚えたのか、千冬は険しい顔つきでそう言い放つ。対して一夏は困った様子でどもるしかなかった。しかし、数馬を引き合いに出された事がよほど悔しかったと見える。一夏はヤケクソ気味に黒乃を褒めた。結局はシンプルな言葉だったが、むしろ黒乃には好印象だった。

 

「ブッ……!ククク……。」

「千冬姉……。」

「はっ、まぁ許せ。それよりも、そろそろ行くか。全員、準備は良いな?」

「はぁ……なんか納得いかねぇ。黒乃、忘れ物は?」

(大……丈夫っぽい。)

「ん、そうか。」

 

 堪えてはいるが微妙に隠す気がないような印象を受ける笑い声は、確と一夏の耳に届いた。ジト目で抗議をするかのような声色で名前を呼ぶが、千冬には当然通じない。華麗に流して出発の音頭を取る千冬は、職業病なのか妙に教師のようだ。千冬にそう促されつつ、織斑家の面子はゾロゾロと玄関まで歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 電車や徒歩で移動することしばらく、一行は藤堂夫妻の眠る霊園へと辿り着いた。夏休みという時分もあってか、霊園内はいつになく人が多い。とはいえ、何も間を縫う程の人だかりとも言えないだろう。何組かの人と会釈をしながらすれ違いつつ、3人は藤堂家之墓と刻まれた墓石を前に立ち止まる。

 

「久しぶり、父さん……母さん……。」

「本当に……な。申し訳ない、ここのところ忙しく……なかなか顔も出せずに―――」

(2人共、そういうのは後にして……。とりあえずする事は済ましちゃおう?)

「む、そうだな……。一夏、掃除を始めるぞ。」

「え、千冬姉もやるのか……ってあだぁ!?」

「黙れ、流石の私も墓掃除くらいできる。」

 

 自身の育ての親が眠る墓前にて、一夏と千冬は穏やかながらもしんみりとした表情を浮かべた。それを良しとしないのは黒乃だ。きっと両親は笑顔の2人を望んでいると、2人の肩を掴んで首をゆっくり横に振った。それで何かしら察する部分があったらしく、千冬は一夏に作業開始を促す。

 

 その際に一夏は余計な事を口走り、千冬のデコピンを喰らうはめに。真っ赤になったデコを涙目になって撫でていると、デコピンを喰らった部分を黒乃に優しく撫でられる。一夏はデコだけでなく、顔全体を真っ赤に染めた。そんな2人のやり取りを前に、千冬は短くそれこそ後にしろと吐き捨てる。

 

 要因を作ったのは千冬姉だろと、わざと賑やかすような軽口を叩きながら作業は本格始動した。とはいえ、口の何倍も3人の手は動く。やがて藤堂夫妻の眠る墓石は、まるで新品かのようにピカピカとなった。そうして、静かな時間が始まる。黒乃、一夏、千冬は、それぞれの想いを胸に……墓前へと手を合わせた。

 

(2人共、いろいろあったけどさ……俺は黒乃と歩いて行くって決めたよ。これからも、俺達の事を見守っていてくれ……。)

(私がふがいないばかりに、お2人には心配をかけると思います。2人の代わりなど到底言えないですが、必ずや黒乃と一夏を立派に成長させて見せます……。)

(黒乃ちゃんのご両親!今年も娘さんの身体を使わせていただいてます……。あの、ほら、大事に使わせていただいてるつもりですが、なんやかんや死にかけてしまいまして……。ええ、ですがこの通りピンピンしてますから……ノーカンって事で呪い的なアレは勘弁して下されば―――)

 

 3人は、それぞれ思い思いの事を黒乃の両親に述べる。一夏と千冬はオーソドックスに近況報告という形だが、大抵の場合黒乃は謝罪祭りとなる。それはきっと、黒乃の中身の罪悪感の現れなのだろう。特に今回は、本気で一度死んだも同然なので異様に謝り倒しているようだ。

 

「「…………。」」

「一夏、お前は……。」

「……俺はもう少し黒乃の傍に居るよ。」

「……そうか。」

 

 近況報告を終えた2人は、静かに閉じていた目を開けた。すると、未だに墓へと手を合わせる黒乃が視界に飛び込んでくる。いずれも神妙な顔つきをしながら立ち上がり、小声でそんなやりとりを交わした。一夏は黒乃の隣に居座り、千冬は少し離れて2人の背中を見守る。すると、予想だにしない招かざる客が姿を現した。

