ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
「晴風突入部隊です!」
「よく来たな」
そして、全員が予定の位置についたことを確認するブラックバーンは攻撃開始を命じた。
一斉に、艦内通路に向けて、非殺傷型の海水手榴弾が頬り込まれ、小さな衝撃を隊員たちは合図にして、扉をけ破る勢いで艦橋に続く通路に突入する。そして、銃声が蠢き乗組員たちを気絶させていく。
耳を澄ませば、あちらこちらから音が聞こえ、派手な騒ぎになっていた。
「行きますわよ!」
ブラックバーンの隣を着物を着た晴風の乗組員の少女が薙刀を携え駆け抜けていく。
そして、襲い掛かってくる生徒を薙刀で倒していく。
「あの子、すごいな!」
と驚嘆の声を挙げる特殊部隊の隊員たち。
「(前に出すぎだ!)」
だが、ブラックバーンは、その状況を冷静に俯瞰していた。彼女は、あまりにも興奮していたのか、彼女の斜めの通路から襲ってくる生徒に気が向いていないようだった。
ブラックバーンはすぐさま、彼女の背中に回り込み、生徒に向けて、トリガー を引く。
「あら?」
「暑くなるのはいいが、あまり張り切りすぎるなよ?」
「え、えぇ――行きますわよ!」
「おう!」
そして、ガン&薙刀というまさに異色のコンビが周囲を圧倒していく。そして、艦橋直下の階段に到着した。
「晴風の面々は、このまま艦橋に向かってくれ、通路と退路はこちらで確保する」
「わ、わかりました!」
そういうと、晴風の面々が艦橋に続く階段を駆け上がっていった。
「隊長」
隊員の一人が話しかけてくる。
「あぁ、言わなくてもわかっているさ」
ブラックバーンは、静かにその闘気をため、構える。
「小隊!右から回り込め!俺たちは、艦橋確保の時間を稼ぐぞ!撃ちまくれ」
威勢よくブラックバーンがその攻撃を命じていく。そして、生徒たちを次々と無力化していく。
そして、晴風の乗組員に渡した通信機から艦橋に閉じこもっていた面々を確保したという連絡が入る。
「隊長!」
「まだだ!」
一瞬の緩みが戦場では壊滅をもたらす。それを知っていたブラックバーンは、隊員を一喝した。
「まだだ、帰るまで気を抜くな!」
「は、はい!」
と言った時だった。艦橋から先ほどの晴風の乗組員と武蔵の閉じこもっていた乗組員たちがやってくる。
「武蔵の乗組員の方ですね?」
「はい」
通信機には続々と武蔵から離れていく小隊達。そして見れば、退路の先には、こちらに敵意を向けている生徒がいた。
「…まだ、あんなにぞろぞろいたのか」
「ですね、隊長」
退路をふさぐ形でこちらにじりじりと寄ってくる生徒たち。
「(――正面突破、多少手荒い真似をしてでも突破するしかなさそうだな)」
と考えていた時だった。
DDDDD!!DDDDD!!
「――ッ!?」
まさに退路の反対方向から聞こえてきた銃声に驚くブラックバーン。そして、全ての生徒が倒れ、退路が確保される。同時に、その退路に立っていたのは、ほかでもない軍服姿の男性とそして、少女たちだった。
side 光近
「なんとか、間に合ったってところかな?」
「で、ありますな」
「そうですね」
光近とあきつ丸、そして大和は軽く顔を見合わせる。あきつ丸は安全を確認し、腰のホルスターに拳銃をしまう。光近は視線を退路の先にむけると、ブラックバーンと、武蔵の艦長 知名もえかがいた。
だが
「モカちゃん!」
「ミケちゃん!」
光近の横を明乃が駆け抜け、知名もえかに抱き着く。その光景を何処かほほえましく見つめる光近。そして、、光近は腰元にある無線機のスイッチをオンにし、無線を口元に当て、全域通信にし
「関係各所に告ぐ、武蔵の制圧完了、繰り返す武蔵の制圧完了、乗務員は全員無事、乗務員は全員無事である」
二人が泣いて抱き合っている横で静かに言う光近。そして、光近は回線を変え
「太平洋艦隊の諸君、本時刻をもって相模湾における全状況および作戦を終了とする、皆ご苦労だった」
何処からかほっとした声が聞こえる。
「提督、海上安全整備局から、横須賀の港をすべて開けたとのことです」
「そうか」大和からの報告を受け、光近は再び無線を取る。そして
「作戦終了――全艦、横須賀に一旦、帰るぞ」
大和の汽笛と共に、艦隊は横須賀に転舵していく。その上空を無数のジェット戦闘機が心地よい轟音と共に空を駆けぬけていく。光近の心は何時になく穏やかだった。