ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
「水中カメラ、出ます」
「ありがとう」
目の前は確かに真っ暗だ。
「海中探照灯照射はじめ!」
そういうと、海中に光がともる。すると目の前に現れたのは、巨大な実験艦だった。
「艦長…こいつはいったい?」
「水密隔壁搭載の実験艦といったところだろうね、けど、大きさ的に人間じゃない、動物の者ね」
「本部に報告入れますか?」
「最重要暗号文、ダブルΔコードで送って頂戴」
「了解」
「(さて、鬼が出るか、蛇が出るか…それはこれ次第だな)」
彼女の顔から無邪気さが消えまるでどこぞの国家元首のような瞳で見るしおいであった。
晴風艦上――
「それで納沙さん、武装はどうなりましたか?」
「明石に長10センチ砲のストックがありましたので、それに今までのと交換しました」
光近は後部甲板で彼女から改修の報告を受け取っていた。
「そうか、となると、初速などは早くなるだろうな」
「そうですね、とはいえ、弾の貫通威力は、以前のに比べて少し減っています」
「確かに、口径が大幅に変わったからな」
「はい、もう戦闘にならないと思いますけど、これで少しなんとかなります」
「そうだな」
頭の中で軽くこれからの戦術について考えをめぐらす。とはいえ、これからは、一応こちらもいかないといけないところがある。
「さて、俺は少し立石の所に行ってくる、艦橋に先に戻っていてくれ」
「はい」
そういうと、一旦彼女と別れ光近は倉庫に向かう前にとある場所に向かった。
「杵崎さん、なんかどらやきみたいなのある?」
光近は行く前に主計科によっていた。
「どらやき?あるよ?」
「どうかしたの?」
「ありがとう、倉庫の二人に差し入れさ」
そういうと、二つ分どらやきを貰い、光近は二人がいる後部の倉庫に向かった。
knock!!knock!!
「入るぞ」
ノックして入るとそこには立石と西崎が一緒にいた。みれば、トイレットペーパーの箱詰めをしていた。
「おう、お疲れ」
「て、提督!?」
「光近でいいよ、光近で」
突然の出現に驚いている二人。そんな二人に、片手でラフでいいという仕草をし、部屋に入る。
「にしても、倉庫が殺風景なのはどの艦も同じか」
「まぁ、倉庫だからね」
「だな、はい、これ」
二人にどら焼きを軽く差し出す。
「あ、ありがとう」
「Oui」
慣れないことに驚いている二人。
「ま、カチコチにならなくていいよ、俺だって君たちと同じ年齢だからね」
「まぁ、知っていてたけどね、驚きだよ」
「世の中にはいろいろな人がいるのさ」
「そうしておくよ」
光近は、彼女ら二人の間に座り、
「にしても西崎さんと―――」
「私のことはメイでいいよ」
「Oui、タマでいい」
「わかった、メイちゃんとタマちゃん、俺のことも呼び方はなんでもいいよ」
「んじゃあ、オフの時はミッツーって呼ぶよ、それ以外は提督さんね?」
「あぁ、わかった、さて、こんな空気の中いうのもあれだが、少しあの時のことについて話を聞かせてもらおうか」
「あの時・・・うん、タマちゃんはそれでいい?」
「Oui」
そういうと、光近は、本格的に腰を据える。同時に、自分の小型ポーチからノートを取り出し、彼女らの話を克明に書き始めた。
それから数時間後
「…」
一通り話を終え、疲れたのか、そこには倉庫で尚且つ男である光近がいるのにもかかわらず、寝落ちした二人がいた。
「しょうがないやつだな」
ここで下手に騒ぎを起こすわけにもいかないので、光近は小声で明乃に連絡をいれ、二人に自分の羽織をかけ、その場を離れた。