(んっ……?)
目が覚めると、俺は光に包まれたままだった。……はっ!?刺された傷……は無くなってる……。思わずお腹をペタペタ触ってみるが、ISスーツに切れ目が入っているだけだった。それに此処ってまだ海底だよな。周囲を良く見てみると、俺を包む光が壁のように海水を遮っているのが解る。
すると、俺は身体にこれまた光り輝く刹那を纏っていた。コンソールで現状を確認すると、アーマーの再形成と再最適化……及び形態移行が行われているのだとか。つまりあれは夢とかじゃなく、
そう意気込んで刹那を操作すると、勢いよく海中から飛び出た。凄まじい水しぶきを上げ、俺を包む光に反響してまるで星粒のように思える。やがて光は一斉に霧散し、
他には……両掌と甲に赤い丸のマークが描かれていて、腕部には表裏に赤いラインが。同じく翼の骨格部にもそのラインが入っている。……これが何を意味するんだろう。後は……全体像がより禍々しくなり、武装等の名称に一部変更がなされている。
まず神立だが、
『『『『『――――――――』』』』』
(出たな、シノビレンジャー!)
俺が確認作業を終えると、まるでタイミングを計ったかのように5機のISが現れる。どうやらこいつらは、俺が死んだものとは思っていなかったらしい。ステルス状態を解除したニンジャっぽいIS共は、不気味に俺を見据えるのみ。その様は、まるでそちらからどうぞとでも言いたげだ。
(良いぜ、いってやろうじゃない!)
どういうわけだが知らんが、進化を遂げた刹那の扱い方をまるで当たり前のように理解している俺が居た。動き始めた俺は、まず雷光を起動。そのスラスターから排出されるのは炎ではなく、煌々と輝く赤黒い光。雷光となった翼は、エネルギーウィングスラスターになっていたのだ。
通常のスラスターと比べて瞬発力と爆発力は劣るが、何よりエネルギー効率が良い。
(どらぁ!まずはお前だシノビピンク!)
ハイパーセンサーを使えない状況で、視界を潰してくるピンクの性能は厄介極まりない。俺は
『――――――――』
レーザーブレードは簡単にピンクの頭を貫き、機能停止まで追い込んだらしい。力なく身体をだらんとさせるのが見えたので、多分そうだ。そう思ってパッと手を離すと、やはり海へ向かって真っ逆さま……の前に、空中で爆発四散した。ナムアミダブツ!……きっと痕跡を残さないためだろう。
さて、レーザーブレードについて解説をっと……。え゛~ゴホン!どうやら今のレーザーブレードは、雷光を起点にしているらしい。翼から伸びるこのラインは、エネルギーの供給パイプと思って良いようだ。そしてこの赤い輪は、レーザーの発射口を示している……らしい。そんでもってこのレーザーブレード―――
(どうにも飛ばせるみたい何だよね!)
先ほどよりもより圧縮したレーザーブレードを右掌から生やすと、反転してからシノビグリーンに狙いを定める。そしてそのまま……発射ぁ!掌から飛び出たレーザーブレードは、まるで雷の槍のようだ。勢いよく飛んでいく雷の槍は、真っ直ぐシノビグリーンに……当たりはしなかった。寸前で、盾持ちのイエローが割り込んで来たのだ。
『――――――――』
そんな盾を物ともせずに、雷の槍はシノビイエローを貫通した。背後に居たグリーンは、一瞬の隙を突いて離脱し無傷か……。だけど、あの様子を見るにイエローは仕留めたろう。そう思っていると、イエローの装甲にバチバチと電撃が走り、数拍おいてから爆発四散。よし、これで2機……。
『『『――――――――』』』
俺を脅威に感じたのか、残りの3機は動き始めたのを中止してジリジリとしている。まぁAIがそうさせるんだろうけど、足を止めてくれるのなら有難い。だって俺は、既にキミらを練習相手くらいにしか思ってないからさ。俺も3機との距離を開けて、一旦動きを止めた。
『
刹那・赫焉になってから、こんな表示がコンソールに表示されていた。多分だけどこの感じ、
嫌がらせかなんなのか、神翼招雷に関しては全くイメージが沸かない。それだけで怖さが倍増である。だけど、使わない事には始まらない。何よりあの3機を1度に仕留めてしまえるかもしれない。オーケー……行こうかセっちゃん。神翼招雷……発動承認!
