ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
「シュペー発砲!」
「前進一杯!」
「は、はい!」
いきなりの速度変更で艦が揺れる。光近は慌てずマイクを取り
「ビスマルク、長門、陸奥、攻撃開始!」
『了解!』
その直後、シュペーの進路を牽制するように戦艦三隻が砲弾を放つ。
まさに、轟雷ともいえる音が周囲に響き渡る。ほとんどの艦であれば、ここで進路を止めるのだが
「――動いている!?」
「あいつら、本当に理性を失ってやがる!」
ということは、最悪当ててでも止めなければならないということだ。
当てるにはこの三隻は強すぎる。しかし、シュペーは蜂の巣をつついたように砲弾を放ってくる。
「シュペー発砲!」
「回避!吹雪、シュペー左舷に魚雷を一発当てろ!深雪、嵐、荻風は、寸前で魚雷を自爆させろ!」
『了解!』
「とーりかーじ!」
晴風が動いていく。同時に、四隻から魚雷が発射され一発がシュペーに当たり、数発が一気に爆発し、その船体が揺れた。
「シュペー速力低下!」
「了解!――シュペーの移動能力を奪う、航空部隊、突入開始!」
『フォッケウルフ、攻撃を開始する』
「燃料パイプ以外には当てるなよ?」
『二航戦とフォッケウルフをなめないでもらおう』
そういうと、晴風のすぐ横を戦闘機が駆け抜けていく。シュペーは攻撃するものの、一発も当たらない。
機銃掃射の音と、燃料パイプ爆発の音がする。
「シュペーさらに速力低下!」
「よし、明乃さん行ってください!」
「わかった、突入班用意!」
そういうと、艦橋から明乃が離れる。
「…さてと、やりますか」
「提督、どちらに?」
「どこもいかないよ、ただ、少し気合を入れようかなと思ってね」
帽子を深くかぶり、集中力を研ぎ澄ます。
「真白さん、少しサポートしてくれるかな?」
「はい、よろこんで」
「私は、艦隊全艦のオペレーションを取る、真白さん少し晴風のこと頼みますよ」
「はい」
そういうと真白は、その髪留めをほどく。
「第二艦隊、第八艦隊、突入部隊が動き始めた、シュペーに悟られないようにこちらに気を引くぞ」
『了解!』
「威嚇射撃!攻撃はじめ!」
『撃てぇ!』
「こちらもやろう、右砲雷同時戦、攻撃はじめ!」
「了解、いっけぇー!」
第二艦隊と第八艦隊の連携砲撃に合わせるように晴風も攻撃していく。
「第二波撃てぇ!」
海上に轟雷が鳴り響く。
「突入部隊、シュペー機銃圏内に入りました」
「悟られるな!撃てぇ!」
駆逐艦や戦艦が砲弾を放っていく。まさに連続攻撃にもふさわしい攻撃だ。
「突入部隊、シュペー到着まであと20秒!」
ココちゃんの声が艦橋に響く。光近は手元の時計と艦隊の布陣を確認していた。
「10秒前――」
「艦をシュペーにあと200まで近づけて!」
「ま、まっかせてー」
「4,3、よーい!」
「撃てぇ!」
「全艦、一清掃射!」
真白と光近の一斉号令、そして爆音とともに海上が爆ぜる。同時に、岩陰から艦長と突入部隊が現れる。
「艦長、来ました!」
「ドンピシャ!」
「さすがだ!航空部隊、低空で艦長たちを援護しろ!」
そういうと、左舷側から攻撃を加えてくる。
「副長、副砲弾直撃コース!」
「回避!」
「間に合わない!能代、CIWS攻撃はじめ!」
そういうと、晴風とシュペーの間にいた能代のCIWSが火を噴く。
「迎撃成功!」
「よし、あとは艦長たちを待つだけだ、晴風は一時退避するぞ」
「了解、とーりかーじ!」
晴風は一時退避することになった。