 

「どうも。」

「貴様っ!?……何故ここに居る……近江。」

「死者の魂が眠る場所でそんな顔はいかがなものかと思いますけど?あ、僕がさせてるんでしたね……ハハハ―――」

「はぁ……少し黙ってください。織斑様、申し訳ありません。大変不躾なまねをしているのは理解していますが、どうか話だけでも聞いていただけないでしょうか?」

 

 千冬に声をかけたのは、傍らに鶫を連れた近江 鷹丸その人。千冬は条件反射的に鷹丸を睨み付けるが、全く効果はなし。逆に煽るような発言を繰り出す始末だ。そんな鷹丸の態度に顔を青くしながら、割って入るようにして鶫が事情の説明を始めた。

 

 曰く、黒乃にISを与えた=黒乃を戦いの場に引っ張る行為であるという事。それなのに黒乃の両親に何の挨拶もないのは筋が通らない。しかし、千冬に頼んでも却下されるのが関の山……という事で、この際黙って訪問という図式が出来上がったようだ。挨拶に関しては鶫も賛同したようで、こうして着いて来たとの事。

 

「納得いただけないでしょうが、私達が彼女のご両親を弔う気持ちがあると言うのは本当です。こちら、どうか受け取って下さい。」

「……ああ、有り難く。」

「まぁ、お断りという事なら完全な参拝は遠慮はしますとも。どうですか?」

「いらん、余計だ。」

「おやおや、これは手厳しい。」

 

 困惑を隠しきれない最中、鶫は白菊の花束を千冬に手渡した。千冬の有り難くいただくという言葉は本物だろう。流石に用意して貰った物を突っ返すほどではないらしい。しかし、鷹丸のお参りは却下されてしまった。鷹丸に対する信頼度の現れと思ってよさそうだ……。

 

「その代りと言っては何ですが、黒乃ちゃんのご両親について少し質問させてもらえません?」

「……お前の事だ、どうせ事前に調べているのだろう。」

「いえ、それは本気で失礼ですから。まぁ……知っていて名前だけです。藤堂 和人さんに、藤堂 白雪さん……でしたよね。」

「……父は医者で、母は花屋の店員だった。お人好しという言葉を体現したような人達だったよ……。」

 

 鷹丸が黒乃の父、母の名を呟くように言うと、千冬は思わず昔を懐かしむようにそれぞれの就いていた職を語った。そして、両氏をお人好しだと評する。捨てられた織斑姉弟を何の迷いもなく育てていた程だ、お人好し以外の何物でもないのだろう。

 

「なるほど、お医者様ですか……。リアルな話、織斑先生達を育てる余裕は大いにあったわけですね。」

「ああ、母は子だくさんな家庭を望んでいたからな。恐らく黒乃には、何人か弟か妹がいた事だろう。」

「……そうですか、それは……立派なお姉ちゃんになったでしょうね、黒乃ちゃん。」

 

 金銭面での余裕がなかろうと、和人も白雪も一夏と千冬を育てたろう。しかし、そこに関して心配する必要はなかったらしい。医者なんかは特に稼ぐ職種だろう。その分労働条件が過酷であったりと問題は多々あるが。……事故に遭った日も、たまの休みという奴だったのかも知れない。

 

「しかし、貴様が両親について聞いて何になる?」

「黒乃ちゃんのアレを紐解くヒントになったりしないかなと思ったんです。ルーツにご両親が関連しているんじゃないかと思ったりしまして。」

「……聞くだけ無駄だぞ。」

「そうですね、あまり関係なさそうです。ま、出せる可能性は全て出さないとですから。」

 

 アレというのは間違いなく黒乃の二重人格の事を指している。千冬からすれば、両親は八咫烏の黒乃とは縁遠い存在でしかない。だからこそ端的に無駄だと切り捨てた。同じく、鷹丸も無意味な質問だったと言いたげに後頭部を掻いてみせる。

 

(ありゃ、鷹兄に鶫さん?)

