八咫烏は勘違う (新装版)   作:マスクドライダー

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第43話 並び立つ2人

(なんで……どうしてこうなる……?)

 

 本気で頑張ろうって、ラウラたんの為になる事をしようって……そう思ってたのに、結局はこの体たらくなのか……?目の前で叫び散らすラウラたんを見ていると、とんでもない虚無感と絶望感が身体にのしかかる。俺が……余計な事を言ったから……。戦えなんて、ラウラたんに言ったから……!

 

「何やってんだ黒乃!今のボーデヴィッヒは明らかに普通じゃない!」

(あ……イッチー……。)

 

 悔しさのあまりに動けないでいると、慌てた様子でイッチーが俺を持ちあげ後退する。確かに……普通じゃないよねぇ。ラウラたんのシュヴァルツェア・レーゲンは、まるでスライムのように流動しているのだから。そしてどす黒い色のスライムは、ラウラたんを包み……やがて何かの形を象る。

 

「あ、あれってもしかして……!?」

「雪片……!」

 

 ISに関わっている以上は、マイエンジェルも見覚えがあったらしい。そう……まるで第1世代型のISかのような形状に収まったソレは、その手に雪片そのものでしかないブレードを握っていた。それを見たイッチーは、まるで親の仇を前にしたかのような顔つきに変わる。

 

 ヴァルキリー・トレース・システム、通称はVTシステム。モンド・グロッソにおける部門受賞者の動きをトレースさせるという代物だ。どういった形状になるかは、操縦者の意思……願望と言いかえた方が良いのかも知れない。つまり、ラウラたんがそうある事を望んだが故の……雪片だ。

 

「…………フーッ!オーケー……落ち着いた。シャルル、黒乃の事を頼む。」

「まさか、アレと戦う気!?確かに白式のエネルギーには余裕があるけど―――」

「シャルル、頼む。」

「…………解かった。黒乃、立てそう?」

 

 原作では、姉のオンリーワンを模倣したアレに激昂していたイッチーだった。が、イッチーは歯を食いしばって何かを堪える様子を見せると、次の瞬間にはキリリと男らしい顔つきになっていた。そしてマイエンジェルに俺の事を頼むと、悠然と雪片弐型を構えて見せる。

 

「黒乃。」

「…………?」

「力ってさ、何が正しいとか間違ってるとか、そんなのは存在しないと思うんだ。……頭の悪い俺にはよく解からないけど。ただ、黒乃や千冬姉を見てると……思うんだ。力って、強いって、こういう事なんだろうなって。馬鹿な俺でもなんとなく……それだけは解る。俺に解るんだから、ボーデヴィッヒに解らないはずないよな?」

「…………。」

 

 マイエンジェルの手を借りながら立ち上がっていると、イッチーが俺に対してそう語りかけてきた。まぁ……俺に関しては的外れも良いとこだけど、確かに……ちー姉は背中で語ってくれる。俺もイッチーと同じで、ちー姉の強さの源流ってのは理解してるつもりだ。ラウラたんに関する問いにも同意しておく。

 

「だからさ、見ててくれ。俺は俺をアイツにぶつける。それがきっと―――」

『――――――――』

「アイツに俺が言いたい事を伝える事になると思うから!」

「一夏……。……さ、黒乃……僕らは離れてよう。」

 

 イッチーはその言葉を最後に、暴走中のラウラたんへと突っ込んで行った。2本の雪片がぶつかり火花を散らすよりも前に、マイエンジェルは俺を後方へと下げてくれた。ぐっ……!でもやっぱり、灰色の鱗殻(グレー・スケール)の打撲痕が痛む……。マイエンジェルが少しでも力を緩めると、思わず片膝を着いてしまった。

 

「ああっ!?ご、ごめんね黒乃……。その、僕のせいでこんな。」

「それは違う。」

「え?あ、あぁ……うん、ありがとう。」

 

 それは試合だから仕方のない事だし、何より俺がやりたくてやった事だ。マイエンジェルが罪悪感を感じるのは、筋違いでしかない。……という意味を込めての違いますだったが、どうやらマイエンジェルには通じたらしい。しかし、イッチー……大丈夫かな。

