ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
悩み始めて数十分後
「(ここにきて権力を考えるのもバカらしいか・・・それにいざとなれば制圧できるし・・・ここは、やるか)」
光近は結論が出た証として、ノートを閉じる。
「君たちのことを全面的に信じ、これをブルーマーメイドに私の名前で報告させてもらうとしよう」
「本当ですか!?」
明乃の顔が一気に晴れる。
「だが、問題は今後だ、何が起きたのか、それが確実に解明されるまで、航洋艦晴風は、一時的に我々の方で保護させてもらう」
「保護ですか…?」
「まぁ、実際にはそんな暖かい言葉ではないよ、より正確に言えば、これから晴風は事態収束まで、私たち太平洋艦隊の艦として動いてもらう」
「…太平洋艦隊の一員としてですか?」
「そうだ、現状航洋艦晴風は、抵抗すれば撃沈やむなしという報告になっている、となれば、ほかの艦から攻撃を受ける可能性が大きい、しかし、太平洋艦隊に属することで、管轄権はこちらに動くとなると、晴風には攻撃が加えられないということだ」
「は、はい」
思わぬことで緊張しているみたいだ。無理もない、いきなりブルーマーメイドの仕事をやれと言われたのと一緒なのだ。
「ということだ、これからよろしく頼むよ、明乃さん」
「は、はい、よろしくお願いします!」
目いっぱい頭をさげてくる明乃であった。
光近は、長門のCICの近くにある通信室の一角で、太平洋艦隊の重役とテレビ会議を行っていた。
「ということだ」
『・・・にわかに信じがたいですが、事実として受け止めるしかなさそうですね』
そういうのは、第五艦隊の霧島だ。
「あぁ、今回の事態に晴風に非はない、ただしこれを上層部がどう受け止めるかが問題だな」
『そうですね、もみ消しに走る可能性もありますからね』
というのは赤城である。
「となれば、戦端が開かれかねない、それだけは避けねばならない」
『それで、晴風の一次的な艦隊編入ですか』
「そういうことだ、これで攻撃したら、それ相応の覚悟と取っていい」
『今や、我々はあのアメリカ海軍に匹敵する戦力の持ち主ですからね』
「・・・皮肉なものだよ、ちなみに根回しに関しては今青葉と衣笠に動いてもらってる、これらのことにかんして君たちの意見はなにかあるか?」
『特にありません、提督のご決断を支持します』
「ありがとう、では、解散としよう」
そういうと、通信回線が切れた。
「終わったところか?」
「あぁ」
ちょうどのタイミングで長門がやってきた。
「ほれ、お茶だ」
「ありがとう」
長門が水筒を渡してくる。光近はその水筒を開け、口をつける。
「それで、大和や他の艦隊旗艦はどうだった?」
「異論なしだそうだ」
「そうか、それはよかった」
そういうと部屋から出て通路を歩き出す。
「長門、晴風の準備の方はどうなっている?」
「ちょうど、艦隊旗掲揚が始まったところだ」
「艦隊の方は?」
「いつでも出航できる、飛龍も常時哨戒機を飛ばしてくれている」
「さすが、二航戦やることがはやい」
「飛龍に〆られるぞ?」
「わかってるさ」
と軽口をたたきながら歩いていく。
「私は少し執務室に戻って電話したい人物がいるので、先に艦橋に戻っていてくれ」
「わかった」
光近は長門と分かれ、執務室に向かった。
執務室に戻ると、光近愛用の手帳を取り出し、その中から電話番号を探し出す。備え付けられた特殊な電話の受話器を取り、そのダイヤルを回した。
prrr!prrr!
いくつかコールが続いた後、ガチャリという音とともにその電話がつながった。
「もしもし、米内です」
『この電話にかけてくるということは、何らかの動きがあったのね』
「えぇ、ありましたよ――真霜さん」
連絡先は、この事を一番心配しているであろう人物であった。