ISー無限の軌跡ー(スランプ中につき更新速度低下中)   作:ハマトラ

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その愛は届くことがなかった
その時、人は嘆くのか、乗り越えて前へ進むのか、それとも・・・・・・・


第5話 愛歪む

一夏がまず疑問に思ったのは最初に老執事がアリオスからアリアのことを聞かれた時だった。うろたえまるでそう言わせられている感じがした。

そしてその疑問が確信に変わったのは本人に直接会った時だった。その目から何かを隠しているように感じた。

何よりアリオスの問いに対し初めて聞くような感じがあった。そしてその疑問はアリオスも抱いていたらしい。

 

一夏「じゃあ本物のアリアさんは?」

 

アリオス『おそらく、近くの森の奥にでも監禁されているのだろう。』

 

一夏「それで、その偽物の正体は?」

 

アリオス『もう解っている。ニーナ・アレイシス、テオの秘書で元婚約者だ。デュノア社に確認してテオの倒れる数週間前に休暇を取って以来姿を消していることも掴んでいる』

 

一夏「元婚約者?」

 

アリオス『ニーナはデュノア社の系列企業の娘でその伝でテオと婚約していた。しかし、既にテオにはアリアという恋人がいて将来を誓い合っていた。テオは両親を納得させて婚約を破棄、そしてアリアと結婚した。』

 

一夏「それを未だに認めないニーナ・アレイシスがアリアさんを監禁してなりすました?」

 

アリオス『ただなりすましたんじゃ無い。亡国機業フランス支部に調べさせた、ニーナらしき女性が闇医者の所へ行く所を目撃されていた。』

 

一夏「闇医者?・・・・・・・・まさか!」

 

アリオス『ああ、奴は整形して顔を変えたんだ。アリア・デュノアにな』

 

その時、電話越しに凄まじい銃声が響いた。

 

一夏「アリオスさん、まさか追われて?」

 

アリオス『アリア・・・・・・いや、ニーナが雇った殺し屋だ。こちらはいい、お前はテオの娘を探せ。おそらく旅行中というのは嘘だ、今もフランスのどこかにいる。見つけたらフランス支部に行け。俺も追っ手を撒いたら向かう』

 

一夏「解りました、アリオスさんも気をつけて」

 

一夏は携帯を切ってしまうと周囲を警戒する。先程の男達はいないようだった。

 

??「あの・・・さっきの電話・・・」

 

一夏「ああ、ごめん。大丈夫だった?なんであんな連中に・・・」

 

その時、一夏の脳内を今まで聞いた情報が巡った。旅行中と聞いたデュノア社令嬢が行方不明、そして殺し屋と思われる男達に狙われていた少女、一夏は一つの仮定に行き着いた。

 

一夏「君・・・・・・・名前を聞かせてくれるか?」

 

少女はゆっくりと帽子を取る。綺麗な金髪が風になびき、吸い込まれそうなアメジスト色の瞳と整った顔立ちに一夏はつい見とれてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロット「私の名前はシャルロット・・・・・・シャルロット・デュノア。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アリオスはマシンガンを乱射する追っ手に追われていた。弾幕が止むとアリアになりすましたニーナ・アレイシスが追っ手の後方から現れた。

 

アリア?「残念です、アリオスさん。秘密を知ってしまった以上、貴方を生かしておく訳にはいかなくなりました」

 

アリオス「本性を表したな、ニーナ・アレイシス。」

 

ニーナ「っ!何故その名を・・・・」

 

アリオス「調べたからな。お前は数週間前、休暇届けを出して闇医者の元でアリアの顔に整形してそのままおそらくは急な病の様に見せる毒薬でも手に入れたのだろう。テオが倒れる少し前、アリア、いやなりすましたお前がデュノア社にテオを訪ねて来ているのも確認している。大方差し入れと称し毒入りの菓子でも渡したのだろう。何も疑わず口にしたテオは倒れ、医者に診せても病の様にしか見えない。後は屋敷の使用人を脅し、アリア本人を監禁すればお前は完璧にアリアになれる筈だった。しかしそこで一つの誤算があった、アリアの顔をしたお前が刺客と共にアリアを監禁する所を娘のシャルロットが見てしまった。」

 

 

 

 

 

 

 

シャルロット「その後、執事が私を逃がしてくれたんだ。『とにかくどこかへ身を隠して下さい。近い内に助けを呼びます』ってね。まさかアリオスさんが弟弟子連れて来てくれるなんて思わなかったなぁ」

 

一夏「まだ初伝だけどね、けど大体状況は解った。ニーナ・アレイシスにとって君はテオさんを奪った人の娘で計画の目撃者、だから殺し屋を差し向けて消そうとしてるのか」

 

シャルロット「まさかこんな早く潜伏場所がばれるなんて・・・・」

 

一夏「大丈夫、フランス支部なら匿ってくれるし何かあったら、俺が君を守る。とにかく今は移動しよう、さっきの奴が仲間連れてくるかもしれないからな」

 

一夏はシャルロットの手を取って走り出した。その時、シャルロットの顔が少し赤くなっていることに気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

ニーナ「一目惚れだったわ。父の都合でデュノア社の屋敷に来た時よ、テオに会ったのは・・・・すぐに父に頼んでテオと強引に婚約した。それなのに・・・」

 

 

 

テオ『嬉しい話ですが、僕にはもう心に決めた人がいます。婚約は破棄させて下さい』

 

 

 

ニーナ「どうして!財力も容姿も!全部私の方が上なのに!!それなのに!!!!!」

 

アリオス「・・・・・・・彼が自分の意思で選んだ女性だ。だからこそテオの両親もテオの意思を尊重した。お前は届くことの無い想いを引きずっているにすぎない。」

 

ニーナ「いいえ、まだよ!!あの女の娘と貴方とあの弟弟子を始末すれば全てがうまく行く。私はアリア・デュノアとしてあの人の愛を受けられる」

 

あまりにも屈曲し歪んだ愛にアリオスも若干恐怖に似た表情を浮かべる。

 

アリオス「シャルロットはどうする?娘が行方不明となれば怪しまれるだろう」

 

ニーナ「そこらへんの孤児でも顔を変えて代わりにすればいい。これから死ぬ貴方が知っても意味の無いことでしょうけど」

 

アリオス「・・・・・・そうでも無い」

 

アリオスは懐からボイスレコーダーを取り出した。録音のスイッチが押されている。

 

アリオス「貴重な証言が取れた。古びた手だが、使っていた親友に感謝しなければな」

 

ニーナ「アリオス・マクレイン!!!!!」

 

周りの刺客が一斉に銃口を向ける。

 

アリオス「八葉一刀流、弐の型・・・・・"疾風"」

 

それは一瞬の出来事だった。アリオスが視界から消えて一人が倒れる、そして一陣の風が駆け抜けて刺客全てが倒された。

 

アリオス「悪いが、俺も娘がいる身だ。簡単に死ぬわけにはいかなくてな、今はシャルロットの安全が優先だ。ここは退かせてもらう」

 

アリオスは近くの窓を破り、外へと飛び出した。

呆然となるニーナはへたり込み、アリオスの二つ名を口ずさんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ニーナ「か・・・・・風の剣聖」

 

 

 

 




シャルロットは男装させられていないので一人称を私にしました


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