「近江先生に鶫さん。……もしかして、父さんと母さんに?」

「やぁ2人共、こんにちわ。不躾で悪いんだけどね、どうしても一度来ようと思ってたから。」

「そうなんですか。その、ありがとうございます。2人ともきっと喜んでます。」

 

 ようやく謝罪祭りを終えたのか、黒乃と一夏が鷹丸達に気が付いた。首を傾げながら近づく黒乃の気持ちを代弁するかのように、一夏が質問を投げかける。自分が来ている事情を語ると、一夏は千冬と違って感謝の気持ちを胸に抱いた。どうやら黒乃もそこに関しては同じらしい。

 

「お前達、行くぞ。」

「え、もう行くのか?」

「……名残惜しくなってはいかんだろう。私達は、前に進まねばならんのだからな。」

「千冬姉……。あの、大したお構いもできずにすみませんでした。それじゃ……。」

 

 足早にその場を去ろうとする千冬に、一夏はせっかく鷹丸と鶫が来てくれたというのに……という風な意味を込めてもう行くのかと尋ねる。千冬は白菊の花束を墓前に飾ると、前に進まねばと語りながら歩き出した。そんな千冬の背中を、物悲しそうに一夏は追いかける。少し遅れて、黒乃も行こうとしたが―――

 

「事故、キミにとってはまだ鮮明かも知れないね。僕に出来る事があるならなんでも協力するって約束するから、その時は僕らを―――」

「事故じゃないです。」

「…………え?」

 

 なんとなく、本当になんとなく鷹丸は黒乃にそうやって話しかけた。単なる気まぐれで事故という単語を出したのだが、それは黒乃によって否定されてしまった。黒乃の言った事故ではないという言葉……それは自身が憑依する対象が黒乃に決定した瞬間、ほぼ運命は決定づけられた。だから事故じゃないという意味。

 

 本人もまさか声が出るとは思っていなかったようで、内心焦りながら深く頭を下げ今度こそ織斑姉弟を追いかけた。一方の残された鷹丸は、脳をフル回転で働かせているようだ。何故なら、鷹丸にとっては興味をそそるような言葉として解釈されているから……。

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ鶫さん。今の言葉をどう解釈してる?」

「私にはお答えしかねます。」

 

 黒乃ちゃん達全員の姿が見えなくなると同時に、僕は鶫さんに対してそう問いかけた。対して鶫さんは、いかにも面倒事を回避するように、当たり障りのない言葉で返してくる。まぁだいたい解っていた事だけどね。でも、僕にはそう問いかけずにはいられなかった。

 

 事故ではない。大多数の人間が不幸な事故だと考えている事案を、当事者……唯一の生き残りが事故ではないと結論を下しているのだ。いったいどういう事だ?彼女は何の根拠があってそう発言したんだ?事故の際に何かを見た?第3者が起こした意図的な事件という確かな事実を目撃したのか?

 

 ハハハ……不謹慎ながらも、考えれば考える以上に興味を惹かれる。もし仮に第3者の起こした意図的な事故だったとして、いったい何のメリットがあったのだろうか。例えば僕のように企業の御曹司というなら良く解る。しかし、黒乃ちゃんのご両親は至って普通な職に就いていたという証言が聞けた。

 

 ましてや当時の黒乃ちゃんはほんの6歳児。今の黒乃ちゃんを消したいと言うなら十分に気持ちはわかるけど、これで藤堂家のいずれかを消したかったという線はほぼなくなる。……いや、こういう考え方もあるだろう。藤堂夫妻のいずれか、または両方が……裏の顔を持っていたとか。

 

 裏の顔があるとすれば、何かしら組織に所属していた可能性だってある。その組織を裏切ったか、あるいは裏切られたかで消された……。ハハ、それは流石に話が飛躍し過ぎかな。けれど、あの一言だけなのにここまで想像させられる。なんて意味深な事を言ってくれたんだい……黒乃ちゃん。こうなったらとことんまで調べないと気が済まなくなちゃうじゃない。

 

「鶫さん、父さんに繋げられるかな?」

「少々お待ちください。……藤九郎様ですか?鷹丸様がお話があると……。」

 

 ある考えを思い立った僕は、鶫さんに頼んで父さんに電話してもらう。僕だと時々無視されちゃう時があるからねぇ。美女に部類される鶫さんからの電話を、父さんが無視するはずもない。想像した通り、父さんは電話に出てくれたようだ。僕は鶫さんから携帯電話を受け取った。