『神翼招雷―――発動承認 刹那・赫焉のエネルギーを雷光へ供給』
こ、これは……!?神翼招雷を発動したのと同時に、腕にある赤いラインが発光し始めた。その発光は血液の流れのように翼へと到達し、凄まじい密度と大きさのエネルギーウィングを形成。赤黒い雷は、闇に染まりつつある周囲を照らす……。それこそ赫焉。
『エネルギーを倍増させつつ雷光より排出中』
ほわぁ!?豪くエネルギー効率が良いなと思ってたら……倍増させつつなの!?も、もしかして……それが神翼招雷の能力なのか?やけに
『エネルギー倍増シーケンス―――コンプリート 供給先を選択してください』
(きょっ、供給先……?ええっとじゃあ……掌に―――)
『エネルギーを更に倍増させつつ腕部へ』
更に倍率ドン!?エネルギーウィングの光はだんだんと弱まっていき、完全に消失した。しかし、またしても赤いラインが発光する。最初に翼に流れるのとは逆方向、つまり翼から腕に向かってエネルギーが移動しているらしい。し、しかし……更にエネルギー倍増って、単純計算でも今の時点で4倍だぞ……。
そ、そうか……倍増して雷光から翼として放出したエネルギーを、再度刹那・赫焉に取り込んだんだ!そして腕部へと供給する過程で、更に倍増させているというわけだな……。これ、調子に乗って大量のエネルギーを発動に割かなくて良かった……。じゃないと今頃大変な事に―――
『エネルギー倍増シーケンス―――コンプリート このまま放出―――もしくは鳴神との連結が可能』
(鳴神との連結……?そ、そうか!だから鳴神にも!)
ティンと閃いた俺は、鳴神を抜刀。掌の赤い輪と、柄部分の赤い輪がしっかり重なるように鳴神を握った。するとどうだ、掌と鳴神は火花を上げながら連結するではないか。それと同時に、赤い光が今度は鳴神に流れていく。そして、次の瞬間であった……鳴神の刀身部分が消え失せる。まるで霧のように……。
(どええええっ!?ちょ、待った!思ってたのと違う!)
『鳴神との連結を確認 エネルギーを倍増させつつ鳴神より排出』
(なっ……!?ま、まだ倍!?え、え~っと……4倍が倍だから……8倍のエネルギー!?)
かなりのエネルギーを雷光に供給、そして再度刹那に取り込み鳴神から放出しているため……天を突くような巨大なレーザーブレードが出来上がった。って、ヤバイヤバイ!上に掲げないと勢いで飛んでっちゃう!き、機体安定の為にエネルギーウィング放出しないとダメだ!え~っと、神翼招雷を重ねがけ!
(機体……安定!よし……ってかコレなんだろ……ライザーソードっぽいな!)
『『『――――――――』』』
刹那はエクシアっぽいなと思っていたが、いざ二次移行したらダブルオーライザー的な必殺技を身に着ける事になろうとは……なんだか運命を感じる。んな事を思っていると、3機のシノビIS達はステルス状態になった。恐らく、危険と判断して撤退を選んだのだろう……だが!
(トランザム……ライザアアアアっ!)
赤黒い光を放つ極太極大レーザーブレードを横一閃に振るう。するとどうだ、遠方で小規模な爆発が3つテンポよく発生した。あまりの巨大さに、逃げても巻き込んだのだろう。しかし、8倍に増幅して放出されるエネルギーはなかなか収まりがつかない……。ええい、縦一閃にも素振りしておこう。
勢いよく鳴神を縦に振ると、凄まじい勢いで海に割れ目が走る。その事を考えていなかったために焦るが、ようやくライザーソードのエネルギーを使い切ったらしく……赤黒い光は収まっていく。う~ん……いくらエネルギーを増幅させるとは言え、かなり燃費が悪いし予備動作も長いから使いどころが難しそうだな。
ま、学園に帰ったら鷹兄と一緒にいろいろ検証してみる事にしようかな。さて、これからどうしようか……って!そんなん皆の援護に決まってる。きっと今頃は福音と戦ってる頃じゃないかな……。行く前に終わってそうな気もしなくもないが、とにかく合流するのだって大事だ。そう結論を下した俺は、福音との戦闘区域へと舵を取る。
◇
「一夏……?一夏なのだな!?」
「ああ、悪いな。心配かけたみたいで。」
時間としては、黒乃が復活を遂げる少し前まで遡る。福音へと戦いを挑んだ箒達5名は、辛くも勝利を収めた……かに見えた。いや、確かに1度は勝ったとカウントして良いだろう。しかし、偶然か必然か。撃墜した福音が