 

 いや、俺に出来る事は……イッチーの邪魔にならない事だ。疾雷と迅雷……は、ラウラたんを庇う前に仕舞ってたか。肩まで手を伸ばすのも億劫なので、俺は神立を引き抜いて杖替わりに立つ。刹那のエネルギー残量からしても、ピットへ戻る余裕くらいはあるな。

 

「黒乃……。そっか、そうだよね。黒乃にとっても織斑先生はお姉さんだもん。一夏と一緒に戦いたいよね。僕のリヴァイヴ、コアバイパスでエネルギーを送れるから……それで少しは足しになると思う。」

(は……?いやいや、違う……違うから。マイエンジェル、れれれ冷静になれ……。)

「キャッ!?お、落ち着いてよ……すぐに済むから。」

 

 コア……バイパス……?ハァッ!?わ、忘れてたああああ!そうか、そうだった……。原作と違って、イッチーは相当な余力を残して暴走ラウラたんと戦っている。そうなると、今俺の状態が原作のイッチーに近いんだ。俺が立ったのを戦闘継続の証だと思ったマイエンジェルは、着々とエネルギーを刹那へと移し替える。

 

「……はい、これで大丈夫なハズだよ。黒乃、頑張って!キミと一夏が揃えば絶対に大丈夫だから!」

(チッキショー!またこのパターンかよぉぉぉぉ!)

 

 エネルギー転換を終えたマイエンジェルは、凛々しいかつ可愛らしい表情でそう言う。前のモッピーの時と同じく、こんな事言われたら俺には断れない!マイエンジェルに向かって頷くと、グングンと刹那を加速させ暴走ラウラたんへと迫った。

 

(エネルギー……使えてQIB(クイック・イグニッションブースト)OIB(オーバード・イグニッションブースト)のどっちかくらいだな……。ま、残りはイッチーに任せるとして……。)

「黒乃!?」

(俺は俺のやれる事を……死なない程度に頑張ろう!うん、死なない程度に!)

 

 ラウラたんがこうなったのも俺の責任だし、自分の尻は自分で拭おう……死なない程度に。未だ地表近くで斬り合いをしていた2人に接近すると、一撃離脱するつもりでラウラたんの真横から神立を振るう。しかし、それは不発に終わった。なんとラウラたんは雪片を豪快に振り回すと、俺と一緒にイッチーまで吹き飛ばしてみせる。

 

「ぐっ……!黒乃、お前……。いや、やっぱなんでもない。」

「…………。」

「俺と一緒に戦ってくれ。黒乃が隣に居てくれるんだったら……俺は、なおさら頑張れるから。」

 

 イッチーは、数瞬だけ俺の身を案じるかのような顔つきになった。だが、途中でそんな事言うのは無粋か……みたいな笑顔を浮かべやがる。言ってよ、今すぐ下がってくれって……。まぁ良いか、確かにイッチーと一緒に戦うってのは……最高のシチュエーションなんだろうからさ。

 

「行くぞ、黒乃!」

(あいよ、イッチー!)

『――――――――』

 

 イッチーが右方向へ大きく旋回するように飛び出したのを見て、すかさず俺は左方向から大きく旋回するようにラウラたんへ迫る。……初動でイッチーの考えてる事が理解できるって、俺も相当……い、いや……この考えは後にしとこう!さて、左右からの同時攻撃だ。さっきみたいに油断はしないぞ……。

 

『――――――――』

「なっ、クソっ!こんなのでもやっぱり千冬姉なのか……!?」

(そう言いたくなるのも解るよ……!)

 

 ラウラたんは、神立を雪片で受け……雪片弐型をガッチリと手で掴んでいた。そしてそのままイッチーを俺へと放り投げて来るが、それは跳び箱が如く回避。しかしだ、上を越えてくるのは予想通りだったらしく……その先にはラウラたんが待ち構えていた。い、いやああああ!

 

(あ、あっぶねぇ……!)