 

「もしもし父さん?」

『おう、鷹丸のパパですよ~っと。どした、パパに何をしてほしいんだ?』

「いや、実行は僕がやるよ。ただ確認したい事があるだけ。警察関係者にコネってないかな?なるべく位の高い人だと助かるんだけど。」

『警察関係者ねぇ。あるにはあるが、お前さん随分と面倒な事に首突っ込もうとしてるだろ。ま、面白そうだし止めろとは言わねぇけど。』

 

 電話に出た父さんは、なんだか気だるそうに適当な挨拶をしてきた。大方、鶫さんが自分に用事があるわけじゃないからテンションが下がったんだろう。だけど僕のテンションは上がり調子なんだ。悪いけど父さんの事情なんて構っていられない。そう……僕は約10年前の事件について調査してみる事にしたのだ。

 

 そうすれば、もっと面白い発見があるかも。それこそ、八咫烏の黒乃のルーツに辿り着くような……面白い発見が。父さんも僕の声色で気分が解るのか、面白そうだからとの理由で協力してくれるらしい。本当、貴方は僕にとって最高の父親だよ。

 

『……で、今言った奴が古い事件の捜査記録とかを纏めてる。署内でも有名な変人だからな、事情とパパの名を出せば協力してくれるはずだ。』

「うん、ありがとう父さん。なんとか僕の思う通りに進められそうだよ。」

『ついでに十蔵にも声をかけておくさ。お嬢ちゃんに関わる事なら、あの狸も協力せざるを得ないだろうよ。』

「……父さんには頭が上がらないね。」

『ダッハッハ!そうだろうそうだろう。つー事で1回貸しな。今度良い女でも紹介してもらうからなー。』

「解った、約束する。本当にありがとうね。」

 

 僕は黒乃ちゃん関連だとは言ってないのに、父さんにはお見通しだったらしい。う~ん……僕もまだまだかな。それにしても、良い女って誰を紹介しようかなぁ。……昴さん辺りにしておこう。美人だし、父さんなんだかんだ言って気の強い女性が好きみたいだし。ただ、攻撃されるのは覚悟してもらわないと……ね。

 

「ん、ありがとう鶫さん。」

「いえ。」

「じゃ、早速警察行こうか。」

「ついに逮捕される覚悟が決まりましたか?」

「アハハ、それ面白いね!でも少し違うかな。僕の独自捜査スタート……ってところだよ。」

 

 鶫さんに携帯を返せば、そんな言葉が返って来た。僕はあっけらかんと返したけど、多分鶫さんは割と本気で言ってる。やれやれ、日頃の行いのせいって奴かな。ま、そういう対応の方がいろいろやり易いってのはあるけどね……。それはさておき、捜査を始めよう。まずはその変人って人に会いに行ってみようかな。

 

 

 




黒乃→ファッキンゴッドのおかげで、ほぼほぼ運命なんですよ……。
鷹丸→事故じゃない……?これは、面白くなりそうだね。

鷹丸による一人相撲列伝スタート。


藤堂夫妻
織斑家近くに自宅を構えていたごく一般市民。幼少時代の千冬とは顔見知りの為、織斑家両親が蒸発後は一夏、千冬の親代わりとなる事を決意した。両者共にお人好しを体現したかのような人物で、不慮の事故(神による意図的なとも言えるが)により死亡した際には多くの人間が2人の死を悲しんだ。


藤堂 和人
一見優男な見た目をした上に若干の天然ボケな男だが、やると決めればやり通す頑固な面を持つ。そして怒ると怖く、一夏曰くトラウマものだとか。過去に重い病を患った経験があるが、それを治療し生きながらさせてくれた医者に強い憧れを抱くようになる。その後は憧れであった医者となり、些細な事でも他者の希望になれるよう生き抜いた。享年34歳。

藤堂 白雪
黒乃と同じく、綺麗な長い黒髪を持った和風美人。明るく穏やか、そして世話好きな性格。旦那である和人とは、勤めていた花屋で知り合う。和人は口説くつもりで頻繁に通っていたのだが、白雪が想いに気づいたのは結局ストレートに告白してから。娘である黒乃がそんな事にはならぬよう、一夏とひっつけようとしていた節がある。享年32歳

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