ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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越えられない嵐

ジリリリリリリリリリ!!

「この音は!?」

飛龍の艦内に響き渡るサイレン。このサイレンは戦闘配置であるとともにスクランブルも意味していた。

 

「飛龍さん!」

艦内通路をかけてやってくる下士官。

 

「このサイレンはどうしたの?」

「はい、艦隊司令部より航空機出動要請、スクランブルです」

「なっ!?えっ!?スクランブル!?」

そういうと、下士官を連れて飛龍は艦橋に駆け上がる。

 

「状況を報告して」

「はい、晴風座上の提督より緊急司令発動、コードはブラックバード1195です」

ブラックバード1195とは、何らかの事情により大型艦が相手になったという意味をさす。

「艦隊司令部から晴風と比叡が戦闘状態に入ったということです」

「……わかった、対空レーダー何か見える?」

『ばっちしです、方位193より航空部隊が接近中です』

「御蔵島も出してきたか、こっちも負けてられないよ――彗星、零式艦戦62型の部隊に、対艦戦闘装備で発艦!」

「飛龍さん、大丈夫ですよ、第一波攻撃隊発艦しました」

「さすが」

艦橋からは彗星の編隊が飛び上がっているのが見えた。

 

 

 

光近は航空無線が取りやすい艦橋上部に出ていた。既に明乃とは打ち合わせは終わっている。

 

「とーりかーじ!」

『とーりかーじ!』

下では明乃が比叡の動きを見つつ、指示を出している。それを副長の真白が繰り返し、指示を伝えている。

 

「もどーせー」

『もどーせー!』

晴風は、その小島の間を抜けていく。

 

「シロちゃん、砲雷撃の指示、お願い!」

『わかった、戦闘、右砲同時戦、発射雷数二、比叡の右舷を狙え、当てるなよ』

「むずかしいなー」

双眼鏡を見ながらメイちゃんが言う。

 

「主砲、砲では抜けないから当てるつもりで撃っていい、ただし左舷よりに着弾させて右に誘導して、こーげきはじめー!!」

そういうと主砲が火を噴く。同時に、光近は航空部隊のその姿を捉える。

 

「勝負どころじゃ、狙うもんより狙われるほうが強いけん」

「あとがないんじゃ」

ミーナとココちゃんの芝居のようなものが挟まる。

 

「あ、あたりそうじゃ」

「魚雷、左右に一発ずつ!」

「当たってくれよ!」

そういうと魚雷が発射される。

 

『比叡、第一ポイントの誘導に乗りました!』

「イッヒ、リーベディッヒ!!」

「ここで座礁させれば、比叡を止められる――抜けられた!」

「クソッ!砲が来る!衝撃に備え!!」

「とーりかーじ!」

艦が勢いよく傾斜し動いていく。

 

『至近弾!左舷に着弾!』

「損害報告!各種報告はじめ!」

『バルブ破損!』

「応急班活動はじめ!」

光近の指示が飛んでいく。

 

「比叡第二ポイント通過を確認!」

「くそっ!指示はまだか艦長!」

「艦長、座礁させるポイントを今度も抜けられたぞ!どうする!?」

「まだだよ!まだ終わっていない!」

「しかし、艦長!」

「越えられない嵐はないんだよ!」

明乃が叫ぶ

 

「とーりかーじ!」

同時に、航空隊から完全捕捉、準備完了の連絡が入る。光近はココちゃんに駆け寄る。タブレットを借り、情報を確認する。そして、手旗信号旗を借りる。さらに航海灯の上に上がる。

 

「て、提督!?戦闘中ですよ!?」

「わかってる、ここで十分だ」

この作戦上、比叡を座礁させるには速度を抑えるしかない。すでに航空隊とはつながっている。遥か上空というわけではないが、視界で確認できる高さに戦闘機が飛んでいる。同時に、上空から戦闘機が降下し始めてくる。どうやら、あちらも気付いたようだ。

 


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