ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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暗雲立ち込める相模湾

side 第二艦隊――旗艦 長門

 

長門率いる第二艦隊と榛名率いる第三艦隊の聯合艦隊は、ブルーマーメイドとの演習で相模湾沖に展開していた。

 

「全艦、第一航行警戒序列をとれ」

長門の指示で艦隊の陣形を変えていく。戦艦四隻、正規空母3隻、海中には潜水艦隊が陣形を組んで身構えていた。まさに、空、海、海中とまさしく鉄壁の要塞ともいえる布陣を展開しており、そして、相模湾全域を勢力圏内として納めていた。

 

 

「艦長、遭遇戦演習は、明日日中、令なくして開始されます、常識的には、1200からとなりますが」

「こと操艦に関しては、彼女らも常識的じゃないからな、常に哨戒配備で航行するのが我らの趣旨だと抜かしてそれ以前に戦端を開い来るかもしれんな」

長門のCICに集まった艦隊の主要幹部たちは一様に苦笑していた。いよいよ間近に迫ったブルーマーメイドの演習艦隊との会敵を控えて、電子海図を囲んだ最後の作戦会議を行っているところであった。勿論、提督である、光近もこの会議に参加していた。

 

「演習の公平を期すために、LINK17が遮断されたのが2日前の午前零時です、その時点では、呉を出航したばかりでした、一般無線は封鎖、レーダーも間欠使用に切り替えていますから、いくら彼らのレーダーでも見つけるのは難しいです」

長門と提督に向けて補佐役の幹部がそういう。

 

「敵側も当然、それを予測していることと思われます、そこで、敵のとりうる可能行動を把握するために、こちらで偵察機を発艦させて、そして鼻先を押さえるのがよろしいかと思います」

 

「確かに、それがいいだろうな」

それに同意する光近。

 

『演習艦隊は小笠原諸島、神津島沖を通過――艦隊接触まで約10時間です』

「意外と早く動いたな、飛龍と鳳翔と飛鷹に、航空隊発艦準備を伝えろ」

『はっ!』

光近の指示で通信員が慌ただしく動いていく。それからすぐのことであった。

 

『艦長、飛龍航空隊所属の彩雲より報告、演習艦隊を補足――本艦隊に向かって真っすぐ接近中』

「そうか、護衛の水雷戦隊を除いて、前線に出るぞ――航海長、頼む」

『了解――針路40 とーりかーじ、第三戦速!』

すると、後続の空母機動部隊から艦載機<零式艦戦62型、天山>が上がり、こちらに着いてくる。

 

『直掩機上がりました!』

長門の近代化された機関が轟音をを上げ動き始める。

 

「聯合艦隊!この長門に続け!」

長門たちは、演習艦隊迎撃のため、相模灘に向けて動き出す。その視線の先、夕陽が水面に沈み始めていた。

それを眺めていると、電測の士官がやってきて横に立った。

 

「提督、ブルーマーメイド本隊からお電話が入っております」

「わかった、長門、少し任せる」

「あぁ」

長門が通信コンソールを見ると、秘匿回線につながる電話の受話器が保留になっていた。それから光近が長門に続けてくれとこちらに行ってから、コンソールの方を歩いていった。

 

 

 

光近は通信コンソールの電話の受話器を取る。

「もしもし」

『ブルーマーメイド安全監督室室長の宗谷です』

連絡をしてきたのは、ブルーマーメイドの現統括者の真霜さんからだった。

 

「お疲れ様です、どうかされましたか」

『今から言うことをよく聞いてください、横須賀女子海洋学校所属の航洋直接教育艦の晴風が猿島を攻撃、猿島が沈没しました』

まさかということに蒼白な顔になる光近。無理もないまさかという状況だからだ。光近も信じたくないという状況だ。

 

「《晴風》が叛乱した可能性があると?」

『えぇ、貴女にはその真偽を確かめてほしいの』

「…わかりました、ということは」

『えぇ、ブルーマーメイド本隊は太平洋艦隊に海上警備行動を発令、あらゆる対処活動を許可します、最善で冷静な判断を期待します』

「わかりました」

そういうと、電話を切る。

 

「長門、少し来てくれ」

「あぁ」

「本艦隊は直ちにLINK17を復旧、戦闘部署を発動、全力で航洋艦晴風を捜索する」

「提督どういうことだ?晴風は、教育艦ではないのか?」

「叛乱だ」

そこまで言うと何も言わなくなる光近。

「まさか、こんな形でデータリンクシステムを使うとはな…現在位置を確認してくれ、それと私は嫌な気配がするから、少し司令部に連絡してくる」

そういとコンソールに向き合う光近。直後

 

「戦闘配置!対艦戦闘用意!」

教練の二文字がつかない戦闘配置を令する長門。この世界にきて二回目だ、それは命令を受けるこの艦の乗員たちにしても一緒だった。

何かが起きていることは明確だった。

 

 


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