ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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ハイスクールフリート編
春麗らかな入学式


春の麗らかな太陽が心地よい晴天をもたらしていた。

 

「(桜か…)」

どこか日本の原風景を感じながら、光近は正門から入っていく。正門には入学式と書かれた看板が立てかけられていた。

 

「(ふーん、ここがブルーマーメイド養成学校、横須賀女子海洋学校か)」

海軍士官の服を身にまとっているが、彼女らと一緒の年齢だ。

 

「(ま、こういう好奇な視線で見られるよね)」

流石に風格もそうだが容姿でも目立っていた。とはいえ、胸元に輝く|PACOM≪太平洋艦隊≫のマークにその肩の階級章でただの士官ではないということは皆理解していた。とはいえ、光近が太平洋艦隊の司令長官であり提督であるとこを誰もその存在を知るものはいなかった。

 

光近は一通り、校舎を見回り、入学式が行われる直教艦、武蔵に向う。

 

「では、学校長より挨拶を、宗谷校長お願いします」

丁度、入ってみると、ここの校長であり、戸籍上の母親である宗谷真雪が訓示を述べようとしていた時。

 

「(真霜さんも言っていたけど、あっちの世界と大して変わんないな)」

世界が異なっても、高校生は高校生のようだ。

 

「(にしても、こっち来てから老化が止まったんだよな…風格は強くなったが、ま、高校生か)」

と遠く昔のことを思いながら眼下に整列している彼女たちを眺める。

 

「(あわよくば仲良くなりたいな~)」

どの口が言っているんだと自重気味な光近。半ば少し期待している光近。そして、入学式も終わり光近は再び校舎を歩く。

 

 

 

「あの、すいません」

「ん?」

振り返ってみると、そこには褐色肌の少女と、猫耳の輪郭の形をしたリボンを付け、猫の顔を模したフードのパーカーを着用した少女がいた。

 

「あの、もしかしてホワイトドルフィンの方ですか?」

「ん、いんや私は訳あってブルーマーメイドの人間さ」

「えっ!?ブルーマーメイドの方なんですか!?」

「あぁ、とはいっても今は君たちに正体を明かすわけにはいかないからね、ごめんよ」

そういうと、その場を離れていく。流石にここで正体を明かすわけにもいかないからだ。それから、廊下を歩いていくと

 

「お久しぶりです、米内提督」

「こちらこそ、古庄教官」

やって来たのは赤城と加賀の時に御蔵島に来たこの学校の指導教官の古庄だった。

お互い敬礼する。階級は上だが、彼女の方が年上だ。

 

「にしても、珍しいわね」

「まぁ、手が空いていますからね、それに良い訓練にもなりますよ」

「悪いわね、そうだ、校長には?」

「あぁ、先ほど挨拶しました」

「にしても、彼女らと一緒の歳なのにね」

「まぁ、そうですね」

彼女らと同じ年であるが、背負っている物と階級が違う。

 

「そうだ、折角だしちょっと付き合いなさい」

「ん?なんですか?」

半ば強引に連れられる。連れてこられた先は、航洋直接教育艦晴風の艦内だった。光近は、古庄教官の後に続いて中に入る。中に入ると、

 

「(ま、此処のクラスだったのか、真白)」

クラスの中でも特に目立つ黒い髪のポニーテール。間違いなく、宗谷真白。自分の義妹だ。いるのだが、こちらは気づいてないふりをする。

 

 

 

「晴風クラス、全員そろったか?――艦長」

「はい!起立」

良い声で返事してくる。

「指導教官の古庄です、今日からあなたたちは高校生となって、海洋実習に出ることになります、つらいこともあるでしょうが、穏やかな海はいい船乗りを育てない、という言葉がありますが、仲間を助け合い、厳しい天候にも耐え、荒い波を越えた時に貴方達は一段と成長しているはずです、また丘に戻った時、立派な船乗りになった貴方達に会えることを、楽しみにしています――それと貴方達が気になっていると思いますが、一応紹介しておきます」

「はじめまして、晴風クラスの皆さん、海上安全整備局の米内です、先ほどもありましたが、皆さんが立派なブルーマーメイドになっていることを期待しています」

「では、各自出航準備!」

そして、晴風クラスは出港準備に取り掛かった。

 

「それで、米内提督はどうされるんですか?」

「えぇ、自分も自分の艦隊に戻りますよ」

「けど、今は結構混んでいますよ?」

「何も海路だけが行く道ではありませんからね」

そういうと、光近は打ち合わせ通りこの学校の校庭に向かう。

 

 

 

BRRRR--

ヘリコプターが一機、校庭に降りてきた。

 

「提督、こちらへどうぞ」

「ん、ありがとう」

光近はヘリコプターに乗り込み、聯合艦隊の勢力圏内である相模湾に向かった。

 

 

 


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