『――――――――』

 

 剣道の面みたいに頭上へ雪片を構えているのが見えたから、俺はとっさに神立を真横にして防御の体勢をとる。俺の方が速かったようで、雪片はギリギリところで防ぐことに成功だ。だけど、この目の前に雪片が迫ってる状況をどうにかしたいよぉ!

 

「黒乃!」

(おうよ、イッチー!)

 

 ……なんだろうか、イッチーが俺の名前を呼んだだけで……何が言いたいか解ってしまった。…………イッチーがどういうつもりで俺の名を呼んだかというと、今のは急いでそこから退いてくれって事。なんとか勢いよく神立を前に押し出すと、雪片の刃が離れた。その隙を突いて離脱すると、響いたのは発砲音だ。

 

「よ、よし……当たった!」

(銃……原作では落ちたの拾ってたけど……。まぁ良いか、細かい事は何だって!)

 

 どうして発砲音?と思っていると、ハイパーセンサーにはハンドガンっぽい武装を構えたイッチーが。その弾丸は、見事にラウラたんへと命中した。遠方からの攻撃は予想外だったのか、ほんの数瞬だけたじろぐような仕草を見せる。……来た……一瞬の隙!それを理解するよりも早く、俺は本能的にQIB(クイック・イグニッションブースト)を使っていた。

 

 開いていた間を一瞬で詰め……神立の刃をラウラたんの腹部へ押し当て……斬る!……斬る!……あり?刃が滑らせない……。御存じの通り、刀ってのは叩きつけただけではあまり効果を生まない。相手に押し当て、そこから刃を滑らせ致命傷を浴びせるのだが……。どういう事か、神立がこれ以上動かせな……って、あぁ!?

 

『――――――――』

(神立思いっきり握られとるぅぅぅぅ!?)

 

 神立の鍔付近……刃の根元にあたる部分を推し当てていたわけだが、先の方をガッチリと掴まれているではないか。く、くっ……神立の長さが仇になってるな。……ふぉ!?ラ、ラウラたんが雪片振り上げて……!さっきも言ったが、QIB(クイック・イグニッションブースト)OIB(オーバード・イグニッションブースト)どちらか1回使えて限界……今の刹那はそんな状態だ。つまり―――

 

「一夏ぁ!」

「っ!?黒乃……!ああ、任せろ……黒乃ぉ!」

 

 死ぬ……1撃喰らったら死ぬぅ!かなり慌てた俺は、イッチーを一夏と呼んで意思伝えた。要約すると……はよ!零落白夜はよ!……という事。俺はより早く零落白夜をラウラたんへ当てるために、雷火を通常運行で限界まで速度を上げる。……ハッ!?神立から手を離せば早かったじゃん!ま、まぁ良いや……このままいっけー!

 

「おおおおっ!せええええええい!」

(ぬどらぁああああっ!)

『――――――――』

 

 俺とイッチーは、お互いの位置が入れ替わるようにすれ違いざまに刃を振るう。零落白夜が当たった為かは知らないが、神立はラウラたんの手から離れて刃を滑らせる事に成功した。なんかこう……自然にコンビネーション必殺みたいになったな。お互い背中だけ見せて動じない俺達……なかなか絵になっている気がするぜ。

 

「おっと、危ない……。」

 

 ハイパーセンサーに敵対反応はなし……勝ったんだ。その証拠に、ラウラたんを包んでいたスライム状の物体は飛散していった。そこから倒れ込むように出てきたラウラたんを、イッチーはしっかりと受け止める。ラウラたんは……子供のように寝息をたてている。

 

「…………。」

(どったのイッチー?)

「ああ、いや……なんか変な空間?みたいなとこでさ……ボーデヴィッヒと話したような気がして……。」

 

 へぇ……決着の前の一瞬で、原作におけるあの現象は起きてたのか。原作でも詳しく言及されていないため、IS操縦者同士が心を通わせた……程度の事しか解んないけどね。しかし、やっぱり俺じゃダメなんだな……。主人公様様だよ、イッチー。……かっこよかった。

 

「一夏ー!黒乃ー!やったね~!」

「ああ、シャルルもお疲れ!黒乃、お前もな。さぁ、皆のところに帰ろう!」

 

