どちらかといえば、くらいのものだとは思いますが。
(え~っと、会計の書類は……これか)
私は放課後の生徒会室にて、あからさまに溜まった仕事ですとでも言わんばかりの書類の山へ手をつけていた。諸々の理由はあるけれど、早い話でこのままじゃ生徒会は回らないだろうから。イッチーが生徒会の所属になってからは緩和されたようだが、今の彼はそれどころじゃない。
整備室でかんちゃんに出会ったってことは、高確率でイッチーが接触を始めたとみていいだろう。ともなれば、イッチーは生徒会の仕事までこなすことはできない。するとどうだ、仕事が溜まる一方という方程式が成り立つ。たっちゃんも本職の方で忙しいだろうからなぁ……基本的に暇な私が隙を見つけて頑張るっきゃない。
(とはいえ、あ゛~……頭痛い……)
昨日あまりの頭痛で気絶しておいて無茶をしすぎだろうか。というより、頻繁に軽い頭痛が私を襲うようになってしまった。誰かの話に耳を傾けていたりすると楽なんだが、今みたいに1人で黙々としてると頭の芯がズキズキとするような感覚が過る。
この現象に私は1つの結論を導きだした。……恐らくこれは、真にタイムリミットが訪れている。つまり、私がもうすぐ完全消滅を迎えるということだ。原因はなんとなく解ってはいるけど、こればっかりはどうしようもないというかなんというか……。
きっと私は、満足してしまったんだと思う。愛する人に心を捧げ、身体も捧げることができたから。勿論ずっと先まで一緒に居られたらなって考えてるけど、深層心理的な部分に眠る欲求が全て満たされてしまったんじゃないかって、そう……思わざるを得ないじゃん。
だってそう思ってた方が気が楽だしね。妙に考え込んで、消えたくない!なんて騒いだってしょうがないもの。だから、残るタイムリミットを少しでもイッチーの為に役立てないと。生徒会室へ足を運んだ理由としてはそれが1番大きい。あぁ……そういえば、随分と心配をかけちゃったみたいだった。
(そこに関しては反省しないと……。つって、反省したところでどうしようもないのはあるけど)
昨日は目が覚めたら保健室のベッドで、傍らにはイッチーの姿があった。起きるなりキスの雨が降り注ぐもんで驚いたったらない。イッチー的には私が気絶等で眠るのはトラウマみたいだ。私が憑依した時とか、モンド・グロッソの出来事が関係してるんだろう。
今回は比較的に短時間で済んだみたい。具体的には……2時間くらいかな。いや、別に他人が気絶から復帰するまでの経過時間を知らないから長いとか短いとか正確には解らないんだけどさ。経験者は語る……みたいな?って、気絶のプロか私は。
……うん、頭痛も引いてきたかな。ん~……波みたく周期的にやってくるのかも。また気絶してしまうレベルの痛みがこないことを祈るとして、生徒会の仕事を再開しよう。私は備品置き場を適当に漁ると、そこから電卓を取り出した。再度机についたところで、ふいに生徒会室のドアが開く。
「あら、黒乃ちゃんじゃない。いらっしゃい―――って黒乃ちゃん!?ちょっ、ちょっとなにやってんの!」
「仕事」
「それは見たら解るけどそうじゃないでしょう!聞いたわ、昨日は気を失ったそうじゃない。それなのに当たり前みたく手伝ってくれなくても大丈夫よ」
やってきたのはたっちゃんだった。目が合ったので会釈をすれば、向こうも快く私を歓迎―――してくれたのは束の間、我らが生徒会長は驚きを隠せない様子で詰め寄ってきた。そんでもって無理せんといてええんやで、みたいなことをいわれてしまう。それはいいんだけど、呆れ顔なのはなんとかなりませんかね。
というか、だいじょばないから私がこうしてやって来てるわけでありまして、だったらもっと仕事してくださいと心から―――ってあれ?生徒会室にしっかりたっちゃんが来てるのがまず異常事態なのだろうか。あれ?もしかしてこの人ってば真面目に仕事する気だったりしないよね。
「失礼します。会長、今日も職務を全うしていただき私は大変嬉しく―――って黒乃さん!?」
