百夜茜は生き残る 作:さんの羊
…やっとこさ更新。まだ二話ですけどね。
「…ん…」
しばらくして、茜は目を覚ました。
「…ここは…?」
辺りを見渡して見ると、自分はとても清潔そうなベッドの上で寝かされていたことがわかる。
「なに…これ…!?」
部屋の窓からは暖かなひざしが射しているが、それよりも茜はその外の景色に驚いた。
「街が…崩壊してない…!?」
外では普通に車が走っている。人間は楽しそうに笑いながら歩いている。
「これは…ゆめ…?」
…ふいに茜の頬に涙が伝った。平和で、吸血鬼なんてものが居ない世界、まるで悪夢を見ているかのような光景。
(…でも、あれ…私の家族は…)
茜が家族のことを思い出しそうになったその時、突然部屋の扉が開く音がした。
「気がついたか…」
そして、黒髪の学生服を着た男が入ってきた。
彼は茜の姿を確認すると、見定めるように睨み付けた。
「早速だが…お前は一体何者だ?」
鋭い目で質問を問われ茜は少したじろいでしまう。
「え、えっと…?」
男は舌打ちをすると、苛立った様子で、
「お前は自分の事さえわからないバカなのか?それとも敵か何かか?」
「…はっ!?てっ…敵!?」
突然バカ呼ばわりされ、敵なのかと問われ、茜は焦るばかりだ。
「お前は此処とは違う異世界から来た。…まさか自覚がないのか?」
「い、異世界…!?」
そして、彼が弱っていた茜を拾ったことや異世界から迷い混んで来たことを詳しく茜に説明した。
茜もそれを聞いて動揺したが、少しずつ自分の事や、自分が生きてきた世界や家族の事、そして吸血鬼の事なども話した。
「ほぉ…なるほど…お前がいたところは本当にクソみたいな世界だな。しかも東京とは…此方の世界と随分似ている世界のようだ」
彼は鼻で笑いながら言った。
愚かな人間どもによりウイルスがばらまかれ、世界が崩壊しかけ、吸血鬼にほぼ支配された世界。
「…それで?お前は一体どうするんだ?」
彼は真剣な顔で茜に問いかける。
しかし、いきなりこれからの事について問われ、茜は困惑した。
「お前が望むなら…戸籍をこちらで作り平和なこの世界で生きて行く協力を軍がするが…お前はどうしたいんだ?」
「私は…」
吸血鬼に家族を殺された。
しかし自分は生き残り、助かった。
そして自分だけは平和な世界で生きて行く。
(そんなの…ふざけてるとしか思えない…。)
「強くなって、吸血鬼を殺します。」
茜は覚悟を決め、彼に伝える。
「…どうやって殺す?お前が言うには吸血鬼とやらは人間よりもはるかに強くて身体能力があるらしいじゃないか。到底お前のようなただのガキにどうこうできるとは思えないが?」
「それは…」
「お前もどうせお前の家族と同じようにムダに殺されて終わりだろうな。」
「…それでも!強くならないといけないんです!」
「家族の仇…か…ふん、いいだろう。お前を俺の奴隷にしてやる。」
「……え?」
「俺の名前は紅月光だ。俺様についてこれば…お前は神をもころす事ができるようになるぞ?」
彼は…紅月光は不敵に笑いながら茜に手を差しのべる。
「…へ?」
(…神をも…殺せる力…!?)
「さぁ、百夜茜…どうする?」
月光の問いかけに、茜は答える。
…答えはもう、決まっていた。
「…っ!よろしくお願いします!!私は…あなたに…強くなれるならいくらでもついていきます!吸血鬼どもを滅ぼせるなら!!」
茜は月光が差し出した手を強く掴んだ。
そしてここから…世界の滅亡と、吸血鬼、天使、悪魔と、私の戦いが始まった。
…なんとかコツを掴めそう。がんばろ…。