ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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救い出せ!

『本隊より連絡、太平洋艦隊のレディー艦出動命令がかかりました、それと御蔵島から保安即応隊の秋津洲が出撃しました、本艦隊現場海域到着まで残り70分』

 

「浸水が始まっているとなれば秋津洲を待つ猶予はなさそうだな」

海図を睨みながらいう光近。その隣には、この明乃や真白、それにミーナなどが集まっていた。やはり状況が状況だけあって、雰囲気は重苦しいものだった。

 

「知っての通り、扶桑などの低速艦は今回時間の関係上投入できない、また応援戦力もいるが、時期を見ての投入になるな」

そういうと、光近は艦橋要因たちを一瞥し

 

「これからの流れを説明する、晴風はこのまま水雷戦隊とともに現場海域に展開、こちらの潜水部隊とともに何人かで水面下の新橋の状況を確認、到着と同時に晴風の砲雷科とともに救助作戦を開始する、どうだ?」

「それでいきましょう」

そういうと晴風と水雷戦隊はウルシー環礁に到着し

 

 

 

「――晴れたな、それにベタ凪といったところか」

「低気圧は西に移動したようです」

晴風艦橋でココちゃんがいう。

 

「傾き四十度・・・五十度になったら、沈むな・・・」

双眼鏡でその状況を逐一みならが言う光近。

 

「新橋の船内図です――」

そういうと、彼女のパッドを見る光近

 

「3階、吹き抜けてて商店、4階が居住区、中央がブリッジになっています」

光近は自分の通信機を、明乃は、艦内電話を取り

 

「救助準備は完了した?」

『準備完了でーす』

「第三艦隊水雷戦隊、どうだ?」

『問題ないです、いつでもどうぞ』

お互い顔を軽く見合わせる。

 

「よし、では副長――」

光近は真白の肩を軽く叩き

 

「よろしくたのむぞ?」

「へっ?」

こいつ何を言っているんだという顔をするので、

 

「救助隊の指揮、行って来い!」

「は、はい!」

そういうと、光近の気迫に負け、駆けだす真白。

 

「わしも行こう!」

「おう、行って来い!」

ミーナも行くことになった。

 

「ということで、ここから指示を出すからよろしく頼むぞ」

光近は、そういうと、軽く手を降りながら通信機を口元に充て

 

「駆逐艦全艦、探照灯照射はじめ!」

新橋に光があてられた。

 

『現場に到着しました、甲板は人であふれています』

「甲板は応急員に任せて、船内の生存者を探して――」

真白の報告に的確に指示を出していく明乃

 

『こちら江風救助隊、提督の通り、甲板に人であふれています、それに海に飛び込んでいる面々がいます』

「船内生存者は晴風に任せよう、海上に飛び込んだ乗員の救出、および潜水部隊は晴風乗員とともに水面下の情報を探れ」

『了解』

「「救助開始!!」」

光近と明乃の指示が重なる。

 

 

そんな中

 

『嵐だ!提督、聞こえているか?』

「聞こえているぞ、どうした?」

『中央制御室にいるんだが、どうやら非常用対策システムが動作不良を起こしている』

「なにっ!?」

その直後だった。

 

『船体は、第四区画前120mにわたって亀裂が入っており、前方3区画が浸水しているようですわ』

『こちら宗谷、新橋の非常用システムが動作不良を起こしている』

真白からも通信が入ってくる。これらが意味するのはほかでもない、沈むということだ。

 

「新橋に接舷する!急いで!環礁に気をつけて!」

「こっちもだ、第二艦隊、右舷後部に連続接舷するぞ」

あわただしくなる艦内であった。

 

『乗員の避難は終了しました!中に入った救助隊も船から出てきたそうです』

胸をなでおろす光近。

「そうか、他には?」

『でも、副長とミーナさんが船尾方向の捜索に向かったと報告が、小さいお子さんが一人行方不明だそうで』

「――ッ!」

その直後だった。

 

ゴゴゴゴゴゴ!!

 

船が轟音を立て始めた。

 


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