「虚ちゃんでもそういうリアクションになっちゃうわよねぇ……」
「……もしや貴女が引っ張って来たのでは―――」
「ないわよ、私は無実!流石に昨日気絶したばっかりの子を駆り出すほど私は鬼畜じゃありません!」
なにさ、虚さんまで驚いたような反応しちゃって。あ、でもたっちゃんが連れて来たんじゃないかって疑われてるや。完全にシロであるたっちゃんは先の発言が不服なのか、潔白と書かれた扇子をこれでもかと虚さんへ見せつける。見せつけられた方はなんだか面倒くさそうに解りましたからと返した。
「あの、黒乃さん。お気持ちは嬉しいのですが、そうまでなさる必要はないですよ?ここのところ会長は心を入れ替えたようですし」
「ま、まぁ?織斑くんに頼み事しといて私がなにもしないわけにはいかないもんねー」
「一見すると溜まった仕事ですが、計画的に片付ける算段はついているんです」
「スケジュールは虚ちゃんに組んでもらいました!」
なんだか虚さんが私の顔色を窺うように、本当に無理をしてくれなくて平気だと伝えた。理由としてはやっぱりたっちゃんが仕事をしているかららしい。なんてこったい、これはIS学園に局地的大雨でも降るんじゃないか?だとしたら余計なことをしてしまったかも。
というか溜まった仕事にみえるのは、たっちゃんの1回にこなす仕事量が半端じゃないからかな。もしそうならやっぱりこの人って超人だ。まぁそれはいいとして、片付く予定ならこれ以上はここに居る必要もないね。すぐ暇しようと思ったのだが、せっかくだからお茶でもと誘われてしまう。
断るのも悪いというのもあるし、一息入れたいというのもあった。生徒会お姉さんズのご厚意に甘えるべく、静かに首を縦に振って肯定を示す。すると虚さんは、どこか楽しそうにお茶の準備を始めた。結局のところ虚さんは人の世話を焼くのが好きなんだろう。
「あ、そういえばだけど黒乃ちゃん。今度の大会のパートナーは決まったかしら」
(いや、全然)
「そう?焦らないのは結構だけど、早いとこ見つけるのが身の為よ」
「専用機持ちが奇数なのにタッグ形式ですからね」
そうなんだよねー。原作と違って専用機持ちの私が追加されているから、その総数は11人となる。にも関わらず、大会の運営方針は原作と変わらず。そこは世界の修正力みたいなのが働いてさ、1対1になってくれたりしたら有り難かったのにね。
あ、でもそのルールだとゴーレムⅢが大量投入されちゃうのかな?それを考えると微妙なところかも。あれを1人に1機差し向けられると勝てないよ。しかもジャミングだとかで絶対防御なしでの戦闘になっちゃうし。世界がその辺りの配慮をするのはなんだか違和感が拭えないっていうのもあるけど。
「というか、織斑くんや箒ちゃんみたいな例外を除いて1年生の専用機持ちが多すぎるのよ。2年なんて私1人なのにねぇ」
「それをいえば3年生は1人もいないのですが……。3年生に在籍している身としては、なんだか意味もなく申し訳ない気持ちになってしまうといいますか」
(…………は?いや、なにいってんのこの人達……?ちょっと……待って、待った!)
私の目の前でそうボヤく2人。だが私からすればその会話はおかしい。何故なら、今たっちゃんは2年専用機持ちは自分1人だといった。そして虚さんは3年に至っては1人もいないといったのだ。おかしい……本来なら2年と3年にもう1人ずついるはずでしょう!?
「専用機持ちの合計」
「え、9人でしょう?」
(…………っ!?どう……なって……。くっ……紅茶飲んでる場合じゃない!)
焦りとともにたっちゃんの肩へ掴みかかり、私は質問を投げかけた。その解答は9人、まるでさも当たり前のことかのようにそう返された。混乱しつつではあるが、これで私のするべき行動は定まった。紅茶を飲み干し2人へ一礼すると、勢いよく生徒会室を飛び出した。
「……虚ちゃん、なんで私はいちいちあの子の機嫌を悪くしちゃうんでしょうね」
「今回に至っては流石に原因が解らないですが……?」
◇
(やっぱりない……!?)
