ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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山元五十六の決断

晴風side――

 

「こ、このままじゃ――」

「知床さん、もう少し距離を取りましょう」

「ブルマー、一隻だけになっちゃったんだけど――」

そういうのは、いつも強気のメイだった。無理もない、頼りの綱であるブルマーが武蔵に圧倒されているのだ。

 

「艦長も副長も早く戻ってきてよ」

いつにもなく弱気になる彼女だった。

 

 

side―Air Force

 

太平洋艦隊の基地は、何も御蔵島だけではない。ブルーマーメイドと海上安全委員会の取り決めの中で本土戦力について話をした結果、一番首都東京に近い横田と厚木に一部航空機の戦力を置くことにしていた。そして、現状、ブルーマーメイドとホワイトドルフィン双方の所有する最大規模の航空基地、横田基地の管制室は、何時になく慌てていた。

 

ヴーンッ!!ヴーンッ!!

管制室の中は、ひっきりなしにアラームが鳴り響いていた。

 

「こちらタワー、マジックへ、誘導路03を通り、滑走路に迎え」

管制官が、緊張した面持ちで指示を出していく。管制室から最もよく見える航空機を収容するハンガーからゆっくり出てくる、この世界ではめったに見ることの出来ない航空機。本来であれば、その機密上、夜飛ぶのがほとんどであるが、要請があった今、その航空機はゆっくりとハンガーから出て、滑走路を目指して動いていた。巨大な二枚の翼に円形のレーダードーム、E-3Xである。それがまさに飛び立とうとしていた。そしてその後方、少し小さめのハンガーから出てくる無数のジェット戦闘機。その翼には、無数の攻撃火器が積み込まれている。まさに、この事態を予言していたかのように横田基地に飛来し、降り立った機体F-15 ストライクイーグル、そして、それを乗りこなしている太平洋艦隊航空部隊戦略航空団の面々だ。

 

『こちらイーグルセカンド、3番右滑走路にて待機中』

「了解、離陸を許可する、高度4000フィートまで急上昇せよ」

『離陸許可を得た、高度4000フィートまで急上昇する』

そういうと、轟音と共に飛び立っていくイーグル。そして、ほかの管制官の指示でE-3Xも飛び立っていく。

横田基地周辺は何時になく、轟音に襲われたのであった。

 

 

 

 

海洋安全委員会――

 

『横須賀女子海洋学校からのホットラインです』

「ん、なにっ!?」

円卓に座っていた一人が言った。

 

『校長の宗谷真雪です、報告します、海上保安法第12条に基づき、横須賀女子海洋学校に緊急事態を宣言します』

「なん…だと…」

『私はこれより艦橋に上がりますので、失礼します』

そういうと回線が切れる。

 

「委ねるしかないのか…来島の巴御前に」

円卓の男性がそういう。

 

「…ここにきて、あのツケを払わされることになるとは…やはり、あの青年の言ったとおりになったか」

円卓のディスプレイ側中央にいた男性、山元五十六はそうつぶやいた。

 

「黒島副委員長、太平洋艦隊の位置は?」

「旗艦大和率いる第一艦隊と、戦艦武蔵率いる第三艦隊、そして、戦艦金剛率いる第七艦隊が現場海域に急行中です、3時間後に武蔵射程圏内に入ります」

 

「あちらは容赦しないというわけか」

山元の手元にある書類は、とある攻撃兵器の使用許可証、および航空攻撃に関する関係諸機関に通達するための書類だ。

 

「諸君、もはや異論はないな?」

山元は円卓の面々を一瞥する。どうやら異論はなさそうだ。

 

「海上安全委員会は、本時刻を以て非常事態を宣言する、同時に日本領海内の管轄権を太平洋艦隊に全面委譲し、日本国憲法および海上保安法の非常事態条項に基づき、太平洋艦隊所有の全攻撃火器の使用を許可する、さらに海上安全委員会委員長山元五十六の名において、太平洋艦隊の連合艦隊編成を許可し、日本領海内での活動を許可する」

静かに山元はそう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 


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