ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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あ々 栄光の聯合艦隊

――蒼龍飛行甲板

 

甲板には、続々と完全武装した艦載機が上がってくる。それにパイロットが続々と乗り込んでいっていた。

 

「全員出るぞ!」

『はい!』

一斉に号令をかけるのは、この蒼龍航空隊のトップ、三船紫だった。ヘルメットと安全装置、それにラダーやエルロンを確認し、エンジンをふかす。

 

『一番機、一番機、こちら蒼龍管制、聞こえるか、どうぞ?』

「こちら、一番機、聞こえるぞ」

『一番機率いるブルードラゴン隊は、発艦後、方位10に迎え、発艦後はチャンネル3Xにすること』

「方位10に、チャンネル3Xだな、了解した」

そういうと、誘導員の指示に従い、発艦位置に向かう。

 

「一番機、出る!」

その言葉と共に、三船の乗り込んだ烈風改は、出力を上げて飛び立っていく。そして高度2000ftに到達した。

 

 

 

Brr!!

エンジン音が機体の中にも響いていた。

 

「(相変わらずってところか)」

眼下には、艦隊の姿が見える。そして、左右には蒼龍航空隊を指し示す蒼い龍のマークを付けた艦載機の姿があった。そして、その前方には、納紺色の加賀の国の紋所のマークを付けた艦載機の群れが飛んでいた。加賀航空隊だ。

 

「(一航戦、加賀隊も本気のようだな)」

滅多に見せない陣を組んで飛行している加賀航空隊。さぞかし、加賀のCDCは物凄い緊張感なのだろうと思っていると、空に一本の線が引かれた。

 

 

 

キィイイィィイイイィィンッ!!ゴォオオォォオオオオッ!!

 

物凄い轟音とその衝撃波。並みの操縦者であれば、これで姿勢を崩すが、二航戦と一航戦のパイロットにそんな人間はいない。というより、一航戦加賀航空隊の方は、慣れている感じだ。

そして、三船の視線の先の青空には、白い尾を引いて颯爽と駆け抜けていく編隊。

 

「(おぉう、今回はホントにヤバい事態じゃねぇか)」

と内心思いながらいると。

 

『た、隊長、あれはなんですか!?』

後続の隊のパイロットから質問が飛んできた。

 

「あぁ、知らねぇ奴もいるもんな、あれは戦闘機だよ」

『戦闘機、自分たちも戦闘機ですよね?』

「ん?まぁな、あっちはジェット戦闘機ってやつだよ、ちなみに、お前、後ろのマーク見えたか?」

『はい、紅い色に鷲のマーク、赤城航空隊に見えたのですが、なんか違いました』

「おぉう、目がいいじゃねぇか、あれは俺らの艦隊の戦略航空団ってところが保有している機体、確か、名前はストライクイーグルってやつだ」

『よくお世話になっている、E-3Xとは何が違うんでしょう?』

「まぁ、早いってところだろうな」

『速い、ですか…』

「あれは、一航戦でもトップ中のトップが乗りこなす機体だからな、まさにAceクラスだろうよ」

『へぇ・・・』

感心していると、今度は違う音と共に、艦載機にかぶさるような巨大な影が現れた。

 

「おう、俺らがいつもお世話になっている奴の登場だ!」

うなりをあげながら、こちらにやってくる巨大な機体、E-3Xだ。そして、いつも通り、レーダーディスプレイに情報が表示される、

 

『マジックから、全タスクフォースへ、司令官より武蔵作戦を進めてよいとの命令が出た、各機、こちらの誘導に従いつつ、武蔵の対空砲火空域への突入に備えよ――武蔵への攻撃を許可する』

「っしゃぁああ!!いくぞおめぇらぁぁア!!」

女性とは思えない物凄い男勝りなこえを上げ、思いっきりバンクを振る三船。その後ろに面々が連なるのであった。

 

 

 

 

晴風side――

 