これにより第2ラウンドが開始される。軍用ISである事が関係しているのか、進化した福音は殺意に満ち満ちていた。それでなくても疲弊していた専用機持ち達は、この事実に焦燥を抱かざるを得ず。セシリア、シャルロット、ラウラの3名は撃墜。鈴音はほぼほぼ戦闘不能。今まさに箒も
「良かった……。一夏まで居なくなってしまったら私は……!」
「泣くな箒。多分だけど黒乃も今に……まぁそれは良いか。箒、これ。」
「こ、これは……リボン?」
「誕生日おめでとう、箒。」
最初の交戦時にリボンが焼き切れたまま、箒の髪型はずっとストレートだった。タイミングとしては大間違いなのだろうが、誕生日プレゼントだとリボンを手渡す。今日は7月7日。何の因果か、篠ノ之 箒の16度目の誕生日である。箒は……自身の誕生日など忘れかけていた。それだけに、少し困惑した様子でリボンを受け取る。
「じゃ、ちょっと行って来る。今度こそ勝つからさ。」
一夏のそんな発言と同時に、福音は猛然と向かってくる。同じく一夏も迎え撃つべく前進した。一夏はいつもと違い、雪片弐型を右手のみで構える。何故ならば、白式の左腕が形態変化し……新たな力を宿しているからだ。今宵
「そこだっ!」
雪片による斬撃は、やはりというかことごとく回避されてしまう。しかし、そこで一夏は左腕武装である雪羅を起動させる。白式の左腕指先から、青白いエネルギーが放出。まるで刃のようなエネルギーは、爪の形を型取り福音を襲う。避けた傍から急に伸びたクローに対処しきれなかった福音は、胸部装甲へ深い傷を刻まれた。
『――――――――』
この瞬間、福音は一夏と白式を殲滅すべき敵だと認識した。次いで繰り出される攻撃は、その評価の表れだろう。頭部、胴体から大きなエネルギー翼を生やすと、銀の福音は一斉掃射を開始した。爆発性エネルギーの弾雨は、一夏が寝て覚めて更に凶悪な弾幕へと変貌。しかし、一夏はそれを避けようともしない。
「今の俺には倒す剣だけじゃない……守る盾がある!」
一夏が左腕を前に構えると、雪羅が変形を開始した。そう……雪羅とは、多形態へと変形する万能武装なのだ。一夏の宣言通りに、その身を守るかのようにエネルギーの膜が現れた。雪羅の盾にぶつかったエネルギー弾は、その傍から次々と消失していく。
雪羅の盾はつまるところ零落白夜を防御転用している。それすなわち、エネルギー無効化攻撃が、エネルギー無効化防御へと変化したと言う事だ。ただし、零落白夜を使用しているのと同等な為エネルギー消費は激しい。結果、白式はより燃費の悪い機体になったとも言える。しかし―――
「はああああっ!」
一夏は退かない。進化した白式ならば、それが問題なく行えるのだ。
(連続の瞬時加速……刹那は2回どころじゃないのに。黒乃はすげぇや……。)
そもそもの技術が違いはするが、その気になれば刹那は10回でも連続で瞬時加速をして見せるだろう。たった2回でその難しさを感じている一夏は、自分の幼馴染の凄さを再確認した。ニヤリ。何が可笑しいのか自分でもわからなかった一夏だが、そうやって頬を緩むのを止められない。
「さぁ……追いついたぜ!」
『――――――――』
逃げながらエネルギー弾を放っていた福音に、2段階瞬時加速を利用してなんとか射程圏内に捕える。しかし、福音の取った次なる行動に肝を冷やす。大きなエネルギー翼で自身を包んだかと思えば、それを大きく広げながら回転。それに伴い、エネルギー弾は全方位へと射出された。
(くっ、皆……!)
「何やってんの馬鹿!アタシ達が本当に心配ならねぇ……とっととケリつけなさいって話でしょうが!」
「鈴……。……ああ、任せろ!」
それを見た一夏には、やはり味方を庇うという選択肢が過る。しかし、そんな選択肢を遠くへ放り投げてしまう女子が1人。甲龍もボロボロである状態の鈴音がそう叫んだのだ。さすれば一夏は、その言葉を受け取るしかない。仲間の為にもアイツを倒すと、一夏の気合は更に増した。
「でやああああっ!」
(一夏……。)
一夏が決死の攻撃を仕掛けている最中、決して安全圏ではない場所に居る箒は動けないでいた。この場合……良い意味と捉えて良いのか、悪い意味と捉えて良いのか……。甚だそれは疑問だが、とにかく箒は嬉しかった。自分の……いや、自分達のピンチに一夏が駆け付けてくれた事が。
(戦うんだ……私も、一夏の隣で!見ていてくれ黒乃……。私の意志を、私の決意を!)
