ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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時空の航海者

ザザァァアァンッーザザァァアァンッ――

 

「(波の音…?)」

耳元ではやけにリアルな波の音がしていた。それに、風もどことなく心地よい。ただ言えるのは、少し甘い香りもしている。同時に、誰かがこちらを呼び掛けている音もしている。

 

「(あぁ~にしても、もしかして疲れていたのか、オレ?)」

こんなことはありえない。なにせ、今は部屋の中。なのでこれは夢の中だろう思っていると

 

 

 

「ほら、起きなさい!!」

「――あべしッ!?」

突如、右頬に来る衝撃。余りの痛さに目を覚ましてみると、そこの衝撃的な光景が広がっていた。

 

「はっ、えっ!?」

我が目を疑う光景。無理もない目の前に、外見は根元の逆毛が狐耳のようにも見えるツーサイドアップにまとめた銀髪とツンとした表情、某ビーバーと同デザインの焦げ茶色のシースルーワンピース、そして艤装の連装砲が目を引く美少女が其処にいたのだ。

 

「何驚いているのよ、それとも秘書艦の顔を忘れたわけ?」

「あ、天津風!?い、いや、えっ!?ど、どういうこと!?」

余りのことに後退りしかけるが、それは当然だ。何せ、今まで部屋にいたはずなのに、視界には美少女と海。そして青い空があるのだ。周囲を見渡してみると灰色の物体。下を向いてみると、そこも灰色。

 

「(まさか、軍艦の上!?)」

若干ワクワクしながらも、そんなことありえるわけがない。

いや、ありえてはならないんだと思っている光近

 

「私の名前は覚えているようね」

手を差し伸べてくるので、彼女の手を借りて立ち上がる光近。

 

「天津風、ここは?」

「見ての通りよ、ここは軍艦"天津風"の艦上よ」

「…マジかよ?」

我が耳を疑う光近。周囲を見渡してみるが、ここは軍艦のようだ。

 

「えぇ、本当(マジ)よ――にしても、一体どうなっているんだか…まぁ、それがわかったら苦労しないけどね」

「あはは・・・まぁ、そうだね」

やれやれといった顔で見る天津風。やれやれといった顔をしたいのはこっちもだ。そんな中だった。

 

 

Brrr--!!

天津風の艦上を爆音を響かせながら何かが駆けていく。

 

「このレシプロ音は!?」

見れば、一機の深緑の機体が駆けていく。

 

「(零式艦上戦闘機(ゼロ戦)!?)」

まさかの光景に半ば興奮している光近。光近は、左舷側に出てみてみると

 

「!?」

光近はまさしく今見ているのが夢かと思った。なぜなら、天津風を取り囲むように大日本帝国海軍の艦艇たちが取り囲んでいるからだ。といっても、無秩序に取り囲んでいるわけではない

 

「(この陣形は…輪形陣か――ということは…)」

左舷前方と後方を確認する。前方には戦艦が、そして後方には空母が戦列を組んでいた。

 

「まさに、聯合艦隊じゃねぇか」

聯合艦隊――旧日本海軍が二個以上の常設の艦隊で編成した、非常設の艦隊である。

そして光近の艦これでの第一艦隊の名前でもあった。

 

光近は、前後に向かって手を振ってみると

ヴォーンッ!!ヴォーンッ!!

汽笛が鳴った。どうやら、こちらのことは捉えているらしい。

 

「(さて、問題はこれからだな…)」

と考えていると、天津風がやって来た。

 

「はしゃぎすぎよ提督」

「はは、すまん、天津風すまんが、通信室に案内してくれないか?」

「通信室?いいわよ」

通信室に向かって歩き出す二人。そして、艦内通路を通り程なくして通信室に到着した。

 

「ここが通信室よ、入るわよ」

「どうぞ、あ、艦長」

先に中に入る天津風。光近も中に入ると、そこにはおっとりした天津風と同年齢の女の子がいた。

そして、こちらを不思議そうに見てくる?

 

「艦長、その男の人はどなたですか?」

「あぁ、彼は提督よ」

「て、提督さんですか!?」

驚いて立ち上がり敬礼する。因みにいきなりのことに光近も驚く。

 

「あ、あの、そんなにかしこまらなくていいですから」

思わず声が裏返る。

 

「それで、どうして通信室に?」

「あ、あぁ、すこし伝えたいことがあってな通信員さん、これをお願いします」

「はい」

そういうと通信員は、天津風から大和に打電する。そして、その通信は大和から一斉に他の艦に伝わった。

 

「にしても提督、何を打ったの?」

「いずれわかる」

そういうと、光近は動き出した。

 


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