ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
第三艦隊と別れてから数時間後、今後の方針や艦隊としての動きを話し合うために、光近は艦隊の主要メンバーを集めてミーティングを開くことになった。
光近は、ミーティングが始まるまで長門の執務室で情報の精査をしていた。
「(さて、一次情報によると、晴風が教員艦である猿島を砲撃し、猿島は沈没したということか…)」
艦隊作戦司令部からの情報とにらめっこしながら情報にどこか穴がないか調べる。しかし、圧倒的に情報が少ない。
「(となると、独自にこちらも調査したいところだな…)」
光近は手元にあった受話器を取り、ダイヤルを回そうとした時だった。
knock!knock!
「どうぞ」
「失礼する」
やってきたのは、艦隊旗艦の長門だった。
「提督、全員揃った」
「わかった、行こう」
軽く身だしなみを整え、いつも持ち歩いているメモ帳兼ノートブックをもっていく。それから細い艦内通路を抜け、艦橋下部の会議室に向かった。会議室にはいると同時に、座っていた艦娘たちが立ち上がる。
「どうぞ、座って」
「では、始めよう――状況報告に関しては、私がしよう」
そういうと、西之島とそして猿島、そして晴風の画像が出る。
「先ほど、ブルーマーメイド本隊より、横須賀女子海洋学校の教員艦猿島が同校所属艦の攻撃を受け、撃沈したとの連絡が入った」
ざわざわとする会議室。
「それで晴風は?」
「なおも逃走中、目下ブルーマーメイドが捜索中です」
「となると、見つけ出す必要があるわけか」
「となります」
「ありがとう」
「はい」
そういうと長門が座る。
「にしても、報告にあった猿島に攻撃だが、もし攻撃していたのなら、すぐに報告が来るはずだ、それなのに来ていないということは、猿島側に何かあったということだろう」
「その可能性が高いな」
「あぁ、兎にも角にも「あの…すこし、よろしいでしょうか?」ん?」
話を遮って荻風が手を上げた。彼女は、第二艦隊の第二水雷戦隊所属の駆逐艦だ。
「どうした、荻風?」
「はい、少し気になることがありまして、よろしいでしょうか?」
「あぁ、遠慮せずに聞いてくれ」
「その撃沈とありましたが、本当に撃沈なんでしょうか?」
「…どういうことだ?」
「はい、その生徒の使用する教育艦には射撃砲弾以外の実弾は装填されていないはずなんです、なので仮に模擬弾頭魚雷を用いたとしても、撃沈する筈がないです」
「模擬弾頭魚雷か、確かに報告によると、砲弾の痕跡は無しとあるからな…となると、一体何でこういう報告になったんだか、これに関しては本隊任せの方がいいだろうな?とはいえ、報告がおかしいということになると、いよいよ、きな臭くなってきたな」
そういうと、手元のお茶を軽く呑み。対策を考えようとしていると、陸奥が手を挙げた。
「陸奥、どうした?」
「提督、晴風を早く探したほうがいいんじゃないかしら?」
「…どういうことだ?」
「何か、見られたってことよ…」
「まぁ、その線もあるが…単に晴風の叛乱ということだろう?」
「彼女たちがそれをするかしら、話によると、あの艦の副長は宗谷のお嬢さんでしょ?」
「…となると」
「猿島がか…」
「考えられるでしょ?」
「わかった」
そういうと、決心が固まる光近。
「では、ミーティングはこれで以上だ、第二艦隊はこれより晴風捜索の行動にはいる」
「ってことは、私たちの航空機総動員ってわけね?」
「そういうことだ、飛龍、鳳翔、飛鷹、各艦載機に偵察装備で離陸、できるだけ広範囲のエリアの捜索を頼む」
「「了解」」
「わかりました」
「では、解散」
そういうと、各艦娘たちが自分の艦に戻っていく。それから、光近は長門の電信室に向かった。
ザザーンッ…
「(大丈夫だよな…彼女ら)」
白立つ波を見ながらそんなことを思う光近であった。