ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
長門艦橋――
「報告します、各艦隊補給を開始しました」
長門は下士官からの報告を受けていた。
「わかった、この長門はどうだ?」
「いま、予備弾倉のを本弾倉の方に弾薬を移動中、食料の補給は30分後です」
「早いな、さすが間宮と明石だ」
「そうですね、あと3時間で補給が終わるとのことです」
「そうか、わかった、ありがとう」
「はい、失礼します」
そういうと、下に戻っていく下士官。長門は周囲をみつつ適宜指示を出していく。そんな中
『長門さん、左舷側にブルーマーメイドの平賀二等監察官がいらっしゃっています、至急左舷側へ』
「――懐かしの乗組員が来たものだ、副長、挨拶に行ってくるので、補給の指示を頼む」
「了解しました」
長門は艦橋から駆け下りていき、左舷側に降りた。降りると、丁度ラッタルのところに彼女がいた。
「お久しぶりです、長門艦長」
「お久しぶりです、平賀さん」
お互い敬礼し合い、握手を交わす。彼女は、訓練課程でこの長門に乗艦したことがあるのだ。
「お元気そうで何よりです」
「それはこちらもだ」
「長門艦長、何か足りないものなどありますか?」
「今のところ、太平洋艦隊兵站軍の補給のおかげでそういうものはない」
「もし何かあれば遠慮なくいってください、できることはこちらでやりますから」
彼女がこういうのも無理はない。ブルーマーメイドと太平洋艦隊は、同立の組織であるが、その戦力と練度の高さは太平洋艦隊の方が上だ。そのため、太平洋艦隊は、なんども彼女らを助けているのだ。
「お気遣い感謝する、それでこの後は?」
「晴風に戻る予定です」
「そうか、では提督によろしく頼む」
「えぇ、わかりました」
そういうと、再び握手を交わし、その場を離れる平賀。
「さて、私も戻るとするか」
長門も艦橋に戻った。
その頃、晴風では――
「こちら海洋安全整備局安全監督室情報調査隊の平賀二等監察官」
戻ってきた明乃が、彼女を紹介する。
「お久しぶりです米内提督、お話は真霜さんから聞かせてもらっています」
「こちらこそお久しぶりです、太平洋艦隊司令長官の米内です」
お互い敬礼で挨拶をかわす。
「この度の補給、感謝申し上げます」
「いえいえ」
それから、軽く目くばせをし
「さて宗谷さん、それと明乃さんもしばらく二人だけにしてくれ、少し大人の話がしたい」
「わかりました」
そういうと、光近は彼女らを遠ざける。
「それで状況は?」
「はい、今宗谷一等監察官主導の元、目下調査中ですが、情報調査隊としても結構怪しい点が見られています」
「…めぼしいところは?」
「特に古庄さんの猿島に乗っていた乗員の数が名簿と一致していません」
「減っていたってこと?」
「いえ、増えていたということです」
「…あの日はべた凪だったですからね、それに海難情報とかは?」
「ありましたけど、猿島の航路上ではありませんでした、それに猿島からの報告もありません」
「……ふむ、そうなると謎が深まるばかりですね」
「えぇ、提督はどうみますか?」
「何かがあった、それだけしか言えないでしょう」
「そうですね」
そういうと、その場ではそういう結論になり解散となった。まさに光近と彼女が話し込んでいる頃、西之島の海域に一隻の大型潜水艦が到着していた。
潜水艦伊401
ピコーンッ・・・ピコーンッ・・・ピコーンッ・・・
ソナー探査の音が艦橋に響き渡っていた。しおいは艦橋の中央で腕を組みながら、その状況の推移を見守っていた。
「艦長、西之島海域に到着しました」
「ありがとう、西之島は海底火山の影響が強い海域だから、変な音か何かあったら教えてちょうだい」
「はい」
相変わらずソナーの探査音が響いている。そんな中だった。
「艦長、自燃物にしては変なソナー反射をしているものがあります」
「変な反射?」
「人工物のようです」
「たしか、沈没記録ないよね、カメラ出せる?」
「いけます」
そういうと、伊401から水中カメラが出てきた。