百夜茜は生き残る 作:さんの羊
少し空いてる時間が長かった分頑張ります。
あれから私は大兎さんと何度も何度も同じ修行を繰り返した。
暴走しそうになって、またそれを抑えて、それの繰り返し。
でも徐々に正気を取り戻す事ができるようになってゆく。
「うん、茜ちゃんも大分なれてきたね。」
「は、はい!」
後で聞いたが、私が初めて正気を取り戻せたあの時、スクラルドさんが私の意識に干渉できたのは大兎さんのおかげだった。
「実はな、俺が茜ちゃんに攻撃した時、毎回俺の力を少しずつ入れてたんだ。それで俺の力で茜ちゃんがある程度保てるように力を消して抑えてたんだよ。」
前に大兎さんが思い付いた事とはこれだった。
私もある程度自分の中の力を解放して暴走しずに使えるようになった。
あれからいろいろな人にいろんな事を教えてもらい、力をつけた。
自分が強くなっていく事が少しずつではあるが実感できるようになった。
さまざまな鍛練をし、戦い方を模索したりといろいろ大変だった。
沢山の人たちにお世話になったし、その分私も成長した。
他にも…この世界が崩壊するという危機にもなったが、やはり月光さん達は凄かった。
私はただこの世界が崩壊すると聞いて、何も出来なかった。
それでも、月光さんやミライさん、泉さん、セルジュさんハスガさん、ヒメアさん、そして大兎さんは最後まで抗い、世界は未来へと好転した。
希望が満ち溢れ、世界を救ったそんな生徒会役員達がとてもとても私の憧れになった。
いつか、こんなふうに凄い人たちになりたい。
いろいろなことがあって、今、私はこの地に、この場所に立っている。
私が月光さんに拾われて、あれから4年後。
正式に、私は宮阪高校に入学した。そして…
「…おい、あれが今年の新しい生徒会長だってよ!」
「は?まだ一年だろ!?」
私は、第十四代目宮阪高校生徒会長になった。
私は月光さんに憧れて月光さんと同じように一年生で宮阪高校の生徒会長になり、今活動している。
…かつての月光さんに少しは近づいた気がします。
でも、私はずっと考えていた。
月光さん達にいろいろな事を教えてもらい、その結果、私はある程度強くなった。
いつかは元の世界へ帰って、吸血鬼に…特にあのフェリドとか言う吸血鬼の貴族に復讐しなければならない。
「せ、生徒会長!!道程が開きました!!生徒の被害者が5人出ています!」
生徒会役室の扉が勢いよくがらりと開き、副会長が駆け込んできた。
「わかりました。今行きます!」
高校に侵入してくる化け物達を倒し、学校の平和を守る生活。
この宮阪高校がとても特殊だということをこの4年間で知った。
表向きは普通の高校。真実を知っているのはごく一部で、学校の地下にいる軍と生徒会役員だけだ。
そんな理由で、普通の生徒では対応しきれないからこそ、ある程度鍛えた私が生徒会長に抜擢されたのだと思う。
でも…。
化け物を倒し、学校の裏庭で一息ついていると、
「おや、これはこれは、百夜茜さんじゃないですか。」
「へ?」
月光さんにとても似ている男性が私に声をかけてきた。
「あ、あなたは…!!」
「やあ、久しぶりだね。」
彼はにこやかに私に笑いかける。
紅日向、紅月光の実の弟であり、軍のトップに君臨している人だ。
「な、なぜここにあなたがいるんですか!?」
「なぜって…散歩ですよ、ただの。」
あっさりとした顔で当然のように彼は答える。
「さ、散歩!?仕事とか大丈夫なんですか!?」
「ええ、まあ。兄さんが少しうるさいぐらいですから。それに…」
「それに?」
「君が何か重いことを悩んでいたようなので。」
「え…?」
彼は私の全てを見透かしたように静かに笑いかけた。
よしよし、頑張ろう…。