ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
提督の執務室に戻ると其処には太平洋艦隊、聯合艦隊旗艦の大和がいた。
「扶桑、戻ったぞ、おっ、大和か」
「おかえりなさい提督」
「おう、扶桑なんかあったか?」
「えぇ、それが八丈島沖に演習で展開していたブルーマーメイド所属の戦艦『赤城』と『加賀』が機関の動作不良で、一時的に航行不能になったみたいです、同演習艦隊の艦艇が赤城と加賀を曳航中、それで、こちら側に一時的に停泊したいと連絡してきました、受け入れてよろしいでしょうか?」
「マジか、受け入れて構わない、受け入れて構わないが~」
そういうと、光近はタブレットを取り出し、皆との空情報を確認する。一応大型船舶をいれるだけの規模の桟橋はあるようだ。
「よしOK、今空いているFとD桟橋を一時的に閉鎖、彼らがすぐに着岸できるように港湾管理部に準備するように伝えてくれ、それと工科に連絡、すぐに修復できるように機関部の手の空いている人員をスタンバイエリアに行かせてくれ」
「了解しました、通達いれます」
そういうと、大和がすぐに動いていく。
「にしても、今日は春だってのに暑いな――」
「えぇ、暑いですね~」
見れば扶桑も少し汗がにじんでいる。いい意味でも悪い意味でも目をひいてしまうのが悩ましい。
「あぁ~なんか涼が欲しいところだ、ってか、キンキンに冷えた大和のラムネが飲みたくなるよ、こういう日は」
「そうですね、隼鷹なんかは、今頃キンキンに冷えたビールが欲しいぜぇとでも言っているんでしょうか?」
「言っているだろうな」
セミの声はしないものの、気象部の報告によると今日の気温は30度ということだ。これは暑い。
「なぁ、扶桑――なんとかならんかな?」
「さぁ、どうでしょうね?」
扶桑は相変らずペンを走らせていく。光近もペンを走らせていく。
「提督、これが日本の夏です」
「正確には太平洋の夏だがな」
「…アハハハ」
見ろ、扶桑が壊れた。どうやら、彼女も何とかしているものの、暑いみたいだ。それから、何とか涼を取りつつ書類を片づけ終わる。すると、丁度すずしい風が吹いてきた。
「おぉ~これはいい」
暑さの中の涼を感じ、心地よくなっている光近。それから、一人で部屋で少し寛いでいると
knock!knock!knock!
「どうぞ」
部屋に入ってきたのは、宗谷真霜とその先輩である古庄薫であった。
「失礼します」
「真霜さんに古庄さん、どうも久しぶりです、災難でしたね」
「はい、それと、今回の受け入れありがとうございます」
敬礼してくるので、返礼する光近。
「そんな堅苦しくなくていいですよ、機関トラブルじゃ仕方ないですよ、大事が無くてよかった、まぁ、座ってくださいな」
「はい、ありがとうございます」
すると二人とも座り込む。
「にしても、本当にすごい施設ですね」
「よくお偉いさんからは、どこをどうやったらここまで魔改造出来るんだと言われますよ」
少し皮肉をいう光近
「まぁ、ある意味で魔改造ですもんね」
「えぇ、それでうちの技官たちの話だと出航はいつくらいだと言っていましたか?」
「話によると、5日後だそうです、にしても、彼らは本当に速い」
「工作艦明石率いる工科組は早いですよー」
思わず自慢したくなる光近。
「それと、光近提督にお願いしたいのですが、修理の間、彼らの上陸を許可していただけませんか?」
古庄さんが言ってくる。彼女がお願いするのは理由がある。この御蔵島はその要素と経緯上、唯の軍港ではなく総合軍港なんで、むやみやたらに乗員が上陸できるわけじゃないのだ。
「えぇ、構いませんよ、ただし一部エリアへの立ち入り禁止はさせてもらいます、それ以外のリフレッシュ施設などは使っていただいて構いませんよ」
「ご厚意に感謝します」
「いえ、日ごろお世話になっていますから、あぁ、それと一つ」
「はい、なんでしょう?」
「こちらとしても協力してほしいことが一点、先日出来たばかりの商業施設があるんですが、そこの満足度アンケートに協力してくれませんかね?」
「えっ、あれが出来たんですか!?」
真霜さんが恐ろしいくらいに食いついてくる。無理もない、ブルーマーメイド初の商業施設だからだ。その為、かなり注目が集まっている。
「宗谷さん、知っているの?」
「古庄先輩、知っているも何も結構有名ですよ?赤城の艦内のメンバーも行きたいって言ってる人いますよ?」
「へぇ~」それは期待できると言わんばかりの顔の古庄さん。それを尻目に真霜さんは
「戦艦加賀の乗員全員で行かせてもらいます」
「面白い、赤城乗員も参加させよう」
「では、契約成立ということで、よろしくお願いしますね」
「えぇ、こちらこそ」
そういうと、一礼してその場を去っていく古庄さん。その後を真霜さんがついて行こうとした時だった。
「光近君、ありがとね」
とまさに可愛らしいポーズをしてその場を帰っていった。