百夜茜は生き残る 作:さんの羊
…なんか、すいません。はい。
こんなクソ素人の小説?を見てくれている人がいることに大分感動しています。
不意に意識が現実に戻る。
天使の誘惑に抗い、いまだに暴走している体。
「…っ!!」
体がいうことをきかない。
今ははっきりと自分が暴走しているという感覚がある。
意識だけが恐ろしく静かで自分じゃない誰かが体を動かしている感覚。
目の前では大兎さんが私を押さえている。
大兎さんもすでに自分の力を解放しており、私が放った攻撃を次々に黒く塗りつぶし無効化している。
私はただ、叫んで、暴れて、もう抑えがきかなかった。
気持ちがぐちゃぐちゃでわけがわからないし、苦しい。
助けて!助けて!助けて!
誰か私を止めて!!
苦しい!!誰か私を助けて!!
醜く暴れる自分をもう見ていられなかった。
しかしそんなふうに暴れている私を押さえて、大兎さんが言った。
「だ い じょ う ぶ だ よ 。」
こんなに状況なのに、大兎さんは私を押さえて苦しそうにしながらも笑ってそう言った。
苦しくて、つらいのに、何故かその言葉で安心して私の瞳から涙が溢れる。
「茜ちゃん!!戻ってこい!!茜ちゃんなら、戻ってこれる!!」
必死に大兎さんが私に向けて叫んでいる。
私はなんとか押さえようとして叫ぶ。
叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
「あ゛あ゛あ゛あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ゛ああ゛あああ゛あ゛!!!!!!!」
叫んで、叫んで、もがいて、苦しんで、私は…
「あ゛ああ…あ、た、いと…さん…!」
「!!茜ちゃん!!」
少しずつ、私の体が自由になってゆく。
少しずつ、少しずつ精神が落ち着いて、
「た、いとさん!」
私の何かが収まってゆく。
「あ…」
力を出しきって体から不意に力が抜けてふらつく。
「茜ちゃん!」
大兎さんがとっさに力尽きた私を抱きとめる。
「大兎さん…私…」
「ああ、よくやったな。」
大兎さんの安心した顔を見て、私も安心して意識がゆっくり遠退いてゆく。
「茜ちゃん…今はゆっくり休んでいい。俺が運んでやるから。」
「は、い……。」
私は、そのまま意識を失った。
私は目を覚ました。
「あれ…?ここは…」
私は軍の医務室のベッドで横になっていた。
「軍の…医務室…」
まだ頭がぼーっとしている。体は節々が痛くてしびれている感覚。
その時、部屋の扉が開いた。
「気がついたか。」
そこには月光さんがいた。
「…あ、私、大兎さんと修行してて…!!」
「ああ。そしてお前は気を失った。」
「…は、はい。」
なんだか少し申し訳なくてへこむ。
「…しかし、お前は力の制御に成功したのだろう?あの雑魚から聞いた。」
少しため息混じりで月光さんは言った。恐らく月光さんの言う雑魚とは大兎さんのことだろうか…?
「…制御…できたのでしょうか…?」
「ん?できなかったのか?」
「わ、わかりません。」
「そうか、お前は自分の事もわからないアホなんだな。」
「あ、アホ…。」
いつもどうり、月光さんがきつい言葉を私に言う。だけど何故かそんな月光さんのいつもどうりの落ち着いた態度に私は安心した。
「えっと…月光さん。」
「なんだ。」
「ありがとうございます。」
「なにがだ?」
「えと、いろいろ…。」
「ふむ。」
「あの、私…もっと強くなりたいと思います。強くなって、吸血鬼を殺します。」
「…そうか。」
「月光さん、」
「ん?」
「これからも…よろしくお願いします。」
「…ああ。」
月光さんはそれだけ言うとその場から立ち去った。
私は、強くなりたい。月光さんみたいに。
だから、これからもっと頑張らなくてはいけない。
どんなに辛くても、苦しくても、頑張らなくてはいけない。
…ただ一つ、私の野望の為に。
…頑張ります。