ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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太平洋艦隊 暁の空の下 斯く戦えり

大和艦橋――

 

光近は横須賀の泊町ふ頭に入港した大和の艦橋から生徒たちのその光景を見ていた。

 

「提督、横須賀女子海洋の晴風、武蔵、そしてドイツからの留学生艦がすべて入港しました」

「そうか、ようやく終わったようだな」

「ですね」

夕陽の光が大和の艦橋を暖かく包み込んでいる。

 

「艦隊の状況は?」

「航空部隊は、全機1時厚木に降りています。但し、戦略航空団は横田に戻りました、各水雷戦隊は久里浜に第七艦隊の水雷戦隊は泊町の第三バースに各艦入港しています」

 

「そうか、帰ったら書類仕事の日々に追われそうだな」

「これだけ派手にやったら、それは大変なことになるでしょうね」

これから先のことを軽く考えて苦笑いする大和。

 

「なぁ、大和?」

「なんでしょう提督?」

「俺は、ちゃんと提督できていたか?」

と深く帽子をかぶりながらいう光近。そんな光近に微笑むように大和は向き直り

 

「えぇ、ばっちり提督できていましたよ」

「そうか、それはよかった」

再び帽子を被り直す光近。

 

「さて真霜さんの顔でも見に行くとしましょうかね?」

「えぇ、そうしましょうか」

そういうと、光近は大和と共に晴風が泊まっている第三岸壁に向かった。

 

第三岸壁――

 

晴風のいる岸壁まで行くことが各艦に知れ渡っていたのか、艦娘たちがついていきたいというので、艦娘たちを待ってから大和のある泊町から歩いて数十分、第三岸壁に到着した光近達。

 

「なんとか、無事だったようだな」

「みたいですね」

隣にいる大和がいう。

 

「ま、無事で当然よ、だって、我らが太平洋艦隊ですから」

「うまいね、言いますね蒼龍」

「本来でしたら、慢心してはダメといいますが、今はいいでしょう」

と蒼龍が言い、ニコリと笑いながらいう加賀と赤城

 

「無事でよかったネー」

「そうだな、まさか武蔵が武蔵に向けて砲を向けるとは思っていなかったがな」

苦笑する武蔵。

 

「ちょうど、陽が沈み始めたな」

「だな――」

光近を中心に、大和、赤城、天城、矢矧、浦風、浜風、磯風、雪風、Верный、暁、雷、電、武蔵、扶桑、蒼龍、葛城、妙高、那智、神通、時雨、夕立、天津風、島風、阿賀野、曙、潮、漣、朧、金剛、加賀、雲龍、愛宕、鳥海、阿武隈、村雨、春雨、秋月、照月、初月、火野夏音、吉野美香、米倉雫夏、梅津岬が横並び一列に並び、夕陽に照らされたその姿は、まさに歴戦の猛者よろしく非常に絵になっていた。

 

そんな中だった。

 

「あ、光近君!」

一番先に気づいたのは、真白さんだった。真白さんはこちらに駆け寄ってくる。

 

「はい、彼女らを見に来ましたよ、全員無事みたいですね」

「えぇ、全員無事よ」

「それはよかった」

彼女らを見ながら言う光近。

 

「さて、水を差すのは悪いのでこれで私たちは――」

と帰ろうとした時だった。

 

「提督さーん!」

ひと際、大きい声。見れば、この声はメイちゃんの声だった。見れば、晴風の面がこちらに手を振っていた。

ここまでされてしまえば帰るに帰れないので、光近は彼女らの下に向かう。

そして光近めがけて全員が駆け寄ってくる。

 

「明乃さん、どうもお疲れ様でした」

「いえ光近さん、いや米内提督には本当にいろいろとお世話になりました」

「はははっ、こちらこそ、貴重な経験をさせてもらったよありがとう」

と光近と明乃は握手を交わす。そして

 

「米内提督、そして太平洋艦隊のみなさん」

「はい」

振り向いてみれば、そこに真雪さんがいた。

 

「今回、生徒を救っていただき、ほんとうにありがとうございました、あなた方の協力がなければ今回このように事態は収束しませんでした、本当にありがとうございました」

深々と頭を下げてくる真雪さん。

 

