ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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晴風と武蔵

5月4日――

 

御蔵島艦隊司令部指令室

 

「…武蔵の進路は依然不明ですか…とはいえ、フィリピン沖か…」

指令室には、只ならぬ雰囲気が漂っていた。視線を向けていたのは榛名だった。

巨大なディスプレイには、現在行われているパーシアス作戦やAWACSなどによる調査の状況が映し出されていた。そんな中だった。

 

PPPPPPPP!!

 

突如けたたましく鳴り響く警報音。見れば南シナ海に敷設した海中レーダーが、航行予定外の大型艦航行の情報が入ってきたのだ。

『南シナ海の海中レーダーが大型艦の航行を感知!映像でます!』

そういうと、すぐに映像が出てくる。見ればそこに映し出されていたのは武蔵だ。

 

「進行方向は!?」

『計算でます』

そこに映し出されていたのは、武蔵の予測進路情報だ。そして、ものの見事、日本がすっぽり入っていた。

 

Fアラート(艦隊瞬時警報システム)発動!敵性大型艦日本領海内警報発令!」

榛名の言葉と共に、太平洋艦隊に警報が発令された。

 

 

 

 

 

5月5日――0610

 

航洋艦晴風は、御蔵島での修理を終え、一路横須賀に向かって航海をしていた。その晴風の教室では全員集められミーティングが行われていた。

 

「武蔵は、現在南西10マイルを針路40度、速力10ktで航行中と推測されます」

記録員の納沙幸子がいう。

 

「本艦は、35ktで追跡中です」

「学校からの指示は、本艦の安全を優先しつつ、武蔵の補足をし続けよとのことだ」

副長である真白がそういうのも無理はなく。晴風は現在太平洋艦隊の指揮下を離れているのだ。

 

「今度こそ遅刻しないようにって早めに出発していたのに?」

「おかげで私たちが武蔵の一番近くになっちゃうなんて」

主計課の美柑が苦笑いしながら言う。そんな中、手を挙げた人物がいた。

 

「南さん」

「武蔵も比叡やシュペーと同様にウィルスに感染しているとみるべきだ」

「ってことはこの前みたいに助けられるっていうことっすよね?」

「なんか、私たちにできることないかな?」

一斉にざわめき始める。そんな中、艦長である明乃が口を開いた。

 

「私たちは、学校からの指示通りブルマーを支援しよう」

彼女らしからぬ言葉に静まり返る教室。その彼女の顔は暗い。

 

「武蔵は、装甲も火力も桁違いに強いし」

「そうだな、ブルーマーメイド主体で当たるのが妥当だろう」

艦長の意見に同調する副長。すると、納得のいったかのようなムードが流れる。

 

「けど、頑張ろうよ!」

勇ましい声が聞こえてくるが、状況はそんな簡単ではない。それを知っているのはほかならぬ艦長であった。

 

 

 

 

 

横須賀女子海洋学校――会議室

 

会議室は、相変わらず重苦しい雰囲気が流れていた。

 

「はぁ…主力のほとんどがフィリピン東方――戦力を集中させる作戦が裏目に出たわね」

そういうのは、校長の宗谷真雪だ。そして、テレビ電話の相手は真霜だった。

 

『間に合うのは、最低限の備えとして残していた平野部長の別動隊だけよ』

「…他に動かせる艦は?」

『ドックでメンテ中の艦が一隻、出せるかどうか…』

その言葉を聞いて頭を抱えだす教頭。

 

「武蔵は、あと約10時間で浦賀水道に入ります」

「晴風は?」

「およそ約8時間後に武蔵に追いつきます」

決断を迫られる宗谷真雪だった。

 

 

 

side 御蔵島艦隊司令部指令室

 

艦隊の司令部に備え付けられた会議室のディスプレイには、各艦隊の旗艦と赤城とあきつ丸と連合艦隊旗艦の大和が映し出されていた。

 

「ディエゴガルシアにいた第五艦隊は、すでに司令部要請で、東南アジア海域の哨戒任務で出ています」

司令部からの情報を読み上げる大淀。

「引き続き、第五艦隊は哨戒任務をお願いします」

それにディスプレイ越しで頷く山城。

 

『どのみち、感染した武蔵には水雷戦隊では対処できないだろうな』

『我々、第二艦隊は即応できない、やはり横須賀の第三艦隊と第七艦隊になるな、横須賀と東京湾の状況を確認しておけ』

「はい」

長門の声でオペレーターの一人が確認しに行く。

 

「三沢の航空隊か、御蔵島の戦略航空団をを爆装させてあげますか?」

「いえ、あまり特秘装備を使うと、今後の外交交渉や作戦運用に支障が出ます、それに国民に被害が出た場合、太平洋艦隊の存続に関わります、使用武装は最小限度にとどめましょう」

『ですが、かの能力が不明すぎます、こちらの全力を投入すべき準備は必要かと考えます』

「確かに、それはありますね」

そういうのは比叡の言葉にこたえる大和。そんな中、大和がそばにいた補佐からメモをもらう。

 

 

「いま、海上安全員会より命令が下った、武器使用は無制限までを想定――提督からは、いざとなった撃沈もやむなし、必ず東京湾内侵入前まで停止させよとのこと」

『となると、相模湾か――』

そういうと、相模湾の海図が表示される。

 

「この条件で相模湾沖であれば、B号計画が適用できます」

大淀がディスプレイにその情報を表示する。

 

「静岡側を戦場とするB号、サイレント・ヒル作戦…開始」

大和がそういった。

 

 

 

晴風――

 

『艦影1、左10度水平線!動静不明!』

『電探でも探知しました!』

突如艦橋に飛び込んでくる報告。艦橋のメンバーの身が思わず固くなる。

 

『閃光視認!目標発砲した模様!』

「回避!面舵一杯!」

「はい!!」

同時に晴風が回頭していく。同時に飛んできた主砲が爆発し、衝撃波でその船体が揺れる。

 

「しっかり距離を取って!」

「はい!」

『主砲弾6、こちらに接近!』

「艦長、撃っちゃう!?」

『威嚇射撃したほうが回避もグルグルできそうかも!』

「艦長!指示を!」

真白がそういうが、当の艦長はしゃがんでふさぎ込んでしまっている。その直後だった。

 

「ブルマーです!」

真白の視界の空を6つの白い線が駆け抜けていく。

 

『ブルマーより通信、晴風は至急この海域から退避せよとのことです!』

「退避・・・」

『ブルマーからの撤退命令です!』

そういうと、少しだけ安堵に包まれる。

 

「これで武蔵の足も止まるかも――」

「艦長――ちょっと」

そういうと真白は強引に艦長である明乃を連れ出した。

 

「えっ、ちょっと!?」

そう思いながらもココは驚きながらも指揮を執ることにした。

 


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