 イッチーはそう言いながら、俺の頭を優しく撫でた。む、むむむむ……も、もう取り乱しはしないぞ!……やっぱり照れはしてるけど……。まぁ……たまにはこういうのも悪くない……あぁ、悪くない。さて、それはさておき……遠くで手を振ってる天使の元へ急ぎましょうかね。

 

 

 

 

 

 

『ご弟妹(きょうだい)……ですか?』

『ああ。あの2人を見ていれば、なんとなくそういう事を考えさせられる。強さとはなんたるか、とな。』

『……理解が及びません。』

『今はそれで良いさ、ハッキリと答えがあっていいはずもない。まぁ、日本に来る事があれば会ってみろ。ただ、弟の方には注意しろよ。隙を見せれば惚れさせられるぞ。』

 

 暗い意識の最中、教官と話した事を思い出していた。何故今になってこんな事が思い浮かぶのかは解からないが、ただ……私は羨ましかったのだ。弟と妹を語る教官の顔は、間違いなく姉そのもので……。私には向けられた事のない一面だった。

 

 そんな弟と妹の持つ強さとは……。私はその答えを知りたくて、知れば知るほど……理解はしたくなくなった。だってそれは、私の中にある教官を否定するものだったから。ただ、哲学的な概念だ……明確な答えなんてある事がまず可笑しな話ではある。だが、その中の1つ……織斑 一夏と藤堂 黒乃の持つ答えは、随分前から見えていた。

 

『考え過ぎ、前から思ってたけど……お前ホント石頭だよな。』

(何だと貴様……。)

『理解したくないってお前の気持ちは解る。けど、二の足踏んでて前に進めるか?進めないだろ。』

 

 暗い空間に小さな光が瞬く。すると何処かからか、織斑 一夏の声が響いた。優しげな声色のその声は、聞いていると酷く安心するような気がした。諭すような口調でそう語りかける織斑の言葉をに対して、真剣に考えを巡らせる。とりあえず進めるか否かは、ノーに決まっている。

 

 だから私は歩みを止めなかった……ふりをしていたんだ。実際は、見えた答えを恐れて……八つ当たりをしていたに過ぎない。その被害にあったのは、間違いなく教官の弟と妹……。さっきもそうだ。認めたくないからと逃げて、私が教官になってしまえばと……力に振り回された。

 

『……大丈夫だ。俺も黒乃もそんなに気にしちゃいない。だから……怖がらなくったって良いさ。』

(己の弱さを認める事……貴様は怖くないのか……?)

『いや、怖い。そんなの誰だって怖いに決まってる。だけど、俺に歩みを止めてる暇はないんだ。』

(強いな……お前は……。)

 

 私に出来なかった事を平然とやってのけるならば、やはりそれは私の上をいっているという証拠……。そうか、私はこの強さに負けたのだな。自分の弱さを認めて、向き合って、少しだろうと前に進む。こんな簡単な事も出来んとは、教官もさぞ私に失望して……。

 

『ちょっと待て、勝手に1人で自己完結すんな。俺は弱いよ。弱いから、少しでも前に進みたいってだけだ。』

(それならば私は……いったいどうすればいい……?)

『……俺の隣には、全力疾走して前に進んでる大事な人が2人も居る。並走するのがやっとくらいなんだけどな、いつか絶対追い抜くんだって思ってたら……怖いなんて思ってられない。……それだけの事だ。』

 

 ……何処か自嘲するかのように、織斑の声はそう言う。あまり自信はなさそうだが、私にとっては……ますます強い奴だと思い知らされる。やはり私には、追いかける事しか出来なかった。追い抜こうなどど、考えすらしていなかった……。そうだ……いつまでも背中ばかり追いかけていたって何も始まらんではないか。

 

『そう、その意気だ!もし……それでも前に進むのが怖いってんなら……俺が着いてる!俺達が側に居る!ここは……そういう場所だからな!』

(……今更私が、のうのうとお前達に……。)

『何言ってんだ、スタートラインなんて勝手に自分で作り直せば良いだろ。だからほら……一緒に行こうぜ!』

(あぁ……なるほど、これは……)

 