私が訪れたのはIS学園の資料室。開いているのはこれでもかというほど分厚い在籍生徒名簿。もしかして年齢にズレが生じているのではと思って過去の記録を洗いざらい調べてみたが、私の記憶に該当する名前も顔写真も全く見当たらない。というかさ、それどころか―――
(名前……なんだっけ?どんな見た目してたっけ……?)
なんとなくだけど、彼女らが亡国機業サイドであり修学旅行編にて真相が暴かれるというのは記憶しているんだ。けど、ちゃんと思い出そうとしたら、その彼女らがどんな人物だったかが全く思い浮かばない。これは私の前世の記憶が薄れているからとかが原因ではないはず。
ワールド・パージ編や体育祭編はほぼ完璧に思い出せることから、そう結論付けることができるだろう。本当に彼女らのことだけ、まるで虫食いのように、ポッカリ穴が開いたように抜け落ちてしまっている。ということは、つまり、あまり考えたくはないが―――
(あの2人が、初めからこの世界に存在すらしていないから……?)
この答えならば、たっちゃんが当然のように専用機持ちの合計人数が9人だという理由も頷ける。……既に亡国機業側に―――という線は薄いか。もしそうならこれまでの戦いで遭遇しているはずだ。目的は不明にしても出し惜しみする意味なんてまるでない。特に学園祭編のイッチー襲撃なんかは……ね。
だとすればいったいどういうことなんだ……!?この世界は、初めから私の知っているインフィニット・ストラトスの世界ですらなかったということなのだろうか。今までの事件では彼女らが絡むことはなかったから、それに気が付くことができなかったと……?
……こういう表現はしたくないが、鷹兄の存在だって今考えればおかしいのかも。やはり原作には存在しない要素だし、なによりそんな有名な企業なら原作で描写があったろう。……そうか、そうか……多分だけど、そういうことになってくるのかも知れない。
(やっぱりこの世界は、最初から未知のインフィニット・ストラトス……!)
原作なんてなかった。導き出せるとすればこれしかない。偶然と私の不注意が重なり合い、今の今まで全く気が付くことができなかった。つまり、ここからは非常によろしくないってことだ!本来なら必要な人物がその場にいないとなると、それこそ世界にどういう修正力が働くか解ったものじゃないぞ。
……専用機持ちタッグトーナメント編……今私が生きているこの瞬間、それすらも正念場になりかねない。恐らくゴーレムⅢは順当に攻めてくるだろう。そうなると、彼女らの穴をどうやって埋めるかが問題になりそうだ。……ならば未知の存在である私が頑張るしか―――
(あ゛っ……たまぁ~……)
混乱も相まってか、ズキリというよりはズドンというふうな頭痛が走る。立ちくらんでしまいペタリとその場に崩れるが、どうやら気絶の心配はなさそうだ。……お願い、もう少しだけ持って。せめて私の知らない動きを始めた世界に、対抗させるくらいはさせてほしい。
とりあえず、それなら休めるときに休んでおかないと。本番でこんな頭痛ばっかりではまともに戦えたものではないぞ。未だふらつく足元でなんとか立ち上がると、壁伝いに自室を目指す。はぁ……こんな姿、イッチーにみられないようにしないとな。う~ん……今頃は整備室かなぁ?
