ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
御蔵島の地下深くに存在する巨大な洞穴。そこを改造し、尚且つ近代化した巨大な部屋がある。
その部屋には他では考えられない巨大なディスプレイが複数並べられ、それ以外にも小型のディスプレイがありとあらゆる情報を表示し、それを分析士官たちが分析し、中央のモニターにあげたりなどあわただしく動いている。
ここは太平洋艦隊の中枢、作戦指令室である。その作戦指令室は、いつになく慌てていた。
無理もない、前代未聞、航洋艦が叛乱という事態に直面しているからだった。
しかし、その部屋の中央の席の人物は別段慌てている様子を見せていなかった。
二人ともいえることは赤い服装である。しかしその風格が違う。
一人は、まるで弓道のような服装をまとっているが、もう一人は全く違う服だ。
そう赤城と大和である。
赤城はこの太平洋艦隊の全航空戦力を統括している艦娘で、大和は言うまでもなく、太平洋艦隊の旗艦である。
二人は、周辺の艦の動向を確認しつつ、これからのことを考えていた時だった。
prrr!prr!
ふと、大和の手元の受話器がなった。この受話器にかけてくるのは一人しかいない。提督だ。
「もしもし、大和です」
『提督の米内だ、大和、各艦隊の状況を教えてくれ』
「はい」
そういうと、大和は手元のコンソールを叩いて情報を呼び出す。
「今のところですと、第三艦隊が岩手県沖で演習中、第4、第5、第6艦隊は担当海域の警戒中です、第七艦隊は哨戒任務行動中です」
『第4、第5、第6艦隊の位置は?』
「太平洋側に沿って北からということになっています」
『すぐに、第4、第5、第6艦隊に晴風捜索の任務を発令してくれ』
「わかりました」
大和は手元のメモ帳にそのことを書き、士官に渡す。そして、士官達がそのメモに従って指示を出していく。
『よろしくたのむぞ』
「えぇ、わかりました」
そういうと、受話器を置く。ふと大和が視線を戻すといつの間にか、赤城の姿が消えていた。そのころ、赤城はいったん指令室を離れ、航空機ハンガーに向かっていた。
「赤城さん、お疲れ様です」
「えぇ、お疲れ様です」
やってきたのは、機密ハンガーで整備を終えたばかりの千歳と千代田であった。
「どうでした?E-3Xは?」
「いつも通り、ちゃんと修理しておきましたよ」
「さすがです」
「どうも、それで赤城さんは?」
「えぇ、少しハンガーにですよ」
「なんかあったんですか?」
「いえ、巡回ですよ」
そういうと、その場を後にする赤城であった。
航空機ハンガー
滑走路から遠くないところに、巨大なハンガーが無数に並べられたエリア。その一角のハンガーに赤城は出向いていた。
「あ、赤城長官!?」
入ってきた人物に驚く整備士官。
「お疲れ様です、整備はどうですか?」
「順調です」
「それはよかった、引き続きお願いしますね」
「は、はい!」
ハンガーの中を歩いていく。ハンガーの中は、流星や天山、それに烈風や彩雲、零式水上偵察機、九八式水上偵察機、九九式艦爆、彗星、Ju87C改、天山一二型などなど、様々な艦載機が整備されている。
紫電や震電まで存在している。
それを一通り見ていると
「――あ、どうもです艦長」
「まったく、その言葉遣い直さないと加賀さんに怒られますよ?」
あきれたようにいう赤城
「全盛期の南雲さんと山口さんよりかは怖くないですよ」
「…本と末恐ろしいこと言いますね」
「ハハハッ、そんくらいないと一航戦の飛行隊長は務まらないですよ」
ハンガーの奥、特別改修された天山一二型に乗っていたのは、この太平洋艦隊、第一航空戦隊第一航空部隊部隊長の友永彩音だった。相変わらずの緑色の迷彩服に燃えるような紅の髪が頂上的なものを醸し出していた。