 確かに惚れてしまいそうだ。瞬くような弱い光は私に向かって手を差し伸べているような気がした。私も、その光を掴むように手を伸ばす。するとどうだ……弱い光は徐々に大きくなっていき、一面に広がる暗闇を照らした。やがて光は私を包み、そして―――

 

「んっ……?」

 

 目映い光に思わず目を閉じていたが、薄く目を開けば……そこはどうやら保健室のようだ。夢……だったのか?いや、あれは確かに私の意識で……織斑との対話。わけが解らんなりに、状況を整理しようと上半身を起こす。しかし……頭がボーッとしてまともな考えが浮かばん。

 

「目が覚めたか?」

「織斑先生!?」

 

 タイミングの良い事で、保健室に寝かされた私の様子を教官が見に来た。教官を目の前にしたせいか、私の頭は一気に冴えた。それと同時に、私に何が起きたのかも思い出す……。少し目を伏せた私に対して、教官はいつも通りの堂々とした態度で、私へと向けて告げる。

 

「VTシステムを知っているか?」

「ヴァルキリー・トレース・システム……ですね?」

 

 教官曰く、我がシュヴァルツェア・レーゲンへと巧妙にVTシステムが組み込まれていたそうだ。本来はエネルギー切れがトリガーになるよう設定されていたようだが、操縦者の願望に依存するところも大きいとか。……それは、私が余程教官になりたかった……という事か。

 

「VTシステムは知っての通り条約違反だ……。お前に身に覚えが無かろうと、委員会からの取り調べを受ける事になるだろう。」

「……はっ、了解しました。」

「だからここは学校だと言っているだろうに。まぁ良い……確かに伝えたぞ。」

「あの、織斑先生。貴女からの宿題……今この場で解答させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

 要件を伝えると、手早く去ろうとする教官を引き止める。教官は振り向きすらしないが、一応は立ち止まってくれた。その背中が、とっとと話せと語っているように思える。私はこれまでの事と、先ほどの事を思い出し……自分なりに得た解答を、自信を持って教官へ語る。

 

「力とは、強さとは……前に進もうとする意志なのではないでしょうか。そして私に足りなかったのは、何の為に力を振るうか理解しようとしなかった事です。」

 

 私は確かに前には進んでいた。ただ……それは教官の虚像をただただ無意味に追い続けていただけだった。だからこそ今までの私の力は、暴力の域を出なかったのだろう。それも1つの力の形なのかも知れんが、今ならハッキリと解る。私の進むべき道には、単なる暴力など必要ではない。

 

「私は……貴女になる為に力を振るいません。私は私……貴女にはなれない。私はラウラ・ボーデヴィッヒ。私は私のままで、貴女を超える為に強くなってみせます。」

「なるほどな……悪くない答えだ。……励めよ。」

「はっ……はい!」

 

 私の言葉を聞いた教官が、少し笑った……気がした。すると予想外な事に、激励の言葉をいただける。ここは学園で、そういうのは必要ないと言われてはいるが……私は思わず敬礼して返事をしてしまう。私の返事を聞くと、教官はまるで満足したかのように保健室を出て行った。

 

『ああ……妹の事で1つ思い出したんだが。そちらにも気を付ける事をオススメしよう。』

『それは何故です。妹であるならば、私と同性なはずでは……。』

『アイツは男タラシ女タラシと言うよりは……人タラシだ。弟の方は気をつけていされば大丈夫だろうが、アレの人タラシっぷりには参るぞ。恐らくお前も、いつの間にやら―――』

 

 ふと、あの時の会話の続きを思い出した。ハハッ……どちらも教官の言った通りになってしまうとは、私の道もまだまだ解った物ではない……という事か。……八咫烏と畏れられながらも、藤堂があんなにも慕われているのは……私が、今まさに抱いている感情があればこそなのだな。私は自分自身に呆れるような……それでいて確かな満足感を胸に、バタリとベッドに倒れ込み天井を仰いだ。

 

 

 




黒乃→違ああああう!マイエンジェル、エネルギーとかいらないから!
シャルロット→黒乃が一夏と戦いたいって思うのは当たり前だよね!

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