ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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これからの指針

パーティーの翌日。光近は食堂で早めの朝食を済ませ、大和の艦内にある会議室に赴いていた。

 

「おはよう」

昨日のパーティーとは違い、会議室には真剣な空気が満ちていた。当然だ、今日から本格的に艦隊運用が始まる。集まっていたのは、赤城、伊168、大淀、明石、あきつ丸、速吸、大和、霧島であった。

 

「さて、まず基本的な情報から教えてくれ、霧島」

「はい、我が艦隊は、現状、旗艦大和を中心に最低限規模の艦隊しかいません、他の艦艇は燃料節約のため、眠っています、それと本現在地なのですが多少正確性に問題はあるものの北極星などを基準に算出した結果、旗艦大和の現在地は、北緯33.926, 東経140.789、御蔵島村東海域です」

「そうか」

そういうが、霧島の表情は暗い。何か言わないことがあるようだ。

 

「霧島、それで何かあったか?」

「えぇ、少々気になることがありまして、その点に関しては赤城から説明します」

そういわれ、赤城が立ち上がる。

 

「御蔵島は、伊豆諸島に属しており、この島の南西部にある藺灘波島も含まれる、島は、標高851m、面積20.58km2となっておりますが――偵察機彩雲からの情報によると、かなり島の面積が小さいという情報が入ってきました」

「島の面積が小さい?」

「はい、彩雲によると、まるで、山の頂上だけが顔を出しているといったみたいだということです」

その原因を考え始める光近。そんな中、

 

「あの、その件で、手がかりになるかどうかわからないけど、御蔵島周辺近海で航行していたら、ソナーが御蔵島の方で四角い物体をいくつか見つけたわ」

「四角い物体…まさかな」

「提督、何か思い当たるところでもあるのですか?」

「あぁ、おそらく海面上昇といったところだろうな」

「海面上昇ですか?」

「そうだ、その可能性が高い、おそらく伊168の言っている四角い影は建物だろう、となると日本は沈没しているという可能性が大きい」

「えぇ、では御蔵島の調査に行かれますか?」

「いや、横須賀に向かおう――彩雲からの情報を基に、現在の日本の予測状況地図を作ってくれ」

「わかりました」

そういうと赤城の隣にいた士官が動き出す。それから、赤城が外に出ている間に他のことについて話し合う。

 

そして、数時間も立たずに赤城は戻ってきた。

 

「戻りました、地図ができあがりました、こちらです。」

「ご苦労」

そういって、中央の大机にその地図を広げる。

 

「…これは!?」

我が目を疑う光近。その国土の多くを海中に失った結果が其処にあるのだ。

 

「提督、これは」

「とにかく向かって確認するしかないな…」

「そうですね、では、進路を――」

と言った時だった。突如艦内放送のマイクが入った。

『艦長、赤城所属、偵察機彩雲より報告、本艦隊に向け接近する艦隊あり』

「接近する艦艇?」

顔を見合わせる光近。というか、かなり険しい顔の面々だ。

 

「提督、一度艦橋に向かった方がよろしいかと」

「そうだな、そうしよう」

そういうと、光近は立ち上がる。

 

「大和、各艦艇に戦闘準備を発令、砲塔は動かさなくていいが、装弾を始めてくれ」

「了解、配置につけます――対潜・対水上戦闘用意!」

大和の号令と共に艦が慌ただしく動いていく

 

「赤城、すぐに直掩機を上げてくれ、最悪のケース戦闘も想定しておこう、それと航空攻撃を準備、相手が攻撃して来たらいつでも対応できるようにしておこう」

 

「はい、そうしましょう」

赤城は途中で別れ、大和の通信室に向かっていく。そして、光近は大和艦橋に上がった。

 

 

「(おぉ~)」

艦橋に上がり、一通り中を見渡す。やはり大和型だけあって、天津風の艦橋よりかなり広かった。とはいえ、その分人も多くいた。

 

「それで、何かあったか?」

「えぇ所属不明艦、速度変わらず、こちらに接近中です」

「う~ん…」

相手の意図を考えてみる光近。とはいえ、思い当たるところはない。

 

「…聴音士、海中からなにか聞こえるか?」

『いえ、特には』

「潜水艦もなしか…」

光近は敵艦のいる方向を見る。とはいえ、水平線の彼方なので、見えるわけがない。

 

「大和の射程圏内まで後何分だ?」

「あと、3分です」

「…決断は早くしたいところだが、相手の意図が読めんな」

「そうですね」

そんな中だった。

 

『彩雲より報告!敵艦種判明、陽炎型と思わしき艦と阿賀野型数隻の水雷戦隊』

まさかの同艦種に驚きを隠せないが

 

『それと、大和型と思わしき艦艇です』

その言葉に声を失う光近。

 


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