艦橋は相変わらず自らの無力さなどを悔やんでいた。だが、状況は刻一刻と絶望へと進んでいた。

そして、先ほどからアラームが鳴り響いていた。

 

『主砲弾3こちらに向かってきます!』

「回避して!」

「はい!」

思いっきり取舵をとり回避するが、やはり46㎝砲弾の威力は凄まじく外れても思いっきりその船体が揺れる。

 

「艦長!」

艦長がもうダメな状況の中、機関室に連れ込まれていた副長が戻ってきた。

 

「はぁはぁはぁはぁ――」

ここまで全力で走ってきたようで息が上がっているみたいだ。そして、彼女はゆっくりと明乃に近づく

 

「私は、あなたの……マヨネーズになる!」

「ま、マヨネーズ?」

わけのわからない状況に戸惑う艦橋の面々。

 

「あ、あの副長はなんと言いたいのでしょうか?」

「艦長の支えになりたい!」

面と向かって言い放つ真白。

 

「艦長は今まで通り決断して行動して運を引き寄せて、その代わりほかのことが私が――」

言葉に一瞬だけつまる真白。だが

 

「晴風のみんなが何とかする!そう思っているのは、私だけじゃない!海の仲間に越えられない嵐はないんでしょ?」

 

「シロちゃん、みんな――」

『武蔵より発光信号、読み上げます!』

そんな時、マストより通信が飛び込んできた。

 

『貴艦は、そのまま本艦と距離を開けられたし――接近は危険、主砲弾今だ豊富』

「もかちゃん無事だったんだ!」

「なら、なおさら助けるしかない」

その直後だった。

 

「武蔵より砲弾!直撃コース!6発来ます!」

「っ!?」

気を取られていたせいか、その対応が遅かった。

 

「まさか、あたる――!?」

「とりかじ一杯!」

もはや間に合わない全員がわかっていた。だが、その時だった。

 

ゴォオオォオオオォォッ!ヒュールルルルルル・・・!!ズガァァアアアアンッ!!

 

 

晴風のすぐ左で、6発の砲弾がすべて撃墜された。ブルーマーメイドにはこんな技術はない。

 

『電探に反応…艦影…艦影30を超過――大艦隊です!速力40ノットでこちらに向かってきます!』

電探室からまさかというのが飛び込んでくる。

 

『右舷から飛行物体視認…航空機…しかも早い…航空機!多数接近!』

『戦闘の艦影は…大和型...あれは武蔵じゃない・・・大和型1番艦大和です!』

思わず、全員がその方向を見る。その方向には、まさに黒鋼の城が戦列を作ってこちらに向かっていた。

その様相は、まさに頼もしいと言わざるを得ない。

 

「ブルーマーメイドの主力は今はいない・・・ということは…」

見ればブルーマーメイドの大和ではない。

『旗印視認――あれは…太平洋艦隊です!』

太平洋艦隊という言葉に艦内が盛り上がる。

 

「大和が先頭で、旗印がZ旗と聯の字…あれは太平洋艦隊主力の聯合艦隊です!しかもその後ろは赤城!ということは、第一空母航空団です!」

「あれが…本物の聯合艦隊!?」

芽衣がそういうのも無理はない。明乃たちも太平洋艦隊の存在や法律などは多少学んでいた。そして、その聯合艦隊のことについても学んでいた。だが、イベントなどでしか見ることの出来ない連合艦隊。さらに総旗艦大和と第一航空団の赤城といった本来なら滅多にお目にかかることの出来ない幻とも言える艦隊が目の前に現れたのだ。この状態での太平洋艦隊の聯合艦隊は下手すればこの地球上最強の艦隊なのだ。

 

『旗艦より発光信号――読み上げます゛こちら太平洋艦隊聯合艦隊――これより武蔵救出作戦を開始する、晴風も協力されたし゛です』

その圧倒的な威光に思わず涙が出そうになる明乃。

「協力しよう!」

『はい!』

涙を拭いた明乃は、皆に向き直る。そして晴風も動き始めた。

 


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