ハイスクール・フリート―Double Girls Story―   作:有栖川アリシア

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防人

数日後

 

御蔵島の一角--最新鋭の設備をそろえた艦隊作戦司令部の入る庁舎の前には、多数の艦娘達がその時の為に、そわそわしていた。そして、その庁舎の3階の真ん中の部屋。提督の執務室で光近は着替えていた。

 

「(サイズ・・・あっているな、さすがだ)」

ブルーマーメイドに特注で頼んだ第一種軍装に身を包む光近。この服を着ると、気持ちが切り替わる。

「(さりげないな・・・)」

胸元には海上安全委員会とブルーマーメイド、それにホワイトドルフィンのバッジがある。

 

コンコンコン

「どうぞ」

来訪者に入ってきていいことを告げると、ドアが開き、現れたのは初期秘書艦の吹雪と艦隊旗艦大和だった。

 

「提督、お迎えに上がりました」

「ありがとう」

「・・・さて、いよいよだな」

「何言っているんですか提督、これからですよ」

「まぁ、そういわれればそうだな」

そういうと、二人を連れて部屋から出る。そして帽子を深くかぶり、光近は式典の行われる会場に向かった。

 

 

「では、これより旗の掲揚を行う」

鎮守府のもっとも高いところの上にある時計。その上の屋根には提督がいるというマークの旗があり、今回はこの旗のところにもう一つ旗が掲げられるのである。

 

「艦隊旗掲揚」

光近はなれた手つきでその旗を準備していく。そして、それがひも伝いに上がっていく。

そして、鎮守府にその巨大な旗がなびく。

その艦隊旗が掲げられる意味は言うまでもなく、この世界での任務が始まるという事だ。

 

ザワザワ・・・ザワザワ

 

「(騒がしいな・・・)」

鎮守府の下のところが騒がしい。光近は掲揚が終わり下に戻ると、そこには綺麗に両側あけられた列ができており、飛行場からまっすぐこちらにのびていた。

「大和、こんなのイベントにあったか?」

「いえ…なんでしょう?」

お互い首をかしげていると、突如、鈴の音が鳴り響く。

 

「――ッ!?」

どこから聞こえたのか。だが、この状況ではあの方向でしかない。そして、こちらにやってくる人物が見える。桜と朱色の巫女服に、太陽にも負けないくらいの黒いつやのある髪を垂らした人物がこちらにゆっくりとした足取りでやってくる。そんな中、

 

「敬礼ッ!!」

赤城の怒号のような声ととともに、思わず光近も敬礼する。いや、敬礼せざるをえない人物だ。

この世界では、日本の象徴は天皇ではなく、陽の本の巫女という存在だ。そして、その巫女--第47代陽の元の巫女が目の前に現れたのだ。そして、その巫女は光近の目の前までやってくる。

 

「はじめまして、巫女様」

「はじめまして、こうしてお会いするのは初めてですね、米内光近さん」

クスリと笑う彼女だが、内心同じように笑えない光近。

「知っておられましたか」

「えぇ、さて、米内さん、近くに皆さんを見下ろせるところは・・・まぁ、この際いいでしょう」

「用意しますが?」

「大丈夫ですよ」

そういうと彼女は鎮守府の庁舎の前。つまり、全員の艦娘が見えるところに立ち。

 

「はじめまして、みなさん――私は陽の本の巫女です」

その言葉に一斉に、緊張した雰囲気に包まれ、彼女の言葉が始まる。そして

 

「本日より我が国の海の楯となる太平洋艦隊の皆様方が、この日本の海、ひいては世界の海の栄光と民の平穏を末長くお守りしていただけることをここに願います――よろしくお願いします」

そういうと、目をつぶって祈り始める巫女。その姿はこれ以上なく美しく。またこれほどまでにすばらしいことはない。

 

「全員、巫女様に敬礼!」

ビシッ!

光近の号令とともに、艦娘達が一糸乱れぬ敬礼を見せ、そして、本格的に太平洋艦隊としての活動が始まるのであった。

 


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