ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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晴風vs比叡

横須賀女子海洋学校の実習艦航洋艦"晴風"は、日本の領海を一路南西に向かっていた。

 

光近は晴風の特別通信室で第二艦隊旗艦の長門の通信室と通信しつつ、海図を開いていた。

「さて、航路的に見ればトラックか」

『えぇ、そういうことになります』

電子海図を見ている光近。

 

「…それで、現地の人間が言っていた大型艦の情報があったよな?」

『えぇ、ありましたね』

長門からの情報を確認する光近。

 

「感染症だと断定できた以上、問題なのは武蔵もそうだが、その次に大きい比叡などの所属不明艦の所在配置だな」

『そうですね』

厄介なと思いながら話しているのも無理はない。第二艦隊は一時的に行動を別にし、フィリピンのスービックで補給を行った後、こちらに合流という事になっている。また、第三艦隊は航海条約の関係で同じ海域に展開できないことになり、長門とともにスービックに停泊していた。そして通信している中、一時的に通信に割り込みが入った。割り込んできたのは加賀だった。

 

「いきなり割り込んでくるとはな、加賀どうした?」

『えぇ、夕張の試験艦が南西方向に向かう大型艦を一隻、捉えたわ』

「大型艦か、また厄介なのが出てきたもんだ」

『どうするの?いざとなれば、撃沈できるわよ?』

「それはこっちで判断する、詳細な情報をこっちの端末に送ってくれ」

『わかった』

加賀から補足地点のデータが送られてくる。光近は直にシュミレーションを開始した。

 

「戻った」

「おかえりなさい、提督」

晴風艦橋に戻る光近。相変わらず艦橋は特に何事もなく航海業務を行っていた。

 

「おつかれ艦長、なにか異常はありましたか?」

「特に何も、そっちはどうでした?」

明乃ちゃんが、こっちを一瞥してくる。

 

「いや特に何もない、しいて言えば南西諸島に向かう艦が一隻出てきたってところだな」

「もしかして、不明艦?」

「あぁ、今問合わせ中だ、晴風はこのまま不明艦捜索に当たるのがいいだろうな」

「わかった」

そういうと特に何もなく晴風は、不明艦捜索に動いていく。その直後であった。

 

『新らたな目標を探知!新艦種!』

「正面に艦影!」

艦橋に飛び込んでくる報告。

 

『艦橋形状から武蔵と思われます』

「(武蔵だと!?)」

まさかのこんなときにというところだ。光近は双眼鏡をのぞき見る。確かに武蔵に近いが、何か違和感を感じる。

「(武蔵だと、視認圏内ってことは主砲射程圏内のはず、となると…)」

艦橋ないの騒然ぶりを横目に、光近は直に伝声管に寄る。

 

「レーダー、目標との距離を教えてくれ」

『目標まで距離14マイルです』

「えっ?14マイル――」

あまりの距離に驚く光近。

 

「当たったらひとたまりもないぞ」

「艦長!余裕で武蔵の射程圏内ですよ」

ミーナとココちゃんがそういう。

 

「いんや、あの艦は武蔵じゃない"比叡"だ」

その言葉に艦橋要員が驚く。

「もともと戦艦武蔵は、設計に先んじて、戦艦比叡を改装し、測距儀の位置、構造などを試験しているからな、たぶんその形状で武蔵と誤認したのだろう」

「比叡ですか?確かに、遠くから見ると一緒ですね、でも大きさが全然違いますね」

「行方不明になっていた比叡がこんなところにいたとはな・・・」

 

その直後だった。

 

『比叡発砲!!』

「最大戦速取り舵一杯!」

「取り舵一杯!」

明乃の指示が飛んでいく。そして、晴風が動いていく。

 

「学校からの指示は?」

「ブルーマーメイドの派遣要請をしてくれました、到着は4時間後、それまで可能な限り

補足し続けよということです、但し晴風の安全を最優先にとのことです」

「リンちゃん、距離を取って大きく周りこんで」

「はい!」「撃ってきたということは、比叡も例のウイルスに」

「うん、感染していると思う、武蔵と同じように」

そんな中、ココちゃんがなにかとにらめっこしている。

 

「待ってください、比叡がこのままの針路、速度だと、三時間後にはトラック諸島に到達します!」

その言葉に艦内は凍りついた。

 


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