ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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敵の潜水艦を発見!

「万里小路さん、水中の音を聞き逃さないでくれ」

『委細、承知しました』

「それと野間さん、魚雷の航跡が見えたらすぐに報告してくれ、その際、弾頭の色に注目しておいてくれ」

『わかりました』

基本的にあちらが攻撃するまでこちらは手を出さないというのは鉄則だ。

 

「それで、伊201の武装スペックは?」

「二十五ミリ連装機銃に、53センチ魚雷発射管4門――魚雷10本です」

その直後だった。

 

『魚雷二本いらっしゃいました!』

「まろんちゃん!出せる限りで最大戦速!」

そういうと艦が速度を上げていく。光近はすぐさま伝声管による

 

「万里小路さん、発射音はどこから!?」

『魚雷音、方位270度、近づきます!』

『了解――』

上の見張りから声が上がる。

 

『雷跡左30度二〇、こちらに向かってくる!』

「りんちゃん!取舵一杯!」

「取舵一杯!」

艦が動いていく。

『魚雷衝突コースからはずれます!』

 

ズドォオオォンッ!

 

艦尾方向で二発爆発が起こる。

 

「艦尾方向で二発爆発!」

この威力は間違いなく模擬弾ではなく、実弾であった。

 

「あと八発!左砲戦準備!」

『目標、見えません!』

野間さんが告げてくる。

 

「この暗闇じゃ、潜望鏡を捉えられない!」

「今度こそ、撃ったら完全に敵対することに」

「わかってる!でも逃げ切るには――」

ましろの言葉を遮る明乃、その言葉を更に光近が遮った。

 

「宗谷さん、彼らはこの晴風に撃って来たんではない、我々第二艦隊に向けて魚雷を放ってきたのだ――となれば、咎められる理由もない、それにこの晴風も機関部が損傷している、そうなればとるべき方法は一つ、晴風は逃げ回る、その間に潜水艦を叩く、そういうことだ」

「米内さん?まさか、沈めるのか?」

「攻撃が激しければな、野間さん、魚雷の色は何色だった?」

『黒でした』

「そういうことだ、相手は実弾を使ってきた、手加減無用ということだな、それに魚雷を撃つということは撃たれるという覚悟を持っているということだ」

その現実を突き付けられ、艦橋の雰囲気が一気に沈む。

 

「なに、沈めるのは最終手段だ、常套手段の爆雷で浮上させるさ」

そういうと、光近は一人動き出した。

 

「とにかく、今は逃げ回ろう」

明乃は夜の海原を見ながら言うのであった。

 

 

 

 

side 第二水雷戦隊 第二旗艦"川内"――艦橋

 

川内率いる第二水雷戦隊川内隊の嵐、荻風、親潮、江風、海風は提督からの指示で前衛に出て潜水艦狩りをしようとしていた。"やったぁー!!待ちに待った、夜戦だー!!"

と川内は言いたいところだったが、余りにも提督からの怒りの籠った指令に素直に喜べずにいた。

 

「艦長、どうかしました?」

補佐役の副長が話してくる。

 

「いや、提督がね、ガチでキれてるみたいでさ」

「伊201からの魚雷攻撃でですか?」

「うん、そうみたい――"手段は選ばない、太平洋艦隊、第二艦隊の威容を知らしめると共に、伊201を無力化しろ"だってさ」

 

「…半ば撃沈命令じゃないですか」

苦笑しながらいう副長。その言葉と共に、上空を戦闘機が飛んでいく。

 

「飛行隊も出しましたか」

「これ物量差で沈みますよね?」

「…さぁ、どうなんだろ?」

白を切る川内。とはいえ、彼女の眼はその上空を飛んでいく戦闘機に、爆雷やら魚雷やら対潜装備満載の流星改が飛んでいくのを確かにとらえる。

 

「(うわ、えぐい)」

しいて言うなら、鎮守府近海対潜哨戒戦に潜水装備満載の聯合艦隊編成で行くようなものだ。

 

「まぁ、提督の指示だからね、けどここまで気の乗らない夜戦は初めてだよ」

「・・・お気持ちお察しします」

「あはは、ありがとう」

そういいながら、これからの動きを指示を出そうとした時だった。

 

「敵の潜水艦を発見!敵の潜水艦を発見!」

ふと川内は、゛ダメだ!゛と言いそうになった

 

 


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