ハイスクール・フリート―Double Girls Story― 作:有栖川アリシア
海上安全整備局に光近率いる艦隊が所属することになり、様々なことが変化した。
前線基地というわけではないが、ほぼ中核基地と化した御蔵島。設備としては、大型艦艇が多数係留できる埠頭に、それに一個機動艦隊が丸ごと収容できるくらいのドッグの数。海上滑走路2本、それに伴う艦載機のハンガー、更には中規模商業施設やコミュニティー施設、本格的な会議場や、リフレッシュ施設等々、まさしく軍事要塞にふさわしい規模の軍港となっていた。
勿論、一部施設は本土のブルーマーメイドの本隊も使用している。因みに、夏季休暇中には、この御蔵でバカンスする隊員たちもいる。とはいえ、艦娘達は此処を御蔵鎮守府と呼んでいる。
そして、その赤煉瓦の建物の一室で光近は、今日の担当秘書艦の扶桑と共に、書類仕事に半ば追われていた。
knock!knock!knock!
「ん、いいぞー」
「戻りました、それと提督、本隊からの承認書類をお持ちしました」
やって来たのは、少し席を外していた扶桑だった。
「ありがとう、内容は?」
「本隊の方からの御蔵島寄港に関する書類です」
「わかった、目を通しておこう」
とカリカリと筆の音が部屋の中に響いていく。それから、ある程度書類が終わった。
「扶桑、少し指令室を見てくる」
「はい、わかりました」
そして、光近はこの建物の地下にある艦隊作戦司令室に向かった。
ヴーンッ…
エレベータを使い、地下に向かうと、長い廊下の先に何段かの生体認証を経て、光近は艦隊作戦司令室にはいった。作戦室では、作戦室付きの士官が日夜、正面の巨大なモニターや、小型モニターなどとにらめっこしつつ、その艦隊の動向などを把握、そして行動の報告や気象情報の連絡、また周辺海域の管制などを行っていた。
「状況はどうだ?」
「特にこれと言って問題は起きていません」
「各艦隊の状況は?たしか、長門と陸奥の水上打撃郡が相模湾沖での本隊との演習に参加していただろう」
海上安全整備局からの要請で、光近たちは艦隊を編成することになり、今では九つの艦隊が所属する巨大な一大戦力となっていた。そして、それに際して艦隊の名前を変えることになり、太平洋艦隊という名前に変わったのだ。
「はい、ブルーマーメイド本隊との演習が今日の1500からあります」
「そうか、他の艦隊は?」
「はい、比叡さんと蒼龍さんの第三艦隊があきつ丸さんの部隊と合流して、硫黄島沖と硫黄島で総合演習中、それと榛名と大鳳さんの第四艦隊が哨戒任務に当たっています、それと潜水艦隊が、日本海および東シナ海での哨戒任務を終え、途中小樽に帰港、現在太平洋日本領海を南下中、明日の午後に入港予定です」
「そうか、第三艦隊の帰港時期?」
「5日後の夕方入港予定です」
「わかった、引き続きオペレーションを頼む」
「了解しました」
そういうと、司令室から去っていく。ちなみに海外艦で構成された艦隊もおり、アメリカ・イタリア・ドイツで編成された艦隊は、それぞれの外洋艦隊として、日本領域外で活動している。
ちなみに、各国の取り決めというより、半ば要請で、数のアメリカ艦隊は、インド洋ディエゴガルシアとハワイに駐留することになり、ドイツ、イタリア艦隊は大西洋および太平洋南部領域の哨戒に交代で当たることになっている。それぞれ、ミッションはサーチアンドレスキューということになっている。それから、地上に戻り光近は建造ドッグに向かった。
御蔵島にあるこの巨大な建造兼造修ドッグでは新造艦が何隻か作成されていた。とはいえ、その艦は第二次世界大戦のものではない。近代化された現代艦である。目まぐるしく、工員が動いているのを取りまとめている緑色の髪の少女、夕張だ。
「夕張、どうだ?」
「もちろん順調よ、提督の計画した八八艦隊計画は順調よ」
そう、旧日本海軍時代の艦隊整備計画を文字った八八艦隊計画。これの目指すところは言うまでもなく艦隊戦力の増強及び各艦艇の近代化だ。とはいえ、夕張や明石などの尽力により、ほぼ旧日本海軍艦の各種計器などの近代化は完了している。
「八八艦隊計画7200トン型護衛艦173号艦、そして同型艦6隻、また19,500トン型航空機搭載護衛艦か、それに新型潜水艦か」
その巨大な巨体を眺めている光近。ちなみに、コードネームはダイヤモンドとクラウドだ。
「にしても、早いな、兵装研究や、航空機の研究はどうだ?」
このようなヒアリングもするのも提督の役目だ。
「瑞鳳も結構頑張っているわ、そのおかげで結構進んでいるわよ」
「それはよかった、引き続き何かあったら言ってくれ」
「えぇ、あっ、そうだ」
「ん?」
「いやね、この前瑞鳳と話していたんだけど、ほら、今回が初めての進水式と就役になるじゃない」
「まぁ、そうだな」
「それでね、式典とかどうしようかなーって、瑞鳳とかと話していたわけよ、提督、どうすればいいとおもう?」
「そうだな、これに関してはプロもいるぞ」
「プロ?」
「あぁ、こういうのはパーティー好きに任せるのがいいさ、まぁ夕張任せろ、こっちで対応する」
「ありがとう提督、よろしくね」
「おう、任された、それと艦を任せたぞ」
それから、建造されている艦を一瞥し、ドッグを離れた。