◇
「別に上から目線なつもりはないんだけどさ」
「なんです……?」
「キミ、向いてないと思う」
「やっぱりそうなんですか……」
放課後の整備室では、一夏と鷹丸がそんなやりとりを繰り広げていた。一夏が向き合っているのは鎮座した白式で、空間投影式のコンソールを操作している。それを覗き込むようにして見守っていた鷹丸だが、ついには本音が出てしまう。いい辛そうではあるし悪気はなさそうだが。
「というか、整備を教えてくれっていきなりだね」
「えぇ、まぁ、まずは知るところからかな~と」
「ふぅん……そっか」
そう、ことの始まりは職員室に一夏がやってきたところからだ。目的の人物は鷹丸で、自分に整備を教えてほしい旨を伝えると、軽いノリで承諾され今に至る。まずは知るところから。そういう一夏は遠目に見える簪にチラリと視線を送った。向こうは自分のことに集中していて気が付いていないようだが。
「まぁ、もうちょっと別のところからいってみようか。少し待っててね~」
「え~っと、それは基盤?」
「そうだね、実際にIS内部に組み込まれているのとほぼ同じだよ。練習がてらに繋いでみよう。この中の部品は好きに使っていいから」
「あ、なんか先生の授業でやりましたね。よし、それなら俺も!」
鷹丸は自身の道具箱らしき巨大なケースを物色すると、中から手のひらサイズほどの基盤を取り出した。曰く、ISに組み込まれているパーツと同等の品だとか。とりあえず過去のおさらいから始めるつもりなのか、以前授業でやったらしい内容を選んだようだ。
(……そこからだと……何年かかるんだか……)
一夏が整備室に居て、鷹丸に整備を教えてもらっていることそのものには気づいてるようだ。その顔は呆れが露骨に浮かび、視線なんかは哀れみに近い。一夏が基本的な部分ですら躓いているからだろう。簪は深い溜息をつくと、ゆっくり2人の背に近づいた。
「基盤の配線……4番以降間違えてる……」
「え……マ、マジで?ちょっ、それならそうと指摘してくださいよ!」
「ん~?いやいや、キミが僕の授業をちゃあんと聞いてたら解るはずなんだけどねぇ」
「ぐ、ぬぅ、それをいわれると返す言葉が……!はぁ……更識さん、サンキューな」
一瞬みただけで問題点を割り出し、すぐさま指摘してやるとそれはもう驚いた様子だ。そして傍らに居たのになにもしてくれなかった鷹丸へ文句をたれるが、悪戯な笑みと共にボディーブローのようにジワジワと効くカウンターを返されてしまう。
とりあえず簪に感謝を述べるが、受け取る前からもう背を向いていた。別に整備を口実に交流を深めようという魂胆があるわけではないが、それを通じて心を開いてくれればと思っているだけに寂しさが過るばかり。気持ちを切り替えた一夏は、間違いだらけの基盤をどうしたものかとみつめた。
「ちなみにだけど織斑くん、これがなんの基盤かは解るかな」
「……もしかして、これも授業でやりました?」
「オッケー、遠回しに解らないってことだね。ちょっと資料を取ってくるから休んでてよ」
「す、すみません……」
自信家の気はありつつも決してプライドが高いわけではない鷹丸だが、流石に自身の授業を蔑ろにされているような気分になったようだ。取りに行くといった資料は恐らく教科書やノートだろう。すなわち、そこからおさらいしなければ一夏は手遅れということになる。
確かに整備科でなければ深くまで理解をする必要はないが、教えを乞うレベルにも達していないらしい。まさかここまでとは自分も思っていなかったらしく、心から恐縮した様子で出発する鷹丸を見送った。しかしそうなると、この空間で簪と2人きりということになってしまう。
(……話しかけてみるか)
今だってアドバイスという程でもないが、簪の方から指摘を入れてくれた。一夏はこれを全くチャンスがないわけではないと解釈する。とりわけ、黒乃が関わる内容なら食いつきがいいような気さえ。釣る……という表現はよくないが、その話題でいってみようと簪へ歩み寄った。