「私からもお礼を言わせてください、米内提督、あなた方太平洋艦隊の力がなければ今回あそこまでうまくいかなかったです、海上安全整備局としてあなた方太平洋艦隊にお礼を申し上げます」

真霜さんも頭を下げてくる。

 

「礼には及びません、仕事ですから」

光近は淡々とそういったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数年後――

 

西之島沖にはあの時と同じように何隻もの艦船が集結していた。

 

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「艦長、いや岬さん、これで晴風にとっては最後の航海ですね」

「そうだねシロちゃん、けど、大丈夫、これからも晴風のみんなと一緒だよ」

とツインテールがトレードマークの艦長は副長にニッコリと笑みを向け再び視線を海上に戻し、双眼鏡に戻して眺める。そんな中

 

「艦長、全艦、合流完了、艦隊航行第三序列にて航行中です」

「ありがとうココちゃん、テアちゃんたちは?」

「むろん、問題ありません、武蔵後方三番目にいます」

「わかった、さてと――っと」

今後は双眼鏡でその海上の先を見た直後

 

『艦長、武蔵より連絡、右10度、大型艦隊を電探で補足したとの連絡が入りました』

「いよいよですね、艦長」

「うん、ルールだと、視認圏内で入ったら戦闘開始だったわね?」

「えぇ、そういうことになっています」

そういうと、彼女は伝声管に駆け寄る。

 

「マロンちゃん、機関大丈夫?」

『問題ないでーい!最大船速もってのこいでーい!』

と勇ましい声が聞こえている。

 

「艦長、艦隊旗艦武蔵の知名艦長より、戦闘準備の指示です」

とココちゃんが伝えてくる。

 

「モカちゃんから?もしかしてなんかとらえたのかな?」

「だと思いますよ?」

「なら、そうしよう、砲雷撃戦用意、目標――」

彼女の勇ましい声が艦橋に響き渡った。

 

 

そして、その頃もう一つの艦隊の艦橋では白衣の青年がその艦隊指揮を執ろうとしていた。

 

艦橋――

 

「さて、今年度の卒業演習の相手は彼らか…なぜか、感慨深いな」

「そうですね、感慨深いですね」

隣ではあの時と同じようにポニーテールの少女がフフと笑う。

 

「あの時と同じ編成、尚且つ同じ戦力を投入している、ここまで豪華なものはないよ」

「…卒業演習にしては、いささか難易度が高いのでは?」

「それが彼女らに向けての手向けだよ」

「まぁ、我ら太平洋艦隊は、提督の指揮下にありますから、何ともいませんけどね」

「ありがとう」

そういう青年。

 

「ちなみに、あの彼女は結局どうなったんですか?」

「あの彼女?」

「えぇ、あの猫のパーカーの子です」

「あぁ~メイちゃんのことか、特に何もないぞ?」

「…え」

「…え、ってなんだよ、えって?」

「・・・正直に申し上げますと、まさか気づいていないとは思ってもいませんでしたよ」

「なにがさ?」

「……もう、いいです、その代わり帰ったらしごきますからね?」

「大和、どこで?」

「武蔵で、です」

「そ、それはやめてくれ」

「では、その答えを御蔵島に帰るまでに考えてみてください、当っていればなしです」

「…わかった、考えておこう」

と軽く鬼の形相と呆れたような表情を向けられ困惑する青年。

 

「(にしても、どういうことなんだろうな……)」

と考えていると

 

『提督、直教艦武蔵がレーダーに入りました』

「では、始めようか」

「えぇ」

そういうと、青年は腰をゆっくりと上げる。

「対水上戦闘用意!目標!卒業演習艦隊!!」

 

両者が激突し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、それからさらに数年後――

 

「みなさん初めまして、この太平洋艦隊の提督の米内です、今日からあなたたちはこの太平洋艦隊の一員となって、海洋に出ることになります、つらいこともあるでしょうが、穏やかな海はいい船乗りを育てない、という言葉がありますが、仲間を助け合い、厳しい天候にも耐え、荒い波を越えた時に貴方達は一段と成長しているはずです、この太平洋艦隊での目覚ましい活躍を期待しています」

光近は彼女らに向けてそういったのであった。

 

 




ハイスクールフリート編・これにて完結!!

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