箒は鋭い目つきをしながらキュッと髪をいつものポニーテールに束ねた。すると、その決意に呼応するかのように……紅椿から黄金の粒子が漏れている事に気が付く。それともう1つ。紅椿のエネルギーが、急激に回復しているではないか。困惑する箒だが、コンソールにピックアップされている『
(何やら解からんが好都合!行くぞ、紅椿!)
「っ!?そこ……逃がすかぁああああ!」
箒が戦線復帰した頃、一夏は目に見えて福音を押していた。離脱の隙を逃さず、零落白夜のエネルギー刃にて翼の一方をもぎ取った。しかし、福音はまだ翼を有している。2撃目と続くつもりだった一夏だが、こちらを捉える事は出来なかった。そうこうしている間に、福音は翼を再構成。またしてもエネルギー弾の一斉掃射が始まる。その時だ―――
白式のハイパーセンサーに警告が表示された。残存エネルギー20%、限界稼働時間約3分。逃げ回る高機動機を相手取っているのならば、これは絶望的と言っていい。しかも……白式は戦えば戦うほど、面白いほどにエネルギーが減り続ける仕様だ。何か策は!?一夏の焦りがピークに達しそうな瞬間、声が響いた。
「一夏!」
「箒!?紅椿はダメージで―――」
「私も良く解らんが、考えるのは後で良い!今は……コイツを受け取れ!」
「白式のエネルギーが、回復してる……のか!?」
弾雨を掻い潜りながら、一夏へと箒が迫る。確かエネルギー切れでは?その疑問のおかげでギョッとする一夏だったが、伸ばされた箒の手を反射的に掴む。するとどうだ……白式のエネルギーが見る見る内に回復するではないか。不可解ではあるが、箒の言う通りに混乱している間は無い。
「よしっ……これで終わらせ―――る……?」
「一夏!何を惚けている暇が―――が?」
「な、なななな……何よアレええええ!?」
気合十分。零落白夜のエネルギー刃を最大出力。雪片弐型を雄々しく構え、さぁこれから斬りかかろうかと言う時に……一夏の手は止まった。何をやっているのかと叱咤しようとした箒も同じく。現状で甲龍を纏っている鈴音も、暴走しているはずの福音でさえ同じ方向を眺める。
「きょっ、巨大な翼……?しかしあの翼の形は何処かで……。からす……?っ!?まさか、黒乃か!」
そう……ハイパーセンサーで詳しく補足する事が出来ない距離に、とてつもなく巨大で……赤黒い光を放つ翼が出現したのだ。動揺を隠せない箒がよくよく翼の形状を確認すると、何処か見覚えがあった。それは刹那の
「あ、だんだん光が弱まって……。……ってええええ!?こ、今度は……巨大なレーザーブレードぉ!?」
「ハハッ!やっぱり黒乃は規格外だな。……なんからしいや。」
光の翼が収縮するように消えたと思ったら。今度は文字通りに天を突くか如く巨大なレーザーブレードが現れた。鈴音は芸人顔負けの良いリアクションを見せ、それに対して一夏は1周回って笑えるらしい。何処か呆れも交じったその笑顔は、鈴音からすれば苛立ちを覚えてしまうようで。
「感心してる場合じゃ―――」
「ああ、全くその通りだ。じゃあ行くか……なぁ、黒乃!」
『――――――――』
その場に居ないどころか、一夏は黒乃と通信すらしていない。そもそも黒乃が本当にやっているかも解からないと言うのに、妙に確信めいた様子で行くぞと告げた。すると、それに応えるか如くに巨大なレーザーブレードも動き出す。遥か遠方のレーザーブレードは、鋭く横なぎに一閃。
「危なぁ!?」
「くっ……!」
『――――――――』
その一閃は的確に福音を狙った一撃であったが、あまりの巨大さ故に箒も鈴音も巻き込まれかけた。しかし、いくら巨大とは言えただ我武者羅に横へと振り払われただけの事。高機動機の福音には痛くもかゆくもない。当の本人がそれを1番良く解っているようで、福音は高度上げて離脱……したかに見えた。
「いらっしゃいませってか!」