「な、なぁ」
「…………」
「小烏党のホームページとかってさ、どこにあるんだ?」
「……貴方に必要な知識ではない……」
「そうでもないって。まずは知るところから、だからな」
一夏のいうところの知ることとは、なにも知らずして否定から入る姿勢はよくないという考えからだ。思えば知っているのは名前くらいのもので、派閥があるなんてのは目から鱗だった。だからこそ手っ取り早い方法としてホームページの閲覧だったのだが、これがまるで見つからない。
それらしいものが削除されたような形跡はあり、総本山はかなり秘匿に運営されていると一夏は読む。目の前に居るのは事実上のナンバー2、となると知らない方がおかしい。簪は以前と同じく、時間を浪費しないために一夏の要求を呑んだ。携帯を手早く操作し、一夏に投げ渡す。
「変に弄らないで……」
「ああ、任せろ。おっ、なんかカッコイイな」
「七宝刃は特別仕様……」
トップページに映し出されたのは小烏党そのもののエンブレムだったが、短いアニメーションと共に壱ノ太刀のエンブレムに切り替わった。そうしてそれを背景にメニュー欄等の項目が現れた。曰く七宝刃のメンバーは特別仕様で、専用の諸々が多数用意されているようだ。
「こういうのはスレっていうんだったっけ。ここって主に交流サイトなのか?」
「似たようなもの……」
「へぇ~……」
黒乃様について語るスレ。そんな項目から始まり、黒乃に関わる多くの者が語らいの内容として挙がっているらしい。一夏は自分の名も見つけたりもしたが、なんだかボロクソに叩かれているような気がして開くのを止めた。とりあえずスレのタイトルだけに目を通していると、携帯の画面に手紙のようなマークが表示されるではないか。
「なぁ、これって……」
「……ダイレクトメール。今手が離せないから……」
「じゃあ、代わりに読むな。えっと―――神立さん、黒乃様の近況はどのような感じなのでしょうか……だってよ」
とりあえず画面を見せてみると、小烏党員同士の直接的やりとりが行えるダイレクトメール機能のようだ。簪は壱ノ太刀・神立としての立場上、様々な人物からそのようなメールを受け取ることが多い。内容はそれこそ多種多様だが、今回の場合はけして無視できないようなものだった。
簪が神立のコードネームを得ているのは、更識の情報処理能力を駆使し、黒乃の身の回りの様子を他の党員に配信しているという要因が大きい。IS学園に入学してもそれは継続可能なため、定期報告じみたスレ立てを行っている。そういえば最近は打鉄弐式のことにかまけて怠っていたか、そう思い立った簪は一夏から携帯を回収し手早くスレを立てた。タイトルはこんな感じで―――
【定期】黒乃様について語るスレ【報告】
1 壱ノ太刀・神立
黒乃様が織斑 一夏と交際を始めた件について
「ちょっ、俺へのあてつけかなにかか!?」
「違う……。荒れるのも確かだけど、これは皆に報告すべき……」
後ろから一連の作業を覗いていた一夏は、とんでもない報告に目玉をひん剥いた。近頃は特に報告すべきことがなかったのも確かだが、何も一夏を困らせようとかいう理由でそうしたわけではない。このスレは神格派の人間しか閲覧不可能な設定がされている。
神格派の人間は冗談抜きで黒乃を崇拝している者たちで構成される。となれば、この報告はしっかりしておくべきだと簪は考えたのだ。そうやって簪が呟いている間に即レスがつき、案の定スレは阿鼻叫喚の様相を呈し始める。次々と増えていくコメントに、一夏はなんだか不安感が過った。
2 名無しの小烏党員
久々の神立さんktkr!
……と思ったらなんじゃこりゃあ!
3 名無しの小烏党員
い、いつかそうなるとは思ってたし……(震え声)
4 名無しの小烏党員
嘘だと言ってよバーニィ!
5 壱ノ太刀・神立
現在隣に本人が
kwskは彼に直訴すべし
6 名無しの小烏党員
隣に本人とな!?
7 名無しの小烏党員
ICKニキ出てこいやぁ!
