ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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太平洋艦隊

side―連合艦隊旗艦大和 CIC

 

日本国領海内を巨大な2つの大艦隊が一路横須賀に向けて航行していた。一つは、太平洋艦隊総旗艦大和と第三艦隊で構成された連合艦隊。そして、東京湾を銚子岬方面から抜け、太平洋に展開していた第七艦隊だった。光近は旗艦大和に乗り込み、艦隊を率いて横須賀に一路向かっていた。

 

「…ブルーマーメードの艦隊は、相変わらず劣勢状況といったところか」

「となりますね」

CICの中央に座っている光近の言葉に大和が答える。そのディスプレイには太平洋艦隊の各艦および各戦略兵器の位置が記されていた。そんなな中だった。

 

『提督!横田より戦略航空団が出ました!』

「赤城も本腰を入れてきたようだな、各艦に通達、高速で接近する機影は友軍機と通達せよ」

『了解』

見れば航空レーダーには、無数のレシプロ機の機影の他にも30機ほどのジェット戦闘機が空を駆けているのが映っていた。

 

「それにしても、ついに実戦導入ですか」

「彼らの最初のケースがこれとはな…しかし、使えるものは使う、そういうスタンスで行かねばならないからな」

「えぇ、わかっています」

大和と言葉を交わしていると、艦隊の左からもう一つの巨大な艦隊が現れる。そして、その後ろには自分たちの艦隊とは違った形の艦が戦列を組んで航海をしていた。

 

「左舷50度に戦艦金剛、空母加賀を視認――提督、第七艦隊です!」

左舷の見張り員が告げてくる。

 

「了解、連合艦隊と第七艦隊はこれより艦隊を組む――全艦、第四航行序列へ」

「艦隊転舵!とーりかーじ!10!よーそろー!ひきしおに気を付けて!」

大和の指示が飛んでいく。

 

「大和、最新鋭艦がいる、最新の艦隊航行序列で頼む、気を付けてくれ」

「わかりました!」

そういうと、目の前のディスプレイに艦隊の位置がすべてプロットされ、それがリアルタイムで動いていく。

陣形は、一般的な連合艦隊の第四航行序列であるが、空母は定番通り後方であるが、水上打撃部隊は前面に出ている。そして、『こんごう』『ちょうかい』『いずも』『あたご』『きりしま』『あきづき』『すずつき』『てるづき』『しまかぜ』『あまつかぜ』から構成されたDDG艦艇はその性質上から、水上打撃部隊と空母打撃群の間に展開することになっている。

 

「大和、主砲の準備はどうなっている?」

水平線を眺めながら光近は大和に尋ねる。

 

「三式弾装填済みです」

「わかった」

淡々と答える大和。その顔はあの聯合艦隊総旗艦だというのに固い。

 

『武蔵、浦賀水道侵入まで残り1時間30分』

『赤城より入電、全航空部隊作戦空域に展開完了――』

『艦隊作戦司令部から連絡、空中指揮管制機、作戦行動に入りました、全艦とのリアルタイムリンク完了しました』

『潜水艦隊より連絡、浦賀水道入口手前での待機完了です』

海上安全委員会から実質的な制限条項がすべて解除された今、太平洋艦隊は、その任務を達成すべく稼働できる全戦力をこの海域に投入しており、半ばその様相はミッドウェー・アリューシャン海戦などの海戦の比ではないほど投入されている。そして

 

『武蔵および晴風の視認圏内に入りました!』

艦橋から飛び込んでくる声、

「作戦開始!」

光近の声が大和のCICに響き渡った。

 

 

 

 

――第二航空戦隊"蒼龍"艦橋

 

 

蒼龍の艦橋は何時になくあわただしく動いていた。

 

「――引き潮に気を付けて!」

「了解!第四航行序列へ!」

「機関、第三船速!隣の天城に注意しろ!」

あわただしくなるのも無理はない、なにせ、机上では行ったことがあったのだが、実際に一航戦の二隻と連合艦隊を艦隊を組むのは初めてだったのだ。

 

「艦長、加賀が後ろに入ります」

「了解」

そういうと、蒼龍の後ろに赤城と加賀がつく。さらに後ろには葛城と天城がいる。

 

「航空路帯の振り分けが完了しました」

「ありがとう、それで海上航空隊の作戦指揮はどうなった?」

「赤城のCDCが、戦略航空団の指揮を執るため、海上作戦指揮は後続の加賀が執ることになりました」

「わかった、ありがとう」

逐一報告を受けていく蒼龍。

 

「赤城より入電、高度3000ft以上の高高度飛行を制限するとのことです」

「了解、各航空部隊にそのことを伝えて頂戴」

報告を受けながら、適宜指示を出していく。そして

 

「艦長、総旗艦大和がイエローゾーンを越えました」

「了解、作戦発動!攻撃部隊、発艦はじめ!」

艦橋に蒼龍の声が響き渡る。そして、艦橋の鐘がマイクを通じて格納庫に伝わった。

 

 


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