ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
轟音を上げて船体が裂ける。
「明乃!新橋の中央部が裂けた!」
「もやいを解いて!全速離脱!」
「第三艦隊、一旦退くぞ!」
そういうと、唸りを上げる機関。
「まっ二つじゃん!」
「艦長!まだ中に副長とミーナちゃんがいるそうです!」
「副長!副長聞こえる!」
『ミーナさんは脱出されました』
「副長はどうだ?」
『その連絡が…途絶えましたわ』
「副長・・・副長・・・シロちゃん!!」
通信機を置く明乃。艦内に暗い雰囲気が満ち始めるが、光近だけは、違った。
「――さて、ここからが本業といったところか」
「えっ?」
通信機が光っている。その通信の意味はただ一つ、彼らが到着したという合図だ。
「みんな、いるよね?」
「航海科の子たちは?」
「救助した船と一緒に戻ったよ」
小型艇では、晴風同様、半ば暗い雰囲気が支配しつつあった。
「あとは副長だけ」
「(副長・・・)」
ミーナは、軽く軽食を食べつつ彼女の帰りを待っていた。そんな中、強い光とともに二隻の飛行船が現れる一隻はのっぺりしたもの。そして、その後ろにいる三機、初実戦投入される巨大な機体と巨大な水上離発着型のレシプロ機。その後ろにいるのは、垂直離発着が出来る輸送機がいた。その3機には太平洋艦隊のマークと電に黒い鳥のマークが施されていた。
「ブルーマーメイドだ!」
「それに、太平洋艦隊も――けど、あの後ろのマークはなに!?」
そういうのは、砲雷科の小笠原だ。
「ブルーマーメイド、保安即応艦隊の秋島です」
「晴風、砲雷科、小笠原光以下救助隊です」
「――御苦労さま、あとは任せて」
「船内に一人学生が!」
「わかった、"我々"にまかせて」
今回大規模海難事故になると予想して提督が呼び寄せたのは、紛れもなく太平洋艦隊のもう一つの側面を前面に出したチーム。太平洋艦隊の本艦隊が海の平和を維持するのであれば、こちらは海の事故を救助する専門チーム。その機動性および規模からありとあらゆる災害に出動できるように構成されたチーム。
太平洋艦隊日本領海内災害対応艦隊――コードネーム"サンダーバード"である。
光近は通信機を口にあて、晴風艦橋で指示を出し始める。
『こちら、秋津洲現場に到着かも!』
「秋津洲、聞こえているな?」
『聞こえているかもー!』
「中に晴風の副長がいる、ブルーマーメイドが船体外板に、こっちでできることはないか?」
『CH-47で機材を投下するかも、その間、逐次海面下の動きを教えてほしいかも』
「了解した、すぐに潜水艦隊につなぐ」
そういうと、すぐに晴風から扶桑に指示が行き、伊168に指示が下る。
同時に、すぐにCH-47からラぺリングで続々と救助隊員が降り、船体の外側から捜索し始める。その手にあるのは、日米両政府が開発した捜索機材だ。そして、そんな中、二式大艇が着水すると同時に、そこから、海中捜索の専門家が潜っていく。
「(秋津洲、海猿も投入したか――オンパレードだな)」
日ごろの訓練の成果を今、見せつけるときなのであろう。妙に気合いが入っている。
ちなみに、とうのブルーマーメイドは、その圧倒的な組織力に圧倒されながらもその捜索を行っていく。
そして、それから数分後
『要救助者確保!!!』
通信機から甲高い声が上がる。
「(っしゃぁ!)」
思わず内心ガッツポーズをする光近。
「艦長、副長発見されたようです」
「そうか、それはよかった」
「これで一件落着かな――さてと、迎えに行くか」
「そうしましょう」
そういうと、光近は後部甲板に向かった。