「いや絶対楽しんでるよな!?」
「そんなこと……ない……」
「ある、あるね!絶対に今ちょっと笑ったからな!」
「じゃあ……後は頑張って……」
本人が隣に居るのをまさかのぶっちゃけである。小烏党員たちは即座に反応を示し、もはや一夏が受け答えをしなければ収まりがつきそうもないカオスっぷりとなってしまう。終いには頑張れという半端ではない無責任な台詞と共に携帯が手渡された。一夏は覚悟を決めて、慣れない手つきで返信を始めた。
「たーだいまっと。おや、更識さん……随分と楽しそうだね」
「っ……!?貴方の……気のせい……」
数冊の教科書やノートを携えた鷹丸が整備室へ戻ると、いつも通りの意地悪な表情で簪に対してそう指摘した。瞬間、簪の表情が急激に強張る。裏を返せば、先ほどまで頬が緩んでいた証拠だ。確かに一夏が四苦八苦していたから少しばかりの仕返しをした気分ではあった。
しかし、今指摘されたのはそういう楽しそうという感じではない。純粋に一夏とのやりとりを楽しんでいたから、頬が緩んだ―――そういうニュアンスを孕んでいた。簪にとってはそんなことあっていいはずもない、絶対にありえてはならない。一瞬で表情が戻った原因はそれだ。
「織斑くん、これ僕からの宿題ね。暇なときにでも復習してみてよ」
「は、はい……ありがとうございます。というか本当にすみません、なんか手間かけさせただけになっちゃいまして」
「ううん、理由はどうあれ興味を持ってくれただけで僕は嬉しいよ。それじゃ、2人ともほどほどにね」
「…………」
本当は一緒に問題を解くつもりだったのだろうが、一夏が忙しそうなのを察して宿題というかたちに。一方の一夏は本気で忙しそうで、スレの返信を行いながら鷹丸と会話しなければならないほどだ。普通は失礼に価するだろうが、鷹丸がそんな性格でないのは周知の事実。
むしろ嬉しいとの感想を残して、鷹丸は整備室を後にした。しかし、簪は鷹丸の最後の言葉が気に入らないようだ。2人ともと一緒くたにされた部分だろう。別にともではありませんとでも言いたげにムスッと機嫌が悪そうな様子になり、簪はそのまま一夏から携帯を奪い取った。
「うわっ……と。いいのか?途中だけど」
「構わない……」
「そっか、ならいいや。また明日な、更識さん」
「…………」
一夏の言葉にロクな返事もみせず、どこか大股で歩きながら整備室を後にした。簪の頭に渦巻くのは、やはり鷹丸は気に入らないという苛立ち。飄々として掴みどころがなく、やろうと思えばなんでもできてしまう……どこまでも自身がコンプレックスを抱く姉に似ているから。
その点、一夏はまだ可愛い方である。納得はいかないし、きっと考えも相いれない。けど簪だって一夏が100%の割合で悪いわけではないのは理解している。そう、頭でそれは解っているつもりだ。だからといって納得してよいかと聞かれればそういうわけにはいかない。
『また明日な』
(また……明日……)
そんな言葉をかけられたのはいつ以来だろうか。自ら他人との関わりを避けているというのもあるが、4組の女子を中心として多くの者が自分をいない者のように扱うから。だがこんなことでくじけてなる物か、私の崇拝する彼女はもっと険しい道を歩いて来たのだから。
(…………また……明日……って、また明日も来るつもり……?)
なんとなく一夏の言葉に違和感を覚えてみれば、バッと振り向いて思わず整備室の方を眺めてしまう。紛れもなく一夏はまた明日といった。それはつまり、また明日も自分と一夏が出会う可能性が高いということを示唆している。それに気づいた簪は、肩を落としながら溜息を吐いた。
(……なにか考えないと……)
それでなくても誰かさんのせいで作業効率が落ちているというのに、これ以上邪魔が入ってはそれこそろくに進むはずもない。一夏が拒絶しても壁をぶち抜こうとする性格であるということは短い接触で悟った。なるべく干渉されずに済む方法を探さなくては。
無駄に気苦労が1つ増えてしまい、先ほどまで大きく歩を踏んでいた足取りも途端に弱々しくなってしまう。そんな様子の簪は周囲からすればいつものことだが、すれ違う女子たちは露骨に機嫌が悪そうな簪に対し、なんだか珍しい姿を見たと思ったとか思わなかったとか……。
黒乃→原作なんて最初からなかったんだ……!
このあたりから構成を変更してお届けしようと思います。
詳しいことは7巻の内容が終わり次第にお知らせということにさせてください。