ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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スクランブル!!

「さて、どこから話した方がいいもんかな?」

「そういえば、此処に来る前に話しがあるって言っていましたね?艦長とかを同席させなくていいんですか?」

「あぁ、そのことについてだ、極めて機密性が高いんでな…今から話すのは君が宗谷家、ひいては真霜さんの妹で俺の妹だから話せることだ」

彼女が唾をごくりと飲む。

 

「まず現状だが、晴風は知らないと思うが、作戦司令室からの情報で、横須賀女子海洋学校の艦艇の何隻かが逸脱した航路を取り通信途絶状態、それと君たちがアドミラル・シュペーと戦闘する少し前、第七艦隊が対潜戦闘態勢に入った」

「…」

その言葉に思わず絶句するということだ。

 

「無論、武蔵に関しても全チャンネルを用いても、応答なしということになっている」

「――まさか」

「そのまさかが近い…それに最悪なことに日本近海、ひいては領海内で武蔵の持つ18インチに対抗できる艦艇は総じてドック入りあるいは地球の反対側に行っており、展開できるのは、我々太平洋艦隊保有戦力しかなくなってきた」

光近は言葉をつづける。

 

「艦長の明乃さんには申し訳ないが、状況が状況であれば艦橋に砲弾を撃ち込むことも考えなければならない」

自分たちが置かれた状況、そして目の前の人物の覚悟に思わず身震いするましろ。

 

「万が一の時は、その覚悟をしてくれ」

そういうと、光近は手元の飲み物を飲み干し艦橋に戻った。そして、艦橋に戻ると同時に通信が入ってきた。

 

「八木さんが、緊急電を傍受したそうです」

「内容を教えてくれ、それと何処からかを」

ココちゃんの報告に口を開く光近

 

「海上安全委員会の広域通信です、内容は『現在、横須賀女子海洋学校の艦艇が逸脱行為をしており、同校すべての艦艇の一切の寄港を認めないものと通達する、また以下の艦は抵抗するようであれば撃沈しても構わない、航洋艦晴風』です」

「う、撃つのは好きだけど、撃たれるのは嫌だぁ」

水雷長のメイちゃんが頭を抱える。

 

「どこの港にも寄れないってこと?」

「そういうことだな」

「私達、完璧におたずねものになっているよ」

艦橋が重苦しい雰囲気になるが、光近はとあることに気付き口を開いた。

 

「いや、この晴風だけは補給に関して一部軍港で制限補給が行えるぞ」

「えっ、米内さんどういうこと?」

「現在、晴風は『太平洋艦隊』第二艦隊麾下に入っているわけだ、確かに、民間の港であれば寄港は不可能であるが、我が『太平洋艦隊』直轄の軍港である御蔵島軍港での補給は可能だ」

「…それって反則じゃ?」

「まぁ、反則と言えば反則だが、何も法律違反をしているわけではないからな」

堂々とした顔でいう光近。とはいえ、かなりグレー行為をしているのは言うまでもないことだ。

「それだったら、武蔵の救援に「それはやめた方がいい」えっ?」

明乃の言葉を遮ったのも光近だった。

 

「この艦の状況からみて、今武蔵と戦端が開かれれば今度こそけが人が出る、それならば学校に帰投して、戦力を整えてからの方がいい、それに現在、太平洋日本領域内全域で『太平洋艦隊』が展開している、無論武蔵の捜索も行っている、少しはこちらを信じてくれ、いいな?」

「…はい」

「そういうことだ、今日は当直に任せて眠るといい」

そういうこと、彼女の頭を撫でる光近。とはいえ、光近も内心穏やかではなかった。

 

「(…あいつら)」

今すぐにでも赤城に指令をかけて威嚇行動に移りたいところだが、それを抑える光近であった。

 

 

 

 

 

御蔵島――執務室

 

「…やはり、撃沈命令を出してきましたか」

提督と秘書艦の執務室では、大和が提督代行として執務をこなしつつ事態の推移を確認していた。

ちなみに執務室と聞こえはいいが、実際には作戦司令室であり、大和の隣には赤城が座っている。

 

「幸いにも晴風が第二艦隊麾下にあることは海上安全委員会も知らないようですね…これで攻撃したら」

「提督のことですから、すぐさま自衛権を発動、即刻相手の艦は撃沈ということでしょうね」

 

そんな中、きな臭い雰囲気立ち込めている中だった。突如、大和の近くに置いてあったディスプレイがアラームを告げた。そのアラームは、領海内に所属不明艦船が現れたということだった。

 

「詳細を教えてちょうだい」

大和はすぐさま、司令室とのホットラインをつなげた。

 

『所属不明艦、小笠原諸島硫黄島およそ40kmに出現、ヘディング180』

「所属不明艦、硫黄島に接近中、約50分後に管制区域に入ります」

見れば、ディスプレイには、アンノウンが日本の領海内に入ろうとしていた。

 

「関連する航海情報は?」

赤城が通信に割り込んでくる。

 

『関連する航海情報はありません』

「了解」

そういうと、赤城は執務室に備え付けられた赤城と提督専用のボタンを押し、マイクに向かってこう言った。

「スクランブル!」

 

 

 


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