ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
飛龍 航空管制艦橋―――
「艦長、旗艦長門より偵察機による周辺哨戒を要請してきました」
「了解、偵察機部隊を発艦!」
そういうと、飛行甲板の下の格納庫から彩雲が上がり、飛び立っていく。
「それで目標は?」
「航洋艦晴風だそうです」
「・・・ふぅーん、少し下を見てくるから、少しよろしく」
飛龍は艦長の席から降り、階段を下りて格納庫に向かう。
格納庫に降りると、沢山の艦載機がいつでも飛び立つことができるように準備されていた。
「おっ、艦長!」
「おう、どうだい?」
やってきたのは妖精の整備兵だった。
「んまぁ、天山に流星改、それに彗星に烈風改も準備満タンだぜ、にしても彩雲が上がっていったが、なんかあったのか?」
「ちょっとねぇー、ま、整備頼むよ、整備長さん」
「おう、まかしときな」
そういうと飛龍は格納庫より下の食堂に向かった。
第二艦隊所属-第二水雷戦隊
第二水雷戦隊は、軽巡川内を筆頭に嵐、荻風、親潮、江風の5隻で構成されていた。
『川内さん、なんかあったんですかね?突然の戦闘配置ですが』
「さぁ――まぁ、私は夜戦ができればいいんだけどね」
川内は左ウィングから戦隊の戦列を確認しつつ、江風と話していた。
『まぁ、そうなんですけど、けどなんか戦艦の方ピリピリしていませんか?』
「まぁねー久しぶりの戦闘配置だからね、そりゃ何か起こったってことでしょ?」
『川内さん、知らないんですか?』
「まぁね~けど、この哨戒陣形はね~」
周辺を見渡す川内。
『まぁ、嵐が巻き起こるってところですかね?』
「嵐だけに?」
『…すいません、調子乗りました』
「あははは、いいよ、そういうの」
笑いながらいう川内。視線の先の海は恐ろしいほどに穏やかだ。
「本当にべた凪だね、そういえば今後の気象はどうなっている?」
川内は、艦橋に向けて声を飛ばすと。
「艦長、特にこれといって低気圧や前線の接近はありませんよ?」
「そう、それはよかった」
「(本当に嵐の前の静けさだよね…)」
視線の先の海は本当に静かだった。
御蔵島は、その性質上、巨大な軍事港であり、尚且つ巨大な航空基地でもある。
その大きさは、軍港部分はノーフォークの6倍の大きさ(112.44km)、さらに航空基地で言えば嘉手納飛行場2つほどにに横田飛行場(47km)を足したほどの大きさだ。その一角に、厳重に守られた巨大なハンガーがある。
徹底した入場制限、周囲を囲む武装警備隊、24時間体制の監視カメラ。
ここにあるのは、この太平洋艦隊でかなり重要な防衛資産がある。戦闘機ではない。3機のジャンボジェット機である。そのうちの一つ、全長:70.7 m、全幅:59.6 m、全高:19.3 m。スマートな機体かと思えばその機体の上部には巨大な円盤がつけられた機体である。特別改修された早期指揮管制機E-3Xである。
「さてと、調整を始めましょうか」
このハンガーにやってきたのは、千歳と千代田と数人の士官と整備兵だった。この機体の管理をしているチームである。そして、機体に士官や整備兵が取り巻き修理をし始める。
それから、数時間にわたり、整備も終わる。
「さてと定期整備も終わったっと、千歳お姉大丈夫~?」
「大丈夫だよ~、そっちは?」
「問題ないよ~」
機体から降りハンガーを後にし始める。
「にしても、本当に使うときなんてあるのかしら?実戦で?」
「まぁ、そうよね――この機体は、閑古鳥が似合うからね」
そういいながら、目の前の大鳥を一瞥する。
「ま、そうならないようにするのが私たちの役目でもあるからね~」
「そうね~」
そういいながらハンガーを去る。
ヴンッ…
しかしその大鷲は何処か期待したように見えるのであった。