ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
「トラックって確か・・・」
「海上交通の要所、一日数千隻が航行している、居留人口一万、となればこれは回避させるしかないな」
「ブルマーの到着は4時間後、間に合う可能性は低い」
「感染が広がったら大変なことになる」
「そうだな」
明乃ちゃんの意見に同意し、光近は伝声管に駆け寄る。
「八木さん、通信状況はどうだ?」
『ちょっと厳しい、ノイズが混じっている、けどいけるよ』
「そうか、わかった、万里小路さん、聞こえている」
『えぇ、聞こえていますわ――』
「伊201のように、ピンガ―でモールスを頼む」
『はい、かしこまりました、どうぞ--』
「“太平洋艦隊司令長官米内より、艦隊司令部へ、緊急司令発動。ブラックバード1195”だ、これを三回頼む」
『了解しました』
そして、その音は確実に海中の追跡の艦に届き、すぐに指令が伝わったのであった。
御蔵島艦隊司令部―――
御蔵島の指令室は、日本近海で起きている事態の収拾に向けて慌てていた。
「提督より連絡、戦闘機出動要請です」
「空中指揮管制機を要請」
その言葉とともに、赤城や士官が指令を出し始め、大型偵察機が御蔵島を飛び立ち始める。
「偵察機到着まで10分を予定」
オペレーターの声と共に、大和の指示が飛んでいく。到着と同時に、作戦指揮室の正面のモニターに晴風と比叡の姿が映し出された。
「比叡…ですって!?」
「そうですね」
大和の隣にいた士官がそういう。見れば、晴風が比叡に猛追されているからだ。
「大至急戦闘機の応援を、攻撃部隊AからD出動、晴風座上の提督の指揮下に入れ、承認コードTW 1000時」
作戦司令室に士官の声がこだました。
「それで艦長、具体的には?」
副長であるシロちゃんとともに、光近は艦橋で指示を取っていた。
「晴風に引きつけて、トラックの航路から引き離せば?」
「追尾に比べると被弾の可能性が上がるな、それでもやるのか?」
明乃の意見に容赦なくいう光近。光近は彼女をまっすぐ見る。
「うん、足はこっちも速いし、なんとか、なるとおもう」
「・・・」
艦橋にほんの少し沈黙の時間が流れる。そして、光近はうなずいた。
「うん!リンちゃん、前に出して蛇行して!」
そういうと晴風は、蛇行しはじめ比叡を引きつけることになった。
トラック諸島上空――
トラック諸島上空には、普通の飛行船とは違うものが飛んでいた。全長:70.7 m、全幅:59.6 m、全高:19.3 m。スマートな機体かと思えばその機体の上部には巨大な円盤がある。これこそが、太平洋艦隊の誇る大型兵器の一つ、空中指揮管制機であった。そしてその空中指揮管制機は緊張に包まれていた。
何台も積まれた計器。そしてそれと管制官はにらめっこしながら逐一情報の変化を見逃していない。目的はただ一つ、晴風の状況確認だった。
「晴風を再補足、捕えました」
「航路、速度を教えてくれ、それに状況を」
士官の言葉に通信員が答える。
「トラック諸島を回避する航路で、速度30ノットで航行中」
「晴風、後方に艦影あり――」
「偵察機からの情報と一致、比叡です」
「比叡か」
その直後、艦隊司令部から直接通信が飛び込んできた。
『出動命令だ、エリア5Bに近いのは?』
すぐさま通信員は状況を確認していく。
「
『よし、では
「了解、
関係各所に伝えていく。管制機のレーダーは、御蔵島より接近する航空機の編隊を確実に捉えていた。