百夜茜は生き残る   作:さんの羊

20 / 21

休みも今日でおわりですね…


百夜茜は選ぶ

 

 

フェリドを今すぐにでも殺したいが、今はそれどころではない。

優ちゃんの元へ行かなければ!

 

「待って!茜ちゃん!!」

 

突然呼び止められ振り向くとそこには、

 

「ミカ…!!」

 

優ちゃんと同じ位大切な家族のミカだった。

 

「茜ちゃん…生きていたんだ…!!」

 

ミカは私に駆け寄り、抱き締めた。

 

「ミカこそ…!!生きててよかった…!!」

 

再び涙がこぼれる。

私もミカを抱き締め返した。

 

生き別れて…4年がたった。

 

抱き締めていて、あれからミカは大分成長して体が大きくなった事がわかる。

顔つきも大人っぽくなった。

 

…けれど、昔と全然中身が変わってない事がわかる。

やっぱりミカは家族思いで、優しい。

 

百夜孤児院の…一番のお兄ちゃんだ。

 

「茜ちゃん!!茜ちゃんもはやく一緒に逃げよう!!薄汚い人間共に捕まってしまう!」

 

「ミカ…?何を…言ってるの…!?」

 

よく見るとミカは優ちゃんとは対照的な白い格好をしている。

優ちゃんと敵対する組織ということは…

 

「もしかして…ミカは…吸血鬼なの…!?」

 

「ッ…!!」

 

ミカは急に黙ってしまった。

 

「そ、そんな…!!」

 

すると横から、

 

「感動の再会の所悪いけど…そろそろ行くよ~?ミカくーん…♪」

 

フェリドがそう言ってミカを呼ぶ。

 

「お前…!!」

 

「あ!その茜ちゃんっていう子もつれてこればいいじゃないか~!ミカくん、そうだろう?」

 

フェリドはヘラヘラと笑い、そう提案してくる。

その態度はどうも神経を逆撫でするような態度だ。

 

「ッ!!優ちゃんも連れて来ないと!!」

 

ミカは、ハッと気がついたように優ちゃんの方を慌てて確認する。

 

「ダメだよ~ミカくん、連れて行けるのはその茜ちゃんだけだ。気持ちはわかるけど今はムリムリ、ほら、見てよ。人間どもの欲望があんなにも強く優ちゃんに絡み付いてる」

 

フェリドは変わらず笑ったままだ。

 

「くそ…人間どもが……!!」

 

ミカは、その光景を見て悔しそうに歯をくいしばる。

 

「じゃあせめて茜ちゃんだけでも…!!行こう!!茜ちゃん!!」

 

ミカは私の方を向いて手を差しのべてそう言ってくる。

 

しかし…

 

「ごめん、ミカ…私…優ちゃんの事ほっとけない。今は優ちゃんの方についていくよ。」

 

「茜ちゃん!?」

 

「ごめんね!!本当にごめん!!ミカ…!!また今度いつか会いにいくから…!!」

 

そう言って私はミカを押し退けて、優ちゃんの方へ向かった。

 

 

 

「待って!私も優ちゃんと一緒に連れてって!!」

 

優ちゃんの仲間らしき人たちの方へ私は向かった。

 

私は優ちゃんとその仲間たちについて行き、保護という形で帝鬼軍に連行された。

 

そして、あれから私は一般人という名目で、生き残った人間達が住む壁の中へ入ることになった。

 

 

 

フェリドside

 

(百夜茜、ねぇ…)

 

思い出した…あの時の百夜孤児院の生き残りか…

 

(あの時死体は全部回収したと思っていたけどなぁ……一人だけ逃がしていたのか…)

 

 

 

茜side

 

「優ちゃん…」

 

そして私は今、優ちゃんが眠っている 病院にお見舞いに来ている。

 

何故、ミカが帝鬼軍をあんなにも敵視しているのかがなんとなくわかった。

 

優ちゃんが暴走したのも、帝鬼軍のせいらしい。

帝鬼軍は、優ちゃんを利用しようとしている。

 

「もう5日もたつのにな…」

 

その時、病室の扉が開く。

 

「あ、茜ちゃんも来てたんだ。」

 

早乙女与一君だ。

 

とても親切で、優しい人。

そして、優ちゃんの友達らしい。

 

「優くんは…まだ目が覚めないみたいだね…。」

 

「…はい。」

 

「茜ちゃんは…優くんの家族なんでしょ?やっぱり心配だよね…。」

 

「心配だけど…大丈夫です。優ちゃんは必ず起きますよ。」

 

「…へ?」

 

「私も…そうだったので。」

 

「それはどういう…」

 

与一君が私に聞こうとした時、また扉が開いた。

 

「…あ、与一も来てたのか。えっと…茜、も。」

 

君月志方君だ。

 

「えっと…うん。」

 

「目は覚ましそうか?」

 

「いや…まだみたいだね。」

 

「そうか…。」

 

…私は気まずくなって、帰る事にした。

 

「えっと…じゃあ私、帰るね。」

 

「おう。」

 

「うん。」

 

静かに私は病室の外に出て、ミカの事がふと気にかかった。

 

「ミカ…今どうしてるだろな…」

 

私はもう一人の家族を置いていってしまった。

それが凄く心に残っている。

 

「私…これからどうなるんだろ…。」

 

もとはといえば、家族を皆殺しにしたあの吸血鬼を殺すために私は強くなって、この世界に戻ってきた。

 

そこに生き残っていた二人の家族。

 

(結構…私って無計画なんだな…。)

 

フェリドを殺した後、どうするべきなのか私はさっぱりわからなかった。

 





よし、頑張ろう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。