なんと、逃げた先には既に一夏が回り込んでいたのだ。回避優先で行動していただけに、一夏の先回りなど気にしている暇が無かった。なんとなくだが、一夏は黒乃がそう言っていた気が……した気がする。そちらに逃がすから、先回りしてしまえ……と。一夏はこの時、嬉しくて仕方が無かった。黒乃と……通じ合えている事が。
「獲ったああああ!」
『――――――――』
巨大なレーザーブレードが右から左へと通過していったのと同時に、一夏は勢いよく福音の肩から斜めに雪片弐型を叩きつけ……斬り裂く。一夏の手に残るのは確かな手応え。だが死なばもろともだ。まるでそう言いたげに銀の福音の腕が一夏に迫る。
「一夏ぁ!」
「全員動くな!黒乃の攻撃は―――」
「え……?ちょっ、ちょっ……嘘でしょ……あの馬鹿まさか……!?」
「まだ終わってなんかない!」
あれだけのエネルギーを放出していると言うのに、巨大なレーザーブレードは余力十分といったところか。横へと振り払われたかと思ったら、またしても天高く伸びる……かと思ったら、凄まじい速度で上から覆いかぶさるようにエネルギーが迫って来るではないか。つまり……今度は縦一閃であると言う事。
「う、動くなって……ホントに大丈夫なんでしょうね!?」
「俺と黒乃を信じろ!」
「も、もし本当に黒乃ならば……後で文句を言ってやる!」
「激しく同意だわ!」
『――――――――』
一夏の言葉は、動けば命はないと言っているようなものだった。とはいえ……天を突く大きさのエネルギーが迫れば誰でも避けたくなるというもの。そこはグッとこらえた箒と鈴音の判断は正しかった。レーザーブレードは福音に迫るのと同時に徐々に収束を始める。やがては細長いレーザーブレードと称するにふさわしくなった程の時、一夏に迫る福音を斬り裂く。
「まずいぞ、操縦者が!?」
「任せろ!」
レーザーブレードが止めになったのか、ようやく福音は活動を停止した。そのまま福音は強制解除され、操縦者は重力に従い海へと落ちていく。驚愕故か、女子2人は動けなかったが……最初からこうなる事が解っていた一夏がすかさず空中で操縦者を捕まえる。
「ふぅ~……なんとかなったな!」
「ええ、そうね!……ってなるかこの馬鹿ぁああああ!あ゛~……心臓に悪っ!死ぬかと思ったわよも~!」
「はっ……あ、あの3人は無事なのだろうな!?お~い!生きているかーっ!?」
「ギリギリだったけど何とか無事だよ~!」
「いや、待てシャルロット。あまりセシリアが大丈夫じゃない。」
「め、めっ、めっ、めめめめ……目の前を……レレレレーザーブレードが通りっ、通り過ぎて……てててて……!」
あっけらかんとした様子でそう言う一夏に対して、鈴音は怒りが爆発したのか声を荒げる。そして鈴音の死ぬかと思ったという言葉に反応し、箒は海面へと落ちた面子の事を思いだす。高度を下げつつ海へと呼びかけると、プカプカ浮いているシャルロットが空へ向けて手を振りながら応えた。
言葉通りに大丈夫なのは大丈夫だったのだが、セシリアは浮いていた位置が災いしたのか目の前……本当にギリギリをレーザーブレードが通過していったのだ。ピクピクと頬を引きつらせ、あまり呂律も回らない。そんなセシリアに皆は憐みの視線を向けると、非常に丁寧に回収して帰投を始めるのだった。
この後本当に生きていた黒乃と合流した1部のメンバーは、死んだかと思われた友人が生きていた安堵の言葉よりもまず……文句が止まらなかったのは言うまでもあるまい。それに対して黒乃はいつもの無表情で応えるのみ。この光景を見た一夏は、本当にカタがついたのだと……いつもの日常へと思いを馳せる。
黒乃→適当に振ってエネルギー消費しとこ……。
一夏→黒乃ならあの距離で当てるのも簡単だよな!
ヒロインズ→私達にも当たるかと思ったわ!
刹那・赫焉の唯一仕様『神翼招雷』はかなり用途が広いです。
夏休み編で詳しく解説出来たらなと思います。
あ、ガンダムネタ解らないって方がいらっしゃったら申し訳ないです……切実に。