ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
「方位と距離を教えてちょうだい」
『ばっちしです、方位85度、距離2500』
「意外と近場にいたわけか…機関、最大戦速、一気にひっかけるよ!」
『了解!』
川内の速度が上がる。そして
『魚雷音聴知、雷数4、方位85度!』
「かかった、探照灯照射はじめ!」
そういうと、水雷戦隊各艦の探照灯がその方向にむかって照らさせる。
「見つけました!」
「取舵一杯!対潜戦闘!海面を照らす、照明弾発射!」
『了解!』
そういうと、川内の主砲から照明弾が発射され、海面が照らされる。
「見えました、探照灯です!」
「捉えた!爆雷投下!」
右ウィングからの報告に間髪入れずに指示を出す。同時に、対潜戦等序列を取っていた嵐、荻風、親潮、江風が取り囲むようにして、爆雷を投下していく。同時に、川内とクロスするように、艦載機の群れが現れる。
現れたのは、流星と天山一二型の群れだ。
「ナイスタイミング!最大船速!取舵一杯!この海域から離れるよ!」
そういうと、急加速と共に離れていく。
ヒュールルルルルルルル!!
そして、ダイブブレーキの音と共が周辺になり響き。
「衝撃に備え!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!!
川内の声と共に、まるで爆竹を鳴らしたかのように大規模に海面が爆ぜる。
「船体の軋み、圧搾空気排出音及び、伊201浮上します」
「――後は、提督達に任せようか」
そういいながら、川内の主砲は潜水艦に照準をつけた。
数日後-4月9日
「…お、目覚めたか」
光近は、ちょうど巡回で医務室の様子を見にくると、ちょうど明乃がシュペー戦の時に救い出した金髪ドイツの少女が目を覚ました。
「おんしは?」
「あぁ失礼、私は太平洋艦隊司令長官の米内です、呼び方はなんでもいいです」
「おぬしは、男じゃろ、どうしてこの艦に?」
「わけあってこの艦に乗っています、それで貴方の名前は?」
「あぁ、すまない、アドミラルシュペーの副長、ヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクじゃ、こちらも呼び方はなんでもかまわない」
「ありがとう、ではミーナ、とりあえず着替えて艦長のところに向かおうか」
「あぁ、そうしよう」
「私は外に出ているから、着替え終わったら出てきてくれ」
そういうと、光近は医務室の外に出る。そして、数分もかからずにドイツの服に着替えた彼女が出てきた。
「では、参ろうか」
「あぁ」
それから、一時的に艦橋に戻り、副長に艦を任せ、光近は明乃とミーナを連れて左甲板に向かった。
「ま、お疲れ」
「お疲れというのは、こちらのほうじゃろ?」
飲み物を渡す光近にそういうミーナ。
「そうだったかな?私は指示を出していただけさ」
光近がそういいながら、飲み物に口をつける。
「あの、聞いてもいい?あなたたちの艦が何が起きたのか?」
「あぁ、我らがアドミラルシュペーか」
「そう、もし言いたくなければ「いや、儂もよくわからんのじゃ」」
「よくわからない?」
「あぁ、聞いてもらった方がいいな」
「我らの艦も貴校との合同演習をする予定だったのは知っての通りだろう?」
「あぁ、西之島沖での合同演習とのことは、太平洋艦隊も知っていた」
「そうか、そちらは?」
「ううん、初めて聞いたよ」
「まぁ、それはいい、儂らは合流地点に向かっていたんじゃが、突然電子機器が動かなくなって、誰も命令を聞かなくなった」
「…誰も命令を聞かなくなったか、ちなみに、その帽子はシュペーの艦長のか?」
再び飲み物に口をつける。
「あぁ、我がアドミラルシュペーの艦長、ティアのものじゃ」
「そうか」
「シュペーに戻って艦長に返さなければ」
思いつめた様にいうヴィルヘルミーナ。
「わかった、私も手伝うよ」
「俺もだ、いや、太平洋艦隊が手伝おう」
三人で手をつなぐ。その直後、
『艦長、校長からの全艦帰港命令が出ました!』
何とも言えない頼もしい命令が下ったのであった。少し胸をなでおろす光近だった。