ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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武蔵に向けて

第二艦隊――旗艦"長門"

 

長門と晴風は、その性質上舷付けしており、光近は長門の作戦司令室に出向いていた。そして、この場にいるのは艦娘だけではない。晴風の艦橋要員の主な面々だった。

 

「さて、始めよう」

緊張した雰囲気がこの場を支配していた。光近は中央の席に座る。

 

「では吹雪、艦隊司令部からの電文を読み上げてくれ」

「はい、発、太平洋艦隊司令部、宛各艦隊旗艦、武蔵発見の通信を傍受、北緯19度41分、東経145度0分です」

そういうと、その地図に紅いレーダーが示される。

 

「今の電文の通り、横須賀女子直教艦『武蔵』は、太平洋北マリアナ諸島アスシオン島近海で補足された、目下、御蔵島から飛び立った偵察隊および東舞鶴男子海洋学校の飛行船が追跡中ということである」

そういうと、武蔵の画像が出される。

 

「それで、横須賀からは?」

「武蔵の可能な限りの補足です」

副長の宗谷真白がそういう。その色は緊張していると言わざるを得ない。

 

「……晴風はどうしたい?」

その視線が艦長である岬明乃に向かう。

 

「私は…私は、幼馴染のモカちゃんを救いたいです」

その言葉を聞くが光近は何も言わない。

 

 

 

 

「(さて…問題はどうするかだな…)」

これまでのことを振り返ると、武蔵とは、確実に砲雷撃戦になる。その時には、確実にこちらも砲撃せざるを得ない。現状、武蔵の砲弾を迎撃できるものは、試作だがそれを公にするわけにはいかない。

「(かといって、本気でということになると、彼女の友人に危害が及ぶ…さて、どうしたものか)」

その直後だった。

 

「提督、東舞鶴男子海洋学校の教員艦隊が交戦状態に入りました」

「交戦しただと!?」

ざわめく指令室。その直後

 

『提督、彩雲からの映像来ました』

「回してくれ」

後ろの巨大なディスプレイに皆一斉に目をやる。すると、そこには武蔵が一方的に教員艦隊を攻撃しはじめる姿が映し出された。その姿を食い入るように見てしまう光近。

 

「(いよいよ最悪のケースになった…だが、あの武蔵と戦を交えるのは時期尚早と言わざるを得ない…)」

そんな中だった。

「提督、このままでは彼らの被害が増えるだけだ」

「わかっている、しかし砲雷撃戦になった時にこの長門では火力不足だ」

「お前、私を元連合艦隊旗艦だとわかっていっているのか!?」

「もちろんだ」

断言する長門。そんな中だった。

 

『46㎝砲には46㎝砲――相手が武蔵なら、こちらも武蔵だ』

会議に割り込んできたのは、第三艦隊旗艦――゛武蔵゛からだった。

 

 

 

「武蔵、そっちは演習中じゃなかったのか?」

『現在第三艦隊は、戦闘準備発令中だ』

「レッドアラートというわけか…」

『そういうことだ、提督、私から提案がある』

「なんだ?」

『第三艦隊の旗艦として、連合艦隊の編成を提案する』

武蔵の言葉に光近は黙り込む。無理もない。そう、これこそが光近が直ぐに行動を起こせない理由だった。当初太平洋艦隊はその機動力や戦力、そして影響と規模で、他を圧倒していたもちろんブルーマーメイドやホワイトドルフィンは当然だった。しかし、徐々にその影響力を危惧した海上安全委員会が太平洋艦隊の内情に介入しかけてきた。幸い、情報戦には勝ったものの、太平洋艦隊の取り決めの一環として、常設聯合艦隊の廃止と日本領海内で二艦隊以上で構成される連合艦隊を編成するときには、海上安全委員会かブルーマーメイドの承認を得る必要があるのだ。

 

「あの海上安全委員会が承認することはないだろうな…(それこそ首都がやばくなった時くらいだな)」

『ダメもとでブルーマーメイドに頼んでみたらどうだ?』

再び黙る光近。そんな中、タイミングよくブルーマーメイドからの連絡が入った。相手は、今ここにいる真白の姉からの連絡だった。そして、それから一通り話し終え

 

「はい、はい…はい、承知しました、すぐに向かいます」

光近は電話を終え、受話器を置き

 

「太平洋艦隊!第二・第三連合艦隊!出航!」

カッっと目を見開き、光近はそう言い放った。


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